東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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一休みは白玉楼で

異変が終わった私達は妖夢さんの誘いで白玉楼へ移動した。

魔理沙さんはそう言う話しになるとすぐに来るのは分かるけど

霊夢さんも珍しく、一緒に付いてきてくれた。

 

「いやぁ、中々面倒な異変だったな。まさか私達が総動員なんてな」

「そうかしら? かなり楽な部類でしょ」

 

魔理沙さんの言葉を聞いて、少し微笑しながら霊夢さんが私の方を向いた。

うん、この言葉と行動にどんな意味があるかは流石に分かるよ…

 

「その…すみません」

「謝る事じゃ無いけどね。ま、あれは不可抗力って奴よね。

 あの時は私、初めて真面目に修行したわよ」

「霊夢が修行だって!? そんな馬鹿な!」

 

霊夢さんの言葉に魔理沙さんがオーバーすぎる反応を見せた。

けど、それはわざと大袈裟にしているという訳では無さそうだった。

どうも本心から驚いている。そんな風な印象を覚えるね。

 

「大袈裟に驚きすぎでしょ…」

「い、いやでも、普段怠けまくってる霊夢が修行だなんて驚くって。

 そう言えば、何度か神社に行っても居なかったが…

 あの時に修行に出てたのか?」

「そう言う事になるわね。紫が私に修行を付けてたりしてたわ。

 まぁ、紫はフィルの監視というか、見守りで大忙しだったけどね。

 実際、あの時フィルに施した封印は結構不安定だったらしくてね。

 フィルの感情の高ぶりで弱まる状態だったのよ。

 まぁ、封印がかなり不安定になったのは妖夢に斬られて以降らしいけど」

「え…」

 

不意に自分へ話題が向いたことに妖夢さんは呆気にとられていた。

会話に参加しようにも参加出来そうな隙間が無かったから隙を見てたのかもね。

でも、不意に話題が自分に移り、少し動揺してるって感じかな。

うん、私もよくあるよ。あまり積極的に話せるタイプじゃ無いしね。

 

「あ、え、えっと…わ、私あまり自覚が無いんですけど…

 も、もしかしてあの時…フィルさんを白楼剣で」

「そうよ、あれを皮切りにフィルの行動や思考が大きく変化したそうよ。

 今まで攻撃をするかどうかの悩みが断ち切れたことで

 フィルの思考が封印前に近付いて、フェンリルが少し出て来た。

 聞いた話だと紫と藍が共闘してなんとか収めたそうね。

 あの2人が本気で挑んでも負ける可能性の方が高い戦いだったらしいわ」

「あ、あの時」

 

うぅ、い、嫌な思い出が…あまり記憶には無いけど

確か、あの時私は妖夢さんに凄く酷い事をしたのを覚えてるよ…

 

「そ、その…妖夢さん、あの時は本当に」

「い、いえ! あ、あれは全て私が悪いんです! 早合点で斬りかかった私が!」

「で、でも私は怪我してませんけど、妖夢さんは凄い怪我をして…」

「ほぅ、妖夢とフィルは戦ったことあるんだな。結果は想像に難くないというか

 火を見るよりも明らかだろうが、多少は善戦したのか?」

「い、いえ、全く…手も足も出ませんでした」

「そりゃそうでしょ、フィルはフェンリルの力が無くても体術かなり強いしね。

 妖夢も相当場数踏んでそうだけど、フィルは実戦がね」

 

うん、そんなには覚えてないけど、私は無数の弾幕を前にして居た気がする。

集団を相手するってなると、その時を思い出して嫌な気持ちになるよ…

 

「まぁな、それと私思ったんだけど、フィルが武器とか魔法使ったらどうなるんだ?

 今のままでもぶっ壊れてるくらい強いが、武器持ったらどうなるか気になるぜ」

「私が武器を?」

「しかし、武器と言えど多少なりとも専用の知識は必要になりますよ?

 剣と剣の打ち合いは一撃で致命的な物になりますし」

「フィルには致命的なことにはならないだろ、刺されても平気なんじゃ無いか?」

「平気でしょうけど、痛いので嫌ですね…あはは」

 

多分、私の再生能力なら心臓を潰されても、首を刎ねられても

一瞬で炭にされたとしても回復してしまいそうだしね…想像したくないけど。

 

「なら、妖夢が教えてあげれば良いんじゃ無いかしら?」

「ゆ、幽々子様!? お休みになられていたのでは!」

「いやねぇ、私がいつも寝て居るみたいな言い方しないで欲しいわ~

 紫なら冬眠とかしてるかも知れないけどね~」

「あぁ、そう言えば紫はどうしてんの? 全然姿見ないけど。

 まだ冬眠の時期じゃ無いと思うんだけど?」

「冬眠してるわよ、冬に眠るって訳じゃ無いけどね」

「なんでかは…まぁ、何となく想像出来るわね」

「そうそう、恐らくその想像通りよ」

 

きっと、私の事で本来眠る時期なのに眠れなかったんだ…

 

「うぅ…わ、私、悪い事を…」

「あらあら、気にしないで良いわよ? 紫も気にはしてないでしょうしね。

 紫は裏表はあるけど、彼女は裏も表も同じなのよ」

「ど、どう言う」

「まぁまぁ、気にしないで良いわよ~、それより剣の稽古よね~

 妖夢と少しだけ打ち合ってみたりすれば良いんじゃ無いかしら?」

「わ、私がフィルさんと!?」

「そうそう、それに誰かに物を教えると言うのは自分自身の勉強にもなる。

 自身よりも圧倒的に格上の相手に教える機会なんてそう無いでしょ?

 そして、その格上と堂々と同じ土俵で戦える場面もそうはないわ」

「…は、はい、た、確かにそうですね! では! この魂魄妖夢!

 誠心誠意、過去の償いも兼ねてフィルさんに剣術の指南を行ないます!」

「なんかやる気上がったわね…あなたに指示されると妖夢は豹変するの?」

「真面目な子だしね」

「と言うかだ、フィル…やるってひと言も言ってないだろ」

「まぁまぁ、フィルもやっちゃいなさい」

「で、ですけど」

 

正直、そんな事を不意に言われてすぐに良しやるぞって気分には…

でも、妖夢さん凄いやる気だし、やらないって言えないような…

 

「武器が扱えれば、より確実に主人を守れるんじゃ無いかしら?

 自らの主が抱える心身的負荷をすぐに無くせるわよ?」

「た、確かに! わ、私がもっと強くなればレミリアお嬢様も

 フランお嬢様ももっと確実に守れるかも…はい! やります!」

「よろしい」

「…もしかしてフィルと妖夢って似てるのかしら」

「主の事になると雰囲気変るからな、妖夢もフィルも。

 しかし、レミリアの奴は相当幸運な奴だぜ。

 フィルに絶対的な忠誠を貰って、更に守られるなんてな。

 と言うか、フィルの登場で紅魔館の戦力って幻想郷最強じゃ無いのか?」

「そうね、完全にパワーバランス壊れてるわよね。でも今まで通りなのは

 やっぱり何だかんだレミリアが主だから、なんでしょうね。

 吸血鬼異変みたいな事を起すつもりは無いようだしね」

「そうね、レミリアはフィルを任せるに至って1番安心出来る。

 だから紫もフィルを無理に彼女から引き剥がしては居ない。

 信頼が置けないのであれば、紫はフィルを自分の式という形にしたでしょうしね」

 

レミリアお嬢様はやっぱり凄い人だよね。

私、レミリアお嬢様に拾って貰って本当に良かった。

ふふ、私は幸せ者だよ。本当に幸せ者。

 

「レミリアは何だかんだで部下にも恵まれてるからな。

 あいつが不味いことしそうになったら咲夜か美鈴が止めそうだ。

 パチュリーはよっぽどじゃ無いと動きそうに無いが」

「主がポンコツでも紅魔館が信頼出来るのは部下の影響でしょうね」

「今レミリアお嬢様の悪口が聞えた気がします!」

「わ、悪口じゃ無いのよ? そう言う意味でのカリスマ性って事だから」

「はぁ、そ、そうなんですか?」

「そうそう、それよりほら、妖夢が待ってるわよ?

 あなたも早く木刀取って行きなさいな」

「あ、はい」

 

えっと、確か妖夢さんは2本だったし、私も2本が良いのかな?

でも、確か妖夢さんって普段は1本だけで戦ってたような…

うーん、とりあえず小さい木刀と長い木刀を持っていこう。

 

「いやぁ、マジで好きなんだな、レミリアの事」

「本気で大事にしてるのが分かるわね」

「ふふ、そうね。それよりもいつ始まるのかしら」

「…もしかしてお前、妖夢とフィルをたきつけたのって」

「ふふ、あの2人が戦ってるのを見てみたかったのよ。

 あの子が何処まで強くなってるかも興味あるしね」

「あの子って言うのは妖夢のことかしら?」

「どっちもかしらね、だとすればあの子達のほうが正確かしら」

「ふーん、そうかい。まぁ下手に言及はしないぜ。

 私もあの2人がどんな戦いをするのか若干興味あるからな」

 

よーし、頑張って強くなるぞ! 皆をもっと確実に守るために!


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