レミリアお嬢様とお話しするのは久しぶりだね。
でも、レミリアお嬢様が恥ずかしがるから
お姉ちゃん達は一旦姿を消した。
その間、お姉ちゃん達は咲夜さんに案内して貰って
紅魔館の構造を再度、自分達の目で確認するそうだけど
正直、必要は無いと思うね。出任せなんだと思う。
「さて、久しぶりね。こうやって話をするのは」
「そ、そんなに久しぶりでしたかね?」
「久々よ、家族間の会話って奴は大体1週間も開けば
それはとんでもなく久々な会話でしょう?
当たり前と言うのはちょっとでも長く感じるのよ」
レミリアお嬢様がちょっとだけからかう様な表情を見せる。
若干微笑んでおり、何と言うか楽しそうだった。
「そうですね、レミリアお姉ちゃん」
「……お、お姉ちゃん?」
「あ、す、すみません! つ、つい口が!
ずっとお姉ちゃん達と話してたから!」
うぅ、や、やったった! こ、ここでこんなミスをする何て!
うぅ、レミリアお嬢様、き、きっと怒ってるよね!?
お、怒ってるよね!? あれ? あまり怒ってない…様な?
「ふ、お姉ちゃんと言われるのも、何だか新鮮な物ね。
フランにはずっとお姉様と呼ばれてるし、呼ばしてたからね。
誇り高き吸血鬼の妹なのだから、そう言った礼儀は必要だけど
でも、たまに砕けるのもありかも知れないわね。
ま、フランになら何と言われようとも私は構わないのだけど
流石にあいつとかは呼ばれたくないわ」
「そ、そう言えば呼ばれてましたね……最初」
「や、やっぱり呼ばれてた? い、いやまぁ……
確かにあの時は結構距離があったし……
で、でも! 今は違うのよ! ちゃ、ちゃんとべったりよ!
結構抱き付いてくれることが多くなってきたわ! 姉冥利に尽きるわ。
まぁ、抱き付かれる度に絞め殺されそうになるけど……
ふ、私が最強の吸血鬼でなければ、間違いなく死んでるわね。
でもまぁ、最近フランの怪力が凄まじくなってるから
私もそろそろ鍛えないと、本当に絞め殺されてしまうわね。
あの子、いつの間にあんなに強くなったのかしら。疑問だわ」
フランお嬢様、最近強くなってるんだね。流石だよ。
「しかし、あなたにお姉ちゃんと呼ばれるとは思わなかったわね」
「も、申し訳ありません……」
「まぁ、そこまで気にはしてないわよ? 今更だしね。
しかしながら、やっぱり妹って良いわね。姉として誰かと語りたいわ」
「あはは、わ、私は妹だから分かりませんけどね…」
そんな会話をしていると、何かが砕けるような音が聞えた。
正確には岩が砕けるような、そんな音だった。
「ちょ! デカい音出たじゃ無いか この怪力馬鹿!」
「う、うるせぇ! ち、畜生…あの吸血鬼めぇ!」
「落ち着きなさい、お姉さんでしょう? 堪えなさいよ。
嫉妬に狂うのは三下のする事よ。一流であれば
楽しそうな会話を聞いて、一緒に楽しむのが普通よ」
「メイド、あんたも何か表情変だよ!? 若干惚けてない!?」
「ふ、レミリアお嬢様が素直になられる場面はレアよ。
特にフランお嬢様に対してデレるのは奇跡の様な瞬間。
まぁ、最近は多くなったけど、やはり尊いわね」
……聞える、ドアの外から変な会話が聞えるよ!?
「……あんたらぁ! 特に咲夜! 何聞いてるのよ!」
「うげ! しまったバレたぞ! 何でバレたんだ!?」
「あんたのせいだよ怪力馬鹿!」
「何か、あなたって結構馬鹿よね」
「何!? 俺の何処が馬鹿だって!?」
「全部だよ、ほらさっさと下がる!」
「あ! 離せクソ狼! うおぉ! フィルは俺の妹だぁ!」
「知ってるよ! 過保護なんだから!」
そんな会話が聞えた後、ドタドタと騒がしい足音が聞えた。
……咲夜さんの能力使って、音も無く消えればよかったんじゃ?
ま、まぁ良いんだけどね……あ、あはは。
しかし、テュポーンお姉ちゃん……大丈夫かな?
「……あ、あなたの姉は随分と過保護ね…」
「あ、あはは……何ででしょうか」
「まぁ、あなたは随分と可愛らしいからね。
そんなあなたと常に一緒に居て、
常に守ってきたあの子達からしてみれば過保護になるのも頷けるわ。
ま、あんたは結構努力家だし、その姿を見てたら
守ってあげたいとか、そう言う思いが強くなるんでしょうね」
「そ、そうですかね? でも、皆頑張ってるのが普通じゃ」
「ふふ、それが普通でもその普通がとても素晴らしいのよ。
ありきたりでも輝いて見える。それが努力という物よ。
ま、私が言ったところで説得力は無いかもね。
咲夜とかが言えば、説得力は十分ありそうだけどね」
咲夜さんは今、私の目には完璧な人にしか見えない。
ちょっと残念な所もありそうだけど、それでも輝いて見える。
でもそれは、やっぱり……努力してたから、何だろうね。
「しかし、家の館も…本当に本当に賑やかになったと言えるわ。
今までは静かだったのに…霊夢と魔理沙が来て私達を変えて
今まで以上に楽しくなってた。そして、あなたがやって来て。
私達は本当の意味で楽しく過せてると思うわ。
楽しくすごしてる中に、私の妹が居る。
……元凶は私だけど、でも、嬉しいと思えたわ。
……だけど同時に、あの子は私を怨んでるんじゃ無いかって。
そんな思いだって、存在してるわ。そんな訳無いって思っても
どうしても、私には罪悪感が拭えきれない」
レミリアお嬢様の表情が僅かに変化する。
さっきまでの楽しそうな微笑みから
自分を少し貶んでるような、そんな笑みになる。
笑顔に影が差してると、私にも分かる程にね。
「レミリアお嬢様。大丈夫です。
フランお嬢様はレミリアお嬢様を怨んでませんよ」
「えぇ、分かってるわ。分かってるけど……私が私を怨んでるのよ」
「咲夜さんから聞きました、その行動はフランお嬢様を守る為って。
フランお嬢様の強すぎる力を暴走させないためにやったって」
「……それは所詮、言い訳に過ぎないわ。私はうろ覚えだけどね
ただ単に、あの子が……そう、恐かったのよ。私よりも強い妹。
誰よりも強くあろうと思った私には恐怖の対象でしか無かった。
建前はあの子を守るためと言いながら、きっと本心は」
「それは昔の話し何ですよね? だったら、これから変えれば良い」
「でも」
「大丈夫です。だって、レミリアお嬢様は私も受入れてくれた。
そして、フランお嬢様を今、受入れてる。
昔、未熟で恐がりだったとしても、今のレミリアお嬢様は違う。
色々な人の心を惹き付けるような、そんな強い人になってるんです
大丈夫ですよ。今、そんな風に強くなれてるならこれからもっと強くなれる。
そして、もっとフランお嬢様を包み込んで、色々な人を包み込んで
いつかきっと、色々な人に今以上に認められる。そんな凄い人になります。
大丈夫ですよ、どんな時でもきっと大丈夫だって信じていれば
必ずそんな風になれます。祈りの力は凄いんですよ?
暴走しちゃった私を止めるくらい、凄い力を秘めてるんですから」
私はまだまだ経験が浅い。生まれてあまり時間が経ってない。
レミリアお嬢様の方が私よりも遙かに長生きだろうね。
でも、私は未熟だからこそ、こんな考えをする事が出来る。
私は、失敗した事が殆どないのだから。だからこそ言える。
人生の挫折。そんな思いは既にしてるけど
今の私は救われてる。色々な祈りに支えて貰ってここに居る。
だから、私は人の意思や思いの強さを知ってる。
だから、こんな風に言える。結果は分からないし無責任だけど
それでも、この言葉を堂々と言う事が出来る。私も同じ様に頑張ると
そう決めてるんだ。だから、私は諦めないよ。もっと凄くなるって。
私を助けてくれた、色々な人を助ける為にも私はもっと成長するんだ。
「……ふふ、そうね。あぁ、そうだったわ。
私は既に無理を通して、祈りや願いの大きさを知ったわ。
フランに対して後ろめたい気持ちがあるのなら
その気持ちを拭えるように、必死に努力すれば良いのよね。
それに単純な話よね。昔、悪い事をしたと思うのなら
これからはあの子に与えた苦しみ以上の幸せを与えれば良い。
それが、姉としての責務よね」
「はい! レミリアお嬢様!」
レミリアお嬢様がにっこりと笑った。とても輝いて見える笑顔。
眠ってるフランお嬢様の笑顔もまるで天使の様だったけど
今、私の目の前で確かな覚悟と共に幸せそうに笑ってるレミリアお嬢様
その笑顔も、天使の様に眩しく美しい笑顔に見えた。
レミリアお嬢様の部屋に僅かに入る日の光が霞むくらい
元気で力強い、そんな輝いて見える笑顔だった。
「ふ、やっぱりあなたに話をすると気分が良いわ。
流石は……ふふ、私の大事な家族ね」
レミリアお嬢様が少しだけ目を逸らし、恥ずかしそうに笑いながら
私の事を小さな声で家族と呼んでくれた……嬉しいなぁ。
最初はペットだったのに、今は家族。うん、もっと頑張ろう!
「くぅ! 良い雰囲気だ! 羨ましい! 俺も楽しそうに話ししてぇ!」
「君は無理だよ……会話とか出来るのかすら疑問だ」
「な!? 馬鹿にしやがったな!?」
「あぁ、馬鹿にした。馬鹿を馬鹿にして何が悪いんだい?」
「テメェ! 言わせておけば!」
「止めなさい2人とも、今、凄く良い所よ! 邪魔しないで!
ようやくレミリアお嬢様が素直になれたシーンなのに台無しよ!」
「うっせぇ! このメイド! 何か真剣な表情がどっかキモいぞ!」
「この咲夜、幸せ者ですわ」
「大丈夫なのかな? このメイド」
「知らん! それより俺もフィルとあんな雰囲気で会話してぇ!」
「だから、君には無理だよ……」
凄く会話が聞える! 隠す気が無い会話が聞える!
やっぱり扉の向こうから凄い大声が聞える!
「……あなたの姉は本当に……過保護ね」
「あ、あはは……」
「何してんの? お姉様の部屋で楽しそうにさ。
てか、お姉さん達だーれ?」
「んぁ? あぁ、妹の方か。起きたのか」
「ふーん。まぁ僕らはフィルの姉だよ」
「へぇ、フィルにお姉様居たんだね。
じゃあ、私もお姉様って呼んだ方が良いのかな?」
「なぁ!」
あ、レミリアお嬢様が反応した。
「ふーん、ふふ、君がそう呼びたいならそう呼びなよ。
因みに僕はフェンリルだ。フェンリルお姉様と呼んで良いよ」
「うん、分かったよフェンリルお姉様」
「こ、こらぁ! フランは私の妹よぉ!」
「おぉ! 姉の方が飛び出してきたぞ!」
「レミリアお嬢様も過保護ですね」
「うっさい! てか咲夜! あんた何やってんのよ! 下がれって!」
「下がってましたとも、あの瞬間は。ずっと下がってないだけです」
「このぉ! てか、そこの狼! フランに変な事言わせるな!」
「ふふん、僕はこの子と言うより、君をからかっただけだよ?
過保護だねぇ、お・ね・え・さ・ま?」
「馬鹿にするなぁ!」
「おぉ、恐い恐い、それでは失敬」
「あ! なんて逃げ足! 咲夜捕まえなさい!」
「いや、あれは無理ですよ」
さ、流石フェンリルお姉ちゃん、凄く速いね……
「くぅ、あ、あの狼めぇ!」
「あいつ、からかうの好きだよな。俺の事もいつもからかいやがる」
「それは正直、あなたがからかいやすいだけだと思うわよ」
「俺の何処が!」
「単純なところね」
「く……ちぇ、まぁ良いか。いつも通りだなったく」
「あ! フィル! 帰ってたんだ!」
「あ、はい。挨拶しようと思ってたら寝てたので」
「ごめんね-、でも、久しぶりだね! えい!」
「ひゃひ!」
ふ、ふふ、フランお嬢様が私の尻尾を!
「にゃぁあー!」
「おぉ!」
「尻尾、弱いのね」
「うぅ、し、尻尾を触られると何か……うぅ、ごめんなさい」
「ふーん、尻尾ってのは不便だな。俺にもあるが」
「こんな風になるよ」
「……何か変な感じになるのか? さっぱりだ」
「あれ? テュポーンお姉ちゃんは大丈夫なのかな…」
「まぁ、元々そいつ、狼じゃ無いからね。
分類的には蛇さ。僕の方は狼だけど」
「あ! 狼! いつの間に!」
「僕は動きが速いよ? フィルのお姉ちゃんだし当然じゃん」
「まぁそうだけど……」
「じゃあ、お前は尻尾弱ぇのか?」
「そうだねぇ、尻尾と耳はちょっと苦手かな」
「じゃあ、触ってやるから来いや」
「断わるね、フィルに触らせるならまだしも
誰があんたみたいな脳筋に触らせるもんか」
「フィルはセーフなのね」
「まぁね、大事な妹のお願いなら聞くよ。それが姉って奴さ」
「じゃあ、触らせて、フェンリルお姉ちゃん」
「あ、すぐやるんだ。まぁ言った手前やっぱ駄目ってのはあれだし
い、いいよ、さ、触ってよ……」
フェンリルお姉ちゃんがちょっとだけ頬を赤くして私の方に来た。
そして、少しだけ頬をかいた後、私に耳を見せてくれる。
「あ、あのー、で、出来れば、や、優しくお願いね……
いやうん、フィルは知ってるだろうけど、び、敏感だし。
い、いきなりがしっとかされたら、僕も痛いし」
「大丈夫だよ、優しく触るね。はい」
「ひゃぅ!」
「可愛らしい声出すな」
「う、うりゅさいにゃ! な、慣れないんだよぅ」
「本当に弱いのね、頬が赤いわよ? 敏感なの?」
「そ、そうだよぅ。あ、同時には」
「尻尾も」
「にゃふぁぁうあ!」
「おぉ!」
ふぇ、フェンリルお姉ちゃんが変な声を上げて起き上がった。
「はぁ、はぁ、や、やっぱ無理! ど、同時は無理だよ!」
「……ぷふ、くふふ、な、何つう表情、くふ、わ、笑っちまうぜ!
普段滅茶苦茶余裕そうなのに、情けねぇな! 惚けてるぜ!」
「う、うるさい! これは分かる奴にしか分からないデリケートな部分だ!
お前みたいな脳筋には分かりやしないのさ!」
「あっはっは! 強がっても表情のせいで遠吠えにしか聞えねぇ!」
「こ、このぉ!」
「まぁとりあえず、あんたらにしてみれば尻尾って弱点なのね」
「ま、まぁね……弱点として機能しそうになった場合
僕は自分で耳を切るけどね」
「恐いわね!」
「当然さ、どうせ生えてくるしね。あ、尻尾も切るよ。
理由は同じで、どうせ生えてくるからね。
因みに手を触れる必要も無く切れるよ。ブチッと」
「恐いわよ、それ」
うん、尻尾も耳も結局生えてくるからね。私も経験あるし分かるよ。
「しかし、何だかんだ言ってあんたもフィルの事大事にしてるのね」
「何を当たり前の事を。僕の妹だよ? 大事にするさ。
勿論、お願いされたら何だってする。世界を滅ぼせと言われれば
僕は世界を丸呑みにしちゃうよ」
「だから恐いのよ! 規模が!」
「俺なら世界を焼け野原にすんのかな」
「だから恐いわよ、あんたら…」
「と、と言うか、私がそんなお願いするわけ無いよ……」
「分かってるよ、少なくとも今の状態は幸せそうだしね」
やっぱりお姉ちゃん達は私の事を大事にしてくれてるんだね。
うん……やっぱり嬉しいよ。そして、レミリアお嬢様も
フランお嬢様の事を大事にしてる。やっぱり姉妹ってそう言う感じなんだろうね。