東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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命蓮寺

私達は聖さんに案内されて命蓮寺へ入った。

ここは元々船だったらしいけどね。

 

「はい、ここが命蓮寺の中ですよ」

「綺麗ですね!」

 

和室だね、お寺さんだから当然なんだろうけど

大きな和室がいくつかあった。

参拝客も結構な数が来てるしね。

 

やっぱり、人里から近いって言うのが大きな理由かな。

博麗神社はあまり参拝客が居ないような気がするけど

人里から結構距離があるのが大きな理由なんだろうね。

 

確か博麗神社は博麗大結界の端にあるんだっけ?

それはつまり、殆ど博麗神社が幻想郷の端っこと言う事。

だけど、色々な妖怪が集まったりはしてる。

きっと霊夢さんの人柄が、色々な妖怪を集めてるんだ。

 

参拝客が来ないのは……やっぱり妖怪が多いから…かな?

それも大きな要因だろうね。

 

「やはり広いですね、命蓮寺。

 元々は船だったんですよね?

 で、神子さんを封印するためにここへお寺を」

「あら、そこまで知ってらしたのですね」

「勿論です、私は烏天狗ですからね」

 

神子さんって、封印されてたんだね。

確かに凄い威圧感あったし、やっぱり聖徳太子だもんね。

でも、封印する必要があったのかな?

 

もしかしたら、封印されてる間に凄い存在感があって

復活させたら駄目だと感じたのかも知れないね。

でも、神子さんは普通に動いてるし、封印できてないよね。

ただ単にあの人が凄すぎて封印できなかったのかも。

 

「おや、君は……君がここに来るとは珍しいね」

「あ、ナズーリンさん、お久しぶりです」

「お久しぶりと言う程、久しく会ってはないとは思うけど

 まぁいいや、君がそう感じたと言う事だろう。

 私はそこまで感じ無いけど、生きてきた時間が違うからね」

 

やっぱりナズーリンさんって、小さいけど存在感あるね。

ネズミの妖怪さんだし、小さいのは当たり前なのかもだけど。

でも、やっぱり気になるのはあの尻尾のネズミさん……

 

「あやや、今日は命蓮寺にいらしてたんですね。

 普段は無縁塚で活動してると聞きましたが」

「いつの話だい? 今は基本的にここで活動してるよ。

 お宝なんて、結局見付からなかったし、無駄な事をしたよ」

「ナズーリンはフィルさんのマフラーを見付けた後、

 基本的には命蓮寺で活動してます」

「あ、マフラー……そう言えば、集めてくれたって。

 ありがとうございます! お陰で助かりました!」

「い、今お礼を言うのか、驚いたな。

 まぁ、気にしないでおくれよ。

 私はご主人や聖に頼まれたから探しただけだ。

 君のために探したわけじゃない。

 あくまで私達の為に探しただけだよ」

「それでも、ナズーリンさんのお陰で

 私はこの大事なマフラーを再び身に纏えました。

 ナズーリンさんが居なかったら、きっと無くしたまま。

 だから、本当に感謝してます。ありがとうございます」

「……き、君は本当に影が無いと言うか……はぁ、まぁ良い。

 参拝客も結構君の話をしてたりするし

 人気者である、君の助けになれたなら光栄だよ。

 だから、毘沙門天様に牙を向けたりしないでおくれよ?」

「毘沙門天様? あ、七福神の人ですね」

「まぁ、間違っては無いけど」

 

何の神様だったかな、確か戦いの神様だった気がする。

どんな御利益があるかまでは覚えてないけどね。

 

「それで、何で毘沙門天様なんですか? 好きな神様?」

「君は色々と知ってるようで、知らないことが多いね。

 この命蓮寺には毘沙門天様のお弟子いるんだよ?」

「え!? そうなんですか!?」

「ナズーリンさんの事です」

「え? そうなんですか!?」

「そうだよ、結構凄いだろ」

 

両手を組んで、少し得意気な表情を見せた。

ナズーリンさんって、可愛らしいなぁ。

見た目も愛らしいし、マスコットみたいだね。

 

「可愛らしいですねぇ、無謀ですけど」

「ま、まぁ、無謀なのは自覚してるけどね。

 とは言えだ、毘沙門天様やここに居るご主人には

 その牙を向けないでおくれよ?

 少しでも助かったと思ったのならね」

「向けませんよ、お姉ちゃんにも言っておきます」

(牙は向けねぇぞ? 拳は向けるかも知れねぇが。

 相手が軍神とか言う奴なら、まぁまぁ強いだろうしな)

(む、向けないでね? 拳も)

(本人居ねぇから向ける相手も居ねぇだろ)

 

テュポーンお姉ちゃんはかなり好戦的だしね。

あまり本気は出さないけど、強そうな相手に戦おうとするし。

どう言う基準なんだろう。少しよく分からないけどね。

 

「さて、ナズーリンさん、毘沙門天様の事について

 私も色々と知りたいのですが、教えてくれますか?」

「絶対に嫌だね、なんで君なんかに

 毘沙門天様の事を話ししないと駄目なんだよ」

 

ナズーリンさんはあまり文さんの取材には乗り気では無い。

文さんもめげずに話し掛けては居るけど、無視されてる。

 

「あやや、まぁ強引に取材するというのも良いのですが

 私も新聞記者ですからね。無理矢理というのはよくありません」

「元より、私がいる前でその様な事はさせませんよ」

「ですよね、なのでここは諦めようと思います。

 皆さんと仲が悪くなってしまうのは嫌ですからねぇ」

「そうしていただけると助かります」

「何だか、聖さんってお母さんみたいですね」

「あら、ありがとうございます」

 

いつもニコニコとしてて、お寺の人達を守ってる。

そんな聖さんを見て、私が抱いた感想だった。

だって、私のお母さんとも何だか似てるような気がしたから。

 

「では、客間にご案内しましょう」

「ありがとうございます」

 

そのまま、私達は聖さんに客間へ案内される。

 

「あ、フィルちゃん。久しぶりだね。

 今日は命蓮寺へお仕事かい?」

「あ、いえ、お仕事じゃ無いんですよ。

 ちょっとお世話になったのでお礼をしようと」

「そうかいそうかい、良い子だねぇ」

「えへへ、と、当然の事ですよ」

 

その道中、私は外の方で参拝してた人に声を掛けられる。

人里で出会う度に、結構お話ししてるお婆ちゃんだった。

何度かお買い物のお手伝いをしてた記憶があるよ。

この人も命蓮寺へ参拝に来てるんだね。

 

「じゃあ、怪我とかしない様にするんだよ?」

「はい、お婆さんも帰ってる時に怪我をしないように

 慎重に歩いてくださいね?」

「分かってるよ、ありがとうね。

 今日はとても良い気分だよ。

 久しぶりにフィルちゃんに会えて。

 これも毘沙門天様のご加護かねぇ」

 

お婆ちゃんはニコニコしながら杖をつき

ゆっくりと歩き出した。

 

「どう言った方なんです?」

「えっと、何度かお買い物を手伝ってたんですよ。

 重たい物を持ったりして、大変そうですし」

「やはりフィルさんは良い子ですね。大事な事です。

 そう言う、色々な人との縁を大事にすることは

 とっても大切な事ですからね」

 

あのお婆ちゃん、まだ元気そうで安心したよ。

ふふ、何だかとても嬉しいよ。

 

 

 

 

 

相変わらず、フィルは優しい子だね。

 

(そうっすねぇ、普通なら恐くて話し掛け無いっすよ)

 

ここは幻想郷だからね、外の世界とは違うのさ。

手を貸そうとしたのに疎まれたり文句を言われたり。

周囲の目を気にする必要も無い、そう言う楽園だ。

自分の善意を最大限発揮できるのが、この世界だよ。

勿論、善意だけじゃ無いけどね。

 

(でも、悪意と同じ位に善意も発揮できるって事っすね。

 そりゃ大事な事だ。ま、うちは関係無いっすけどね。

 外の時と変わらず、うちが善意を向けるのは身内だけっす)

 

とか何とか言って、どうせ周りにも手を貸すんだろ?

僕もそうだったしね。テュポーンもそうだろう。

 

(かも知れないっすね。

 やはや、うちらのご主人様は良い子で安心っす。

 あ、妹っすか? まぁ、うちら別の存在っすしね)

 

妹だよ、妹。フィルは僕らのことを姉だと思ってる。

君の事は知らないけどね。と言うか、喋りすぎだよ。

 

(むふふ~、もっとしっかりとうちを抑えてくださいっすよ

 せんぱ~い? 全然力が足りないっすよ~

 うちが出て来ちゃうっすよ~? ほれほれ~)

 

あぁもう、こいつマジで最悪だよ。

ったく、結構目覚めてるから、抑えるの一苦労過ぎる。

テュポーンも動いてくれないかなぁ……

 

(テュポーン先輩が動いたら、流石のうちでも

 抵抗出来ないっすからね。

 まぁ、テュポーン先輩は鈍感っすから)

 

うぐぐ、テュポーンがもうちょっと頭良けりゃなぁ。

あいつ脳筋過ぎるからなぁ……とほほ。

 

(あ、自分でとほほとか言うんっすね

 割とノリ良い~)

 

もう黙っててくれよ、集中させてくれ。

 

(集中させたら封印が強くなるので駄目っすよ~)

 

最悪だ、もうちょっと真面目な後輩が欲しかった。

まぁ、後輩とは違うけど……はぁ。

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