東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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畜生界

うーん…こ、ここが畜生界…凄いなぁ、訳が分からないよ。

地獄とは全然違う…都会って言うか、そんな感じだよ。

でも、ここには幽霊とかばっかりの場所で…うぅ、嫌だなぁ。

 

でも、幽霊も普通にこんな風に街を作って生活してるんだね。

幽霊って言うのは響きだけで怖がられているだけで

実際は人間とそこまで大差ないのかな…?

 

(幽霊と言っても元々は人間とか生き物だからね。

 響きとかで怖がられてるだけで、実際はそうでもないよ。

 知り合いにも幽霊居るじゃん? 大概の幽霊はあんな感じだよ)

「そうなんだ」

 

でも、やっぱり何だか幽霊って恐いよね…

暗闇の中から姿を見せたりするし、恐ろしい限りだよ…

 

「うーん…でも、さっきから色々と弱いのが来てるけど何だろう?」

(幽霊じゃ無いかな? 動物霊)

「えぇ!? 幽霊なのに攻撃当るの!? それに弱いし!」

(いやうん、ハッキリ言うとフィルが強すぎるんだよ。

 ただの人間ならあっさり憑かれてしまうし、倒すのも困難だろうね。

 多少能力がある人間でも、隙を突かれたら取り憑かれちゃったりするしね)

「えぇ!?」

(でも、フィルは大丈夫だよ。力の次元が違うし

 そもそもフィルには僕らが居るからね。

 幽霊如きが取り憑けるはずが無いのさ。

 僕らからしてみれば、幽霊なんて赤子以下のカスだよ。

 いや、微生物程度の力無いゴミ屑かな)

「言い過ぎだよお姉ちゃん…」

(まぁ要するに、相手にならないって事さ)

 

実際フェンリルお姉ちゃんもテュポーンお姉ちゃんも凄い強いからね。

幽霊も凄いのかも知れないけど、2人に比べたら弱いんだろうなぁ。

 

「あ、何あの鍵穴みたいな場所…古墳かな? 豪族のお墓とか」

(動物霊の巣窟に人の墓があるとは思えないけどね。

 そもそも死後の世界に更に墓があるって訳分からないしね。

 多分、あれが地獄で見たドラゴンもどきが言ってた霊長園かな)

「む、お前、動物霊…では、無さそうだな。半獣の霊かな?

 その場合はどっちになるんだろう。でも、人間っぽいし人間霊って事で」

「あ、こんにちは」

「え? あ、こんにちは…え?」 

 

見た感じ、古い戦士みたいな姿をしてるね、全体的に黄色い。

古そうな鎧に…あと、あれ何? 埴輪…かな? 何で埴輪持ってるんだろう。

リボンは何だか耳みたいに見えないことも無い…あのリボン、どうなってるんだろう。

 

後は何だか腰辺りが妙に膨らんでるような気がする…

スカート? カボチャスカートって言う奴なのかな? 鎧の下にスカート…

鎧が広がってるだけなのかな…?

それに肌の色に何か違和感がある…肌色じゃない…人間…には見えないよ。

 

「いきなり挨拶されると、少し妙な気分ね…それに今日はお客さんが多いし。

 あなたで3人目だし…それで今までの流れから行くと、あなたも動物霊に」

「いや、私は動物霊には憑かれてませんよ。それよりも先に来た2人は何処に?

 私、その2人を追いかけてるんです」

「くぅ、信じて行かせてやりたいところだけど、これ以上援軍が来たら

 流石に袿姫様とは言え苦戦は必至…悪いけど、ここで止めさせて貰うわ!」

「えぇ!? た、戦う事はありませんって! 私は本当に!」

「もうボロボロだけど、主を守るのは作られた埴輪の使命!

 埴輪兵士の最後の抵抗を見せてやるわ!」

「そんなぁ!」

 

うぅ、どうしても戦わないと駄目なんだ…でもなんだろう、凄い埴輪が来たよ。

それにあの埴輪…何か動いてる! 埴輪って動くんだ!

 

「埴輪って動くんですね、私、初めて知りました」

(いや、普通は動かないよ…?)

「いけぇ! 攻撃あるのみ!」埴輪「熟練弓兵埴輪」

 

埴輪がいきなり出て来たかなりの速度の矢を飛ばしてきた。

でも、私には矢の速度って、凄く遅く見えちゃう。

 

「うぅ! 当らない! あれだけの矢を飛ばしてるのに軽々避けるなんて!」

「矢よりも弾丸の方が早いですからね、流石に当りませんよこれは」

「ぐぬぬ、今までの奴らも手練れだったけど、こいつは動きが速すぎるぞ…

 さ、流石は半分獣であるだけはある。

 でも、遠距離が駄目なら接近戦あるのみ!」埴輪「熟練剣士埴輪」

 

今度は別の埴輪が出て来た。剣を周りに投げてくる。

あれ? これって接近戦というか、ただの遠距離攻撃じゃ…?

 

「それ! 突撃!」

「さ、流石に私相手に近付くのは…」

「あぁ! 接近した埴輪が一撃で! と言うか、あなた早すぎるよ」

「一応、速く動くのは得意ですから」

「ぐぬぬ、な、ならばこちらも速さで対抗するわ」埴輪「熟練騎馬兵埴輪」

 

あの人の背後に馬に乗った埴輪が出て来て、こっちに突っ込んでくる。

でも何だか、可愛いなぁ…少しシュールな気もするけど、何だか可愛い気がする。

馬も若干愛らしい馬だし、それにちょこんと乗ってるのも何だか可愛い。

 

「可愛いですね、その埴輪」

「そう!? 私もこの埴輪、少し可愛いと思ってたの…

 って! そうじゃ無くて! 今戦闘中! じっくり観察しないでって!

 何だか私達の攻撃が全く効果無いみたいで嫌じゃ無いか!」

(実際、効果は全く無いんだけどね、全然鈍いし)

(そ、そんな事言ったら駄目だよ…)

「く、くぅ…こ、こうなったら最終手段。あ、相手は1人なんだ

 それに対してこっちは沢山居る! 数は最大の武器よ!」埴輪「不敗の無尽兵団」

 

た、沢山の埴輪が一斉に攻撃を仕掛けてくる。

でも、こう言う光景…何だか私には若干辛い。

 

「……」

「な、何だかいきなり沈黙したわね…さ、流石にこの数に恐れをなしたのね!」

「なんて事してくれるんだよ、埴輪」

「口調が…」

「フィルは複数の相手に襲われるのはトラウマなのさ。

 記憶を取り戻しちゃってるから、悪い記憶も蘇ってる」

「そ、そんなの知らないわよ!」

「じゃあ、無意識に僕の逆鱗に触れた事を悔しがれ!」魔狼「神殺しの狼」

 

私の体が無意識に動き、無尽蔵に現われた埴輪達を

自分でも追いつけない速度で粉々に粉砕する。

 

「うわぁあ! 埴輪達が一瞬で粉々に!」

「完全に封印解けてないからマジでは出来なかったけど

 埴輪程度を潰すなら造作ないね。さぁ、最後はお前だ」

「うぅ…こ、ここまでか…」

(フェンリルお姉ちゃん! もう良いから!)

「……そうか…なら、ここまでにしよう。

 運が良かったね、埴輪さん」

「う、うぅ…し、死ぬかと思った…」

「あの、ご、ごめんなさい。私が取り乱したせいで」

「あ、いや…あなたの事情はよく分からないけど

 あなたは怒らせちゃ行け無いって事は身に染みて分かったわ…

 あ、え、えっとでも、袿姫様には手を出さないで…

 袿姫様の代わりになるとは思えないけど、私の事を好きにして良いから…

 袿姫様は…袿姫様だけは…どうか、見逃して…」

「最初から言ってるじゃ無いですか、私が追ってるのは先に来た2人です」

「……うぅ、その言葉、信用するしか無いわね…あの2人は霊長園に行った…

 大丈夫だとは思うけど…袿姫様の事…お願いします」

「はい! 誰のことか知りませんけどとりあえず行ってきます!」

「うわぁ…凄く不安…」

 

とにかくあそこに行けば良いんだよね、急ごう。

うぅ…でも私、取り乱しちゃった…気を付けないと。

またフェンリルお姉ちゃんが暴れたら大変だし…

 

 

 

 

「うぅ…酷い目に遭った…埴輪兵も殆ど全滅…一瞬であれだけの数を潰されるなんて…」

「何か瓦礫が散乱してるわね、何があったの?」

「うぅ、ま、また人間…し、しかし退くわけには行かないわ!

 数が少なかろうと、袿姫様をお守りするのが私の使命!」

「そんなボロボロで戦おうとしなくても良いじゃないの。

 それより、フィル見なかった? 狼の子なんだけど」

「狼…フィル…それならさっき」

「あぁ、なら案内してよ。あの子に用があるの」

「い、いや、彼女は先に来た2人を追いかけてる訳で…」

「先に来た2人…あぁ、魔理沙と妖夢ね、そいつらにも用があるの

 早く案内してよ。従わないなら従うしか無い状況にするけど」

「うぅ…こ、この手勢の埴輪兵では敵わない…ここは大人しく従うわ…」

「賢明な判断ね、ほら、早く案内して」

「袿姫様…申し訳ありません…」


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