東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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虹龍洞の奥へ

よーし、この妖怪の山にある虹龍洞。

そこを目指して、私達はゆっくりと進んだ。

咲夜さんから貰った地図のお陰で

その場所には迷わず辿り着くことが出来た。

 

「なる程ね、ここが虹龍洞」

「結構、薄暗そうな場所ですね」

「そうね」

 

そんな会話をしながら、私達は虹龍洞へ進む。

 

「薄暗いわね」

 

そう小さく呟いた後に

パチュリー様が周囲に明かりを照らした。

光系等の魔法なんだろうね。

 

パチュリー様は七曜の魔法を扱うのが得意だからね。

そもそも、それを抜きにしてもパチュリー様の魔法は

引き出しが凄い多いから、色々と出来る。

ちょっと教えて貰ったこともあるんだけど

パチュリー様が扱う七つの属性魔法。

 

それが司る物も、また面白いと言えるね。

生命と目覚めは木、変化と動きが火

基礎と不動は土、実りと豊かさは金

静寂と浄化は水、能動と攻撃は日

受動と防御は月だって説明してくれた。

 

これらを同時に出す事で

火力を上げたりと言った感じで

かなりバリエーションが多いらしいね。

 

魔法使いの中でも相当上位で

かなり柔軟性に富んでいるのがパチュリー様。

私もちょっと教わったけど、日と月しか出来なかった。

糸の魔法も少しアリスさんに教わったけど

流石に1時間じゃ、1本しか出来なかったよ。

 

「本当、魔法って凄い便利ですよね!」

「そうね、それ相応の時間を掛けて辿り着く境地だからね。

 便利じゃなければ、むしろ困るわ」

「私も魔法を極めてみたいです!」

「……それは、流石に八雲紫が止めるわ、多分」

「何でですか?」

「……自分の胸に聞きなさい。

 ただ、分かりやすいヒントを言うとすれば

 魔法は本来、それ相応の時間を掛けて

 ようやく辿り着ける技術よ」

「本来、魔法って扱うだけで凄いのですよ?」

 

確かに、皆かなり大変そうだけど。

うん、あまり変な事を言わない方が良いよね。

それは、皆の努力を否定してるって事になる。

 

……私はどうしてかな、凄く無自覚だ。

私に取って、当たり前の事も

私以外からしてみれば努力の末の結晶。

……そんな結晶を、私が当たり前の様に扱うのは

 

「……」

「あまり暗い顔をしないの、余計に暗くなるわ」

「す、すみません」

「あなたはどうも、後ろ向きになると

 必要以上に後ろ向きになる傾向にあるわね」

「は、はい……」

「前向きに考えなさい、フィル。

 あなたの才能は、私に取ってはプラスなのよ。

 あなたが後ろ向きになる必要は無いわ」

「ど、どう言う事ですか? わ、私は……その。

 パチュリー様の努力の結晶を、当たり前の様に」

「私達、魔法使い常に新しい事へ挑戦するわ。

 そんな私達にとって、あなたのように

 遙か高みの存在と言うのは、実に良い刺激よ。

 

 特に、あなたのように悪態をつくわけでも無い

 接しやすいタイプが高みにいるというのであれば

 あなたの才能を目の当たりにし、協力して貰って

 自分自身を更なる高みへと押し上げることも出来る。

 

 私達は探求者なのよ。

 身近に素晴らしい才能を持つ者が居るのであれば

 常に挑戦をする事が出来る。それは素晴らしい事よ」

「パチュリー様……」

 

パチュリー様が私の方を向いて

少しだけ、不器用な笑みを向けてくれた。

咲夜さんやレミリアお嬢様も

優しい笑みを、私に良く向けてくれる。

 

パチュリー様の笑みは不器用だけど

確かにその笑みの中に、優しさを感じた。

 

「あ、ありがとうございます」

「良い笑顔ね、あなたの笑顔は

 やっぱり元気が貰えるわ」

「えへへ、笑顔って得意なんです」

「よく分かるわ」

 

少しだけ、暗い気持ちになったけど

なんとかパチュリー様のお陰で元に戻った。

やっぱり、まだ感情の制御が上手く出来てないや……

咲夜さん達はそう言うのが出来るのにな。

 

「……フィル」

「どうしました?」

 

そんな会話の後、パチュリー様の雰囲気が変わる。

 

「これ以上は、ちょっと厳しいかも知れないわ」

「だ、大丈夫ですか!? 何処か、怪我とか!」

「いえ、怪我とかじゃないわ。

 ただね……空気が薄くなってきたような気がして」

「空気?」

 

確かにこの洞窟、かなり深いもんね。

結構歩いてきたけど、未だに奥まで辿り着かない。

ただ、この洞窟の遙か奥地から音が聞える。

 

何かを掘り返してるような、そんな音だね。

金属のような音と、石が砕けるような音。

何かを発掘してる音なんだろうけど。

 

でも、私の耳でもギリギリ聞えるくらいだから

きっと、ここよりも遙かに奥なんだろう。

 

「そうですね、確かに異様な程に深いですし」

「パチュリー様は体も弱いですし

 あまり空気が薄い場所は体に毒ですね。

 ここは、大人しく帰りましょうか」

「……いえ、ここまで来て大人しく下がるのは

 正直、あまり嬉しくないわ。

 だから、フィル。あなただけ奥へ行って」

「え? わ、私だけですか? でも、パチュリー様」

「私の事は大丈夫よ、頼りないけど小悪魔が居るわ」

「ひ、一言多くないですか!?」

「実際、フィルとあなたを比べると」

「はい、百も承知です……うぅ。

 で、でも、パチュリー様をお守りすることは出来ます。

 なので、パチュリー様の事は私にお任せください」

「私の知的好奇心は1度火が付いたら早々消えないわ。

 だから、フィル。面白そうな物があったら持ってきなさい」

「わ、分かりました!」

 

パチュリー様は、どうしてもこの奥に何があるのか

それを知りたいみたいだしね。

私なら問題は無いから、私だけ進もう。

そもそも、私って宇宙空間でも動けるみたいだし

空気が薄い程度じゃ、なんの影響もないしね。

 

「じゃあ、行ってきます!」

 

パチュリー様に一言を告げた後

私は今までよりも一層足を速めて進んだ。

私が全力で移動すればすぐなんだろうけど

ここは洞窟だしね、本気で進んだりしたら

1歩だけで洞窟が崩落すると思う。

 

私は生き埋めになったところで

なんの問題も無いだろうけど

パチュリー様や小悪魔さんも生き埋めになっちゃう。

多分大丈夫だろうけど、怪我をさせるわけにはいかない。

だから、洞窟が崩壊しない程度の速度で移動。

 

「あ、なんだろうこれ」

 

ちょっと綺麗に輝いてる宝石が転がってた。

綺麗な宝石だけど……もしかして、これ?

こんな宝石は今まで見たこと無いからね。

 

外の世界にも、こう言う宝石は何処にも無い。

暇だったときに色々と見てたから分かるんだけど

その中に、これと同じ物は無かった。

 

「取り合えず、取っとこ」

 

パチュリー様に見せるためにこの宝石を回収した。

うん、何か気になる物があったら集めよう。

 

「まさか、こんな奥地に来るなんて」

「あ、こんにちわ」

 

声を掛けてきたから、その方向を見た。

白いチャイナドレスっぽい服を着てるね。

狐のような耳も生えてるし、狐の妖怪かな?

 

「狐さんですか?」

「まぁ、狐さんね」

「そうなんですね、所でその右手は?

 なんで狐さんを作ってるんですか?」

「可愛いでしょ? あなたもやってみたら?

 狼なんだし、こう両手を広げてがおーって」

「な、何故?」

「可愛いわよ? ほら、やって見せてよ」

「……え、えっと……が、がおー」

 

ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、やってみた。

 

「普通やる?」

「やったのに酷い反応ですね!

 ま、まぁ、別に気にはしてませんけど」

「あんたが妙に親しまれてる理由、分かるわ」

「あ、私の事知ってるんですか?」

「そりゃ、この幻想郷であなたの事を知らないような

 そんな妖怪、今更早々居ないわ。

 半獣異変を起した最強の妖怪、フィル」

「あ、やっぱり知ってるんですね」

「そりゃね……因みに私は菅牧典(くだまきつかさ)

 一応は、大天狗様の部下をしてるわ。

 で、今日はなんのご用かしら」

「あ、はい、今日はこの洞窟にアビリティーカードの

 材料である宝石があるって聞いてきたんです」

「そんな物ある訳無いでしょ?」

「うーん、そんな事を言われても」

 

この奥地にあるのはほぼ確定だと思うんだけどなぁ。

そもそも、咲夜さんの情報だからね。

咲夜さんの情報の方が信憑性は高いだろうしね。

 

で、嘘を付いたと仮定すれば

この狐さんは異変を起してる側だね。

となると、大天狗様の部下って訳だから

黒幕の1人は大天狗という可能性が高いんだね。

 

で、この奥にはアビリティーカードの材料がある。

で、材料は宝石だって咲夜さんは言ってたから

ほぼ確実にさっき回収した宝石がそれだね。

 

「……分かりました、じゃあ帰ります」

「え!?」

「え?」

 

私が帰りますと伝えると同時に

彼女が驚きの声を漏らす。

その声を聞いて、私も声が漏れた。

 

「い、いや、普通あっさり帰る?

 あなたは頭も良いって聞いたから

 その、これが出任せって事くらい分かるかと…」

「分かってますよ、でも、もう宝石もありますし

 わざわざお仕事に励んでる人の邪魔をするのもって

 で、大天狗さんに異変の意図を聞こうかと」

「そこまで言われて引き下がれないわ!

 龍(めぐむ)様に手を出させるわけにはいかないし」

「名前まで言う必要、無いと思いますけど?」

「……に、逃がさなきゃ良いし」

「私の事を知ってるなら、それが出来ない事くらいは」

「……お、奥地に案内するから許して」

「え? あ、はい、分かりました」

 

何故か知らないけど、奥地に案内して貰えるそうだ。

 

 

 

 

 

(……フィル、可愛いな)

(僕達もお願いしてみよう。

 多分、いや、確実にやってくれる)

(あのー、そこっすか? 触れるところそこっすか?)

(そこ以外の何処に触れる要素があるんだい?)

(いや、あの狐とか……)

(管狐だろ? 性格は嫌いだけど

 まぁ、今回は悪意なんぞ持てないだろう。

 相手が悪すぎるからね、精々フィルを利用して

 自分の主に不利益を被らせるか。

 どちらにせよ、フィルには関係無いし

 あれが牙を向けてきたら粉砕すれば良いだけだし)

(あぁ、それより可愛いフィルの方が重要だろ)

(まぁ、確かにうちも可愛いとは思ったっすけど。

 あ、そうだ、ならばここで!

 ふっふっふ、がおーっす!)

(死にたいらしいな?)

(引き裂くよ?)

(酷い!)

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