東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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命蓮寺の妖怪達

聖さんに案内されて、とある1室へ入る。

そこには何度か姿を見た狸さんが居た。

マミゾウさんだね、名前は覚えてる。

 

確か、幻想郷でも結構有力な妖怪なんだよね。

化け狸の頭領だったかな。

 

「ん? おぉ、その姿は懐かしいのぅ。

 儂の事、覚えとるかのぅ」

「はい、覚えてます。マミゾウさんですね。

 私にレミリアお嬢様を攻撃させようとした」

「そ、その覚え方は恐いから

 や、止めて欲しいのじゃが…

 そ、そのー、じゃな。

 そ、その時は、本当に迷惑を掛けた。

 

 こ、この通りじゃ、謝罪するから

 その目を止めてくれんかの?

 獲物を睨み付けるような目が恐いのじゃが。

 と言うか、視線だけで儂が死んでしまいそうじゃし」

「え、獲物を睨み付けるような目はしてませんよ…

 に、睨んでるわけでも無いですよ?」

 

ちょっとだけあの時の事を思いだしただけだし。

そんなに睨んでるわけでも無いんだよね。

 

(お前が少しだけ機嫌を損ねるだけでも

 相手には相当なプレッシャーだからな。

 ま、あの狸が悪いから何も言わねぇが。

 そうだよな? おい、狼」

(い、今あまり話し掛けないで欲しいなぁ…)

(あー? んだよ、機嫌でも損ねてんのか?

 まぁ、確かにあの狸やらかしやがったしな。

 フィルの逆鱗に触れやがったし。

 あー、そんな風に思ったらイラッとしてきたぜ)

「な、何故かより威圧感が……」

「だ、大丈夫ですよ、か、勘違い! 勘違いです!」

 

や、やっぱりテュポーンお姉ちゃんが前面に出て無くても

少しだけ機嫌を損ねたら、漏れ出しちゃうのかもなぁ。

 

「マミゾウ、あんた随分と怯えてるわね」

「そりゃ怯えるに決まっておろうが、相手が相手じゃぞ?」

「まー、正体は一応知ってるけど

 そんなにビビるような相手かしら」

「人間如きにやられた主とは次元が違うじゃろうに」

「に、人間如きって酷くない!? 

 た、確かに封印されたのは事実だけど

 あ、あれは人と言うか、武器がエグかっただけで!」

「あちらも武器はエグいのしか無かろうに。

 投げれば確実に相手を射貫く神の槍じゃぞ?

 主が食らえば即死じゃろうが。

 それを受けても死なぬ奴じゃぞ? 次元が違うわい」

「所詮槍じゃ無いの」

「主が隠れておっても、投げられたら即死じゃろ?

 確実に追尾して射貫いてくるのじゃし。

 そもそも、使い手が神じゃしな……」

(グングニルだっけか? 貧弱な槍。

 正直、射貫いた程度で何が出来るんだよ。

 食らっても痛いだけだろ、そんなの)

(ふ、普通は、ま、まぁ、き、キツいからね)

(あー? で? お前はキツそうだな。どうした?

 体調でも悪いのかぁ?)

(心配してくれたありがとね、でも大丈夫だ……)

 

やっぱり、私が翼を出してからと言う物

フェンリルお姉ちゃんの雰囲気が変わってるね。

何と言うか、大分力を込めてるような感じ。

少しだけしんどそうだけど……だ、大丈夫なのかな?

 

「ま、まぁ実際、私もあの子は狙われたくないけどね。

 正体不明の種まいて、逃げられるかしら」

「見付かるのではないかのぅ」

「うぐぐ、ひ、否定できない……」

「あ、そ、そんなに怖がらなくても良いですよ?

 そんな、襲うなんて事しませんから。

 私としても、大事な人に危害が加えられなければ

 その人に戦いを挑む必要も理由もありません。

 でも、もしも、もしもですよ?

 レミリアお嬢様やフランお嬢様を巻き込んじゃったら」

「わ、分かっておる! じゃから威圧せんでくれぇ!」

「うげ、こ、こりゃ恐い……」

 

……な、なんで怖がられちゃったのか分からない。

殆ど何もやってないと思うんだけど……

 

(自覚しろよな、お前のちょっとは

 普通の妖怪からすればちょっとじゃ無いんだぞ?)

(う、うん、そ、そうかも知れないね……)

(ま、まぁ、フィルが早々牙を剥くことは、無いしね。

 ご主人様に手を出さなきゃ良いだけの話だし)

(フィルの逆鱗はあの2人だからな)

 

レミリアお嬢様やフランお嬢様に危害を加えられた場合

私は全力でその相手に攻撃をするだろうしね。

 

「そんなに怯える必要はありませんよ。

 フィルさんはご主人様へ危害を加えない限り

 決して我々には危害を加えません。

 無論、フィルさん本人へ危害が加えられた場合も

 彼女は反撃するでしょうけどね」

「あ、あんたは随分と平気そうね」

「恐怖を感じる必要などありませんからね。

 彼女の事を知っていれば、何も怯える必要はありません」

「す、凄まじい精神力じゃな、流石は聖殿」

「んー、なにやら騒がしいと思って来てみれば

 来てたのね、あんた」

「あ、女苑さん、ここに居たんですね!」

「まぁね、因みに姉さんも居るわ」

 

女苑さんが出て来て少しして

彼女の背後から幽霊の様に紫苑さんが姿を見せた。

 

「あ、ひ、久しぶり」

「お久しぶりです!」

「今日はあの天人とは遊んでないのよね」

「そうね、天人様とは仲良くしてるけど

 今日は用事があるみたいだし」

「用事って何?」

「えっと……確かフィルを探すとか。

 私も行こうと思ったけど、私は危ないからって」

「……姉さんの不幸パワーなのかしら?

 フィルはここに居るわけだけど」

「……」

「と言うか、この神社も災難よね。

 姉さんが居るって、相当不幸を振りまくわよ?」

「大丈夫ですよ、私達には星も居ますからね。

 毘沙門天様の加護がある限り、不幸には屈しません」

「あんた悠長よね、毘沙門天とか軽くつまみにしそうな

 そんなエグい存在来訪してるんだけど?」

「フィルさんはその様な真似は決してしませんよ。

 我々がフィルさんへ害を加えない限り

 彼女は優しいフィルさんのままです」

「あやや、しかしこの寺も随分と妖怪が多いですねぇ」

 

そんな事を軽く呟きながら

文さんがメモ帳に色々と書き記していく。

 

「しかし、マミゾウさんが怯える様を拝めるとは

 全く今日は収獲ですね」

「ぐぬぬぅ、あの新聞記者の前で

 あんな不甲斐ない姿を見せたのは悔しいが

 相手が相手じゃし、仕方ないとしか言えぬ…」

「ま-、分かるけどね、フィルは私らの攻撃効かないし」

「あんたらの攻撃が効果あるなら

 フィルはあそこまで飛び抜けては無いわよ」

「わ、分かるけどね……」

「でも、効いてないから……私は素直に嬉しい…けど」

「天人にも効いてないんでしょ? 姉さんの不幸パワー」

「うん……」

 

自分も周りも、全てを不幸にしてしまう彼女の能力。

本人が欲しいと願って得たわけじゃ無い、そんな能力。

そんな能力が効かない相手、きっと貴重だろうと思う。

 

「ん? 何だか随分と多いですね」

「あ、寅丸さん」

「おや、フィルさんではありませんか。

 今日は命蓮寺へ? 歓迎しますよ」

「はい、ありがとうございます!」

「歓迎されてるのは一目見れば分かるでしょ。

 何でここまで歓迎されてるのか

 私はよく分かんないけど。

 むしろ歓迎される様な存在なの?」

「彼女はとても素晴らしい人物ですからね。

 歓迎するのは当然です」

「あ、ありがとうございます……あ、あはは!」

「あやや、恥ずかしがってますねぇ。

 無論、理由は分かりますがね。

 ハッキリと素晴らしい人物と言われれば

 嬉しいのと同時に恥ずかしいと思うのは自然でしょう」

「で、あんたは歓迎されてんの? 烏天狗」

「私は取材さえ出来ればそれにこしたことはありませんよ。

 まぁ、出来れば歓迎されたいですけどね。

 その方が良好な関係が築けますし」

「で、少しでも歓迎して貰う為にフィルさんと?」

「えぇ、言ってしまえばそう言うことです。

 私1人では、誰も取材に答えてくれませんからね」

 

私と一緒に来たら、

どうして取材に答えてくれるって思ったのかな?

分からないけど、1人より2人の方が

話掛けたときに答えて貰い易いとかなのかな?

 

「それに、フィルさんの評価も再確認できますしね。

 改めて、フィルさんは大分妖怪達にも

 人間達にも好かれていると理解できました。

 実に有意義な時間ですね。所で、一輪さんと村紗さんは?」

「タイミングの悪い事に、お買い物へ」

「あやや、それは確かにタイミングが悪いですね」

 

村紗さんと一輪さんは丁度居なかったんだ。

久しぶりに挨拶をしたかったんだけどなぁ。

 

「ですが、お話しをして居ればきっと帰ってくるでしょう」

「そうですね、それでは取材を」

「紫苑、フィルが居なかったから戻ってきたぞー

 って、あ、あの後ろ姿は!」

「あ、天子さん、お久しぶりで」

「今度は逃がさないわ!」

「え!?」

 

不意に振われた刃を、私は反射的に掴んでいた。

 

「あ、相変わらずとんでもない反射神経ね!」

「え、えっと、そ、そんないきなり!」

「あの時の約束、忘れたとは言わせないわ!」

「え!? や、約束!?」

「今度は本気で遊ぼうと、そう言ったじゃ無いの。

 ふふ、今のあなたの強さは相当。

 この私が本気で戦える相手はそういないし

 地上を支配するためにもあんたは越えないとね!」

「て、天人様! ど、どうしてそんな」

「お、落ち着いてくださいよ、こ、ここはお寺です!

 ここで暴れるだなんて、迷惑ですよ!」

「私は構わないけど?」

「そう言う話じゃ無いですよ! 迷惑で」

「……うーん」

 

私が何度か呼びかけると、天子さんは刃を収めた。

 

「まぁ、確かにここで暴れるのもなぁ」

「あ、大人しく退いてくれるんですね」

「あやや、これは意外ですね。強引に戦うかと思いましたが

 まさか大人しく退いていくとは」

「まぁ、紫苑が世話になってる寺だし

 あまり騒いで紫苑が困るのも嫌だしね。

 友人として、紫苑の迷惑にはなりたくないし。

 私としても、あまり無茶はしたくないわよ」

「天人様……」

「姉さん、何も涙流すまで感激しなくても」

「それにまぁ、あんたも紫苑とは仲良くしてるんでしょ?」

「あ、はい、紫苑さんとは仲良くしてます」

「……まぁ、しかしなぁ、戦いたいなぁ……」

「え、えっと……な、なんで戦いたいんですか?」

「暇つぶしに最適なのよ、戦うって。

 それにやってたら楽しいし、こう、なんて言うの?

 刺激的って言うか、天界じゃ刺激は貴重だからね。

 だから地上に降りて、私は刺激を求めるというか」

「天界も大変なんですね」

「そうよ! 全くあいつら本当に毎日暇じゃ無いのかしら」

 

天人って普段どんな生活をしてるのか私にはよく分からないけど

幻想郷縁起で見た感じ、かなり退屈そうだよね。

私だったら我慢できないかも……美味しいご飯が食べられない!

ま、まぁ、あの人達からしてみれば問題じゃ無いんだろうけどね。

 

「……わ、分かりました、す、少しだけなら」

「え!? 本当!?」

「あ、はい、め、迷惑が掛らない場所なら……

 それで満足するのなら、少しだけお相手します」

「おぉ! 意外と話が分かるわね!」

「あやや、フィルさん意外と付き合うんですね」

「はい、それで暇が潰せるというなら少しだけは。

 暇って、やっぱり毒ですからね」

「じゃあ、こっち来てよ」

「あ、はい」

「あらあら、もう少しお話しできるかと思ったのですが

 残念です。やはりフィルさんは人気者ですね」

「まぁ、分かってた事だけど付き合い良いわね、あの子」

「あやや、では私も失礼して、少し戦いを見させて貰いましょう」

「なら、私も行こうかな……見て見たいし」

 

何人かが私達の後に付いてきた。

でも、聖さんと寅丸さんは付いてこなかった。

お寺があるからね、仕方ないって感じ。

ナズーリンさんも来てないね。

 

でも、天人って大変なんだね。

何もやることがないってそれはそれで辛い事だし

これで少しは気が紛れるなら、私も手を貸そう。

 

 

 

 

 

うぐぐ、ぜ、絶体絶命だ、これは不味い。

あの馬鹿天人め、余計なことを……

 

(うっふっふ~、そろそろ年貢の納め時っすね~

 さぁ、先輩が最後に何処まで抵抗できるのか

 見物っすね~、さぁ、先輩!

 うちをこのまま押さえ込むことが出来るっすか~?)

 

ぐぬぬぅ、む、無理にでも止めるべきかもだけど

フィルの善意を無下にするのは嫌だしなぁ。

 

(さ~、そろそろうちの目覚めの時っすね~

 いやぁ~、しゃばの空気を吸えると思うと

 楽しみっすよ~、まぁ、それよりもうちとしては

 うちの可愛いフィルちゃんとお話しできるのが

 何だか楽しみという感じっすけどね~)

 

君くらいだろ、フィルちゃんって言うの。

分かってる? 自覚してる?

フィルの方が僕らより圧倒的に強いよ?

 

そりゃ、君は結構強いが

君の実力なんてフィルの足下程度だよ?

 

(まぁまぁ、フィルちゃんが1番なのは周知の事実っすし

 それにほら、うちも立場的にはフィルちゃんの守護者っすし

 フィルちゃんに対して妹キャラとか後輩キャラは違うっすよ)

 

守護者だというなら、君は出て来ないでくれ。

何度も言ってるが、君まで出て来たらフィルが危険視される。

 

(フェンリル先輩は心配性っすね~

 大丈夫っすよ、何かあっても何とかなるっすよ)

 

あぁもう、なんでこう、楽観的な奴らばかりなんだ……

ぐぬぬ、僕が何とか踏ん張って抑えるしか無いかな……

せ、戦闘が始まったら……気合い入れよう。

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