東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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人間の里を飛び出して

自分の記憶のこととかを色々と教わって

私は満足して人間のから紅魔館に帰る事にした。

博麗神社に行ってみたい気もするけど、1人だと少し怖いし。

今は行かないでおこう…はぁ、それにしても…ひ、1人だと余計に

この空間が怖い…美鈴さんと一緒に居たときは問題無かったけど。

こうやって、1人で歩いてると…凄く怖いような気がする。

 

「は、はぁ…」

 

とにかく早く人間の里から出よう、少し早足になるけど

この空間で怯えるよりはマシだよぉ…

 

「は、はぁ」

 

何とか早足で人間の里から逃げだしたけど。

何で私はあそこが怖いのかな? 自分でもよく分からない…

 

(フィール、あなたはこの世界にいられない

 この世界ではあなたは生きていけない

 だから、あなたは幻想の中に生きるのよ)

 

…誰か分からない女の人の言葉…多分、私のお母さん。

私の失った記憶の中にある、唯一の記憶。

…この言葉に私があんなに怖がっていた理由があるのかな?

分からない…私の記憶は不確定だし…分からないよ。

 

「…記憶」

「やぁ、そこの可愛い女の子! 僕と遊ばない?」

 

私が少しだけ沈み込んで考えていると、後ろの方から声が聞えた。

 

「え? いえ、私、これから帰ろうとしてて」

「そう、まぁ、良いじゃん、昼間だし!」

「いえ、あまり待たせるわけには…そもそも、あなた何者ですか?」

 

その人は見た感じ女の人だった、黄色い帽子を被っていて

黒い服に赤い線がはしっていて、紫の瞳の赤い髪の毛。

スカートは緑色で、かなり短くなっている。

凄く動きやすそうだ。

 

「おっと、これは失礼、僕は西居 英子(にしい えいこ)さ」

「あ、自己紹介ありがとうございます、私はフィル、名字は覚えてません」

「覚えてない?」

「記憶喪失なんです、フィルは付けてもらった名前、本当はフィールです」

「…じゃあ、実は僕と君は付き合ってたんだ、これは運命の再会!」

「…あからさまな嘘ですね…」

「あはは、ま、まぁね」

 

この人、結構軽い感じの人なのかな、と言うか、何で私に声を掛けてきたんだろう。

 

「それで、どうして私に声を? 後、なんで人間の里では無く里の外から?

 後、その服装…里の人とは違う気がします」

「声を掛けたのは、その可愛い容姿が気になったからさ

 その茶色く短い髪の毛、茶色い瞳、そしてメイド服に不似合いの赤いマフラー

 そして何より! その茶色い耳と尻尾!」

「えぇ!?」

「さ、触らせてくれよ! もふもふしたい!」

「い、いや! ちょっと待って!」

「尻尾と耳は良い!」

「止めてください!」

「ごふぅ!」

 

な、殴っちゃった!? つい焦って殴っちゃった!?

し、死んで無いよね!? 大丈夫だよね!?

 

「あ、あの!」

「…今だ!」

「ひやぁあ!」

 

あぁあああ! 尻尾がぁ! 尻尾触られちゃったよぉ!

 

「うん、もふもふ!」

「止めてください!」

「ほへ? あがぁ!」

「はぁ、はぁ、はぁ、は!」

 

や、やっちゃった! 今度はお腹を踏み付けちゃった!

それに、何だか地面に亀裂が…これ、私がやったの!?

いや、そ、そ、そんなはず! そんなはずは!

と、と言うか、生きてるの!? この人生きてるの!?

 

「きょ、強烈…」

「あ、い、生きてた!」

「こ、これは、かなりの力を持つ妖怪だと…予想するよ」

「い、いえ、私なんて大したことない奴ですよ」

「嘘だね…それにしても君は怒ると目が赤くなるんだね、驚いたよ」

 

あ、そうなんだ、自分の事はよく分からないしなぁ。

 

「と、とにかく、僕は今回は退かせて貰おう…でも、絶対にまた会おう!」

 

そう言って、彼女は凄い速度で私の前から姿を消した。

か、変わった人だなぁ。

 

「…う、うーん」

 

まぁ、いいや、あの人のお陰で少しだけ悩んでたのが馬鹿らしくなっちゃった。

うん、私はお嬢様達の為に頑張れば良いんだよ!

記憶探しはその後だね、大丈夫、きっと大丈夫だと思う。

 

「えっと、美鈴さんの地図によると、こっちかな」

 

私は美鈴さんに渡して貰った地図を頼りに紅魔館への道を進んだ。

一応は覚えているのだけど、もしかしたら記憶違いがあるかも知れないし

折角地図があるなら、地図を使って帰れば良いよね。

 

「あれ?」

 

私が紅魔館へ進んでいると、何故か沢山の蛇に囲まれてしまった。

も、もしかして、し、尻尾とか踏んじゃってたのかも知れない!

こ、ここ、森の中だし…ど、ど、どうしよう! 噛まれちゃったら痛いよね。

 

「あ、あの…」

 

私の話し声が聞えるか分からないけど、試してみないと…

蛇って言葉って分かるのかな?

分からないけど、やらないと…無理矢理通るのは怖いよぅ…

 

「ど、どいてくれませんか?」

 

私が小声でどいて欲しいと言うことを言うと、蛇たちは一斉に道を開けてくれた。

よ、よかった、言葉を理解してくれたんだ、じゃあ、そこから行こう。

 

「ありがとうございます」

 

私は蛇たちが開けてくれた道を進んだけど

その後ろから蛇たちが付いてくる…な、なんで?

なんで付いてくるの? 私、何かしたかなぁ。

 

「あ、あの、どうして付いてくるんですか?」

 

つい聞いちゃったけど、向こうは私の言葉を理解してくれても

私がこの子達の言葉を理解できないから聞いても意味が無いような…

 

「……」

 

私の質問で蛇たちは少しだけ固まり、散り散りになった。

…何だったんだろう? まぁ、いいや、早く帰ろう。

お仕事あれば良いんだけどなぁ。

 

「ふーん、暇つぶしに来たけど、妙なのが居るわね」

「え? おわぁあ!」

 

目の前にいきなりデカい石が降ってきて、その石の上には

桃が付いた黒い帽子を被ってて、青色の長い髪の毛

オレンジ色の瞳に白い服で青っぽい下地に白いボタン

後、赤い蝶ネクタイをしている。

スカートは長くて白く

下の方は虹色に輝く線がはしってて、その更に下は青

黒い模様もスカートにあるけど何て表現すれば良いのか分かりにくい。

背中には青色の大きなリボンがチラリと見える。

 

「あ、あ、あなたは?」

「何? 私の事を知らないの?」

「あ、す、すみません、最近ここに来たばかりで」

「あ、そ、まぁ良いわ、私の名前を教えてあげるから感謝なさい

 私の名前は比那名居 天子(ひなない てんし)、天人よ」

「あ、ありがとうございます、えっと、私はフィルと言います

 名字などは覚えていません」

「フィルねぇ、聞いたこと無いわ」

「あはは、最近来たばかりですし、それに存在感も薄いですし」

「自らの事を知らぬのなら自らを陥れるなかれ。

 頂を見れぬ者は頂には届かぬのだから」

「え?」

「自分を下に考えすぎない事ね、記憶も無いのでしょ?

 実際、かなり強かったりするんじゃ無いの? あんた」

「いえ、そんな事は無いと思いますよ」

「じゃあ、試してみましょう、丁度退屈してたのよ」

「え、えぇー!?」

 

え!? この人と戦うって事!? 無理無理無理!

私なんかじゃ、絶対に勝てないって!

 

「ちょ、ちょっと待ってくださ」

「問答無用!」

「ひぃ!」

 

うぅ、ど、どうしよう、と、とにかく逃げるしかない!


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