黒駒さんとテュポーンお姉ちゃんの戦いの後
私達はすぐに紅魔館へ移動したけど。
「……寝てるね」
「あぁ、寝てるな」
「大した根性だよ」
今日は珍しく美鈴さんが立ったまま眠ってた。
鼻提灯は流石に出てないけど、何とも幸せそうな顔だよ。
「うーん……結構出来ると思うんだけど、抜けてるね」
「出来る? まぁ、それなりに強かったな、こいつ」
確かに美鈴さんは凄く強いからね。
何だか頼りになるって感じだしさ。
こう、いざと言う時は本当に頼り甲斐があるよ。
「しかし、本当にこんなんで門番できるのか?」
テュポーンお姉ちゃんが少し不安そうに美鈴さんに手を伸ばした。
同時に美鈴さんが素早く動き、テュポーンお姉ちゃんに蹴りが飛んで来る。
「へぇ、意外と動くんだな」
唐突な動きだったけど、テュポーンお姉ちゃんは
一切動じること無く、美鈴さんの蹴りを受け止めた。
そして少しだけ嬉しそうな表情を見せた。
「ま、伊達や酔狂で門番させてた訳じゃねぇのか。
眠ってる状態でも動けるたぁ、中々だしよ」
「完全な不意打ちだったと思うけど、サラッと防ぐんだね」
「凄いよね、美鈴さん! どうすればこんなに動けるのかな!?」
「……そうね、普段からサボってたら出来るんじゃない?」
後ろから聞き慣れた声が聞えたと思うと
美鈴さんの形をくり抜くようにナイフが美鈴さんの背後に突き刺さってた。
同時に青ざめた表情で美鈴さんが目を覚ます。
「あ、えっと……ふぃ、フィルさん、お、おはようございます…」
「あ、はい、おはようございます……」
「いやいや、今は昼だよ? こんにちはじゃないかな?」
「そうね、もうお昼休憩の時間は終わってるわね」
「……そ、その」
更に青ざめた…あ、あはは、確かに咲夜さんの威圧感凄いしね。
何だか黒いオーラのような物が見える気がするよ。
「まぁ、ひとまずフィルお帰りなさい。
それと、後ろに居るヤバそうな2人について後で話を聞かせて。
お嬢様と一緒にお話を聞くから。ただ、少し待ってなさい。
ちょっとサボってばかりの役立たずにお灸を据えた後でね」
「わ、わわ、私のお仕置きよりも、ふぃ、フィルさんのお話の方が
こう、有意義と言いますか! 価値があると思います!」
「大丈夫よ、あなたへのお仕置きは所詮、片手間だから」
「ひゃぁー!」
さ、咲夜さんが指を鳴らすと同時に美鈴さんがその場で倒れた。
え、えっと、時間を止めた間に攻撃したって事なのかな…
ちょっと容赦なさ過ぎるような気がする!
「いやぁ、便利だね時間停止」
「所詮大した事ねぇ手品だろ? 便利って程でもねぇだろ」
「あのね、僕らみたいな規格外は便利とも言えないかもだけど
普通は凄く便利だからね? 時間停止とか時間操作って」
「時間とかぶっ壊せば良いだろ、面倒くさい」
「それが出来るのが異常なのよ……
えっと、まぁ軽く規格外の会話を聞いた感じ
あなた達はフィルがお姉ちゃんとか言ってた奴ら?」
「そうです! 私のお姉ちゃん達です!」
「フィルの力で具現化しててね、まぁ詳しい話は
フィルが大好きなご主人様の前でお話しするよ」
「そう、分かったわ。じゃあ、案内しましょう」
私達は咲夜さんと一緒にお嬢様の部屋の前に移動した。
うぅ、何だか久しぶりな気がするよ。
長い間外出してたわけじゃ無いけど
やっぱりちょっと長く外出してたら懐かしく感じるよ。
「お嬢様、失礼しますわ」
ゆっくりと咲夜さんがレミリアお嬢様の部屋へ続く扉を開ける。
扉が開いた先には、紅茶をゆっくりと嗜んでるレミリアお嬢様が居た。
と、言う威厳ある感じじゃ無くて、目を擦りながら布団から出ていた。
服装は下着だけで……ま、まぁ、暑いもんね、今日は。
「咲夜~、お昼に起すなと言ったじゃ無い。
よっぽど急な用事じゃ無い限りは寝かせてよ~
ふぁぅ……あぁ、忌々しい太陽め……眩しいわよ…」
「失礼しました、レミリアお嬢様。
フィルが帰ってきたので急な用事と判断しましたわ」
「え!? フィルが!? って、居るじゃないの目の前に!」
「あ、はい……お、お久しぶりです、レミリアお嬢様」
「ちょ、ちょっと咲夜! 何でこう、もっとこう!
ちょ、ちょっと急いで服! 服着替えさせて!
咲夜ぁ! 扉閉めなさいよ! ちょ、ちょっと待って!」
「あ、はい」
と、扉が閉まると同時に咲夜さんの姿も消えた。
「……うん、知ってたけど結構府抜けてたんだね」
「あれが素なのか? フィルの前じゃ格好付けてたのかもな」
「れ、レミリアお嬢様は格好いいときと普段で全然違うから…」
「まぁ、あの姿を見たら分かるけどね」
それから少しして、扉がサイドゆっくりと開き
優雅な雰囲気でレミリアお嬢様が私達を出迎えた。
「こほん、ひ、久しぶりねフィル。しゅ、修行の成果はどう?」
「いやいや、今更そんなに威厳出さなくてもさ、もう遅いよ?
と言うか、修行の成果は聞くまでも無いでしょ?」
「だな」
「……咲夜ぁ! 何か変な奴ら居るんだけど!?」
「フィルのお姉ちゃん達だそうです」
「はぁ? フィルの? え? 何? あの2人が!?
えっと、フェンリルとテュポーンとか言う化け物!?」
「ば、化け物じゃありませんよぉ!
わ、私を支えてくれてた大事なお姉ちゃん達ですよ!」
「そ、そうね、失礼。ちょっと言い方が悪かったわ」
「まぁ僕らがどうとか良いんだけど、ほら、化けの皮剥がれてるよ?
ちょっと所か、かなり素が出てるよ?」
「ち、違うわ!」
れ、レミリアお嬢様が再度焦ったようにその場を取り繕った。
そして、身だしなみをちょっと整えるような動きの後
小さく咳払いをして、再び私達の方を見た。
「と、とにかくあなたの…えっと、姉なのよね?
どうやって具象化してるの? と言うか、どう言う状況?」
「今回、魔界での修行で色々と教えて貰って
イメージの具現化って言うのを教えて貰ったんです。
そして私はそのイメージの具現化で、お姉ちゃん達を具現化したんです」
「元々、僕らはフィルの中に現われた別人格だからね」
「今回の修行とやらで、フィルはその別人格に姿を与えたのさ。
それが俺達だ」
「まぁ、本来は形無い意思だけの存在である僕達に姿を与え
そして、一時的な肉体を与えたと言う事だよ。
当たり前の様に規格外だけど、今更でしょ?」
「……そ、そうね」
少し驚いたような表情を見せて、ちょっとだけ苦笑いをした。
や、やっぱり本来は凄い事なんだろうね。
神様が教えてくれた技術だし、当然なのかな。
「まぁ、僕達は君達に敵対する理由はないんだ。
フィルが君達に敵対すれば話は別だけどね。
だって、僕達はフィルの味方であり、君達の味方じゃ無い」
「まぁ精々、フィルを泣かせねぇように気を付けろよ。
もしフィルを泣かせたらぶちのめすぞ?」
「泣かせるわけが無いわ、フィルは私の家族だからね。
まぁ、そんなフィルの姉だというなら、私は受入れる」
「ふーん、あっそ」
レミリアお嬢様が迷い無い言葉で2人に言葉を伝える。
私もその言葉を聞いて、何だか安心した気がした。
不安になる要素なんて無いけど、でもやっぱり
確信に変われば、やっぱり心が軽くなる気がする。
「だから、あなた達にもこう言わせて貰うわ。
お帰りなさい、今日はゆっくりと休んでね」
「はい、ありがとうございます!」
「意外と度量が凄いね、寛大というか無謀というか」
「お姉ちゃん」
「うん、ごめん」
よし、この後はフランお嬢様にもお話しをしよう。
やっぱりここは落ち着くよ。
もうここは私の居場所という証拠なんだと思う。
安心出来る場所……そんな場所を失わないでよかった。
本当に皆さんに感謝しないと、私が私のままで居られたのは
皆が私を支えてくれたから……本当にありがとうございます。