うぅ、ここが地獄かぁ……でも、何だかここに来たことがある様な…?
「ここは三途の河よ、もしかしたら地獄と勘違いしてるかもしれないけど
ここは三途の河の前、賽の河原。水子の霊がここに居るわ」
「水子の…霊?」
「えぇ、因みに水子霊は祟ったりはしないから安心して。
生まれる筈だった命が不運な形で死んでしまった。
それが水子。彼女達はなんの罪も犯していない。
だから、他者を祟ることはないわ。
祟りなんて無い。そうね、強いて言えば罪悪感かしら。
まぁ、罪悪感を感じる親ならまだマシだと思うけどね。
でも皮肉にも優しい方が傷付いてしまう。不平等な気がするわね」
幽々子さんがそう言うなら間違いないんだと思う。
水子の幽霊には少し恐いイメージがあった。
そんな話を色々と聞いたから。でも、そうでもないのかな。
「うぅ…ま、また新しいのが来た…今日は散々ね…しかも2人なんて」
「ん?」
「あなた達も地獄に用事があるの? まぁ、さっきの連中と違って
ちゃんと子供達が積んでる石を避けて歩いてくれてるしマシなのかな?」
「水子の霊かしらね、河原で石を積むのは飽きないの?」
「いやいや、私達はその単純作業を楽しんでるんだよ」
「あぁ、私も少し分かる気がするわー、のんびり出来る物ね」
「あ、私も分かります。単純でも確実に成果が出てるって分かると楽しいですよね」
どれだけやっても成果が付いてこなかったらちょっとしんどいけど
…でも、流石に石を積むって言う行為の先を見れないから
私にはずっと石を積み続けるって言うのは出来ない気がするけどね。
「やっぱりあなた達は今までの連中とは違って話が分かるわね!
じゃあ、一緒に石積みはいかが? 今日はコンテストがあるの。
中断予定だったけど、参加者が増えるなら再開もありかなって」
「悪くないお話しだけど、私達は少しやることがあってね
今回は見送りにさせて貰うわね」
「むー、そこの狼さんは?」
「あ、私もやることがありまして…これから地獄へ行く必要が…」
「えぇ!? あの連中は地獄に行くのはお似合いだけど
お姉さんは駄目だよ! それに、あの連中も居るし
お姉さん達に何かあったら私、すっごく辛いわよ!?」
「大丈夫よ~、この子はすっごく強いから安心しなさいな~
…因みに、先に言ったって言う人達の特徴は分かる?」
「んー、緑色のスカートで剣を2本持ってたわ。
後もう1人は金髪で黒い帽子を被ってたわね」
「2人…」
そして、その特徴からもう1人は…魔理沙さんだ。
ど、どうして? 同時に地獄へ? 一緒に動物霊を調べに行ったのかな?
でも、あの人達は一緒に行動する事は無いし、そこまで話をしたなら
霊夢さんにも声を掛けていると思う。だけど、この子は2人って。
「うん、よく分かったわ~、ありがとうねお嬢さん。
後、ここで石を積むのも楽しいかもしれないけど
ちょっと動いてみたら、きっともっと楽しい事もあるはずよ~?」
「そうなのかな? でも、私達は石を積む楽しさしか分からないよ」
「そうかもね、でも興味を持つのもきっと楽しい事よ?
でも、時間が掛るのも仕方ないわね。もし気が変わったら
お姉さんが色々とお世話してあげるから安心しなさい」
「んー、うん、分かったよ。何かやりたいことが出来たらお話しするね
おば……え、えっと…お姉さん…」
「うん、分かればよろしい」
「ふぅ、死んでるけど死ぬかと思った…」
さっき一瞬、幽々子さんから圧倒的な威圧感を感じた…
流石に無邪気なこの子でも一瞬で察せる程の
さ、流石幽々子さん…やっぱり凄い人なんだなぁ。
「じゃあ、フィル。妖夢のこと、お願いね?」
「はい、任せてください」
「…あ、でもその前に1つアドバイスをしてあげる」
「はい?」
「ここであなたが本気で跳んだら…分かるわよね?」
「……ふ、船を探します」
あ、あはは…確かにここで私が全力で跳んじゃったら
ここにある水子の子達が積んだ石が全部倒れちゃうよね。
仕方ないや、ここは河だしきっと何処かに船がある筈だよね。
船の持ち主さんに事情をお話しして乗せていって貰おう。
でも、一応空を飛ぶ手段もある。永琳さんに貰ったこの薬があれば
私は空を飛ぶことが出来るようになる。
だけど、三途の河って広そうだし空を飛んだら迷いそう…
やっぱり船を探して、船頭さんに案内して貰った方が良いんじゃ無いかな。
「やぁやぁ、船をお探しかい?」
「え?」
船を探そうとする私達の前にタイミング良く船に乗った人がやって来た。
赤い髪の毛にツインテール。大きな胸に青い服。
なんだろう、私は何処かでこの人と出会ったような気が…
「あら、丁度良いタイミングに死神が来るとはね、それもサボり魔で名高い子が」
「やだねぇ、あたいはかなり仕事熱心だよ?」
「閻魔様が良く愚痴ってるわよ? あなたの事」
「あはは、ま、まぁ結構説教されてるけどね、あたいも。
でもほら、今は丁度良いタイミングで仕事をしに来たんだ
そんなにいじめないでおくれよ、西行寺のお嬢さん」
「それもそうね、とは言え今回あなたが乗せるのは私では無くて
ここに居るフィルよ。死神であるあなたとは相性悪いかもしれないけど
乗せていってくれるの?」
「あぁ、良いよ。知らない仲でもないんだしね」
彼女は私に向ってウィンクをした。
やっぱり私は1度、この人と出会っているのかもしれない。
記憶が曖昧だけど、何だか知ってる気はするしね。
「よ、よろしくお願いします。えっと事情なんですけど」
「良いよ良いよ、話は大体聞いてたからね」
「あ、タイミング計ってたんですね」
「第一印象は大事だからね」
私が彼女の船に乗ると彼女は船をこぎ始めた。
幽々子さんとあの水子の子が手を振ってくれている。
「地獄に見送りってのも嫌な物だねぇ」
「あ、あはは…ま、まぁ寂しくよりはマシですよ
……あ、そう言えばあの子の名前、聞いてない…」
「戎瓔花(えびすえいか)、水子の人気者だよ。
まぁ、アイドルって奴かな。一応名前は知ってるんだ。
ずっとあの河原で石を積んでる哀れな子だからね」
「でも、それはあの子達に取って楽しい事…なんですよね?」
「どうかな、それしか楽しい事を知らないとも言えるよ?
あの西行寺のお嬢さんはきっと正面から言ったりはしないだろうけどね。
きっと、自分で気付かせたいんだろう。それがあの人のやり方なんだろうね。
知っていても全ては語らず。曖昧に強行せずそれとなく伝えようとする。
子供に対してはきっと、それが1番良いんだろうけどね。
あたいみたいにハッキリ伝えてもあの子らにゃわからんだろうし」
「だけど、本人が幸せなら…それで良いんじゃ無いですか?」
「今より幸せな生き方がある。それを知らないまま過ごすのは
確かにある意味では幸せかもしれないけど、どうだろうね。
人に飼われている犬とかと変わりないとあたいは思うよ?」
「井の中の幸せでも…それが最上の喜びだと思えば
きっと、それが1番の幸せだと私は思います」
「……そうかい。ならきっと、それも正解なんだろうね」
この人が言いたいことは何となく分かった。
正解は人それぞれ。この人にとっての正解はこの人の言葉で
私にとっての正解は私自身の考えなんだ。
答えがないのが1番難しい…だけど、最も楽しい問題…なのかな。
「…あ、そう言えば聞いてませんでしたね。あなたのお名前は?
あ、私はフィルです。正確にはフィール・ティルーダと言います」
「ふーん、吸血鬼の従者っぽい名前だね」
「もしかして、レミリアお嬢様の事を知ってるんですか?」
「あぁ、中々に有名人だからね、あの吸血鬼は。
因みに言うと、あたいはフィルの事を知ってるよ?」
「や、やっぱり…何処かで」
「いやぁ、懐かしいねぇ。最初、死にかけたんだっけ?
色々な話を聞いたところ、あんたは不死らしいけど
最初は随分と軟弱だったみたいだね。封印の影響だったのかい?」
「最初…あ、あぁ! そうだ! フランお嬢様と遊んでるときに!」
「そう言う事だよ、思い出して貰えて光栄だよ」
あの時、確かに私はこの人と出会ってた!
じゃあ、あの時私が居た場所って…三途の河前だった!?
「いやぁ、しかし長生きはするもんだよね。
幻想郷が一致団結して異変を解決なんてさ。
ま、あたい達は極力介入しないようにしてたけどね。
映姫様も消極的だったしね。ま、非常事態であるからこそ
こっちを護ろうとしたって言う感じだろうね。
なんたって、地獄の女神様まで出張ったんだ
地獄とかの護りはかなり手薄だっただろうね。
そこに更に映姫様まで抜けたってなったら
そりゃ大混乱だよ。映姫様は正しい判断をしたと思うよ」
「そ、その映姫さんって…」
「閻魔様だよ」
や、やっぱり閻魔様とか居るんだ…
「うぅ、やっぱり閻魔様って居るんですね…恐いなぁ…」
「…ふ、ふふ、あはは! 何を言い出すかと思えば面白いね!
あんたからしてみれば、相手にもならないんじゃ無いの?
そりゃあ、あたい達からしてみれば雲の上の存在だけどさ!」
「で、でも閻魔様ですよね!? 凄い人って私知ってます!
色々な人に裁きを下したりして恐いイメージはありますけど
でも、嫌なイメージは殆どありません」
「いやぁ、本当面白い子だねぇ。幻想郷中が動いたのも少し分かるよ。
なんて言うかさ、本来凄い筈なのに、身近に感じるって気がするね。
そして助けてやりたいって気持ちにもなるよ。そう言うところ」
「そんな…私が凄いなんて事…でも、身近に感じて貰えるのは嬉しいです!」
「素直だねぇ、騙されたりしないのかい?」
「そ、それは大丈夫ですよ! 私にはお姉ちゃん達が居ます!」
(あぁ、任せて、全力で僕達を頼っておくれよ)
「うん!」
「何に対しての返事だい? それ」
「あ、お姉ちゃん達は私の中に居るんです。心の中に。
あ、一応言っておきますけど妄想とかじゃありませんよ?
後、死んじゃってるわけでも無いです!」
「…ま、ここは幻想郷だし色々あっても不思議ないか」
やっぱり事情を知らない人が聞いたら訳が分からなくなっちゃうよね。
でも、お姉ちゃん達は確かに私の中に居る。それは間違いないんだから。