東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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お迎えの時間

外の世界と幻想郷の生活。

正直、全然生活のリズムは違う。

だけど、今はどっちも楽しいと思えた。

 

このままここに居ても良いかも知れないと。

でも、私には私の居場所がここ以外にもある。

私の大事な家族。友達とずっと一緒に居るのは楽しい。

 

だけど、やっぱり帰るときは来ないとね。

私はもう、外の世界の人間じゃないのだから。

あぁ、何だろう……あの瞬間を思い出す。

……お母さん、私、外の世界でも居場所を作れたよ。

 

「フィル、迎えに来たわよ」

「紫さん」

「……あなたが来たって事は、時間切れなのね」

「えぇ」

 

紫さんが姿を見せて、その姿を見た3人が反応した。

3人とも、少しだけ寂しそうな表情を見せる。

だけど、涙を流してたりはしなかった。

 

「あら、泣かないのね?」

「泣かないって、今生の別れじゃないんだしね」

「あら、私の采配次第じゃ、今生の別れかも知れないわよ?」

「大丈夫だって確信はあるって

 フィルが私達を忘れない限りは今生の別れにはなり得ない。

 私達はそれを知ってるし自覚してるからね」

「まぁ、中々来なかったら、ほら、結界の隙間を見付けて行くから!」

「だから、あなた達がそう簡単に来て良い場所じゃないのよ」

「案内してくれたのに?」

「あれは特例だからね、まぁ大丈夫よ、あなたが言うとおり

 フィルがあなた達の事を忘れない限り今生の別れにはなり得ない。

 もしくは、あなた達がフィルを忘れるかね」

「なら、問題無いわ!」

 

私は絶対に3人のことを忘れることは無い。

だから、これが今生の別れになる事は無い。

そしてきっと、3人も私の事を……忘れないで居てくれる。

 

「でも、あなた達は人よ、人と妖怪は本来は交わるべきではないの。

 理由は容易に分かるでしょう? 人と妖怪では寿命が違いすぎる。

 長く生きる方は、何度も何度も永劫の別れを経験していくわ。

 そして、妖怪は心が弱い。何度も経験すればいつか滅びる」

「……」

 

分かってる、分かってるんだ、分かってる。

それは、それは変えられない。それは変えたら駄目な事実。

私達と人では、あまりに寿命に差がありすぎる。

 

「何だ、永遠じゃないのね」

「え?」

「ふふん、私は確かに人で、きっとすぐに死んでしまうわ。

 でも、永遠の別れにならない、輪廻だとかそう言う概念がある。

 輪廻転生、私達は死んでも再び生を得て地上に降り立つ。

 その度に私達は何度も会うことが出来るわ」

「そうよ、その通り。でも永劫の別れというのはとても残酷よ。

 人間は何故かそう言った出会いや再会を美しいと誤解するわね。

 でも、それは所詮、長い長い時間を生きる事が出来ない人の戯れ言。

 

 運命の出会いや、来世での出会いや再会。

 それは所詮は妄言であり、ある意味では変化を否定してるわ。

 良い? 世界というのは常に変化し続けていく物よ。

 

 変化しない物は無い、永遠の友情なんてのは存在しないし

 存在してはならない。変化し続けるからこそ、

 その瞬間は何よりも尊く、また美しい物なの」

「……確かに紫さんの言うとおり、それは妄言なのかも知れません。

 でも、私は諦めたくありません……それが妄言だと諦めたく無い」

 

私はきっと長い長い時を生きる。だから何も分からないのかも知れない。

世間知らずで、妖怪としてはあまりにも未熟で未成熟なのかも知れない。

だけど、だからこそ、だからこそ……何かを変える事が出来ると思う。

 

私は妖怪としてはまだまだ甘くて、まだまだ若い、若すぎる。

だけど、だからこそ私は何かに変化を与える事が出来る。

私は何度か色々な人を変えたと言われてきた……だから、諦めない。

 

「……はぁ、やっぱりまだまだ若いわね、生まれて間もないし当然か」

「ふふ、流石私の親友! ハッキリ言うわね! 私も諦めないわよ!

 輪廻転生のその先ってのにも興味あるし、絶対に奇跡を起すわ!」

「そうね、そう言うチャレンジ精神ってのも私達には必須ね」

「当然、何故なら私達は秘封倶楽部! 世界の神秘を曝くのが私達よ!

 堅く堅く封じられてる秘密を曝くのだから

 挑む事を諦める訳にはいかないわ!」

「うん!」

「……はぁ、全く外の世界にもとんでもない不良さん達が居るわね。

 まぁ良いわ、私は何も言わない。忠告はするけどね。

 だから、これだけは覚えておきなさい、お馬鹿さん達。

 あなた達が深く交われば交わる程、あなた達の親友は深く傷付く。

 それを知ってもなお、あなた達はその親友と深く交わる?」

 

あんな風に言ったけど、確かにそれは間違いないと思う。

3人がドンドン歳を取っていく中、自分だけは変化が無い。

そしていつか、私は3人の最後を見ることになると思う。

 

それは、妖怪が人と深く交わることで確実に起る事だ。

心は大きく傷付いて……そして、いつか心を閉ざすだろう。

人と交わろうと思わなくなると思う、だって、それはとても辛いから。

 

何度も何度も何度も何度も……何度も、大事な人の最後を看取る。

……だけど、きっときっといつか、それが今生の別れじゃないと知ったとき。

きっとその心は救われる。凄く長い時間お別れをするだけなんだって

そう自覚できるはずだから……分からない未来の話だけど、でも!

 

「深く深く交わって、確かに辛い思いをさせちゃうかも知れない。

 だけど、私の親友はその辛い思いをきっと耐えてくれて

 また会ったとき、もう一度笑ってくれると信じてるわ!」

「えぇ、信じる事で神様だって生まれるのよ。

 なら、信じる事でもう一度運命をたぐり寄せることだって出来るわ」

「そうよ、知ってるし理解してる、この目で確かに見てたしね。

 祈りの力は世界さえ繋ぐわ、なら疑う余地はないわ!

 悲惨な必然の先にある奇跡さえたぐり寄せてみせる!」

 

3人は笑ってた、笑顔でそう言いきってくれた。

……嬉しと同時に、私は誇らしいと感じる。

こんなにも力強い人達が、私の親友なのだから。

 

「……そう、ならもう何も言わないわ、挑んでみなさい。

 でも、まだ先の話ね。少なくともこれは今生の別れでは無いわ。

 永遠の別れでも無い。あなた達の決意が揺らがない限り

 いつか必ず出会える程度の別れなのだから」

「はい! 3人とも、また来るよ!」

「えぇ! 待ってるわ!」

(2人はお別れは良い?)

(大丈夫だよ、必要無い。また来るんだろ?)

(あそこまで言ったわけだしな、俺らの別れの言葉は不要さ)

(分かったよ、2人とも)

「フィルのお姉ちゃん達も!

 私達は待ってるから来なさいよ-!」

(……はん、律儀な奴らだ)

(そう言う子達なんだろう? それに、フィルの親友だよ?

 良い子なのは間違いないさ)

(はん、そうかもな)

 

3人に見送られながら、私達は紫さんの隙間に入った。

隙間に入って少しして、隙間が閉じる。

 

「良い思い出は出来た?」

「はい、沢山出来ました……ねぇ、紫さん」

「何?」

「もしも、私のお母さんに会えたなら……

 私、お母さんに伝えたい事があるんです。

 私、居場所が沢山出来たよって……」

「安心しなさい、その言葉はきっともうすでに伝わってるわ。

 あなたのご両親はきっとどんな時でも、あなたを見守ってるわ」

「……そうですよね、お父さんお母さん……ありがとう」

 

自分のマフラーを強く握り、小さく呟いた。

何で私はこのマフラーにそんな事を呟いたのか。

……このマフラーは2人の祈りが作りあげてくれた優しい鎖。

そして、きっと私と家族を繋いでくれる、確かな糸でもある。

 

伝わってれば良いな、この大事な糸を通して

私の思いが、私をいつまでも守ってくれてる

私の大事な、大事な家族に……伝わってれば良いな。

 

……ありがとうね、お父さん、お母さん。

2人が私を守ってくれたから……私は居場所が沢山出来た。

幻想郷にも、そして1度否定された外の世界にも……

暖かい、とても暖かい居場所が出来たから。

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