マヨヒガかぁ、前に弾幕を出す方法を教えて貰ったのもここだったね。
スペルカードや弾幕、あの時は幻想郷のルールなんてさっぱりだったよ。
でも、今はしっかり覚えたし、出来なかった事も出来るようになってきた。
だから、今回で空を飛べるようにならないと。
出来なかった事が出来るようになってきたんだ、空だって飛べるよ。
「よ、よーし、探そう…」
「その必要は無いよ。呼ばれて飛び出てにゃにゃにゃにゃーん!」
マヨヒガの屋根の上から声が聞え上を見てみると
そこには元気よく屋根の上に立っている橙ちゃんの姿があった。
「げ、元気そうだね、橙ちゃん」
「まぁね」
「…所で、そろそろ降りてきたら? パンツ見えてるよ…」
「にゃ! 何見てるのさ!」
「そんな所に立ってたら…私も見上げるんだしそりゃ見えちゃうよ…」
「まぁ、ドロワースだから問題は無いんだけどね。
で、今日はどうしたの? フィルがマヨヒガに来るなんて」
「うん、実は藍さんに色々と謝罪をしたりしたくて」
「藍様に? それに謝罪って何かしたの?
もしかして異変のことを気にしてる? あれはもう終わった話だし
今更掘り返す必要は無いと思うよ? 過去の厄介事なんて誰も興味無いよ」
「た、確かに幻想郷の雰囲気だとそうだね、でも、私はそう割り切れなくて。
もう、全員の場所を回って、謝罪もしたんだけど、やっぱり…ね」
幻想郷の話を聞けば聴くほどに、殆どの妖怪は過去に重きを置いていない。
過去はいくらでもやってくると言うことが分かっているからなのか
誰も過去に執着はしない。だから、異変が起こった後
その異変を起した元凶は何の違和感なく当たり前の様に馴染める。
「それにまた鍛えて欲しくて。今度は空を飛べるようになりたいの」
「空はフィルも飛んでたと思うけど」
「あれは飛ぶじゃ無くて跳ぶなんだよね」
「…お、同じじゃ?」
「ちょ、ちょっと違うんだよね…」
やっぱりこの言い回しは分かりにくいのかな…伝わることが殆どない。
「まぁとにかく藍様に用があるんだよね? それならこっちだよ」
「ありがとう」
私は橙ちゃんの後に付いていき、マヨヒガを移動した。
やっぱりマヨヒガは至る所に猫が居るね。
そして、猫は私を見ると固まって尻尾を垂直に立てて寄ってくる。
「何か猫たちが活発になったわね…」
「久しぶりだね、なでなで~」
近付いてきた猫を撫でると、その子は幸せそうに目を瞑ってくれた。
そして、私にお腹を見せてゴロゴロと転がる。
何だか機嫌が良さそうだね、良い事があったのかな。
「わ、私よりも懐いてる…」
「な、何だか猫がドンドン集まってきてる気が…」
「くぅ、この子達の長は私なのにぃ~」
「まぁまぁ、ほら猫ちゃん達、落ち着いてね」
私がそう言うと、猫たちは一斉に立ち止まった。
「それじゃあ、私はこれから藍さんと修行をするから
遊ぶのはまた後でね、じゃあ、解散」
そして、私が手を叩くと同時に猫たちは周囲に散らばった。
うん、言う事を聞いてくれてよかったよ。
「…な、何であの子達があんなに素直に…やっぱり私はまだまだなのかしら」
「な、何で落ち込んでいるのかあまり分からないけど、大丈夫だよ。
ずっと頑張る事が出来るなら絶対にやりたいことをやり遂げられるって!
特に橙ちゃんは妖怪なんだし、時間はいくらでもあるでしょ?」
「うーん…まぁそうなんだけどね。ふぅ、落ち込むのは後にしよう。
とにかく今は藍様の所に案内してあげるね、こっちだよ」
そのまま私は橙ちゃんに付いていき、藍さんが居るという家に来た。
「藍様! フィルがお会いしたいそうです!」
「フィルがここに自主的に来るなんて珍しいな」
藍さんの声が聞えてくると同時にその家の扉が開いた。
そこには元気そうな藍さんの姿があった。
でも、割烹着を着てるし…今、お料理中だったのかな…
「あ、お料理中だったんですね、ごめんなさい…」
「いやいや、気にしないでくれ。大丈夫だから。
それで、今日はどうしたんだ? フィルが私に会いに来るなんて。
それとも紫様か? 紫様は冬眠でお休み中だから会えないぞ?」
「いえ、私は藍さんに会いに来たんです…その、謝罪したくて」
「謝罪? 何かあったか?」
「あ、あの…最初、藍さんに酷い怪我を負わせてしまって…
そ、それに前の異変の時だって、私は藍さんに…」
「何だ、そんな事を気にしていたのか? 大丈夫だ、気にはしてない。
私は紫様のご命令に従っただけで、式としての使命を全うし負傷しただけだ。
それにあの時のお前は暴走していた。暴走した大事な教え子を止めるのも
多少は技術を教えた者の努めという物だ。まぁ止められなかったがな。
私もまだまだ修行不足だったと言う事だろう」
「本当にすみません…あんな痛い思いをさせて…」
「気にするな、過去なんていくらでも来るんだ。
そんな物をいちいち気にしていたら気が持たないぞ?」
「は、はい」
やっぱりそうだよね、妖怪として生きてる藍さんにしてみれば
過去を気にするのはあまり良い事じゃ無いんだろうね。
でも、私は改めて謝罪をしたかった…収まらなかったから。
「…それで? マヨヒガに来たのはそれだけが理由か?」
「い、いえ、もうひとつ…私に空を飛ぶ方法を教えてください!
お願いします! 少しでも色々な事が出来るようになりたいんです!」
「空を飛ぶ方法? お前はもう跳んでるじゃないか」
「そうですね、でも…あれは細かい調整とか難しくて。
何かあったときにちゃんと空を飛べるようになってないと
大事な人を守れないかも知れないから…それは、嫌です」
「……そうか、確かにそうかもな。それにお前は空を飛ぶ才能もある。
少し教われば空を飛ぶ事も出来るようになるだろう。
よし、教えてあげよう。空を飛ぶ方法を。
紫様ほど上手くは教えられないかも知れないが
私も橙を育てている身だ、教えることは出来る」
「あ、ありがとうございます! それと、そのお礼もしたいんです!
私に出来る事があったら何でも言ってください!
出来る事なら何でもします!」
「そうか、じゃあ、頼らせて貰うとしよう」
「はい!」
よ、よーし、空を飛べるようになってみせるぞ!