東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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幻想郷の守護者達

フィルに眠るもう一つの人格。

その人格を前にした状態では

流石の地獄の女神であろうと敵わない…

 

彼女のもう一つの姿が全能の天敵である

テュポーンだとすれば、いくら彼女でも相性が悪い。

その魔獣は全能であるゼウスさえも打ち負かすほど強大な存在。

 

彼女が本気になれば幻想郷は一瞬で火の海になるでしょう。

それをして居ないと言う事は、彼女は本気を出していない。

まだ引き分けに持って行ける可能性は十分ある。

 

でも、残り2時間…作戦決行までこれだけ時間があるなんて。

足止めをしたいけど、そろそろ私達の力も…だけど

既にここまでは私の作戦通りに事が運んでいる。

 

「はん、弱ーな!」

「これ、どうするのよ…」

「……」

「じゃあな、紫さんよ!」

 

テュポーンは私に狙いを定めたらしい。

だけど、時間稼ぎは十分。

そろそろ出て来なさい。

 

「それはさせないわ」

「んな!」

 

 

全く紫の奴め、無茶な事を考えて。

もし私が動かなかったらどうするつもりだったのかしら?

なんて、こいつなら私がどう動くかくらい予想してるか。

 

「…博麗の巫女かよ」

「そうよ、フィル…随分と雰囲気が変わったわね」

「はん、何にも変わっちゃ居ねーよ、何せ俺はフィルじゃねーからな」

「そう言うえばそうなんだっけ」

 

フェンリルはフィルを守る為に存在していた人格。

まだ人格はあるかもとは思ってたけど、私の堪は結構当るわね。

 

「フィル! 霊夢だけじゃ頼りねーだろうから、私も来たぜ!」

「っと」

 

魔理沙か…当然来るわよね、こいつが来ない方が不自然よ。

 

「不意打ちのマスパが外れたぜ、霊夢何とかしてくれよ」

「外したあなたが悪いわ。で、あなただけ? 正直頼りないわね」

「さらっと酷いな、まぁ当然そう言われるのは予想済みだぜ」

「今度は止めます!」

「へぇ」

 

妖夢も来たのね、ま、妖夢は真面目だし来るとは思ってたけど。

でも、妖夢の攻撃もフィルにあっさり止められてるわね。

 

「しかしどこぞの庭師がどの面下げてきてるんだか

 もしかして、俺に勝てると思ってるのか?

 そのちんけな剣で、ショボい剣術で」

「勝てないかも知れないけど、動かないわけには行かない!」

「じゃあ、大人しく寝てなよ」

「させませんよ-!」秘法「九字刺し」

「け、邪魔だな」

 

早苗…これはまた結構な大所帯になったわね。

 

「人間が頭数を揃えてくるとか、意味あると思うのか?」

「おいおい、蟻だって群れればデカい獲物食えるんだぜ?

 人数揃えれば、例えお前がどれだけ強かろうと止められるぜ!」

「この程度の人数で?」

「この程度? ふふ、あなたも結構馬鹿なのね。

 今まであなたを止めようと動いてた奴らがあれだけ居るのに。

 確かに今あなたの目の前にいるのは私達だけだけど

 あなたを止めようとしてるのは、私達だけじゃ無いわ」

「雑魚が群れても無駄なんだよ。外の世界のカス共は

 人数揃えても、誰1人として俺に傷すら与えられなかった」

「もうすでに、あなたはこの幻想郷で何度か傷を負っている。

 この地点で、もう外の世界とは違うと言う事くらい分かるでしょ?」

「あぁ? あれはクソ狼だったからだよ、俺が出てなけりゃそうもなるさ」

 

フェンリルと今の状態は実力に大きな差があると言う事は間違いないわね。

ルール無しの本気の妖怪退治なんてかなり久々よ。

まぁ、今回は妖怪退治…と言う風にはならないかも知れないけどね。

 

「だから、お前らは後悔するぞ? 俺の前に立ったことを。

 数匹のクソちっちぇぇ蟻が神を滅ぼす魔獣に勝てるわけが無い」

「誰も勝とうとは思って無いぜ、勝敗で分けるのは幻想郷らしくないからな。

 好き放題に弾幕やって相手を認めさせれば良いんだからな。

 それが幻想郷のルールだぜ、勝敗だけじゃ味気ないだろ?」

「最終的に全てを別つのは勝敗だぞ?

 勝者は敗者を見下し、敗者は敗北を認めない。

 この段階で既にお互いがわかり合うことは出来なくなるのさ。

 

 負けた奴は言い訳して、勝者の陰口を叩く。

 その行為が自分を貶んでいる行為に等しいと気付かずに。

 敗者は勝者を認め様としない。勝者を認めると言う事は

 自分自身が敗者であると認めることだからな。

 そして最終的に敗者は徒党を組み勝者に挑み、また敗者になる」

「悪いですが、それは幻想郷のルールには当てはまらない。

 敗北は勝者を認めることなんですから」

「敗北を認めない限り敗北にはならないのがこの幻想郷のルールだからな。

 お互い好き放題やって、勝った奴を認める。

 だから、この幻想郷じゃ勝者と敗者がわかり合えなくなることは無いんだ。

 勝敗は大事な事じゃ無いからな、私たちに取っては」

 

外の世界の常識は知らないけど、幻想郷の常識はこれだからね。

勝者と敗者がわかり合えなくなると言う事は無い。

 

「まぁ、グダグダと言い訳はするかも知れないけどね」

「あっそ、ま、俺には関係ない話だがな」

「関係あるじゃ無いですか、フィルさんは幻想郷の住民ですから」

「…くだらねぇことを言うんじゃねぇよカス共が!」

 

く、フィルが地面を踏み付けた衝撃で小さな地震が起るとは。

どこぞの天人も顔負けね。

 

「むかつくことをペラペラと…くだらねぇ戯れ言で何が変えられる!?

 くだらねぇ言葉になんの意味がある!?

 その考えとやらは絶対的な力の差を覆せるのか!?」

「出来るわ、その為にここに来た」

「じゃあ、証明して見せろよ博麗の巫女!

 お前らの言うくだらない妄言で抗えない現実を変えられる事を!」

「えぇ、分かったわ、証明してあげる。

 あなたは既に幻想郷に受入れられている事を」

「おいおい、受入れられる? それがどう実力差を覆すってんだ?」

「何、すぐに分かる事よ。さぁ、始めましょうか」

「……はん、現実を知れ」

「お前は想いを知るべきだな、現実が全てじゃ無いぜ?」

「結果が全てに決ってるだろう? すぐに終わらせてやる」

「必ず止めて見せます!」

「この魂魄妖夢、必ずあなたを止めて見せましょう」

 

さぁ、時間を稼ぐとしましょうか。

この博麗神社が最終決戦の場所だからね。

全くこんな面倒な場所をここにするとかふざけてるわよね。

もし博麗神社がもし倒壊したら、絶対あいつに直させてやるわ。


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