東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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海での思い出

海、大きな波の音が私の耳に入ってくる。

普段聞く事が無いような、大きな水音。

とは言え、ちょっと水は汚いけどね。

 

でも、こんなにも楽しい気持ちで海に来たのは初めてだし

多少汚くても、何だか綺麗に見える気がするよ。

水着を着て海に来たのも初めてだしね!

 

このワンちゃんの顔が沢山書かれてる可愛い水着!

しょ、正直子供っぽい気がするけど、可愛かったし…

 

で、フェンリルお姉ちゃんは普通に白色の水着だね。

そして、私と違って可愛らしい黒色の肉球が

まるで水玉模様の様にポンポンと描かれてる。

 

テュポーンお姉ちゃんはとても真っ黒い水着だね。

かなりかなーり悩んだらしいけど、やっぱりこれが良いらしいよ。

2人の服装は私のイメージで簡単に変えられるけど

今回は本物の水着を買って、それを着てる。

その時、水着を選んでるときにテュポーンお姉ちゃんが

かなり葛藤しながら、この水着を選んでたのを覚えてる。

 

そして3人の水着。

メリーちゃんは紫色のフリフリが付いてる

ちょっとだけ子供みたいで可愛らしい水着。

胸元には赤いリボンが付いてあるしね。

ちょっと意外だったなぁ、

もっと落ち着いてる水着を選ぶと思ってたけど

意外と子供の様な水着を選んだしね。

 

で、蓮子ちゃんはメリーちゃんの色違いって感じだね。

メリーちゃんが紫なのに対して蓮子ちゃんは黒色。

でも、リボンの色は2人とも同じで赤色だね。

この格好でも2人が本当に仲が良いのが分かったよ。

メリーちゃんが選んで、蓮子ちゃんが同じ様な水着を選んでた。

蓮子ちゃん曰く、私はファッションとかあまり興味無いから

とりあえず、メリーの水着に似せるわ、って言ってたしね。

 

菫子ちゃんも蓮子ちゃんと同じ様に黒色だけど

2人のようなフリフリは付いてないね。

菫子ちゃんはちょっとだけ悩んでたけど、結構あっさり選んだ。

2人がお揃いなのは良いけど、私はどうしようかな

しかし、大体がペアだし、私もペア欲しいから

テュポーンの水着に合わせようって感じで選んでた。

 

それを聞いたテュポーンお姉ちゃんは

何が悲しくてお前なんかとペアにならないとならねぇんだよ

とか言ってたけど、結局それ以上は何も言わなかったんだよね。

 

「いやぁ、まさか大きな崖をくだるとは思わなかったわ」

「まぁ、私の超能力があれば、人を浮かすことなんて造作ないわ」

「本当、姉さんの超能力は羨ましい限りよ」

 

普段、見ることが出来ない大きな海。

まぁ、私の思い出には海の光景はあるんだけどね。

 

「あはは、やっぱり懐かしいね、海」

「あ、そうなの? やっぱり何かあったの?」

「うん、結構前だけど、ちょっと水上を走り回ってて」

「……は、走り回ってた……の?」

「うん、動きが遅くなると困る状態だったから」

 

懐かしいなぁ、あまり良い思い出ではないのだけどね。

だって、大きな戦艦とかがこっち来てたし。

水上だと、ちょっと近付けなかったんだよね。

別に跳んじゃっても良かったんだけどなぁ。

でも、どうして跳ばなかったのかな? 

 

「まぁ、あの時は一苦労だったね」

 

今回は久しぶりに遊ぶって事で、お姉ちゃん達を具現化してる。

やっぱり、2人だって自由に動き回りたいはずだもんね。

 

「いやあの、どうして水上を……」

「そりゃ、威嚇だよ、威嚇。次元の違いを見せ付けるためだね」

「空中飛び回ってたほうが楽じゃね?」

「相手の土俵にあえて立って粉砕する。

 それが絶対強者の努めだって言ってたじゃ無いか」

「……あ、そう言えば言ってたな、そんな事」

「す、水中走れる……も、もうなんか凄すぎて何も言えないわ。

 もうその内、上空さえ走ってたとか」

「走ってたぞ」

「うん、もう何も言わないわ」

 

走る方は跳び回るよりも難易度高いんだよね。

あまり勢いを付けすぎると跳び過ぎるし

勢いを殺しすぎると落下しちゃうからね。

 

「じゃ、じゃあ、泳ぐのは?」

「出来るよ」

「おぉ! どれ位なのか興味あるわ! やってみてよ」

「じゃあ、あそこの島まで泳ぐか?」

 

そう言って、テュポーンお姉ちゃんは結構距離がありそうな

小さな島を指差した。小さな島と言ったけど、多分あの島

それなりに大きいよね、距離があるから小さく見えるだけで。

 

「……あそこ、相当距離がありそうだけど」

「あ、そうだ、ゴムボートあるから引っ張ってあげようか?」

「え!?」

「凄い速度で移動できるよ? しっかり捕まってないと危なそうだけど」

「え? いや、危ないなら」

「いや! やるわ! やるに決ってるでしょ!」

「ちょ!? 蓮子!? 何言いだしてるの!?」

「そりゃそうでしょ! こんな経験、そうそう出来ないわよ!?」

「私も興味あるし乗るわ」

「菫子さんまで!? 本当あなた達姉妹は似てるわね!」

「じゃあ、メリーは乗らねぇんだな」

「……い、いや! の、乗るわよ!」

「よし!」

 

メリーちゃんもやっぱり周りに振り回され易いんだね。

で、ゴムボートは3隻。何でこんなに用意したのかな?

 

「しかし、どうして3隻も?」

「いやぁ、6人だしね2人ずつ乗って競争とか

 そう言うのもありかも知れないと思ってね。

 面白そうでしょ? こう言う、誰も居ないような場じゃないと

 そんな滅茶苦茶なことは出来ないし」

「じゃあ、お望み通り競争するか」

「良いね、で、勝敗条件はどうする?」

「勿論、あの島に先に着いた奴が1番だ」

「異議あり! それじゃあ、僕らに勝ち目がないし面白く無い」

 

そうだよね、テュポーンお姉ちゃんが1番能力高いし

そんな事になったら、どう考えてもテュポーンお姉ちゃんが勝つ。

 

「そ、そうだな、確かに勝負にならねぇか」

「あ、意外ね、あなたがあっさり引くなんて。

 やっぱりフィルも絡んでるから?」

「……メリーだっけか、お前絶対勘違いしてるよな?

 多分、フィルも勘違いしてるだろうから言うが

 勝ち目無いってのは、俺達に勝ち目が無いと言うことで

 別に俺が圧勝するとかじゃないんだぞ?」

「え!?」

 

わ、私も反射的に声が出てちゃった。

 

「あぁ、やっぱりそう誤解してたんだね。何度も言ってるけど

 君は僕らの中で最も飛び抜けて能力高いんだよ?

 まず、僕らと君が本気で戦えば、僕らに勝ち目無いから」

「そ、そんな訳」

「まぁ、このまま言っても多分、フィルは謙遜するから言わねぇが」

「そうだね、まぁそう言う訳で、それじゃあ僕らは勝負にならない。

 そこで、こんなルールを提案させて貰うよ。

 今回はそれぞれゴムボートを引っ張って

 乗ってる奴を落とさないで一番最初に島に着いた奴が勝ちだ。

 分かりやすいし、とても良い感じの縛りだろ?」

 

確かにそのルールだと速度を出しすぎるわけにも行かないしね。

 

「お、おい、それって……」

「どうしたのかな? そんなに嫌そうな顔をしちゃって?」

 

嫌そうな表情をしてるテュポーンお姉ちゃんを見て

フェンリルお姉ちゃんが凄く楽しそうにニヤニヤと笑い質問をする。

 

「お、お前! わ、分かってるよな!?

 絶対に分かってるだろ!?」

「だから何をだい? 僕は至って平等なルールを言っただけだよ?

 それなら、ここに居る6人全員が楽しめるからねぇ?」

「くぅ! お、俺は負けず嫌いなんだぞ!?」

「知ってるよー」

「このぉ! なんて奴だ! お、俺に何の怨みが!」

「何を言ってるんだい? 手加減すれば良いだけじゃ無いか」

「俺は手加減が大の苦手なんだよぉ!」

 

あ、あはは、ま、まぁテニスの時も手加減しすぎて

テュポーンお姉ちゃん、全然返せてなかったからね。

でも、正直な話2人の能力は凄まじく高いんだ。

特にテュポーンお姉ちゃんは飛び抜けて高い。

 

それなのに、相手を勢い余って殺してしまったとか

そう言う事は無いから、手加減が苦手というのは違うよね。

手加減は出来るけど、フェンリルお姉ちゃんほど上手くない。

それが事実だと思う。実際は凄い手加減が上手なんだけどね。

 

「まぁまぁ、それに君はまだ手加減得意な方だろ?」

「そ、そりゃまぁ、勢い余って相手やっちまったら

 フィルが悲しむし、か、加減は出来るが

 お前ほどに上手じゃないんだよ!」

「おっと、ありがとうね褒めてくれて」

「くぅ! このぉ! じ、自分が得意な部分で戦うなんて!」

「まぁまぁ、所詮は遊びだよ? 戦うわけじゃ無いよ?」

 

そのまましばらくの間、

フェンリルお姉ちゃんとテュポーンお姉ちゃんが

仲良さそうに会話をしてた。

 

「あの2人、絶対仲が良いわよね、間違いなく」

「特にフェンリルの方はからかってるの楽しんでるし」

「そりゃそうでしょ? 僕らは同じ目的で行動してるんだ。

 仲が悪いわけが無いよ。僕としてもこいつの事は大好きだ」

「なぁ!?」

「おっと、顔を赤くしたねぇ? 恥ずかしがり屋なのかい?」

「こ、こいつ!」

「あはは、やっぱりテュポーンお姉ちゃん可愛いよね」

「や、止めろ! 恥ずかしいだろ! だ、だがまぁ

 その、あれだ……あ、ありがとうな」

「フィルに対しては本当素直ね、あなた」

「うぐぐぅ……」

「あはは、やっぱりからかうの楽しいね、でも羨ましい」

「フェンリルお姉ちゃんも可愛いよ!」

「えぁ!? あ、え、えっと、あ、そ、そのぉ……」

「フェンリルの方も顔を赤くしたわよ」

「あなた達、フィルにデレ過ぎでしょ……そんなに好きなの?」

「う、うん……大好きというか、そのぉ……」

「ありがとう、私も2人の事、大好きだよ!」

「うぐ! きゅ、きゅんとした……やっぱりフィル可愛いな…」

「……フィル、あなたは本当に素直ね、素直すぎるわよ?」

「全然違うわよねー、姉妹とは思えないくらい。

 でも、仲が良いのは分かるから全然大丈夫よ!」

「姉妹で1番大事なのは仲が良いことだからね」

 

私のひと言で、どうして2人は少し恥ずかしそうにしてるんだろう。

私は今まで私の事を大事にしてくれてた2人が大好きだからね。

私のもうひとつの人格という風に言われてたけど、

そんな風には思えない。

 

2人は私の大事な大事な家族で、大事な姉妹。

私を今まで守ってくれていた、大事な家族なんだから。

だから、私は2人の事が本当に大事で、本当に大好きだよ。

 

「と、とにかくこの話はもうお終いだ! 

 こ、これ以上言われると、僕がキュン死してしまう!」

「お、俺もちょっとヤバいからな……や、やろうぜ」

「キュン死って……何処まで大好きなのよ」

「お、お前らもフィルの心とかそう言うのに対面してたら分かる。

 それに大事な家族だからな、超大事な家族。大好きなのは当然だ!」

「そうそう! でもほら、このままだと僕らの心臓が持たない!

 だからほら、速くやろう! 競争だ! さぁ、乗ってよ!」

「ひ、必死ね、顔を真っ赤にして」

「まぁ、面白そうだし良いっしょ!」

「いやぁ、今回は傍観者になりそうに無くて良かったわ!

 あの2人の超が付くくらいに意外な一面も見られたしね!」

 

よーし、私も頑張って泳ごう! 今日は凄く嬉しいし

今日は沢山遊ぼう! まずはこのレースだね! 頑張ろう!


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