東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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脳筋過ぎるお姉ちゃん

魔界で修行をしたお陰で

何とかお姉ちゃん達を呼び出せるようになった。

でも、あまり長い時間は出せない。

 

お姉ちゃん達が言うにはあまり分離はしない方が良いそう。

お姉ちゃん達がそう言うなら、きっとそうなんだろうね。

私はいまいち分からないから、信じて従うしか無い。

 

修行も終わったことで、私は一足先に幻想郷に戻った。

霊夢さんと魅魔さんは修行をまだするらしいけど。

 

「幻想郷かぁ、すぐ帰ってきたね」

「そうだね」

 

ひとまずはお姉ちゃん達を召喚した状態で帰ってきた。

少しでも長い間、お姉ちゃん達に不便を掛けないように

練習も兼ねてるって感じだね。

 

「はぁ、のどかな場所過ぎて飽きが来るがな」

「あのさ、僕達が刺激を感じるレベルって

 世界崩壊クラスじゃん?」

「良いじゃねぇか、その方が燃えるっての」

「燃やす方だよ、僕達は。そもそも平和じゃ無くなったら

 フィルが悲しんじゃうだろ? 全く姉なんだし自覚しなよ。

 立ち位置的には僕より上って感じなのにさ」

「ほぅ、自覚あったのか? じゃあ、俺が1番だな」

「あ、じゃあテュポーンお姉ちゃんが長女だね。

 で、次女はフェンリルお姉ちゃんで、私が一番下だね」

「フィルがそれが良いって言うなら従うよ。

 逆だろうとね。こいつも従うだろうし」

「まぁ、フィルが俺が次女が良いってんなら従うぞ」

「テュポーンお姉ちゃんは長女だよ、うん」

「じゃ、俺が長女だな」

「従うよ、僕もね」

 

2人が少し笑いながら私の意見に答えてくれた。

でも、何で私本位なんだろう…うーん

 

「ふふ、ここが幻想郷か、随分とのんびりしてるじゃ無いか」

「んー? 随分と変なのが居るな? 何だその格好」

「おぉ、何だお前達は。随分と強そうじゃないか」

「お前は随分と弱そうだな」

「馬鹿、僕らに比べたら大体は雑魚だよ?」

「何と、開口一番喧嘩を売ってくるとは、ふ、その度胸面白い!

 勁牙組の組長として、その喧嘩、買ってやろう!」

「ほぅ、そりゃ良いな。ち肩慣らしにもならねぇだろうが

 この姿で軽く動いてみたかったんだ、来いよ烏野郎。

 格の違いを見せてやらぁ!」

「烏!? 私は馬だ! ペガサスだ!」

「……あ、そうなのか? ほぅ、見た目は完全に鳥なのに」

「見た目は案外役に立たないんじゃないかな?

 あんたもパッと見、ただの狼だろ?」

「そ、その姿は私のイメージだから……」

「ま、フィルがそう思ってるなら何だって良いぜ。

 とりあえず準備運動に付き合ってくれよ、馬」

「ペガサスだ!」

「おぉ、ペガサスか。まぁ良いだろ? 馬もペガサスも。

 どうせ翼があるか無いかの違いしかねぇんだから」

「いや、その違いが1番大事というか…」

「ん、そうだな、確かに翼が有るか無いかの違いだけか。

 なら大した事は無いな、馬でも良いぞ」

「良いの!?」

 

な、何だろうこの2人の会話……もしかしたらこの人とお姉ちゃん

性格似てるのかな? う、うーん、何となくそんな気がしてきたよ。

何か2人とも凄く好戦的だし何か楽しそうだし。

 

「あー、こりゃあっちも馬鹿だね」

「ハッキリ言わないでよ、フェンリルお姉ちゃん」

「さぁさぁ! 来やがれ馬! 軽く相手してやるぜ?

 一応は手加減してやるよ、そうじゃねぇと楽しめねぇからな。

 テメェは出し惜しみ無しで来な! そうじゃねぇと楽しめねぇ!」

「調子に乗るんじゃ無いぞ! 勁牙組組長

 驪駒早鬼(くろこまさき)の強さ! 見せてやる!」

 

その言葉と同時に、黒駒さんが地面を蹴った。

彼女が蹴った地面は大きくひび割れ、どれ程の勢いだったのか

その光景を見ただけで、容易に想像することが出来た。

 

「へ、ちょっとは速いな」

「ッ!」

 

だけど、テュポーンお姉ちゃんは一切怯むことなど無く

彼女に軽い拳を叩き込む。

黒駒さんはその攻撃をギリギリで頬を掠めるように避ける。

 

「少し驚いたが終りだ!」

「んー?」

 

避けると同時に彼女はテュポーンお姉ちゃんに強烈な膝打ちを入れた。

音から分かるけど、普通なら死んでしまうほどの威力。

だけど、テュポーンお姉ちゃんはその一撃を受けても

一切その場から動くことも無く、不敵に笑っていた。

 

「嘘だろ……」

「何だよ、ビビるこたぁねえだろ?

 まぁ、良い蹴りだってのは認めるが、そんなんじゃな」

「ふ、ふふ、面白い!」

 

一瞬だけ焦りの表情を浮かべた黒駒さんだけど

すぐに笑顔を取り戻し、一歩下がると同時に

テュポーンお姉ちゃんの顔めがけて蹴りを仕掛ける。

 

「そら!」

 

その動きを見てすぐ、テュポーンお姉ちゃんも同じ様に蹴り

黒駒さんの蹴りに思いっきりぶつけに行った。

2人の蹴りが衝突すると同時にとんでもない衝撃波が出て来た!

 

「うわぁ!」

「ふーん、こんな衝撃波って出るんだね」

 

うわぁ、あの2人の蹴りがぶつかったすぐそこの地面が抉れてる。

な、何なの…あのとんでもない次元の攻撃!

 

「中々の蹴りだな、お前」

「お前も案外やるな」

「だが、勝つのは私だ!」

「良い根性だ。そう言う馬鹿な気合いってのは大好きだぜ?

 どうしようも無い位にアホだが、それもまた面白い」

 

また蹴りと蹴りがぶつかった! このままだと色々と抉れるんじゃ!?

 

「はぁ!」

 

黒駒さんが蹴りの後、すぐに体勢を戻して

瞬時にテュポーンお姉ちゃんの首に強烈な蹴りを叩き込んだ。

2人の蹴りがぶつかるときと同じ様に鋭い音が響く。

 

「……ふ、だがまぁ、もうちょっと威力が欲しいな?」

「……」

 

テュポーンお姉ちゃんは全くダメージを受けてる様子がない。

あの蹴りを受けてなお、一切表情も変わってない。

変わらず不敵な笑みを浮かべて、黒駒さんの足を掴んだ。

 

「何!」

「一撃で沈むなよ?」

「がふぁ!」

 

か、片手で黒駒さんを持ち上げて、地面に思いっきり叩き付けたぁ!?

ちょ、ちょっと! 地面が! 地面が抉れてるってレベルじゃないよ!?

な、何かが爆発したような音が聞えたよ!? ちょっと!

 

「あ、あわわ! な、何やってるのテュポーンお姉ちゃん!

 し、死んじゃうよ!? そんな事したら死ぬよ!」

「かなり加減したんだぜ? この程度でくたばるならその程度だ」

「く、ぅ」

 

す、砂埃の中で何かが立ち上がるような影が見えた!

 

「まだだ!」

 

い、一瞬のうちに砂埃が全て四散し、すぐに距離を詰めてくる

黒駒さんの姿が見えた。周りの砂埃全てが消えるほどの速さ!?

 

「良いな、その根性。素晴らしい限りだぜ?」

「あぐ!」

 

だけど、近付いてきた黒駒さんの攻撃は当ってなかった。

代わりに黒駒さんにテュポーンお姉ちゃんの一撃が逆に当っていた。

 

「ば、馬鹿な…こ、こんなに強いなんて……

 こ、この私が…手も足も出ないだと……」

「お前はよく頑張ったぜ? 相手が悪すぎただけだ。

 流石勁牙組とやらの組長さんって奴だな?

 俺とやり合って、その足で逃げなかったのは褒めてやる」

「わ、私は決して逃げないぞ…背は向けない!」

「ほぅ、まだ立つのか。結構楽しいな。

 じゃあ、次で終りにしてやるよ。死ぬ覚悟は出来たか?

 次の一撃はテメェに対しての礼儀として

 本気でやってやるよ、死ぬ準備が出来たら来な。

 安心しろ、骨は拾ってやるよ。特別だ」

 

て、テュポーンお姉ちゃんからとんでもない殺気を感じる!

え!? 本気で殺す気なの!? 本気なの!?

 

「舐めるな!」

「さよならだな、名前は覚えてやるよ、黒駒!」

「あぁ! 待ってテュポーンお姉ちゃん!」

 

本気で殺す気なの!? 止めて!

 

「止めてってばぁ!」

「うぉ!」

「なに!」

 

い、痛いかも……さ、流石に2人の間に入ったのは失敗かも。

ちょ、ちょっと腕が痛い……痺れるよぅ。

 

「そ、そう簡単に誰かを殺さないでよ……」

「……そ、そうだな、済まねぇ」

「な、何……私とあいつの攻撃を受けて無傷だと!?」

「テュポーン! 君は本当に馬鹿だな!

 フィルが怪我したらどうするつもりだったのさ!?

 本気でぶん殴るなんて気が狂ってるのか!?」

「ま、まさかフィルが入ってくるとは思わなかったんだよ!」

「フィルなら止めるって。僕がもうちょっと強ければ

 フィルの代わりに止めただろうけど、残念な事に

 僕の力じゃ君の本気は止められないからね…情け無いよ」

「本当にすまねぇ、フィル! 調子に乗った! 謝罪する!」

「もう……相手を殺そうとしないでよ……」

「……お前達は知ってたのか? この娘がここまで強いと」

「当然知ってるよ……」

「まぁな…」

 

わ、私……今、冷静に考えてみると…凄く馬鹿な事をしたよね…

あ、あれ、テュポーンお姉ちゃんが本気だったら死んでたんじゃ…

 

「で、でも要らない心配だったかもね。

 本気じゃ無かったんでしょ? テュポーンお姉ちゃん」

「え?」

「……ま、まぁな」

「ほ、本気じゃ無かったのか!?」

「そ、そう言う事にしておいてくれ」

 

うぅ、でも腕が痛い……やっぱり結構力を入れてたんだろうし

無茶をするべきじゃ無かったかなぁ。

 

「とにかくだ、今回はここまでにしておこう。

 これ以上はフィルに怒られちまうからな。

 嫌われるのはごめんだ。黒駒、また今度やろう。

 そん時は殺そうとはしねぇよ」

「に、逃げる気か!?」

「まだ戦おうって? スゲー根性だな。

 だが、今回はもう駄目だ。お前の勝ちで良いぜ?

 俺としちゃぁ、これ以上やってフィルに嫌われるくらいなら

 お前に負けたって方がマシだからな」

「……いや、私の負けだ……まさか私が手酷くやられるとは思わなかった。

 まだまだ鍛錬が足りないようだ、鍛え直してくる」

 

そう言い残し、彼女はその場からとんでもない速度で消えた。

速いなぁ、流石はペガサスだね。

 

「意外と退くときは退くんだね、あの子」

「意地汚く勝ちに拘るよりは、ああ言う方が良いだろ」

「そうだね……後、テュポーンお姉ちゃん」

「な、何だよ……」

「絶対に相手を殺そうとか思わないでよ!?」

「わ、分かった! 分かったから睨まないでくれ!

 本当に俺が悪かった。マジで反省する。

 それより、お前腕大丈夫か? 折れてないか?」

「折れてないよ? 仮に折れてたとしてもすぐ治るし」

「そ、そうだな……流石フィルだ」

 

はぁ、あと少しで酷い惨状を見ることになってたかも。

多分ただの勘違いだけど…暴れないで欲しいなぁ。

 

 

 

「なぁ、本気で殴ったんだろ?」

「あぁ……やっぱフィルには勝てねぇな」

「当然だけどね。僕らは所詮フィルが持つ力の一部だ。

 勝てるわけ無い。ま、それでも守っていこうよ。

 守る必要は無いかもだけど、支えてあげなきゃね」

「あぁ、最初からそのつもりだよ」


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