東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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方法を模索して

紅魔館に戻った私達は、すぐに周りに今の状態を話した。

パチェは話を聞いて、すぐに図書館に戻り

私達は部屋に戻って2人で色々と対策を考える事にした。

 

たった10年の眠り程度、私達の様な吸血鬼であればたかが知れてる。

そう、私は思っているはずなのに…その10年という時間が

話を聞いただけだというのに、とても辛い事だと感じた。

あの子が居ない10年間。あの子がここに来てそんなに時間は経ってないのに

何故かしらね…ずっと一緒に居るような、そんな濃密な関係。

 

「お姉様、パチュリーの所に行こう」

「そうね」

 

今まであまり行動を起さなかったはずのフランだけど

ここに来て、凄く積極的に行動をしている。

フィルが来てから、フランは大きく変わった。

前より笑うことは増えたし、私とも仲良くなった。

ずっと疎遠だった私達を、ほんの数ヶ月で再び繋げた。

 

「レミィ、真剣な表情だけどどうしたの?」

「そう言うあなたも、今まで見たことが無い本の量ね」

 

パチェが座っている机には今までに見たことが無い程に

大量の本が積んであった、小悪魔もまだ色々と探しているようだし

これ以上増えるのは間違いないでしょうね。

 

「暇なのよ、適当に読んでるだけ」

「そう、封印系等の本ばかりに見えるけど?」

 

パチェの机にのせてある本は全て封印に関する本だった。

何を調べているのかは大体想定できる。

 

「…時間があまりないんでしょ? 賛同してくれた連中は多いそうだけど

 最も事態を収束出来ると思われる月の賢者は賛同してくれては居ない。

 恐らく、八雲紫も賛同をしないと思える。なら、私が見付けるしか無いからね」

「私にも手伝わせなさい、私が選んだ道なんだから」

「確かに、でもあの話を聞いて手を貸そうと判断したのは私自身よ。

 私はあなたから命令を貰って探しているわけじゃ無い」

「探すのを手伝うと言ったのは私の意思、さぁ指示を頂戴。

 本や知識に関する事なら、あなたの方が知っているんだから」

「…変ったわね、レミィ」

「あなたに言われたくないわ」

 

パチェの指示に従って、図書館にある本を探す事にした。

その間、咲夜にはフランと一緒に他勢力の説得に動いて貰う事にした。

私だと高圧的な態度を取ってしまうかも知れない。

それを考えれば、体面を気にはしていないフランが

咲夜と一緒に説得に向う方が効果があると予想した。

美鈴にも同行をお願いして貰って、もしもの事態に咲夜と当たれるように対処。

私はパチェと一緒に図書館からひたすらに本を探す作業を行なった。

普段なら絶対にしないけど、今はこの行為を苦にも思わない。

 

「……違うわね」

「これだけ本があっても見付からないのね」

「フェンリルの拘束に使われる道具は分かるのだけど

 それを作るのは出来ないし、そもそも材料が無い。

 第1、これは動きを封じるだけで力を封印することは出来ない」

「時間を稼ぐために動きを封じるのはありだと思うけど」

「……そうだけど、材料がね」

「何かで代用すれば出来るんじゃ無いの?」

「…そうね、ちょっと色々と試してみましょうか」

「そうして」

 

確かもう使った素材は消えたという話を聞いた気はする。

自分のスペルにグングニルがあるから北欧神話は多少は知ってるわ。

 

「じゃあ、しばらくは作成方法を調べる事にしましょう。

 レミィ、色々と手伝ってくれるのよね?」

「当然でしょ」

 

私はそのままパチェに協力してフィルを封じる方法を模索することにした。

それだけで結構な時間が経過したけど、進歩は微妙だった。

このままじゃ、フィルが戻ってくるまでに完成できない…

そもそも、あの子がいつ帰ってくるかが分からないし…時間は余り掛けられない。

今までで初めてかも知れないわね、時間が無限に近いほどにある私が

時間に対してここまで真剣に考えて行動するのは。

 

「全く、何処に居るかと思って探したよ」

「ん? 誰よあなた。私は鼠に知り合いはいないわよ?」

「あぁ、私もコウモリに知り合いはいないよ」

「コウモリですって? 私は誇り高き吸血鬼よ!」

「まぁ、そう怒らないでくれよ。今回は喧嘩をしに来たわけじゃ無いんだ。

 じゃあ、自己紹介をさせて貰うよ。私は命蓮寺で世話になってるナズーリンだ」

「寺の? 私は寺にも知り合いはいないわよ?」

「あぁ、寺にも君みたいな知り合いはいないよ。

 でも、この紅魔館に居た人物とは知り合いだったんだ」

「……フィルの事?」

「その通りさ、聖があの子を気に掛けててね、一応八雲紫からも依頼があったんだ」

「八雲紫が? 何よ、あいつが何で」

「あいつからフィルのバラバラになったマフラーを集めてくれと聖に依頼があったらしくてね

 私はそれを今まで探してたんだ。そして、見付かったから届けようと思ってね。

 とは言え、八雲紫も姿を見せないから、フィルが所属してたこの紅魔館に来たのさ。

 

 ここなら八雲紫も監視をしているかも知れないと踏んで来たは良いが想定は外れて

 八雲紫は私に接触をする事が無かった。でも折角来たんだし

 あの子のご主人にマフラーを届けようかなって思ってね」

「…破片しか入ってないわね」

「修繕は得意じゃないし、依頼にも無かったからね。

 それに私は物を探す事は得意でも人を探すのは専門外なんでね。

 それじゃあ、確かに渡したから。八雲紫が言うには

 このマフラーが大事な鍵らしいし、大事に扱いなよ」

 

…フィルがずっと肌身離さず身につけていたマフラー。

このマフラーがフィルを止める、大事な鍵になる…

運命を操ったつもりは無いけど、この展開は私には好都合。

でも、ちょっと好都合過ぎると思ってしまった。

 

あの八雲紫がフィルを止める為の大事な鍵を

自分のやり方と異なるやり方で止めようとしている危険人物である

この私に渡るようなヘマをするかしら?

 

……運命が私達に傾いた訳では無く、まるであいつの掌の上で転がされているような。

でも、あいつは幻想郷の賢者…フィルにそこまで肩入れするとも思えないけど。

……何か保険でもあるのかしら。いや、そんな事を考えても意味は無いわね。

とにかく、あの子を止めることが出来る大事な鍵であるマフラーは私達の手の中にある。

破片しか入ってない状態だけど…このマフラーなら何か手が見付かるかも知れないわ。


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