ここが地獄…背筋がゾッとしそうなくらいにおぞましい。
風も強いし、空を飛ぶ事になれていない私にこの風はちょっと。
でも、これ位なら跳ぶ方でなんとか移動で来そうだね。
「っと、とと、いやぁ風が凄いなぁ…」
(それを物ともしてないフィルが言うんだ)
「まぁ、これ位なら跳べるしね」
「3人目…生身の人間ですね。地獄は絶望的に広いですよ。私が案内しましょう」
「え? 誰ですか!? ちょっと待ってくださいよ!」
「うわ! 一瞬で捕まった…」
「あの、動物霊さんですよね?」
「そ、そうです。案内しますので離してください」
「はぁ…」
まぁいいや、この人に付いていけば良い感じだし。
(そうだね、利用させて貰おうか)
(え? どう言うこと? お姉ちゃん)
(僕はこう見えて頭良いからね。まぁお姉ちゃんに任せなさい。
フィルは少しだけ待ってて)
(あ、うん)
良くは分からないけど、お姉ちゃんに任せる事にしよう。
私はそう言うの良く分からないから。
でも、この強風の中移動するのは私の仕事なんだ。
「良く付いて来られたね」
「まぁまぁのそよ風だったよ。少し風が強い感じだったね。
生ぬるかったし、あまり清々しい風じゃなかったけど」
身体を動かしてたのはお姉ちゃんじゃないじゃんと思ったけど
それは別に良いか、重要な事でも無いし。
「地獄ですからね、地獄の風が清々しいはずもないでしょう?」
「それもそうか、さてどうやら事情は分かってるようだけど
僕は地上に出て来てる動物霊を潰しに来たんだ。
で? あんたが地上を支配しようとしてる動物霊って事で良いのかい?
だとすれば、今ここでぶち殺すけど良い?」
(恐いよお姉ちゃん! 話し合いで解決とか!)
(良いから良いから、任せてって)
「貴方は動物霊を征伐に来たのですね。
でもあなたが倒すべき動物霊がいる場所は……ここではないのです」
「ふーん、あっそ」
素っ気ないなぁ…でも、何か理由とかあるのかな?
「ですので、私が特別に敵の所まで案内してあげましょうか?」
(ははーん、なる程そう言う能力ね、地味に便利だけど相手が悪いよね。
まぁいいや、ここは能力の影響下にあるって勘違いさせてやるか)
「決まりですね。私に勝てたら本当の敵の居場所を教えましょう」
「力試しかな」
「そう言う事ですよ」甲符「亀甲地獄」
亀の甲羅みたいなレーザーが行動を制限する弾幕。
更に中サイズの弾幕で相手に追い打ちを仕掛ける感じかな。
(じゃあフィル、攻撃を避ける方はよろしくね)
(えぇ!? なんで!?)
(だって、僕は今力の解放出来てないからね。
口を動かすことはするけど、身体は動かせないから)
(ど、どうやったら解放出来るの?)
(いや解放するような相手じゃないから大丈夫だって)
(でも、あの人凄く強そうだよ?)
(大丈夫だって、所詮は動物霊さ。ちょっと特殊だろうけど
弾幕での勝負であるならフィルの方が断然上だよ)
(うぅ、わ、分かったよ)
レーザーによる行動制限が少し厄介な気がするよ。
そして、中サイズの弾幕は私が避けた後にも戻って追撃をしてくる。
数も少しずつ増えていくし、長期戦になると少し分が悪いかな。
でも、中サイズ弾幕の動きはある程度読めるし
凄く単純な動き。行動制限も定期的に開くから避けるのは難しくは無かった。
確実に回避をしながら、少しずつ相手にダメージを与えていく。
「器用に避けますね、そして攻撃も中々痛い…」
(さぁフィル、ほらチャージショット)
(何それ? 私そんなの知らないよ?)
(いやほら、フィルなら引掻いた攻撃で斬撃跳ばせると思うけど
あ、多分蹴りでも斬撃出るよ? カマイタチみたいな感じで。
後は一撃必殺のオカルトアタックでもすれば即死じゃ無い?)
(あれは危ないから駄目だよ!)
(まぁ、本気を出したら世界潰しかねないオカルトだし
危険なのはしょうが無いのかな? まぁいいや、とりあえず
チャージショット挑戦してみない? ほらほら、本気で腕を振るか
本気で回し蹴りでもすれば出るって)
(うぅ…分かった、やってみるよ)
そんなのが出来るのか凄く不安だけど、物は試しだよね。
通常ショットは爪で引掻いた様な小型弾をイメージして出してるし
もしかしたら本当にチャージショットが撃てる…かも?
「うりゃー!」
少し間抜けな声だった気がするけど、お姉ちゃんに言われたとおりに
本気で回し蹴りをしてみた。
「な!」
そうしたら、少し歪んだような空間が出て来て彼女に向って進む。
その攻撃には結構威力があったのか、あの子が大きく仰け反った。
「これ程の攻撃が…面白い」鬼符「搦手の鬼畜生」
自身の周りに弾幕を飛ばしたと思うと、私の方にそのほぼ全ての弾幕が近寄ってきた。
だけど、全ての弾幕が同時にこちらに近寄ってくるわけでは無かった。
すぐに近づいてくる弾とちょっとした間があいて近付いてくる弾幕。
この時差があるせいで、ただの追尾弾とは違う、不意打ちが出てくる。
「とと…」
これを上手く避けるには、どの弾幕がどのタイミングでこっちに来るか。
それを計る必要があるみたい。それだけじゃ無く、全体を見る必要もある。
私を追いかけてくる弾幕の数は少しずつ増えて行き、逃げ場を奪おうとする。
目の前に段々と増してくる弾幕に威圧されている。
その隙に背後からの攻撃。ドンドンたまっていく眼前の弾幕に注意を向ければ
背後や側面からの奇襲を喰らう。美しさよりも実用性の方が高い弾幕って所かな。
だけど、この弾幕も何処かワンパターン。避けるのはそんなに難しくは無い。
「これも無傷で突破…ならば次です」龍符「龍紋弾」
これは凄い沢山の円形に構成された弾幕…そのサイズのままこっちに来たら
避けるのは少し難しいけど、あの回転してる弾幕の隙間を通って中に入れば良いのかな?
…でも、動きが少しおかしい気がする…あ、小さくなった。
どうやら、この円形の弾幕は最初は広いけど、相手から一定距離で小さくなる。
その隙に前に出る必要があるみたい。でも動きから、背後で大きくなりそう。
背後の円形弾幕が広くなったときにも既に前にはさっきと同じ弾幕が出る。
正面ばかりに注意して、急いで下がれば背後でデカくなってきた弾幕に当る。
やっぱりこの人が扱う弾幕は目の前ばかりに集中していれば
背後からやられるような、そんなスペルカードが多い。
「上手く避けますね、私が放つ弾幕の動きも読まれているようですし
あなた、中々に実戦慣れしていますね」
「まぁね、伊達に飢えてないよ」
円形弾幕の出し方が少し変ったけど、対処方法は変らなかった。
小さくなった瞬間に避けて、正面から来る弾幕よりも
背後で大きくなる円形弾幕に注意を向ける。
それを続ければ、確実に勝てるよ。
「うぅ、攻撃もかなり痛い。素晴らしいですね
あなたの様な人間なら大丈夫でしょう」
「それはありがとう」
「あれだけの弾を避けて、息切れ1つ起さないとはどれ程の実戦を?」
「殺意しか無い弾幕を避け続けて無傷で生還するくらいの実戦しか無いよ」
「それは生半可な実戦経験では無い様な気がしますが、良いでしょう。
それ程の実力があるのならば何ら問題はありませんか」
「で、本命の場所は?」
「本命の動物霊は地獄のお隣にある畜生界にいます。
その畜生界の中心に一際目立つ建造物があって、そこが敵の本拠地なのです」
(ふぅん、なる程なる程、本命というかこいつらにとって面倒な相手か)
こいつらにとってってどう言うことだろう?
「なる程ね、畜生界の中心か。さくっと潰してやりますか」
「さすが心強い! オオカミに選ばれし勁牙(けいが)の戦士よ!
さあ行け! 呪い極めた鬼形の敵を滅せよ!」
事情はよく分からないけど、畜生界って所に行けば良いんだよね。
その先に妖夢さんや魔理沙さんが居てくれれば良いけど。
大丈夫かな…あの2人…怪我とかしてなければ良いけど…うん、きっと大丈夫。
だって妖夢さんも魔理沙さんも強いし、問題無いよ。とにかく私も急ごう。
(フィル、相手はあいつと違って実体がある相手だと思うから気を付けなよ)
(実体? どう言うこと?)
(幽霊じゃ無いって事だよ。畜生界の連中が外の奴らを引寄せるって事は
恐らく霊体じゃ倒しきれない実体がある。僕の推測でしか無いんだけど
さっきの奴が動物霊を仕向けた本命だよ。多分潰されると思うから
僕達はあの2人を追えば良いのさ)
(潰されるって…誰に?)
(さぁ、時間が経てば分かるよ。とにかく僕達の目標はあの2人の保護だよ。
推測でしか無いけど、あの2人の足跡を辿ると違和感あるし
もしかしたら…動物霊に憑かれてる可能性がある。
さっきの奴もフィルが狼霊に憑かれていると考えてたみたいだしね)
(狼霊…私、幽霊に乗り移られてるの!? 恐い恐い! 幽霊恐いよ!)
(…いや、憑かれては無いからね? フィルに何か憑こうとしても
僕達が居る訳だし、憑かれる訳無いからね?
と言うか、僕達は幽霊よりも断然ヤバい存在だからね? 自覚してよ…)
(だって幽霊恐いよ!)
(……ここ、地獄だよ…? ま、まぁいいや、とにかく先を急ごう)
(う、うん)
幽霊恐いよ…考えてみれば動物霊を追いかけてる訳だし…
幽霊とは絶対に遭遇しちゃうんだよね…うぅ、自覚したら恐くなっちゃった。
帰りたいけど…こ、ここまで来たんだ、進まないと!
「ふぅ、あれだけの戦力が参戦すれば、憎き袿姫を倒し
人間霊共を再び私達の手中に収めれるのは確実だな。
ふふ、やはり搦手は良いわね。しかし生身の人間も案外大した事無いね。
簡単に動物霊に憑かれて操られるのだから。これなら地上を攻めても
私達の方に分があるだろう…
ふふ、折角だこのまま剛欲同盟と勁牙組を利用し
地上を制圧して見るのも悪くないかも知れないな」
「……と言う事は、あなたが今回の黒幕って事で良いのよね?」
「な……4人目!? この広い地獄でどうやってここに!?」
「勘よ。さぁ、大人しくして貰うわよ? 黒幕さん」
「く、やられる物か! お前も私の駒にしてやる!」
「現実を知りなさい、動物霊風情が。博麗の巫女を舐めない事ね」