東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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力の視認

色々と新しい課題が出来たね。

昨日は1日、修行を休んだけど一応目標が出来たし

無駄な時間だったと言う事じゃないよ。

そして今日は空を飛ぶ修行を再開だね。

 

自分自身が持っている色々な力の内

どの力を制御して空を飛ぶか。

それを考えて、力の制御をこなす。

 

「フィルが空を飛べない理由は力の使い方が下手だから。

 フィルが力を制御出来るようになったらどうなるのかしらね」

「制御を全く出来てない今の状態でも私達が全員で挑んでも

 無理矢理引き分けに持ち込むことしか出来なかった。

 フェンリルなどの人格が力を制御出来ているかは分かりませんが

 もし制御出来ていなくてあの実力なのだとすれば…」

「引き分け所か、勝負にすらならないかもね」

(僕もあまり空を飛べないし、制御は出来てないんだけどね)

(俺も上手く力は扱えないな、まどろっこしいのは嫌いなんだ)

(……もしかして、私強くなったら駄目なのかも?)

 

か、考えてみれば力を制御出来てないのに凄く強いって

もし私が力を制御出来る様になったら何かあった場合

滅茶苦茶な事になっちゃうような気がする…

 

「あ、あの…もし私が力を制御出来るようになったら…」

「そうね、あなた達を誰も止められないでしょう」

「も、もしそんな私が…またあの時みたいに暴走したら…」

「それは大丈夫よ、言ったでしょ? 不安要素はもう無いと。

 今のあなたは自分自身をちゃんと制御出来ているわ。

 辛い過去を乗り越えた。今のあなたなら心配は無いわ」

「でも、せ、洗脳とか…何かありそうじゃ?」

「それも大丈夫よ、あなたは沢山の想いに守られている。

 例え意思を奪おうとしても、必ずあなたを守る想いが

 あなたの意思を奪い返してくれるわ。

 私が言うんですもの間違いないわ」

「そ、そうなんですかね…少しだけ実感がなくて」

「と言うか、あなたに洗脳が効果あるなら、誰かしてるでしょ」

「何でですか!? そんな恐い事を!」

「それだけ、あなたの力は魅力的なのよ」

 

うぅ、何だか恐い事を宣言された気がするよ…

でも、大丈夫って事なのかな? うーん…ま、まぁいいや。

きっとそんな事をする人は居ない…と、思いたい。

 

「と、とと、とにかく、私は力を制御出来るようになっても」

「そう、大丈夫よ。今のあなたなら問題は無いわ」

「安心しました、なら心置きなく修行します!」

「そうね、じゃあもう一度力の選択をしなさい」

「は、はい!」

 

よし、もう一回瞑想を始めて、自分の力を選択しよう。

どの力を使うか、どうやって制御するか、どう引き出すか。

私に足りないのは、力をどう扱うかという知識と経験。

まずは教えて貰ったとおりに力を呼び出して

そこから何度も何度も経験することでより確実な制御をする。

 

修行と言っても、これを繰り返すことが主だ。

体を鍛える必要も無く、ただ精神の統一を図る。

内にあるいくつもの力の1つを引き出す…

でも、集中すればするほど、何だか飲まれそうな気がした。

莫大すぎる力…そんな中から1つを選ぶのは難しい。

色々な力が混じって、また別の力のような物が生まれちゃう。

自分の力を色として認識出来るようになったけど

 

何だか複雑に混ざり合った絵の具から、

どんな絵の具がどれだけ使われたかを読み解く。

そんな感じになってる。

 

1つ2つならまだ出来そうだけど、私の場合はその数が多すぎる。

どの色も濃すぎる、大きすぎる、強すぎる…モヤが掛ったように

何も見いだせないし、どんな力かさえ分からない。

 

「う、うむむ…む、むぅうぅう…」

「凄く悩んでるわね」

「は、はいぃ…集中すればするほど、色が複雑に…」

「フィルは力を色と認識してるんだな…なら、こう言うのはどだ?

 まずはあまり集中してない状態で色を見るんだ。

 その色がどんな色かを読み解いて、その色から分ける。

 そして分けた色を覚えて、もう1段階深く集中する。

 次に出て来た色から覚えておいた最初の色を当ててみて

 どんな色がどれだけ使われてるのか、予想してみるんだ」

「は、はい!」

 

藍さんに言われたとおり、今度はあまり集中しないようにして

その中からどんな色が混ざり合ってるのかを確認する。

青色、赤色、黄色…そうだね、これ位かも。

主に出てる色はこの3色。後薄らといくつも別の色が混ざってる。

そこから更にもう1段階、深く…よし色が変った。

 

「集中してるわね」

「はい」

「フィルなら時間が経たないでも力を制御出来るでしょう」

「そうですね、彼女の才能は凄い。普通なら自分自身の力を視認するのに

 何百年の時間を有しますからね」

「えぇ、才能の無い人間であれば、一生を賭けても視認できない。

 霊夢や魔理沙のような天才であれば話は別だけどね。

 と言っても、彼女達の場合は物心が付いたときから

 自分の力を理解してたでしょうけどね。天性の才能という奴よ」

「はい、でもフィルは…」

「えぇ、自分の力を理解していなかった。天性の才能じゃない。

 それが数日で力の視認まで漕ぎ着けてる…逆に恐ろしい才能ね」

「成長速度が人間のそれを遙かに凌駕してる。

 フェンリル達の血を引いているから…だけとは思えませんね」

「元々、彼女自身才能豊かな子だったんでしょうね。

 仮にフェンリルやテュポーンの血を引いてなかったとしても

 彼女は相当の才能を秘めていたでしょう」

 

色を…もっと読み取るんだ…よく見るんだ…どんな色が私の色なのか。

 

「……しかし、彼女はフェンリルとテュポーンの血を引いている。

 正確には血が流れてると言うのが正しいのかしら」

「紫様? 何か気掛かりなことでも?」

「いえ、なんて事は無いわ。彼女の才能が恐ろしいと言うだけよ」

「よ、よし! 分けました!」

「は、速いな…」

「えっと、私の色は青色、黄色、赤色、紫色、橙色、白色、黒色です」

「色で分けたのね…恐らく青と白は霊力、黄色と橙は神気、赤と紫は妖力

 黒は魔力でしょうね」

「同じ種類の力が2つあったりするんですか?」

「性質が違うわ、使い方もね。出生に大きく関わったりするけどね。

 例えば純粋な人間は白の霊力、半人等は青だったりね」

「でも、私は半獣ですけど、白も青も」

「どっちの性質も強いって事でしょうね」

 

へぇ、色々と難しそうだけど、色と混合してる私は

そんな風に珍しい力を持ってたりするんだ。

 

「それで? どれが1番濃かったの?」

「えっと、青色、黄色、赤色が濃く見えました」

「なら、その3つのどれかを制御してみなさい」

「は、はい!」

「でも、今日はここまで」

「えぇ!? わ、私はまだ大丈夫です!」

「休むのも大事なのよ? 急がない急がない」

「うぅ…わ、分かりました…」

 

だけど、これで大きく進むことが出来た!

明日こそ、空を飛べるようになる!


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