東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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ライブ!

本番の時間が来た…私はあの後、何度もリハーサルをしてリズムは完璧。

そう、きっと大丈夫だ。

他にもいくつか歌があったけど、それも全部練習できた。

私の調子が良いからと、更にはダンスまで追加されたけど問題は無かった。

 

「ふふん、やっぱり満員は気分良いわね!」

「雷鼓もそう思う? 私もよ」

「人が多いと緊張する…でも、やりがいはあるわね」

「よーし、やっちゃおう!」

「さて、それじゃあまずは私達3人が出るわ。

 そして、紹介をするから、その後にあなた達が出て来てね」

「わ、分かりました」

「じゃあ、フィル。所定の位置へ」

「はい!」

 

私はリリカさんの指示通りに会場の外へ移動した。

そして、少ししてメルランさん達がライブ会場に飛び出す

 

「わぁああ!!」

 

空気が震えてしまいそうなほどの大きな歓声!

それだけ、このライブは期待されていたし

幽霊楽団は人気だったって事なんだ。

 

「みんなー! 来てくれてありがとー!」

「わぁああ!」

 

リリカさんの声で、再び歓声が上がる。

凄いなぁ…とんでもない臨場感。

 

「今回から、私達に加わってくれる2人の仲間を紹介するわよ!

 まずは! 新聞でも話題になった、この女の子! 雷鼓!」

 

リリカさんが横へ向けて手を伸ばす。

すると、雷鼓さんが飛び出し、すぐに太鼓を叩く。

 

「いえーい! みんなー! 今日は楽しみましょう!」

「おぉお!!」

 

登場と同時に派手なリズムを刻み、雷の様な音を鳴らす。

その演出に驚いたお客さん達が歓声を上げた。

うぅ、どうしよう! これはどうしよう!

わ、私も何かしないと行けないのかな!?

あ、そう言えばこんな風に出て来て欲しいって言われてた。

えっと、確か私の名前が呼ばれると同時に。

 

「そして! 今度はこのユニットのボーカル担当!

 さぁ、出て来てフィル!」

 

リリカさんは手を大きく伸ばした、横では無く上に。

そして、私の名前が呼ばれると同時に、高く飛び出す。

月を横切って、私はそのまま会場へ着地。

そして、振り向くと同時に挨拶!

 

「こんばんわー!」

「おぉお!!」

 

空を飛べないけど、私は跳躍力がかなりあるからね。

この広い会場の1番後ろから飛び出してきた訳だから

会場のお客さん達も大きく叫んだ。

 

「さぁ! これが新生プリズムリバーウィズR!」

 

私のフィル、ルの部分と雷鼓さんのらの部分を取ってR

これが新しく変化したユニット名だった。

 

「さぁ、それじゃあ皆! 盛り上がってこー!」

「おぉおお!」

「じゃあ、最初から全力で! 今宵は飄逸なエゴイスト! 行くわよぉ!」

 

リリカさんの合図で演奏が開始される。

私も自分を落ち着かせ、歌詞を思い出しながらリズムに乗って歌を歌う。

 

「おぉお!」

 

歌えば歌うほど盛り上がっていく会場。

そんな会場を前に、私の胸もドンドン高鳴っていく。

今、私はあのお客さん達と一緒に盛り上がっているんだ。

高鳴っていく鼓動、私の胸の内から何かが込み上がってくる。

もっと歌いたい、ゆっくりと私の声は大きくなっていく。

このまま、私はこのまま歌って、歌って、歌って!

そして、踊る! この歓声の中で、私はまわりと一緒になれてる!

今まではみ出し物だった私が、この歓声の中心に居る!

 

「行くよー!」

 

そして、演出としての弾幕が上空で飛び交っているのが見えた。

……え? だ、誰が? 誰が何をやってるの?

私達以外にも、誰かこのライブに関与してる人なんて居たっけ?

でもいいや、私はこのまま歌い続けなきゃ!

お客さん達と一緒に盛り上がって、ドンドン盛り上がって!

 

「まだまだ、もっと騒ぎましょ! 大きく声を上げて!」

 

歌った、私は今まで歌ってきた歌の中で最も楽しく歌った。

カラオケの時も楽しかった、わかさぎ姫さん達と歌ったときも楽しかった。

でも、今この瞬間の方が、私は楽しいと感じた。

いや、きっとどのタイミングでも、その瞬間が最も楽しいんだ。

きっとこの後、また菫子さん達とカラオケをしたとしても

私はその瞬間を楽しいと感じると思う。

短い時間だけだけど、その短い時間は常に過去を越える。

そうしないと、いつしか飽きて、退屈になっちゃう。

 

「自分の意思、曲げること無く!」

 

汗が飛び散ってるのが少し分かった気がする、でも私は嬉しかった。

この汗は、私にとっては嬉しい汗だった。

うふふ、幻想郷に来て、色々な楽しい思いをした。

その度に、笑顔が自然と私の顔に出てくるようになった。

救われた、自分の居場所を見付けて、自分のやりたいことを見付けて

必死に色々な思い出を作って、暖かい思い出に包まれて。

 

「ずっと一緒に踊り疲れるまで!」

 

今、私凄い輝いてる気がする! もっと盛り上げて! 

 

「…!?」

 

歌詞の合間に私は気付いた、空の上で光っていた弾幕に。

そう、私がその瞬間に目にした弾幕はマスタースパーク。

そして、消えた後に何処かに落下していく影を。

 

「皆一緒に、踊り続けて!」

 

私は動揺はしたけど、そのまま歌を続行する。

何が起こってるの? それに、最後に見えた影は魔理沙さんの姿じゃ無かった。

別の姿…今まで見たことの無い人が、落ちていく影を見ていた気がする。

……じゃあ、もしかして落ちていったのは…でも、魔理沙さんは!

 

「いつかこの日々を永遠の思い出に!」

「わぁああああ!」

「はぁ、はぁ、う、歌い終えた」

「やっぱり最高よ! フィル!」

 

足下に結構な汗が垂れている、でも、ライブはその後も続く。

私はずっと歌って、踊って、この瞬間を最高に楽しんだ。

そして、ライブ初日は終了…また明日、ライブが開かれる。

ライブの期間は1週間、私達はまだまだ歌う!


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