東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

126 / 245
不自然な行動

「聞いただけだが、全く面倒な感じだな」

「あら、面倒じゃない物作りがあるとでも?」

「そりゃそうだな」

 

確かに何かを作るってなると、大体面倒な場合が多いからね。

簡単に出来る物はあまり無いし

簡単に出来る物でも、徹底的にしようと思えば大変だもん。

 

「で-、お前が私の家に来た理由、結局聞いてないが?」

「あぁ、そうね。実はちょっと気になることがあってね」

「気になること?」

 

気になることって何だろう?

 

「と言っても、私が気になってたのはこの子みたいだけど」

「どう言うことだ?」

「たまに人里に行って、聞いた噂なんだけど

 どうも、あの裏で動いてるはずの八雲紫が

 若干目立って行動してるみたいな話を聞いてね。

 

 一応、面識はあるけどあいつが動く場合はろくな事が無い。

 ましてや、目立って動いてるとなると余計に。

 軽い第一印象でしかないんだけどね」

「まぁ、あいつが動くと大体面倒事が起こるからな」

 

そうなんだ、あまり幻想郷に長く居ない私には分からないや。

 

「だが、あいつは結構色んな異変に介入してくるし

 意外とそうでも無いように感じるがな」

「そうかしらね」

「…でも、そう言えば前の異変の時、あのオカルトボールの異変な。

 何であの時、あいつが動かなかったのは謎でしかないが」

「え? でも紫さんは私を迎えに来てくれましたよ?」

「何ヶ月も経った後だろ? 幻想郷の住民が外の世界に放り出されて

 しばらく救助に向わないというのも不自然だぜ。

 月が責めてきたときだって、あいつは動いてないし…

 あれほどの規模なら、あいつが動いてもおかしくないのに」

「でも、紫さんはちゃんと」

「……さて、ちょっと疑問が増えてきたぜ」

 

私の話を聞いたアリスさんと魔理沙さんは更に怪訝な表情を浮かべる。

 

「アリス、お前も私と同じ疑問か?」

「分からないけど、多分そうでしょうね」

「どうしたんですか?」

「……不自然、あまりにも不自然すぎる」

「え? 何がです?」

「おいおい、私は派手に動いてる人間だぜ? 博麗神社にもよく行ってる。

 紫が出てくるのは、大体霊夢の所だが、私は紫に遭遇していない」

「あなたよりも長く幻想郷に住んでいて、多少の実力もあり

 少しだけ八雲紫と交流がある魔理沙で遭遇していないというのに

 あなたばかり紫と遭遇しているというのは不自然すぎるわ」

 

そ、そう言えば…紫さんが凄い妖怪だというなら

何で私は紫さんとあんなに出会っているんだろう?

気に掛けてくれているだけと思っていたけど、何だか。

 

「まるで、あなたを監視してるみたいね。

 となると、今も監視されてるのかも知れない」

「……」

「だが、監視をしているというなら

 あの騒動でお前を外に飛ばした理由は不明だな。

 危険視しているとすれば、そんな危険な存在を外に飛ばすのもおかしい」

「となると、あの騒動の時に別の問題に着手していたと考えるべきね」

「どんな問題だ? 月への牽制か?」

「でも、月の人達から、そんな話は聞いてません」

「……ふむ、さてここでもやっぱり違和感を感じるな。

 異変解決を現状、フィルがバンバン行なってる理由も不思議だぜ」

「オカルト異変、そして月の襲撃もフィルが解決した。

 異変の解決は博麗の巫女である霊夢の仕事だというのに」

「たまに霊夢の姿が博麗神社に無いことも増えてきてる。これも何かありそうだな」

 

…どう言うことかな? 幻想郷の事情に詳しくない私には分からないよ…

ずっと同じ場所にいる筈も無いと思うんだけどなぁ。

 

「私の予想では、全てあなたに理由があると思ってる」

「わ、私ですか!?」

「あぁ、私もそう予想するぜ。お前がこっちに来て色々と変りすぎだ。

 フランが外を出歩いてるのも、まぁ変ってる要素ではあるが

 これは、あまり関係が無いだろう。ただお前がフランを勇気付けただけ。

 それだけで、幻想郷全体に影響を及ぼすことでは無いしな」

「大きな変化は八雲紫の行動。彼女は間違いなく…あなたを警戒している」

「け、警戒…気に掛けてくれてるだけじゃ」

「そんなはずは無いだろ? だって、お前はもうすでに紅魔館という安住の地がある。

 お前は既に幻想郷に居場所を作ってて、幻想郷の住民に受入れられているんだぜ?

 色んな妖怪がお前の話をしてるのを聞くからな。

 既に、お前に気掛かりな要素はないはずだ。安定しているんだからな。

 

 住む場所もあって、仕事もあって、やりがいもあって、交流もあって。

 お前はもう幻想郷の中でかなり恵まれている位置にいる。

 お前に心配する要素はないと予想するぜ」

 

確かに、今の私は凄く恵まれている。

心配をする要素があるとすれば記憶の事ともう一つの人格。

 

「き、きっと紫さんは、私に私の記憶を話すかどうかを考える為に」

「あぁ、お前の中にある最もな要素がその記憶。霊夢から聞いたぜ。

 何で紫が頑なにお前の記憶を教えようとしないのかは知らないが

 間違いなく、そこに何かあるんだろう」

「あなたの過去を知ってる人数はどれ位?」

「えっと…多分、紫さん、霊夢さんの2人…あ、後、幽々子さんも…?

 あ、後は藍さんも知ってると思います!」

「4人…しかも、幻想郷というシステムの中で上位に位置する妖怪、人間ばかり」

「これはますます怪しいな。さとりに頼んで心の奥底を読んで貰えば

 もしかしたら、記憶が分かるかも知れないから、行ってみようぜ?

 あ、さとりって言うのは旧地獄って言う場所にいる妖怪で」

「も、もう会ってます…心を読んで貰いましたが、分からないって」

「…何処までお前は根を張ってるんだ? 紫の差し金か?」

「は、はい、紫さんに色々と」

「……ふむ、悟り妖怪でも分からない心の深層。

 そこに何があるか…記憶の謎…へ、これは腕が鳴るぜ。

 おもしれぇ! 私も動いて色々と探ってみるぜ!」

「…魔理沙、それは止めた方が良いんじゃ無い?」

「あぁ? 何でだよ」

「幻想郷の上位クラスしか知らない情報…そんな情報をあなたが知ったとなれば

 きっと、紫が動く。この件はきっと、私達の手に余るんでしょう。

 あの紫ですら、若干手に余らせている件と予想できるしね。

 我が身が大事なら、大人しくしておくことをお勧めするわ」

「わ、私の記憶を探すだけでそんな大袈裟な事になるとは」

「なるわ、私の予想でしかないけどね。あなたはどうやら

 私が思ってた以上に厄介な妖怪、いや、半獣みたいね。

 私はこれ以上、この件は探らないでおくわ。死にたくないしね」

「はん、紫が私達を殺すとは思えないぜ? 臆病だなぁ」

「あなたは楽観的過ぎるのよ、もう少し理論的に物を考えなさい。

 そうしないと、魔法使いなんて出来ないわよ?」

「考えるよりもまずは行動って言うのが私のポリシーでね。

 考えながら行動するぜ!」

「だから」

 

アリスさんと魔理沙さんが口喧嘩を始めようとしたとき、扉がノックされた。

 

「…誰? 噂をすれば影で、紫?」

「馬鹿言え、あいつなら突如姿を見せるぜ。

 ドアをノックするなんてお上品な真似をするわけが無い。

 誰だ? 今日はお客人が多いんだがな」

「あ、良かった人が居た! てかあなたその格好凄いわね! 魔法使い!?」

「何だ? に、人間?」

 

扉の向こうにいたのは…菫子さんだった!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。