東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

179 / 245
最強の魔界人

「お待ちしておりました」

「め、メイドさん?」

 

何処か咲夜さんと似たメイド服の人が出て来た。

髪の毛の色は金色だけど、雰囲気は咲夜さんに似てる。

メイド服もこの人は赤色。咲夜さんとは何か反対って感じがする。

でも、性格はどことなく似ているような感じ…初対面だけどね。

 

「夢子ちゃん、お迎えご苦労様。早速だけど彼女と戦ってみて?」

「え!?」

 

い、いきなりこの人と戦わないと駄目なの!?

そ、そんないきなり…だ、だけどきっとこれは試練だ。

よし! 私も頑張らないと!

 

「唐突ですね。後ろの2人はよろしいのですか?

 私としては、後ろの2人にリベンジをしたいのですが」

「いいえ、まずはこの子よ。この子に勝てたらリベンジすれば?」

「左様ですな、ならば造作ない」

 

そう言うと、夢子さんは何処からか剣みたいなのを取り出した!

いや、剣? 短刀って奴かな。ナイフよりは刃渡りがデカそうだけど。

 

「何となく咲夜っぽいけど、得物は全然違うのよね」

「誰ですか? 咲夜というのは」

「まぁ、私の知り合いよ。結構強いわ」

「ほぅ、ではその人物と戦うのもありかも知れませんね。

 ですが、今は彼女を倒すことを優先しましょう。

 神綺様、殺してしまっても構いませんか?」

「えぇ!?」

「構わないわよ、殺せる物なら」

「許可しないでくださいよ!」

「なら、死になさい!」

 

唐突に容赦ない速度で剣を投げてきた!

剣って投げる物じゃ無いと私は思う!

 

「い、いきなりは無しでしょ!?」

「ほぅ、この至近距離からの投擲を避けますか。

 面白い、見た目以上には出来るようですね」

「弾幕ごっことやらは無しよ、マジの殺し合いでお願いね?」

「だ、弾幕ごっこじゃ無いんですか!? 本気で殺しに来るんですか!?」

「無論、神綺様からの許可はいただきましたので。

 その命、いただきます」

 

若干私から距離を取って、何本もの短刀を投げてくる。

その攻撃を避けるのは可能だけど、弾速が容赦ない。

 

「ふん!」

「うわ!」

 

な、投げた短刀よりも早く動けるなんて!

私は急いで投げられた短刀を2本掴んで夢子さんの攻撃を防いだ。

 

「面白い」

「ッ!」

 

容赦なく彼女の連続攻撃が私を襲う。

凄い速さだ、2本の短刀を華麗に扱った連続攻撃。

一撃一撃も重いし、素早い動きに対処するのはしんどいよ!

 

「ふ」

「とと!」

 

不意に私への攻撃を止め、後方に下がりながらいくつもの短刀を投げる。

私はすぐにその短刀を後方に退きながら弾く。

て言うか、あの人の姿が無いよ!

 

「そこ!」

「まだ!」

 

唐突に頭上から降下してきた夢子さんの攻撃を防ぐ。

あまりにも力を込めすぎたせいでお互いの短刀が砕けた。

 

だけど、彼女は私への攻撃と同時に、即座に姿を消し

今度は背後に現われ、攻撃を仕掛けてくる。

この攻撃も私は防ぎ、再びお互いの短刀が砕け

同時に距離を取った。

 

「見た目以上に出来ますね」

「ほ、本気で殺しに来てますね、私、純粋な殺意は嫌いで」

「死線に身を置けば、純粋な殺意などなれるでしょう?

 そんな物、爽やかなそよ風と大差ありません」

「一方的に向けられた純粋な殺意ほどおぞましい物はありませんよ」

 

私はそれが嫌だ。そんな殺意を何度も向けられた記憶があるから。

だけど、冷静になるんだ、私。ここで感情的になるべきじゃ無い。

そんな事になれば、私はあの人達と同じ様に憎しみしか抱かない。

何て、私がそんな風になれば、憎しみを抱いた相手は死ぬけど。

 

「……今、ゾッとしましたわ」

「あ、ごめんなさい、ついトラウマが」

「…なる程、あれ程の殺気、あなたは本気ではありませんね?

 本気を出せば、私など相手にならない程に、あなたは強いでしょう」

「いや、私は強くありません」

「…ですが、私とて神綺様のメイド。可能な限り戦いを続けましょう」

 

そう言い、彼女は再び私の前から姿を消す。

次に彼女が姿を見せたとき、大量の短刀が私に向ってきていた。

 

「本当に咲夜さんみたいな人だなぁ…でも!」

 

私はすぐに先頭の短刀を飛び込んで掴み取り

そのままこっちに迫る短刀を全て撃ち落とした。

同時に隙間から最初に掴んだ短刀を投げる。

 

「んな!」

 

私が投げた短刀は夢子さんが反応するよりも先に届き

彼女の頬を掠め、足下を潜った。同時に空中で回転し

2本の短刀を掴んむと同時に周囲の短刀を叩き落とした。

そして、着地と同時に距離を詰める。

 

「速い!」

「私は強くなる為にここに来たんです!」

「そうですか、ですがあなたは!」

 

私と夢子さんの短刀が2本とも同時に激突する。

だけど、今回砕けたのは夢子さんが持つ短刀だけで

私の持つ短刀は夢子さんの首元に届いた。

 

「……殺さないのですか?」

「殺しません、私は強くなりたいから」

「……お見事、私の負けです」

 

夢子さんの言葉を聞いたと同時に、一気に体中の力が抜ける。

はぁ…よ、良かったぁ…何とか勝てたよ…この状態でも勝てた。

 

「いやぁ、凄い力ね夢子ちゃんを圧倒するなんてね。

 それも全然本気を出してない状態で」

「しかし、最初は全く攻撃しなかった子が容赦なくなってきたわね」

「妖夢さんに斬られてから、何だか迷いが無くなった気がして」

「となると、やっぱりあいつが戦犯か…妖夢の奴」

 

きっと今頃、妖夢さんはくしゃみをしてるだろうね…あはは。

 

「いやぁ、しかしなる程、これがフィルかい。

 こりゃ、あたしが戦っても勝てそうに無いねぇ」

「あなたが誰かを褒めること何てあるのね」

「あれだけの力を見せ付けられたら、誰だってね」

「私なんてまだまだですよ…まだ、お姉ちゃん達には遠く及ばない」

「そう思ってるのはきっと、あなただけよ、フィル」

 

霊夢さんがからかうような表情でそう伝えてくれた。

どうなんだろう…私、もっと強くなれるのかな。

 

「さて、私は敗北してしまいましたし、リベンジマッチは出来ませんね」

「そうね、負けちゃったから仕方ないわね。と言う訳で彼女達は客人。

 ちゃんとおもてなしするのよ? 夢子ちゃん」

「はい、仰せのままに」

 

神綺さんの言葉に応えた後、夢子さんはすぐにその場から去った。

流石に咲夜さんみたいに唐突に姿を消す訳じゃ無いんだね。

でも何だか、咲夜さんと夢子さんが戦ったらどうなるのか…興味あるよ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。