東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

207 / 245
もう1人のお姉ちゃん

唯一、神と共に歩んだ怪鳥。

ガルーダという言葉も、私には記憶があった。

外の世界の神話、私は暇だった時間は

外の世界の色々な事を勉強してたからね。

 

お姉ちゃん達の正体というか

お姉ちゃん達が言ってた自分達の事。

私はそれを調べてたりもしたしね。

 

菫子ちゃん達のお家には色々な本があって

その本には色々な事が記されていた。

神話の話やミステリー系等の話し。

妖怪、悪魔、魔物、神様、怪物。

 

色々な世界で語られる神話の生き物たち。

そんな生き物たちの本をしばらくは読みあさってた。

だから、聞き覚えがある名前だと感じたんだ。

 

「さーて、折角の自己紹介ッスし

 やっぱりこう、スピーチとかそんな風に

 沢山の人の前でお話ししたいんっすよね。

 

 具体的にはあと2人欲しい所っす。

 と言う訳で、出て来て欲しいっすねー

 まぁ、結局は聞いてるなら同じっすけど

 こう、気分的に人数多い方が良いッスし?

 

 もし出て来ないというならー、空間とかー?

 境界とかー、そこら辺引掻いて呼び出すっすけど~」

「わ、分かったわよ」

 

私も当然分かっては居たけど

彼女の脅迫によって

紫さんが隙間を開き、私達の前に出て来た。

その側面には藍さんが一緒に付いている。

 

「あいあい、大人しく出て来てくれて安心っすよ。

 まぁ、うちもあまり慣れてない力の制御で

 無理矢理引きずり出して加減失敗して

 

 空間ごと色々と消し飛ばすのは恐かったッスし

 やっぱり慣れてる人が自分から出て来てくれる

 って方が、確実で安心出来るッスからねー」

「そんな不安定な方法を脅迫で使わないで欲しいわ」

「あやや、やはり紫さんも居たんですね」

「何を当たり前の事を言っているのかしら。

 少なくとも、今この状況であれば

 フィルの居るところに私が居るのは必然よ」

「随分と気に掛けますねー、特別な感情があるんですか?」

「語る必要も無いでしょう? 新聞記者」

 

紫さんは文さんの質問に答える気が無い。

その意思表示なのか、自分が手に持ってる扇で

自分の口元を隠しながら答えた。

 

「語って欲しいところですが、私としても強行して

 紫さんに忌み嫌われるのは嫌ですので追及しません。

 それに、今はとても興味深い特ダネが眼前に居る状態です。

 ここは大人しく引き下がり、特ダネを記しましょう」

 

そんな様子を見た文さんも追及は無意味だと感じたのか

それ以上紫さんに声を掛けることも無く

メモ帳を取りだし、再び私達の方へ顔を向けた。

 

「記してくださいねー、超絶可愛い期待の新人

 あなたの可愛い後輩ちゃんガルーダちゃん現るって」

 

……何でこの人、こんな感じなの?

何で得意気な表情でピース決めてるんだろう。

え? この人も私の守護者なの? お姉ちゃんなの?

何だか雰囲気が2人と違うと言うか……え? そうなの?

 

「クソ狼、俺こう言うタイプ嫌いなんだが?

 滅ぼして良いか? 何かうぜぇんだが?

 何でこんな奴がフィルの守護者なんだ? ウザいんだが?

 滅ぼすぞ? 滅ぼしても良いよな? 今滅ぼすぞ?」

 

そんな態度を見たテュポーンお姉ちゃんが

怒りを抑えているような笑顔を向ける。

何だか眉間にしわが寄ってるし

本気で怒ってるように感じた。

 

「こいつすぐに調子に乗るから、出来るならやってよ。

 僕としてもこいつには手を焼くし、滅ぼしちゃって?」

 

そんな言葉を聞いたフェンリルお姉ちゃんも

怒りを抑えてるような引きつった笑顔を見せ

少し眉間にしわを寄せながら

テュポーンお姉ちゃんの言葉を肯定する。

 

その言葉を聞いたテュポーンお姉ちゃんが

ゆっくりと拳を作り、振り上げた。

 

「本当マジでごめんなさい、

 自重します! 自重しますんで!

 その拳を降ろしてください!

 滅びますよ!? うちと一緒に幻想郷も!」

 

その様子を見た彼女は顔を真っ青にしながら後ずさりし

必死の形相で謝罪しながらテュポーンお姉ちゃんを止める。

……え? この人も私の守護者なの? お姉ちゃんなの?

 

「まぁ、幻想郷を吹っ飛ばすのは不味いな」

「そ、そうっすよね!? しないっすよね!?

 あははー! フィルちゃんの大事な居場所である

 この幻想郷を破壊しちゃうなんてあり得ないっすよね!」

「ち、ここが宇宙空間なら粉砕したが……

 いや待てよ、あの賢者が居るんだしよ

 あいつに宇宙空間に連れてって貰えば」

「その恐い解決策止めてくれます!?

 そ、そんな事したらうち全力で逃げ去って

 速攻で幻想郷に戻るっすよ!?

 この幻想郷が人質っす!」

「え? それって」

 

私に取って、その行動は逆鱗。

 

「マジでごめんなさい!」

 

一瞬だけ目を細めたのに過剰反応して

彼女が全力で土下座をして謝罪する。

 

「……これは、記事にして良いのでしょうか?

 フィルさんの守護者だと思ったら目の前で

 いきなり土下座をしてる訳ですが……」

「……何なのかしら、こいつ」

「紫様、この娘は危険な存在なのでしょうか」

「……す、少なくとも今の状態だと……

 あまり危険という雰囲気は無い様な気がするわ」

 

そんな光景を見た紫さん達も

キョトンとした表情を浮かべていた。

最初は真剣その物だったんだけどね……

 

「……僕はこんな奴の制御さえ出来なかったのか。

 情け無い……凄く情け無いよ」

「おいクソ鳥、テメェマジでフィルの守護者なのか?」

「そ、そうっすよ、

 だから胸ぐら掴んで起さないで欲しいっす…」

「……何かもう良いか」

「ふぃ、助かったっすよ-、うちは結構強いっすけど

 流石にフェンリル先輩とテュポーン先輩と

 同時交戦なんて、絶対勝ち目無いっすからね。

 

 と言うか、一瞬フィルちゃんまで敵に回しかけたっす。

 危ない危ない、フィルちゃんを敵に回したら

 うちなんて一瞬で消し炭ッスし、

 やぁ、大事に至らなくて良かったっす!」

「あ、あなた本当に何なの?」

 

そんなやり取りに呆れながらも

紫さんが私も抱いてる疑問を口にする。

 

「あ、ごめんなさいっす、ちょっと脱線しすぎたっす。

 いやぁ、あはは、うちは結構ノリ軽いッスし

 冗談言い過ぎたっすよー、あ、自己紹介っすね。

 

 うちはガルーダ、さっきも言ったっすけど

 唯一神々と共に歩んだ怪鳥って奴っす。

 インドの神話で、ヴィシュヌ様を乗せてたっすよ。

 

 まぁ、うちも不死ではあるっすけど

 諸事情あって、こうやってフィルちゃんの守護者。

 まぁ、インド神話のガルーダはうちというよりかは

 うちの前世というか、そんな感じっす。

 

 ていうかー、もし神話のガルーダが

 うちみたいな美少女だったら

 ヴィシュヌ様真性の変態っすよ。

 あ、神聖な変態っすよー

 嫁さんがキレちゃうっすし-」

 

ヴィシュヌはインド神話における主神。

創造の神とされてる、凄い神様。

でも、規模がデカすぎるせいで

インド神話はそこまで神聖な感じはない。

あくまで私のイメージだけど

インド神話は神聖というか、血生臭いし。

 

いや、それを言っちゃうと大体の神話は血生臭い。

日本神話も北欧神話もギリシャ神話もインド神話もね。

北欧神話はまだマシかもだけどね。

 

まぁ、あの神話も戦争至上主義と言う感じの神話。

戦って死ぬ事に価値があると言う神話だし

私はあまり好きな神話じゃないかな。

 

「まぁ、あのクソジジイも相当だがな」

「あのお爺ちゃんは次元違うだろう?

 まぁ、男共の理想があれなんじゃ無いかな?

 神話だなんて、所詮は人々の理想図だからね。

 

 そんな神話のトップがどうしようも無い位の

 ハーレム願望の持ち主って訳だし

 それが世の男共の理想図なのさ」

「あ、ヴィシュヌ様はそこまでじゃないっすよ?

 ラクシュミー様一筋っすよ。

 化身も結構居るっすけど、その化身の妻も

 全部ラクシュミー様の化身ッスし」

「それは女性の理想図なのかも知れないね。

 まぁ、僕としてはロマンティックなのは嫌いじゃ無いが

 そこまで来ると、正直恐いけどね。

 

 私以外、あなたの隣に居てはならない。

 例え時代が違おうと、あなたの隣は私だけ。

 そんな雰囲気があって、何か恐いしね」

 

そ、そう考えるとロマンティックだけど何処か恐いね…

 

「そう言う考えもあるかもっすねー。

 まぁそれはいいんっすけど、

 うちはそのヴィシュヌ様に仕えてたガルーダ。

 

 面白いっすよね、神々の天敵であるあなた達に

 神々と共に歩んだうちが居るって訳ッスし

 ある意味では運命感じ無いっすか?」

「僕らを変えたのは君じゃ無い。

 僕らを変えたのはフィルだ。

 君なんかじゃ無い。

 

 もし自分が存在することで

 僕らが神々に相対することが無くなった

 何てくだらない自惚れを見るなら

 僕は君に敵対するよ」

「理解してるッスよ、偶然っすよ、不運なね。

 うちらの血が巡り会ったことで

 フィルちゃんを巡る運命が大きく狂った。

 

 うちらは本来は異物っす。

 人として生を受けるはずだったフィルちゃん。

 そのフィルちゃんの全てを狂わせたのはうちら」

 

彼女の言葉を聞いて、

フェンリルお姉ちゃんと

テュポーンお姉ちゃんの表情が暗くなった。

 

ガルーダと言ってた彼女の表情もそうだった。

明るそうだけど、何処か暗いような表情。

 

「そんな風に考えないで欲しいな、お姉ちゃん達」

「でも、ガルーダが言ったことは事実だ」

「あぁ、俺らの血が運悪く巡り会っちまった。

 それにより、お前は必要の無い力を得ちまった」

「神々さえ恐怖し、怯える強大な力っす。

 本来であれば、フィルちゃんは幸せに過せてた。

 でも、うちらが巡り会ったことで歯車が狂った。

 うちらのうち、誰かが居なければ良かったんすよ」

「特に僕だ……僕が居なければ、

 君は辛い思いをしなかった。

 そして、フィルのお母さんも辛い思いはしなかった」

「……だけど、お母さんは幸せだったに違いないよ。

 酷い目に遭ったかも知れない。

 だけど、お母さんはそのお陰でお父さんに巡り会えた。

 

 そして、私も生まれる事が出来たんだ。

 私だって、今は幸せだって笑えるんだ。

 それで良いんだよ、お姉ちゃん達が悔むことじゃないの。

 お姉ちゃん達が自分達の存在を否定することは

 

 きっと、お父さんとお母さんの出会いを否定する事になる。

 私達の幸せを否定する事になる。

 だから、そんな風に思わないで、お姉ちゃん達。

 

 私は今、幸せだから。辛い思いもしたけど

 お姉ちゃん達が守ってくれて、

 お母さんとお父さんが守ってくれて

 

 そして、この幻想郷に辿り着いて

 ここで、色々な人達に助けて貰って

 私は今、幸せだから!」

「フィル……」

 

私の言葉を聞いたフェンリルお姉ちゃんと

テュポーンお姉ちゃんは少しだけ涙を浮かべた。

ガルーダお姉ちゃんは少し嬉しそうに笑ってた。

これが私の答えだった、私は皆に受入れて貰った。

だから、私も皆を受入れる事にしてるんだ。

 

幻想郷は全てを受入れる。それはきっと残酷な事だ。

人の死も、運命も、消え去っていく過去も受入れ

そしてきっと、不幸さえ受入れてしまうのかも知れない。

 

だけど、その全てを受入れてでも幸せに歩むこと。

私も自分に降りかかった今までの過去全てを受入れ

その上で、幸せに歩むことに決めたから。

 

だから、私を守ってくれてたお姉ちゃん達を

私は否定しない怨まない……お父さんお母さんの死も

私は受入れる。だけど、それで自分の心に影を落とす。

そんな事は、もう2度としないって決めたから。

 

お父さんお母さんが私の為に必死になって動いてくれたんだ。

私の幸せを願って、必死に行動したんだ。

その行動を無駄な物にはしないから。

 

「私はこの幻想郷の住民として全てを受入れる。

 その上で、私は幸せに生きると決めたから。

 だから、お姉ちゃん達も自分を否定しないで欲しいな」

「……ありがとう、フィル」

「ありがとうな、フィル。

 やっぱり俺の妹は最高だ」

「いやぁ、やっぱりうちらが頑張って守るだけはあるっす。

 凄い寛容っすね。流石はフィルちゃん」

「あやや、これは良い記事が書けそうですね。

 やはり彼女達の絆は深い。それが改めて分かりました」

「……なる程ね、これがフィルの事実だった訳ね。

 そして、フィルの強さもきっとそこにあるのでしょう。

 やっぱり私の式にしたかったわ。

 何て思ったけど、きっと私だけでは

 彼女をここまで笑顔には出来なかったでしょうね」

 

私が異常な力を手に入れてしまった事実。

3つの魔獣の力を得たことで、運悪く得てしまった力。

 

だけど、今の私ならこの力を得たことを

もう、運悪くなんて思わないと思う。

 

私は運良く……この力を得て皆に会えた。

だから、幸せになれたんだ。

それが事実で良い、その事実はもう狂わせない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。