東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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精神の具現化

「よしよし、それじゃあ修行を始めるわよん」

「はい!」

 

あの後、私は修行をするためにヘカーティアさんと合流した。

ヘカーティアさんは既に修行の準備をしててくれた。

 

「じゃあ、軽くあなたがこれからやるべき事を話すわ

 まず、あなたは体を3つ手に入れる…訳では無いわ。

 私が3人に分裂できるのは、体が3つあるから。

 だけど、あなたの場合は自分と同一個体は作れない」

「じゃ、じゃあ、どうすれば良いんですか?」

「同一個体を作るというのであれば、子供を作るのが楽ね」

「こ、子供!? わ、私、子供出来るんですか!?

 でも、子供って…えーっと、確かコウノトリが…」

「……」

 

どうだったかな、コウノトリだったっけ…

えーっと、思い出せ…どうだったかな…

なんか、全然勉強してないから分からないんだよね。

 

お母さん達は何も教えてくれなかったし…

いや、そう言えば前に外の世界に出たときに勉強したっけ。

思いだせ…うぅ、興味無いから全く覚えてなかったかも知れない

 

「えーっと、確かあの本に…書いてあったかな…

 うーんと、うーんと…あ! セッ!」

「全部言わなくて良いわよ」

「あ、はい…」

「ま、まぁ、あなたが体を増やすのに手っ取り早いのがそれね。

 子供を作る…だけど、その方法は無しよ。

 子供の魂を奪い取るのに等しいからね」

「そ、それは嫌ですね…」

「だから、私があなたに教えるのは精神の具現化よ」

「せ、精神の具現化?」

 

どう言うことだろう…精神の具現化って何?

精神に実体を持たせるとか、そう言う事?

そんな事が出来るの? ちょっとよく分からないけど

多分出来るんだろうね、神様が言うんだもん。

 

「精神の具現化って出来るんですね」

「そりゃできるさね、あたしなんてそれに近いよ?

 あたしの場合は精神が具現化してるって所だねぇ。

 幽霊や亡霊。そう言った類いには出会ってこなかったかい?」

「で、出会って…来ました、幽霊や後、半霊って言うのも」

「そうでしょうね、精神の具現化は幻想郷では良くある事よ。

 精神だけで無く、そもそも色々な物が具現化するわ。

 

 妖精は大自然の具現化で、幽霊は気質の具現化。

 妖怪の場合は独立した妖力の暴走とか言われてるわね。

 他にも霊力を具現化し、攻撃に転用することも出来る。

 

 精神や霊力、そう言った物はコツを掴めば具現化できるわ。

 あなたの弾幕は違うの?」

「そ、そう言えば…出来ると思えば出来るって」

「本来なら色々と手順があるけど、あなたの場合は無意識に近いのかしらね」

 

私の方法、正攻法じゃ無かったんだね…あはは。

 

「他にも精神の具現は亡霊が良い例と言えるわ。

 亡霊は人の精神の具現化。確固たる実体を持つ精神。

 危うい存在なのは確かだけど、亡霊というのが1番近いかもね。

 

 あなたがやろうとしていることは妖夢のスペルカードにも近いかしら。

 妖夢の場合は半霊を自分の姿に変化させる事が出来るからね。

 あなたの場合は精神や魂を一時的に切り離して

 切り離した魂に別の姿を取らせる、そんな所かしら」

「近いわね、ただフィルの場合は片鱗を見せるだけよ。

 あなたの魂を切り離すと言うよりは、あなたの姉を切り離すわ。

 だけど、あなたの力は全く減衰しない。あなたなら出来るわよん」

「魂を切り離すのに弱体化しないとかあり得るの?」

「あり得るわ」

 

そ、そうなんだ…そんな事が出来るなんて思わなかった。

でも、出来るなら凄く強そうだね!

 

「と言っても、これはそんなに難しい事じゃ無い。

 少なくともフィル、あなたが扱う分では難しい事では無いわ。

 あなたは姉達の姿をイメージして、具現化すると信じれば良い」

「どう言うことですか?」

「私の言葉に身を委ねれば、それで良いのよ」

「…は、はい」

 

どうすれば良いのか分からないけど、とにかくやってみよう。

私はヘカーティアさんに言われたとおり、お姉ちゃん達をイメージする。

どんな姿かは全く分からないけど、声とか雰囲気でイメージする。

 

「……」

「そんな途方も無い事が出来るのかしら」

「出来るわよ、彼女は途方も無い存在なのだから。

 本来であれば、幻想郷所か、宇宙さえ破壊し尽くす存在よ?」

「えぇ!? 何言ってるんですか!?」

「あ、聞いてたのね」

「そ、そんな私なんかが宇宙って、あ、あり得ませんよぉ!」

「自覚しなさいよ、あなたは本来、それ位は容易に出来ちゃうのよ?」

「そんな馬鹿な!」

 

わ、私なんかがそんな事出来るわけ無いのに…

うぅ、で、でも、周りから散々言われてるし…本当なのかも?

フェンリルの伝承は地球を丸呑みにするくらい凶悪な存在。

北欧神話における主神である、オーディーンを捕食した狼。

神様と巨人の間に生まれた、魔狼…強大にヨルムンガンドとかも居る。

 

テュポーンは全能の天敵と言えるくらいに巨大な魔獣。

子供達を殺されて怒り狂ったガイアが子供達を殺した神様である

全能の神、ゼウスを倒すために神さえ恐れるタルタロスとの間に設けた子供。

所詮は神話だけど、私がそう言う存在なのだとすれば…可能性はある。

実際に神話ではテュポーンはゼウスを追い込んでるし…凄く強いんだろうね。

 

「で、でも、もし私がそんなに危険な存在なら

 どうしてヘカーティアさんは私を鍛えるんですか?

 神話で言えば、ヘカーティアさんはゼウス側ですよね?」

「あら、一応神話とか知ってるのね、意外」

「そ、外の世界で過ごしてたとき、暇で色々と読んでましたし」

「そうなの、まぁ私があなたに力を貸す理由は

 あなたが危険な存在では無いと知れたからよ?

 それに、力が制御出来ないって方が危険だしね。

 暴走とかしちゃったら大変でしょ? だから鍛えてあげるの」

「な、なる程…」

 

た、確かに凄い力があるのに制御出来ないって言うのは危ないよね。

納得出来たよ。私を鍛えるのはそう言う理由があるんだね。

でも、なんでいきなり? 何をそんなに急いでるんだろう?

 

「疑問は取れた? なら、もう一度精神集中よ。

 あなたのお姉さん達が待ってるわよ?」

「は、はい!」

 

頑張ろう、確かにお姉ちゃん達に出会いたいって思うからね。

精神集中…絶対に上手にやりきってみせるよ!


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