東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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寺子屋の先生

阿求さんに案内されて、私は慧音さんが居るという場所に移動した。

その場所は寺子屋というらしく、色んな人間の子供が通っているらしい。

妖怪であるはずの慧音さんが人間の子供に物を教えるって凄いなぁ。

そもそも、妖怪であるはずの慧音さんに物を教わりに来る

人間もかなり凄いよ…怖がったりしないんだ。

 

「慧音さん、いらっしゃいますか?」

「ん? おや、阿求と…誰だ?」

「こ、こんにちは、えっと、フィルと言います

 最近紅魔館でお世話になる事になった半獣です!」

「紅魔館の新しい娘か」

 

慧音さんは大人っぽい感じだなぁ、少し厳しそうではあるけど。

あの青い帽子の上に赤い飾りがあって真っ白の長い髪の毛

瞳の色は黒っぽくて、青い服の青く長いスカート。

その青色のスカートの端っこからは白いフリフリが見えている。

赤色の蝶ネクタイの様な物も付いている。

 

「しかし、私以外の半獣か、少し親近感を覚えるな」

「あ、ありがとうございます!」

「彼女は紅魔館の半獣、自身は犬の半獣と言ってはいますが

 正確な事は不明、ただ人の血が混じっているのは間違いないでしょう

 それともう一つハッキリと分かることは、彼女は人間を襲う子では無い」

「あぁ、それは少し会話をしただけで分かるな

 幻想郷の妖怪達の中では珍しく、あまり積極的では無く

 かなり気が弱そうな娘だからな」

 

き、気が弱そうって見えるんだ、確かにその通りだけど。

でも、少し話しただけで分かる位、私って分かりやすいのかな?

それはショックを受けた方が良いのか、そうじゃない方が良いのか分からないけど。

 

「そして、彼女は記憶を失っているそうです、自分の事が分からない

 だから、彼女は自分自身でも自分の事が分かっていません」

「なる程な、だから自分の事についてハッキリしていないのか」

「あの、阿求さん、なんで私が記憶喪失だと知ってるんですか?」

「いえ、あの時、自分と同じで記憶喪失なんですかと聞いてきたじゃないですか」

「あ、そう言えばそうですね」

「…あなた、頭が良いのか悪いのかよく分かりませんね」

 

言われた! うぅ、確かに頭が悪いのかもしれない。

うぅ…いや、うん、そもそも頭が良いとか言われた方が初めてだしね。

…頭が悪い方が先行しているのは間違いないと思う…けど、ハッキリ言われると

流石にショックだなぁ…あはは。

 

「えっと…少しショックですね、流石に…」

「何なら、寺子屋に通うか?」

「い、いえ、そうしたい気もしますけど、紅魔館でのお仕事もありますし…」

 

でも、紅魔館でのお仕事って、まだ何をするかハッキリ分かってないんだよなぁ。

今は咲夜さんの指示で色々と動いてる感じだけど

お嬢様の命令だとペットだったし…でも、ペットって何するんだろう。

動物のペットだと別に何もしないよね、番はするかもしれないけど

でも、門番の美鈴さんもいるし、番犬って感じにはならないよね。

 

「紅魔館の仕事とは何をするんだ?」

「いえ、自分もまだよく分かって無いんですよ

 紅魔館に来たのも昨日ですから、まだ殆ど経ってなくて」

「き、昨日か、かなり最近だな」

「はい、そうなんですよ、ですから、分かって無くて

 でも、ペットって事になるのは分かってます」

「ぺ、ペットか…うーむ、人の姿をした妖怪をペット呼ばわりとは

 あの吸血鬼…」

 

あれ? 少し怒ってる? おかしいことなのかな?

 

「少しは反発しても良いんだぞ? 何というか

 お前は言われたら何でもしそうだからな」

「だ、大丈夫ですよ…多分」

 

自分でも自分の事がよく分からないからあまりハッキリと言えないなぁ。

意外と記憶を失う前の私って、そんな感じかもしれないし。

 

「ハッキリとして欲しい物だが」

「すみません…」

「いや、冗談だ、記憶が無いんだ、自分の事もハッキリ分からないだろう」

 

うぅ、やっぱり記憶が無いのは困るなぁ、なんで私、記憶が無いんだろう…

 

「…しかし、幻想郷に生まれた直後の妖怪ならまだしも

 中途半端に記憶を持っていると言う事は、幻想郷に来る前にも存在したと言う事

 外の世界から来た妖怪…それも、最近ですか……」

「あぁ、少し釈然としないな」

 

えっと、私は生まれた直後だから記憶が無いんじゃなくて

外の世界って所があって、そこから来たときに記憶を無くしてるって事かな?

だから、私は外の世界から来た妖怪…って、事かな?

 

「所でフィルさん」

「はい、何でしょうか…」

「あなたは記憶を探していたりするのですか?」

「あ、はい、そうです、自分が何者なのか知りたいと思っていますけど」

「では、1つとびきりの情報を与えましょう」

「な、何ですか!?」

 

私の記憶を取り戻す為のとびっきりの情報!? な、何だろう。

凄く気になるよ…何なのかな?

 

「八雲紫、彼女がもしかしたら…」

「や、八雲紫さん…ですか? どんな人ですか?」

「神出鬼没の隙間妖怪、この幻想郷を作り出した賢者達の1人

 幻想郷内でも最高レベルの妖怪ですよ」

 

な、何だか凄そう! 幻想郷内で最高レベル! 格好いい!

でも、私なんかと会ってくれるのかな?

 

「では、私からも良いことを教えてやろう」

「は、はい!」

「その八雲紫はたまに博麗神社に姿を見せることがある」

「は、博麗神社…」

「そこには博麗の巫女がいるが、危害を加えなければ問題無い

 ただ異変の時の巫女は気が立っているから、もしも異変の時に

 彼女の前に立てば、問答無用で退治されるから気を付けることだな」

 

な、何だか凄そうだし、怖そうだなぁ……でも、普段なら

別に大丈夫って言ってるし…その内、行ってみようかな…

 

「あ、ありがとうございます! 機会があったら行ってみますね!」

「あぁ、そうすると良い、それと時間があればで良いが

 たまに私の寺子屋に来てみると良い、歓迎してやるぞ

 お前みたいな害の無さそうな妖怪ならな」

「あ、ありがとうございます!」

「では、もしも自身の能力が分かったときなどは

 私の屋敷に来て下さい、能力を記載したいので」

「あ、わ、分かりました、でも、能力って?」

 

こういきなり能力と言われても、ちょっとよく分からない。

とにかく、聞いてみるしか無いかな。


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