東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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力無き友人達の抵抗

最初と比べると、何だか力が溢れ出してる。

どうしてこんなに力が出てくるのかは分からない。

でも、これだけ強くなってたら、私は戦える!

 

「フィル! 最強になったあたい達が絶対に止めてやるからな!

 何か辛そうだし、あたいが倒して助けてやるぜ!」

「出会い頭に氷塊叩き付けようとした奴が言う台詞には思えないね。

 しかし、随分なイメチェンじゃないか。肌の色黒いよ?

 日焼けでもしたのかい? なんて冗談言ってみたりしてね」

「日焼けってなんの事?」

 

そう言えば、目を覚ましたときにルーミア達にも言われた気がする。

でも、そんな事はどうでもいいや、難しい事を考えたらあたいはよく分からなくなる!

今はフィルだ! 肌が黒くなってるとかどうでも良い!

 

「やっぱり自分の変化に気付いてないんだね、まぁ分かってたよ。

 雰囲気からして、第1目標以外に目が入らないタイプだろ?

 でもほら、一応言っておいてあげるけどさ、無茶したらヤバいよ?」

「何の事か分からないけど、あたいがどうなろうと良い!

 今はフィルを止めることを考える事にした!

 色々と考えると面倒くさいから!」

「チルノらしいのだ」

「そうね」

「…で、多少力を手に入れた程度で、僕に勝てると思うのかな?」

「最初も言った! 馬鹿なのか!? 勝てないからは諦める理由にはならない!

 あたいは友達を助けるためなら必死になる! あたい達は最強だから!

 それにあたいは負けたくない! 諦めなければ負けじゃ無いからな!」

「最強に他人は不要だろ」

「うわ!」

 

や、やっぱりフィル凄く速い…!

でも、あたい達も強くなったんだ! 何で強くなったか分からねーけど

強くなったら戦うのがあたい! 諦めなければ負けじゃ無い!

 

「…君達の戦術上、接近されてしまえば勝算は薄いんじゃ無いのかな?

 視界を塞いで周囲からの攻撃から足止めとかして、時間を稼ぐ戦い方じゃ」

「…えぇ、普通ならね、でも今の私達は普段とは違うのよ、ルーミア」

「分かってるのだ!」

 

ルーミアがフィルを暗闇で覆った。何してるんだっけ?

えっと、何か作戦を考えてたような気がする。何だっけ…

あー、えーっと…うん、覚えてない! 何か難しかった気がする!

 

「何してるんだっけ?」

「チルノは相変わらず忘れっぽいね…」

「最初戦ったときの強化版で戦うの。フィルは私の歌で惑わしてる」

「その間、私の能力でフィルを包むから時間を稼ぐのだ」

「…何で?」

「良いから攻撃!」

「で、でもフィル怪我するじゃん!」

「大丈夫だって、当らないわよ!」

「私も虫で攻撃をするから、チルノも一緒に!」

「わ、分かった! 確かにフィルなら当らない!」

 

フィル避けるのスゲー上手いから大丈夫!

どんな作戦だったか結局あたい分からないけど攻撃すれば良いんだよね!

あたいの攻撃でフィルを驚かせてやるぜ!

 

「うりゃぁあ!」

「ん? な!」

 

ルーミアの闇の中から声が聞えた。

最初と同じ様に足場を凍らせたけど、なんで驚いてんだ?

 

「…まさか、侮ってたな。最初と比べると大分強化されてる」

「よく分かんねーけど、あたいの攻撃が当ったって事だな!」

「そうと言えばそうだけど、違うと言えば違う気が…ん」

 

何かルーミアの闇がもぞもぞと動いてるように見える。

面白いな、あれ。何か毛玉みたい。

 

「そうか、そう言う事か。驚いた、ここまで出来るようになってたか」

「そうよ、私の歌から逃げ出せる?」

「虫の攻撃も中々痛いでしょ?」

 

あ、ミスチーの能力でフィルを惑わしてるのかな?

スゲーなミスチー、そんな事出来るんだ!

 

「でも、この程度なら、簡単に無効化する事は出来る。

 意識してしまえば君の子供だましは意味が無い」

「ふ、でも意識してなければ効果があるんでしょ?

 異様な程に強いのに、何処か弱い部分もある物ね」

「サービスだよ、僕がただ一方的に蹂躙をするよりも

 周りが抗って、少しでも戦えてると感じる方が良いだろ?

 こんな暗闇だって、僕には何の意味も無い。

 視界を塞いだところで、僕には視界以外の」

「私の闇がどうして視界を塞ぐだけだと思ったの?」

「…なん、くぅ!」

 

ふぃ、フィルが少し苦しそうな声を! な、何をしたんだろう!

何だか分からないけど、フィルがダメージを受けてるって事!?

で、でも、それじゃフィルが辛いんじゃ!

 

「分かってる。あなたは確かに凄く強い。でも、あなたはフィル。

 私はフィルの事はよく知ってるのだ。そんなにお話しをしたわけじゃ無いけど

 フィルが凄く優しい子だって事は知ってるのだ」

「……くぅううぅ! まさか…」

 

さ、さっきまで真っ暗だったのに、フィルの姿が見えた。

何でか胸を押さえてる…ど、どうして…

 

「だから、私が心の闇を取り払えばフィルは元通りになる筈なのだ!」

「まさかさ…相手の心に影響を与えるほどの力だったなんてね…

 僕に対して危害を加えようとしてる場合なら相殺は出来るかもだけど

 どうも、こ、今回は違うね。フィルの為に力を行使してくるとは…」

 

何だかよく分からないけど勝てそう!

 

「……素直に、嬉しいよ」

「フィル…」

「でも、やっぱり届かないよ、君達だけじゃね」

「うぅ…そ、そんな…」

 

さっきまで苦しそうだったのに、最初と同じ表情に戻ってる! 何で!?

 

「ルーミア!」

「ごめん…私だけじゃ、あの闇を払えない…深すぎるよ」

「人の心に掛っている闇って言うのは、現実の闇より深い場合が多い。

 深海の遙か底よりも深い闇だよ…だって、心の闇には底がないんだから」

「うぅ…駄目だったけど、あたいは諦めないぞ! まだ頑張る!」

「無駄だよ、でも、よく頑張ったって褒めてあげる」

「うわぁ!」

 

うぅ…だ、駄目だった…フィルが撃ってきたちょっとした弾幕で動けなくなるなんて…

で、でも、でもあたいはまだ負けてない…まだ諦めてない!

 

「あ、あたいは…まだ…」

「チルノ、君の心には闇とか全く無さそうだよね。

 むしろ光りを放ってそうだ。大した物だよ、その純粋さは」

「あたいはまだ…負けてない…フィル…を、助けるんだ…」

「だから無理だって…弱者はただ蹂躙されるだけ。

 絶対的な強者に勝つ方法は無い。力は全てに勝る……それが現実だ」

「つ、強くても…力を使う相手が居なかったら…意味、無い…のだ…」

「あぁ、その通りだ。でも、僕には力を使う相手がちゃんと居る。

 だから、意味はしっかりあるのさ…君達と同じ様に守りたい奴は居る。

 その子を守る為なら、僕はこの力を出し惜しみ無く使うよ」

「誰のことか分からないけど…ちゃんとお話し…したの?」

「……話をする必要は無いよ。僕らは彼女よりも彼女の事を知ってるんだから」

「何だ…押し付けてるだけじゃ無いか…」

「かもね」

 

フィル…ま、また何処かに…動いてあたい、止めないと。

フィルを助けなきゃ…あたいが…あたい達がフィルを止めないと…フィル…


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