東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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魔法の森のお地蔵さん

魔法の森、まるで木々が強くその口を閉ざしているように見えた。

まるで誰の侵入も許さないと言っているかのよう。

真っ暗闇だから、青々と茂っているでは無く、黒々と茂ってるとなるのかな。

 

「いやぁ、暗いわね。月の光も入ってこないわ」

「ここはまず人間が来ないから暗くても嬉しくないのだ」

「人間は来るんじゃ? 魔理沙さんが」

「あんな化け物をそこらの人間と一緒にはしないって」

 

確かに魔理沙さんは霊夢さんほどじゃ無いにしても

人間とは思えない程に強いからなぁ。

普通の人間はレーザーキャノンなんて撃ってこないし、空も飛べないよ。

 

「まぁ、その話は別に良いとして、今の問題は魔理沙の家が何処か分からない事ね」

「こんな深い森の中で魔理沙さんの家を探すのは至難の業ですよ…

 空から見れば、すぐに分かるかもしれませんが」

「それもありなんだけど、これは散歩だから歩いて探したいのよね」

「相当時間掛りますよ?」

「まぁ、迷ったら木を切り倒して進めば良いだけの話ね!」

「退治されますから止めてください!」

「と言うか、そんな事をしちゃったら、フランが身を隠す場所がなくなるのだ」

「身を隠す? 私が? 誰から?」

「えっと…多分日光のことかと」

「た、確かに強敵過ぎるわね…」

 

いくらフランお嬢様でも吸血鬼の弱点までは克服出来てないだろうからなぁ。

木が残ってれば、木陰に隠れれば大丈夫かもしれないけどね。

 

「じゃあ、普通に歩いて探しましょ」

「そ、そうですね…」

 

ひとまず私達は魔法の森を歩き回ることにした。

と言っても、何処を見ても木しか無いんだけどね。

でも、そんな中で1つ変った物を見付けた。

 

「フランお嬢様、お地蔵さんがありますよ」

「お地蔵さんってよく分からないんだけど、石よね?」

「石ですね」

「ただの石なら興味無いわ」

「…ん? 何か動いた様な気がしたのだ」

「石が動くわけ無いじゃ無いですか」

「いやでも…」

 

でもなぁ…何だか生きてるように思えるんだけどなぁ…

暗闇だからあまりハッキリとは分からないんだけど…

 

「……すぅ」

 

うーん…さっきっから聞える寝息も気になるんだよね。

この場で眠ってる人なんていないから。

そう、そしてこの寝息が聞える方向は…

まさに、私の目の前…暗闇の中にある、このお地蔵さんから聞える!

 

「…う、うーん」

 

恐る恐る、私はそのお地蔵さんの頭に手を伸ばした。

……お、お地蔵さんの頭って…御利益あったっけ?

 

「……!?」

「どうしたの? フィル」

「あ、い、いえ…その…」

 

私が触れた地蔵さんの頭は…その…石ではなかった。

でも、これは笠かな、笠地蔵ってあるし…

じゃあ、この笠の下はどうなってるんだろう?

あ、この触感は…か、髪の毛…かな?

 

「か…髪の毛?」

「え? 地蔵に髪の毛が生えてるわけ無いじゃん」

「う、うーん…」

 

でも、確かに髪の毛みたいな触感だったんだけどなぁ。

やっぱりこれって人? でも、お地蔵さんじゃないの?

とりあえず、ここ…ほっぺたを。

 

「うひ、うひひ…」

「……喋った?」

 

さ、触った触感は完全に人の肌…これ、やっぱり人間なんじゃ?

 

「や、やっぱり人間なんじゃ…」

「魔法の森に人間とか魔理沙くらいしかいそうにないけど」

「でも…完全に人間ですよこれ…」

「んー…」

 

暗くてあまりよく見えなかったけど、やっぱり人間だ。

笠で隠れて顔が見えなかっただけで、顔は肌色だった。

 

「へぇ、もしかして妖怪なのかしら」

「お地蔵さん…って、妖怪なんですか?」

「付喪神とかかもしれないのだ」

 

そう言えば、付喪神っていたっけ。

 

「つ、付喪神とは違うんだけどね」

「喋った! これは面白いのだ!」

「喋るおもちゃかしら」

「違うわよ! 私、お地蔵さん! 魔法地蔵!

 魔法地蔵の成美! 矢田寺成美(やたでらなるみ)よ!」

「あ、自己紹介ありがとうございます。私はフィルです」

「何? 自己紹介しないといけない流れなの? 地蔵に?

 まぁ、フィルがするなら私もするけどね。

 私は吸血鬼のフランドールよ、フランで良いわ。

 下の名前はいるかしら?」

「い、いや…幻想郷の吸血鬼って地点で下の名前は分かるから…」

「私はルーミアなのだ、よろしく」

「ふむふむ、人食い妖怪の…それにしてもフィルね…

 確か魔理沙があなたの事を私に話してくれた気がするわ」

「魔理沙知ってるの?」

「知ってるわよ、1人の私にたまに話し掛けてくれるの。

 社交的な性格で、何だか羨ましいわ」

 

確かに魔理沙さんは色々な場所を飛び回ってるからね。

社交的なのは間違いないよ。

 

「へぇ、流石魔理沙…所であなたってその服装どうなってるの?」

「ロングコートと言う奴ですかね、灰色ですけど。

 後、首の赤いのは? マフラー…では無いですよね」

「前掛けよ、字を書いてるの。お地蔵さんらしいでしょ?

 そう言うあなたも、なんでマフラー? この時期はそんなに寒くないでしょ?」

「このマフラーは何だかよく分かりませんけど、巻いてると落ち着くんです」

「お風呂の時や寝てるとき以外は大体付けてるよね」

「落ち着くんです」

 

理由は良く分からないんだけど、きっと失ってる記憶に答えがあるんだろうね。

落ち着く理由も、もしかしたらお母さんが編んでくれたマフラーだからかもしれない。

編んで貰った訳じゃなくても、きっと貰ったマフラーなんだと思うし。

 

「フィルはマフラーが似合うから問題無いのだ。

 でも、それは置いておいて。お地蔵さんの笠が気になるのだ」

「笠地蔵とかですかね?」

「そうね、きっとそうよ。だから、私に何かしてくれれば

 何か返ってくるかもしれないわよ」

「別に私はそう言うの良いけどね、幸せなら何でも良いわ。

 今まで楽しめなかった495年間を取り戻すのよ。

 昔の大変な思い出も、今や未来でいくらでも取り戻せるのよ。

 長生きの吸血鬼だし、余裕よね」

「はい! 絶対に大丈夫だと思います!」

「良い話なのだ」

「否定はしないけど…この流れでそんな話しになるとは予想外よ」

 

確かに笠地蔵の話からそんな話しになるのは予想外だったよ。

 

「まぁまぁ、気にしない気にしない。所で地蔵」

「え? 何?」

「魔理沙の家知ってる?」

「なんで魔理沙に? もしかして戦いを挑もうとか?

 負けた腹いせのために寝込みを襲おうとか思ってる?」

「そんな卑怯な真似、私がするわけ無いでしょ?

 負けたのは確かだけど、遊びで負けて本気で怒るわけ無いでしょ」

「それもそうね、えっと魔理沙の家は向こうよ」

 

成美さんが暗闇の魔法の森を指差したけど

……分からないよ、そんなんじゃ。

 

「そんなんで分かるわけ無いでしょ、馬鹿なの?」

「お、教えてあげたのにその言い方は…」

「曖昧すぎるのだ」

「わ、分かったわよ。案内するわ。

 ここから出来れば動きたくないのに…

 そもそも、私ってあまり社交的なタイプじゃ」

「良いから教えてよ。迷うし…あ、空を飛んだら駄目よ?

 散歩なんだから歩いて行きたいの」

「さ、散歩で魔法の森とか…流石吸血鬼、しかし考えてみれば

 何であなた達2人の中に、人食い妖怪がいるのか超疑問なんだけど」

「一緒に付いてきただけなのだ」

「フィルと一応は交流があるっぽいから一緒に連れ回したの。

 前に一緒に温泉に入った仲でもあるしね」

「こ、紅魔館の主の妹と交流があるとか凄いコネね…

 たかだか人食い妖怪のくせに、幻想郷勢力の一角と知り合いとか」

「あら、紅魔館ってそんなに知ってる人多いの?」

「ま、まぁ…デカい館だし」

 

確かに紅魔館は大きいよね、それに、外見も大きいのに

実際の中はもっと広いって言うね。

パーティーもしてるし、色々な勢力を招待もしてるから

実は凄く大きな力があるんだろうね。

 

「じゃあ、私と知り合えたことを喜びなさいな。

 正直、私よりもフィルと知り合いって方が大きそうだけど」

「どうして? 私はその子は魔理沙から聞いた程度だけど」

「フィルは八雲紫が贔屓にしてるからなー」

「げ! 幻想郷の賢者が! 何それ恐い!」

「と言うか、フィルは前に月の異変を回ったり

 てか、それよりもオカルト異変の時に

 色んな実力者に興味を持たれてたし…実際、相当交流ありそう」

「み、見た目はあまり強そうではないけど…え? 何かあるの?」

「いえ、わ、私は見た目通り、よわ」

「何処まで謙遜してるのよ、お姉様と私と同時に戦って勝った癖に。

 と言うか、実力者連中から一斉攻撃を食らって

 何だかんだで撃破してるくせに」

「見た目って…案外、役に立たないのね…」

「うぅ…あ、あれは全部たまたまで」

「後、フィルは凄く謙遜するから自分で弱いと言っても

 絶対に過剰に謙遜してるだけだから」

「わ、分かったわ…でも、敵対心はないみたいで安心よ。

 それじゃあ、魔理沙の家に案内するけど…魔理沙を攻撃しないでね?」

「しないしない」

「その言葉、信じたから」

「悪魔は嘘を吐かないのよ。お姉様が言ってた」

「わ、分かったわ」

 

そして、私達は成美さんに案内されて真っ暗な魔法の森を歩いた。

ある程度進んでいくと、そこだけ木々がなく

小さい家が建っているのが分かった。

霧雨魔法店…え? こんな場所でお店? てか、明かりが点いてる。

こんな時間なのに…うーん、何してるのか気になるよ。


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