東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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魔法使いの家へ

疑問を抱いたままだったけど、私達は魔理沙さんの家へ訪問した。

 

「魔理沙ー」

「んぁ? こんな早い時間に誰だ?」

「あ、もう早い時間なのね」

「フラン?」

 

魔理沙さんが扉を開け、私達を中に入れてくれた。

魔理沙さんのお部屋の中は凄くごちゃごちゃしていて

色々な本が置いてある。あれ? 何でパチュリーさんの名前が?

 

「こんな時間に私の家に用とは珍しいな。

 まぁ、フィルとフランがセットなのは分かるんだが

 ルーミアと成美が一緒ってのは余計不思議だな。

 あまり社交的じゃないお前がどうしたんだ?」

「半分脅迫されて…」

「まぁ、フランは結構乱暴なところあるからな。

 レミリアと比べれば、ちょっとは大人しいが」

「私はお散歩してたのよ」

「私も一緒にお散歩してたのだ」

「私もです」

「…散歩で私の家に来るのか。常識とか無いのかよお前ら」

「人間の常識とか私知らないし」

「ま、まぁ、吸血鬼の常識と人の常識は違うか…

 だったら、フィルが止めてくれそうだが。

 まぁ、主に口出しは出来ないって事か」

「と、止めたんですけどね? 少しは」

「結果が出てないなら意味ないと思うが…まぁいいや。

 どうして私の家に来たんだ?」

「暇つぶし」

「暇で私の時間が潰れるぜ。とは言え、もう時間も遅いからな。

 そろそろ5時の明け方、吸血鬼は日光に弱いそうだから

 泊まっていくか?」

「あら良いの?」

「あぁ、構わないぜ」

 

急に押しかけてきた私達を泊めてくれるんだ…優しいなぁ。

 

「とは言え、寝る場所は無いがな」

「見れば分かるわよ、部屋中ごちゃごちゃだし」

「そう思うか? やっぱり…私にも咲夜みたいなメイドが居ればな」

「咲夜が居たら間違いなく色々と言われるわよ?」

「咲夜みたいなメイドが居なくて良かったぜ」

 

意見変えるの早いなーと思ったけど、どっちも本気じゃないんだろうね。

 

「そう言えば、なんで魔理沙はまだ起きてるの?」

「魔法の研究をしてたんだぜ、暇だったし」

「暇なら寝れば良いじゃないの」

「いや…今日は何だか眠れなくてな。だから暇つぶしを」

 

その言葉が嘘だったと言う事は、私にはすぐに分かった。

明らかに少し考えて言い訳を作っていたからね。

つまり、魔理沙さんは研究をしていたことを悟られたくないんだ。

もしかしたら、努力をしているのを知られたくないのかも?

 

「だから、私はこのまま研究するから、お前らはくつろいでてくれ」

「分かったわ、ありがとね魔理沙」

「何、気にすんな」

 

研究をしている最中だったのに私達を泊めてくれるんだ。

本当に優しいな、魔理沙さんは。

じゃあ、私達はどうしようかな。

ひとまず、暇を潰すために私は本を手に取った。

 

「うーん」

 

外の世界で色々な本を読んで、ちょっとだけ本に興味を持てた。

この本は英語なんだね、でも、英語も本を読んで読めるようになってる。

蓮子さん達に色々と教えて貰ったからね。

特にメリーさんは凄く英語が得意だったし。

 

「んー? あら英語なのね」

「フランお嬢様も分かるんですか?」

「まぁね、お姉様から色々と教わったからね」

「ほう、お前は英語も出来るのか。

 色々と出来るって聞いていたが、相当だな」

「色々と勉強したんですよ、外の世界で」

「外の世界…そう言えば、長いこと外の世界にいたな」

「はい」

「……よし! なら私にその時の話をしてくれ!

 今日、私の家に泊まるんだから、それ位はお願いするぜ!」

「あ、興味あるんですか?」

「まぁな、少ししか見てないし」

「でも、研究はどうするの?」

「うーん、研究はまた後でするぜ。

 今はフィルの話に興味があるんだ」

「外の世界って、そんなに魅力的なんですか?」

「あぁ、当たり前じゃない別の世界とか魅力的だろ?」

 

当たり前じゃない別の世界。こことは違う別世界。

異なる世界、異世界…確かに魅力的かも知れない。

でも、きっと魅力的に見えるのは届かないからなのかもね。

 

いざ、その魅力的な世界に足を運んだとしても

その実体が想像と現実では違うのは間違いないんだ。

異世界を知らず、存ぜずのまま想像していれば

その想像やわくわくは無限に増幅する。

 

でも、いざその現実を知ってしまえば

わくわくはその度合いで固定され

届かない夢は届いてしまった現実に変る。

 

だからきっと…知らない方が良いんだと私は思う。

何でそんな風に思うのかは分からない。

私だって、外の世界は楽しいと感じていたはずなのに。

 

「……」

「どうした?」

「……いえ、話します。私が記憶にある話は全部」

「妙な言い回しをするな。知ってる事全部で良いのに

 あえて記憶にある話と表現したのは何故だ?」

「私、記憶喪失ですからね。記憶を失う前も

 きっと外の世界に居たんだと思います。

 でも、その時の記憶はない。

 だから、今の私の記憶にある話だけをすると言う意味ですよ」

「ほぅ…お前の過去に興味がないわけじゃないが

 深入りするべきではないのも分かるぜ。

 だから、記憶にある話だけで構わない」

「分かりました」

 

私は外の世界であったこと、全てを魔理沙さんにも話した。

色々な人に話をしているから、やっぱり外の世界は

幻想郷に住む人達からして見れば魅力的なのだと分かる。

 

魔理沙さんは私の話を食い付くように聞いている。

目を輝かせ、私の言葉から色々な想像をしているんだとおもう。

だけど、話してる私はそんな表情にはなれなかった。

 

何処か引っ掛かる。記憶がない記憶。

これが私には分からない。違和感はあるけど

その違和感が何なのか私には分からない。

 

だけど、今までで分かってること…私の過去は悲惨だと言う事だ。

私の失っている記憶は…私が思い出さない方が良いほどに酷い記憶。

紫さんの言葉、もう一つの人格である私の言葉。

そして、あの夢が…私の過去は悲惨だと言う事を物語っている。

 

でも…その記憶の中に…私の両親が居るのだというのなら私は探すよ。

 

「ほうほう、なる程…外の世界、色々と面白そうだぜ!」

「はい、きっと凄い体験が出来ますよ!」

 

日は完全に明けていた。もうすでにもう一周しそうなほどに。

それだけの長い時間、魔理沙さんは私の話を聞いていた。

飽きることなく…そこまで興味があったと言う事だね。


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