レミリアお嬢様の指示を受けて
今回の仕事はパチュリー様の護衛。
「さて、まずは何処から漁りましょうかね」
パチュリー様は空を飛ぶわけでは無く
ゆっくりと歩いての行動だった。
「パチュリー様、空は飛ばないんですか?
今の私は一応、空も飛べますし」
「えぇ、まぁ空を飛んでも良いのだけど
今日は久しぶりに体調も良いしね。
普段は運動しないから、少しくらいは
歩いて移動して運動というのも良いでしょう」
あまり動けないから、調子が良いときくらいは
歩いて行動したいって事かな。
「珍しいですね、パチュリー様が歩くって」
「えぇ、そもそも私が動くこと自体珍しいのだけどね」
幻想郷縁起において、パチュリー様の項目には
動かない大図書館という2つ名があった。
その2つ名の通り、パチュリー様は殆ど動かない。
正確には喘息があるから動きにくいのもあるけど
体調が良くても動かないことが多いから
動けないよりは動かないの方が正しいよね。
「それだけ、今回の異変は珍しいんですね」
「まぁね、と言ってもこの異変だけであるなら
私がわざわざ動くことも無かったでしょうけどね」
「どう言う事ですか? ま、まさか、他に異変が?
た、確かに変な人とか……」
「いえ、他の異変があるからではないわ。
体調が良いのもあるし、まぁそうね
私としてもあなたとの交流したいしね。
特に、私はあなたと何かをする事は稀だし」
そう言って、パチュリー様は
私のマフラーに手を触れた。
「このマフラーの時位だしね」
確かにパチュリー様と行動する事は稀だ。
大体は皆で交流するときだったしね。
このマフラーの時とか、司書の手伝いとか
そう言う時にちょっと交流がある程度だった。
「ま、私も紅魔館の仲間として
あなたともっと交流もしたいからね。
ついでにコアもフィルと交流したいでしょ?
あなたは私以上にフィルと交流無いし」
「そ、そうですね……あまりフィルさんとは会話してません
い、一体何故でしょうか……」
「あなたの影が薄いからよ」
「酷いです! た、確かに私は名無しですけど!
こ、これでも一応、こ、紅魔館の一員で!」
「あなたは私の奴隷でしか無いわ」
「そんな殺生な!」
小悪魔さんをからかってるパチュリー様だけど
彼女を弄ってる間だ、少しだけ微笑んでた。
その表情を見るだけでも
その言葉が本心では無い事は容易に理解できた。
所詮はからかってるだけであり
本心から小悪魔さんをそんな風に思ってる訳じゃない。
そもそも、本心から思ってるんだったら
わざわざ今回、一緒に連れてくる必要は無いからね。
「ま、そう言う訳だから、
今回の異変の調査は丁度良かったの」
そう言って、パチュリー様は本を取り出した。
その本には色々な項目が載ってあり
殆どがカードに関する内容なのが分かった。
「なんですか? その本」
小悪魔さんが不思議そうにパチュリー様の手元を見る。
「カードに関する情報が載ってる本よ。
と言っても、殆どがタロットだとか
今回の異変に関係なさそうな本だけどね」
歩きながら本を読んでるパチュリー様を見て
私は警戒を怠らないように歩くことにした。
「えっと、これが……あ」
「パチュリー様!」
案の定、パチュリー様は平地でつまずいてしまった。
不意の事で驚いたのか、小悪魔さんは叫んで手を伸ばす。
「気を付けてくださいね、パチュリー様」
「あ、ありがとう、助かったわ」
だけど、既に警戒してた私の方が早かった。
小悪魔さんは私がパチュリー様を支えたのを見て
心の底から安心した様な大きなため息をついた。
「よ、良かったぁ……」
「やはり、あまり慣れないことはするべきじゃ無いわね」
あまり表情に変化は無いパチュリー様だったけど
冷や汗からしても、かなり焦ってたのは分かった。
「ごめんなさいね、フィル」
「いえ、お気になさらず。
足下、気を付けてくださいね?
大きな怪我をした後じゃ、遅いですから」
「私は魔女だし、怪我しても治るわ」
「怪我をして心配する人が居ます。
それに、私は不死ですけどパチュリー様は不死じゃ無い。
あまり油断してると、取り返しが付かないことになります。
そうなったら、レミリアお嬢様もフランお嬢様も
悲しんじゃいますよ。
なので、気を付けてくださいね。
今日は私がちゃんとお守りしますけど
いつもお守りすることは出来ないので」
「肝に銘じておくわ」
「……私もパチュリー様をお守りします!」
「……あまり頼りなさそうだけどね」
「酷い!」
小悪魔さんをからかうパチュリー様だったけど
僅に微笑みを浮かべていた。
「ま、期待しておくわね」
「はい! 期待してください!」
やっぱりパチュリー様は表情の変化に乏しい。
だけど、最初と比べると大分表情が分かるようになった。
少しだけ、明るくなってるみたいで、私も嬉しい。
「さて、まぁこの話はここまでとして
アビリティーカードの出所を探しましょう。
今回、私達が探すのは、このカードの特性。
力の模倣というのは驚異的だけど
私達が注目するべきはそこでは無いわ」
そう言って、パチュリー様がアビリティーカードを取り出す。
「このカードの最たる特性……
他の特殊なカードには無い、特別な要素。
それが、お金のみで売買が出来ると言う要素よ」
そんな会話をしていると、不意に気配を感じた。
「お姉さん達もカードをお探しかな?
どうかな? 良いカードが揃ってるよ」
「ふむ、丁度良いのが来たわね」
猫みたいな女の子が私達の前に姿を見せた。
「フィル」
「はい」
「あいつのカードを全部かっさらいなさい」
「……え?」
「……え?」
私のあの猫の人が同時に間の抜けた声を出した。
「アビリティーカードが何故、
金銭のみでの売買が可能なのか。
こんな面倒な制約を付ける理由。
だけど何より、一体誰に
そんな制約を付けることが出来るのか。
可能なのはよっぽど力がある存在か
それは妖怪なのか神なのか分からないけど
あなたが奪えるのであれば、
神である可能性が大きくなるわ。
だから、奪いなさい暴力で」
「そ、そんな滅茶苦茶な!
お金での取引は自由経済の基本ですし」
(良いじゃねぇかよ、奪っちまえば)
(僕も金銭のやり取りは嫌いだから賛成だよー)
(うちも面白そうな方に賛成っす-)
(なんでお姉ちゃん達もそんなに殺伐してるの!?)
そんなやり取りをしてたら、ガルーダお姉ちゃんが出て来た。
「うわ! なんか増えたんだけど!」
「ふっふっふー、さぁ、可愛い子猫ちゃん!
身ぐるみ剥いでやるっすよー!」
「ぼ、暴力じゃカードは奪えないんだよ!」
「しらないっすよ!」
「あ、ぎゃー!」
い、一瞬であの子のカードが全部奪われた……
「ふふん、奪えるじゃ無いっすかー」
「そ、そんな……い、今まで奪われなかったのに……
と言うか、お姉さん容赦なさ過ぎ!
げ、幻想郷のルールとか無視しないで!」
「こんなちっぽけな世界のルールなんて関係無いッスよ
どんな世界だろうと、ルールってのは強者が作る物っす
強者が自分に有利なルールを作るだけ。
その強者より強いうちらがルールを破ろうと
誰もうちらを止めることは出来ないっすよ。
ルールに縛られるのは弱者だけっす。
どんな時だろうと、どんな時代だろうと
どんな場所だろうと、どんな生き物だろうと
弱者は強者の食い物っす。
絶対強者にルールなんて無いっすよー」
「……ガルーダお姉ちゃん?」
「はひ?」
……流石にこれはやり過ぎだと思うんだよね。
いくら何でも相手の身ぐるみを容赦なく剥ぐのは。
「確かにパチュリー様の命令もある。
私は確かにその子からカードを奪う事は出来ない。
だから、出て来て奪ったのかも知れないけど……」
「……あ、あのー」
「でも、弱い者いじめは」
「ご、ごめん! ごめん! フィルちゃん!
いや本当、マジで許して! わ、悪気は無かったっす!
だ、だからその威圧は止めて! 空気震えてる!」
必死に私に土下座をした後に
ガルーダお姉ちゃんはあの子にカードを全て返した。
あの猫の子はキョトンとした表情を見せた後
カードを受け取る。
「ご、ごめんなさい私のお姉ちゃんが」
「あ、その……き、気にしないで良いよお姉さん……」
「その、私フィルって言います、何かあったら」
「フィル!? う、噂に聞くあの大妖怪の!」
「だ、大妖怪!?」
「げ、幻想郷最強って聞いたんだけど……
い、意外と普通なんだね……お、驚いた。
あ、あたしは豪徳寺ミケって言うんだ、よ、よろしく」
「はい、よろしくお願いします。
それと、アビリティーカード下さい」
「おぉ! お客さんなら大歓迎だよ!」
「じゃあ、全部下さい」
「え? でも、このカードは1度に1枚しか」
「そうなんですか? でも、お願いします!」
「う、うん……出来るのかな?」
彼女は少し動揺しながら、私にカードをくれた。
全部同時に購入する事が出来たね。
「……おっかしいなぁ、聞いた話だと1枚だけなのに」
「何処で聞いたんですか?」
「妖怪の山でだよ」
「妖怪の山?」
「なる程ね、フィル。目的地が定まったわね。
妖怪の山へ行きましょう」
「あ、はい」
「そして同時に、黒幕の種族が殆ど確定したわね」
「そうですね」
「問題はカードをどうやって作ってるかね。
妖怪の山へ行って調査しながら
フィルのアビリティーカードがあるか探しましょう。
そうだ、その猫から買ったカードにはある?」
「ちょっと待ってくださいね」
ミケさんから買ったカードを手分けして探してみて
私っぽい絵が描いてあるカードを探したけど
それっぽいカードは何処にも無かった。
でも、目的地は決ったし、妖怪の山へ行こう。
(……け、消し飛ぶかと思ったっす……)
(1人で飛び出すから……)
(フィルは本当真面目だよな……
フィルはそう言う都合の良い
ルールにつまみ出された立場だ。
フィルだってそう言ったルールは嫌いだろうに)
(でも、ある意味じゃ、当然の反応ではあるか。
もしフィルが、ルールを厳守するタイプじゃなけりゃ)
(ま、まぁ、外の世界は真っ平らっすよねー)
(焼け野原で海も消えてるだろうな)
(あまり変な事は出来ないッスね……
本当、心の底から死ぬかと思ったっす)
(今回は大人しくしておこうか。
僕らはこうやって会議するだけで、
あまりフィルには干渉しないようにしよう)
(だな、俺らが動いたら性格上ヤバいしな)
(あぁ、特に君と鶏はヤバいだろうね)
(鶏じゃ無いっすよ-、怪鳥っすよー
うちは美味しくないっすしね。
こんな超絶美少女が美味しいはずが無いっす。
特にうちは早く飛ぶためにお肉あまり無いから
可食部位もあまり無いっすよ-、殆ど骨っすよー)
(最初、デカくしたじゃ無いか、君)
(ふ、マジで食われると思ったっす)
(はぁ、変な事するからだよ)
(反省してまーす)
(はいはい)