東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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頑張れ私!

「それじゃあ、最初の仕事としましょうか」

 

私を部屋に案内した後、

レミリ・・・・お、お嬢様は私の方を見て、

少し笑った。

 

「な、なんでしょう?」

 

あまり難しい事じゃ無いと良いなぁ、

まだ私じゃ何も出来そうにないしなぁ。

 

「そんなに身構えないでも良いわ、

 そうね、あなた血液型って分かる?」

「け、血液型? いえ、そんな物知りません」

「そう、じゃあ、試すわね」

 

そう言いながら、れ、お、お嬢様は

ゆっくりと私の方に近寄ってきた。

なんだろう、凄く目が怖い。

まるで獲物を見ている様な目。

 

「あ、あぁ、た、食べないで下さい!」

「大丈夫よ、死にはしないから」

「ひぃ!」

「不味そうだけど、試してみたかったのよね」

 

そう言って、お嬢様は私の首筋に噛み付いてきた。

 

「痛い!」

 

お嬢様は私の首筋に噛み付いて、

何かを吸っているような気がする。

でも、分かった、私の血を吸ってるんだ! 

口元から凄く垂れてる!

あわわ、あぁ、力が抜ける気がする・・・・

 

「意外と行けるわね、人間の血と同じくらいの味

 いや、それ以上に美味しいかも知れないわ」

「あぅ…あぁ、血が…

 凄く垂れてる…うぅ、私、死んじゃう…」

 

私の服と、お嬢様の服は真っ赤に染まった。

あれは全部私の血だ。

こんなに一杯血が出ちゃったら、死んじゃうよ…

ち、力も抜けてきたし。

 

「勿体ないわね」

「ひぃ!」

 

お嬢様は私の首筋から垂れている血を軽く舐め取った。

 

「美味しいわね、

 でも、やっぱり直接の吸血は慣れないわ。

 ものすごく勿体ないし」

「あ、あぅ・・・・私はもう駄目です」

「大丈夫よ、死にはしないわ」

「は、早く血を止めないと、

 し、死んじゃいますよ!」

「もう殆ど治ってるじゃ無い」

「え? あれ?」

 

私は動揺しながらも、

自分が噛まれた首筋を少し触ってみた。

少しだけぬめっとした感覚はあるけど、

傷口に触れた風な触感は無かった。

おかしいな、さっき思いっきり

お嬢様の牙が私の首筋に入ったと思ったのに。

 

「そ、そんな・・・・でも、さっき絶対に」

「あなたも妖怪なんでしょう? 

 怪我が治る速度が速くても納得がいくわ」

「そ、そうなんでしょうか・・・・」

「えぇ、でも、あなたの血の味には

 人間の血に似た味があったわ

 その事から私が思うにあなたは半獣。

 半分は獣の妖怪

 もう半分は人間だと思うわ」

「は、はぁ」

 

そうなのかなぁ、

人の姿なんて見たことないから

なんとも言えないけど

あの2人の会話から考えて、

普通の人間さんには

耳も尻尾も生えてないんだろうなぁ

そう言えば、緑色の服の人にも

私みたいな耳と尻尾は無かったし。

 

「人間さんは見たことないんですけど、

 やっぱり耳と尻尾は生えてないんでしょうか」

「あら、あなたは1度人間を見たじゃない」

「え?」

「あなたを私の前に連れてきたメイド。

 彼女は人間よ」

 

え? そ、そうなんだ、

人間さんって凄い力が使えるんだなぁ。

時間を操っちゃうって言ってたし、

とても力があったもんね。

 

「人間さんって凄いんですね、

 時間を操るんでしたっけ? 

 そんな事が出来るなんて」

「そうね、でも、あれは咲夜がおかしなだけよ、

 普通の人間はあそこまで強くないわ

 それと、霊夢と魔理沙も人間とは思えないわね

 人間なのに吸血鬼である私と互角なのかしら」

「お、お嬢様と互角の人間さんですか? 

 そんな人もいるんだ」

「えぇ、でもその2人も確実に例外だから

 気にしないで良いわ」

 

そんな凄い人がいるんだ、

私なんかが出会っちゃったら殺されちゃうかも。

うぅ、この館から出たくなくなっちゃったよ。

 

「うぅ、私なんかが出会っちゃったら

 簡単に殺されちゃいそうで怖いです」

「大丈夫よ、あいつらは殺しはしないから

 そもそも弾幕ごっこって言う

 決闘方法があるんですからもしかしたら

 あなたでもその2人を倒せるかも知れないわ

 そして、もしかしたら私も倒せるかも」

「え? わ、私が?」

「まぁ、不可能でしょうけどね、

 でも、楽しい勝負は出来そうよね」

 

そんな戦い方があるんだ、

それなら私でも殺されることは無いかも知れない。

少しだけ心配事が解消された気分だ、

本当に良かったよ。

だったら、私もその内この館の外に出て、

色々と歩き回りたいな。

 

「私も頑張って弾幕ごっこで強くなります!」

「まぁ、精々頑張りなさい。

 でも、あなたは私のペットよ、

 それは忘れない事ね」

「あ、はい」

 

そう言えば、そんな扱いだった事を

少しだけ忘れちゃっていたよ。

うぅ、ペット、ペットかぁ、何だか嫌だなぁ。

私がそんな事を思っていると、

大きな声が聞えてきた。

 

「お姉様!」

「フランの声?」

 

結構大きく、高く幼い声が私達の耳に聞えてきた。

その声はお嬢様よりも少しだけ高い。

お姉様って言ってた所からお嬢様の妹かな?

 

「お姉様! 何処よ!」

「ここよ、フラン」

 

その声に答えながら、お嬢様は私の部屋から出て

少し大きな声で自分の場所を知らせた。

私は少しだけ興味が出て、お嬢様の近くに移動して

お嬢様の妹様をみてみることにした。

 

「見付けた! お姉様!」

 

お嬢様の声に反応してこっちにやって来たのは、

金色の髪の毛に赤い瞳

お嬢様とお揃いの白い帽子に

赤いリボンが付いている女の子。

服装は赤と白の2色の服で

お嬢様と似たふりふりしたドレス

首元のリボンは赤では無く黄色。

そこはお嬢様と違った

腰のリボンも色が違って白だった。

目の色は真っ赤で帽子の外には

片方だけ括った髪の毛がぴょんと出ている。

お嬢様と同じ様に羽は生えているんだけど

その羽は特徴的で

枯れ木に宝石がぶら下がってる感じだった

凄くカラフルだ、とても色とりどり、

虹色って感じでとても可愛い

でも、あんな感じの羽で空なんて飛べるのかな? 

絶対に飛べそうに無いけど。

 

「お姉様! 私のプリン! 食べたでしょ!?」

「ぷ、プリン?」

 

え? プリン? プリンってなんだったかな、

あまり記憶には無いけど

名前の響きから考えて、

何だか高貴そうな食べ物だ。

 

「た、食べてないわよ」

「嘘だ! プリンを食べるのは

 私かお姉様だけでしょ!?」

「そ、そんな事無いでしょう。

 パチェだって食べるかも知れないし

 美鈴も食べるかも知れないし、

 小悪魔も食べそうでしょう?」

「絶対に嘘だ! 小悪魔は冷蔵庫漁らないし、

 パチュリーはあまり甘い物食べない!

 美鈴はそもそも館に入ってこないし

 そんな事をしたら咲夜に叱られるに決まってる!」

 

私は少し唖然としている、

何だか話しについて行けない。

プリンってなんだろう、なんでプリン? 

よく分からないなぁ。

 

「だから! お姉様しか居ない! 

 私のプリンを返して! 

 禁忌「クランベリートラップ」

「ひゃ、ひゃぁ!」

 

お嬢様の妹様が何かを宣言すると

大量の弾が出て来てお嬢様の方に飛んできた。

何あれ!? 何あれ!? うわぁぁ! 

どうしよう、どうしよう!

 

「ちょっとフラン! 

 いきなり弾幕は無しでしょうが!」

「うわぁぁ!」

 

お嬢様はその弾を避けるためか

少しだけ空を飛んで

その弾と弾の狭い空間をすり抜けた

私も巻き込まれている状態だから、

急いで後ろに飛び退きながら、お嬢様みたいに

狭い隙間をすり抜けるようにして、

その弾を回避した。

 

「うっさい! 私のお楽しみを奪ったんだから、

 当然なんだ!」

「はわわ!」

 

でも、弾の数はドンドンと増えていき、

ドンドン苛烈になっていく。

私はどうすることも出来ずに、

ただ無我夢中に弾を避け続けた。

 

「お楽しみを返せ! 禁忌「レーヴァテイン」」

「ひぇぇ!!」

 

今度はあの妹様の手元に

光る剣みたいな物が出て来て、

容赦なく振り回し始めた。

周囲の建物はガンガンと削られていった、

更にその振った後に弾が出てくるし

どうしようも無い、私が出来る事は

この剣を回避することと弾を避けることだけだ!

 

「良いわよ、そっちがその気なら

 私もやってやるわ!

 神槍「スピア・ザ・グングニル」

 

今度はお嬢様が何かを宣言した

するとお嬢様が振り上げた腕の上に

大きな光る槍みたい物が出てきた

そして、それを投げるような動作をすると、

とんでもない速度で妹様に飛んでいく。

 

「この!」

 

その凄い速度で飛んできた槍を

妹様は手に持った大きな光る剣をぶつけた。

そして、勢いが互角だったのか、

その2つの光は同時に消滅して、静かになった。

 

「くぅ、まだまだ!」

「姉より優れた妹など、存在しないのよ!」

「す、ストップ! ストップです!」

「ん?」

「え?」

 

私が勇気を振り絞り、大きな声で2人を制止して、

周りの様子を見せた。

周りの壁はボロボロ、

壁が崩れている部屋だってある。

私の部屋はギリギリ無事だけど、

それ以外は結構酷い事になっている部屋だってある。

 

「・・・・あ」

「や、やり過ぎちゃった・・・・」

「は、はぁ、良かったです」

「・・・・フィル」

「はい、なんでしょう?」

「どうしてあなたは無傷なの?

 あなたがいる場所を見る限り

 凄く弾が飛んできたでしょうに」

「な、なんとか気合いで避けました」

 

私の返答を受けたお嬢様は少し驚いた表情をして

にっこりと笑った。

 

「ふーん、空を飛べたのね」

「いいえ、私は空なんて飛べませんよ」

「え? じゃあ、空を飛ばずに

 あの弾幕を全部避けたの?」

「そ、そう言う事になりますかね」

 

この言葉を聞いたお嬢様は驚愕の表情を浮かべ、

更に笑った。

 

「どうやら、あなたは結構強いのね、

 見た目からは全然想像できないけど」

「え? 誰? その耳が生えた子」

「フィルよ、私のペット」

「フィル、ふーん、良いじゃん」

 

妹様が私の方に近寄り、

私の顔をのぞき込みながら、

不思議そう呟いた。

 

「気に入った、フィルは私のペットにする」

「何を言ってるの? さっき言ったでしょう? 

 その子は私のペットよ」

「何よ! お姉様は色々と持ってるじゃん! 

 1つくらい私にくれても良いでしょ!」

「駄目よ! あなたにフィルを渡したら

 すぐに壊しちゃうわ!」

「こ、壊す!?」

「壊さないって! 優しくするから!」

 

そう言って、妹様は私に抱きついてきた

・・・・す、凄い力だ。

 

「うぅ」

「フラン! 止めなさい、

 フィルが苦しんでるわよ!」

「え? あ、本当だ!」

「はぁ、はぁ」

「しかし、大した頑丈さね、

 フランに抱きしめられて生きてるなんて

 人間なら死んでいたでしょう」

 

そ、そうなんだ、凄い力だったからなぁ、

あはは、妖怪で良かった。

 

「ごめんなさい」

「分かったでしょう? 

 あなただとフィルをすぐに壊しちゃうわ」

「うぅ・・・・」

 

お嬢様の言葉を聞いた妹様は少し涙を溜めて

凄く悲しそうに俯いている。

うぅ、このままだと可愛そうだなぁ。

 

「え、えっと、お嬢様、

 た、たまに位だったら私は大丈夫ですよ」

「ほ、本当!?」

「正気なの? さっき体験したでしょう? 

 あなたはさっき絞め殺されそうになったのよ?」

「大丈夫ですよ、

 私が頑丈になれば良いだけのことです

 それに、妹様とも少しお話ししたいです」

「うぅ、フィル・・・・」

「・・・・はぁ、良いわよ、

 最近フランも少し加減が出来るようになったし」

「本当!?」

「ただし、壊しちゃ駄目よ?

 フィルは私のペットなんだから」

「うん!」

 

何だか分からないけど、

仲直りしてくれたようで良かった。


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