東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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洞窟の最奥

典さんに案内されて、虹龍洞の奥へ足を進める。

彼女は何度か私の方を見ているように見えた。

私が何処にも行ってないのを確認するためかな。

 

「そろそろ最奥ですね」

 

彼女が呟くけど、それは確かに分かった。

さっきから響いてくるピッケルの音がかなり近い。

 

「こ、こんにちは、百々世(ももよ)さん」

「あー? 典か?」

「今日はお客様を案内しました」

「お客様だと? お?」

「あ、こんにちは」

 

洞窟の奥地に居たのは女の子だった。

結構大きめのピッケルを持ってるね。

グレーのような水色のロングヘアーで

四肢にはオレンジ色のリボンが複数付いている。

 

腰には緑色の鎖をそれぞれ巻き付けてるね。

着替えるときとか引っ掛かって大変そうだ。

それに、シャツの袖や襟、ズボンの裾には

緑色の輪が通されてるし、これは作るの少し手間かも?

 

それにしても、どうして裸足なんだろう。

こんな洞窟の中だし、怪我するんじゃ?

いや、それを言ったらミニスカートってだけで

発掘してるときに石片が飛んできて怪我するかもね。

妖怪だから大した事無いのかも知れないけど。

 

この酸素も何も無い空間で動けるわけだし

結構力がある妖怪だったりするのかもね。

 

「おい、典……そいつ、絶対強いだろ!」

「まぁ、強いでしょうね、彼女は」

「よし、勝負だ!」

「なんでですか!?」

「実は俺はそう言うのが大好きでな。

 やっぱ戦いってのは血が滾るっつうか?

 誰も俺の相手とかしてくれねぇしよ。

 飯だけ食ってやってくってのも飽きが来るってもんだ。

 まぁ、そんで気まぐれで岩砕いてたら宝石見付けて

 龍に商売持ちかけられて、飯貰ってたんだけど

 そろそろそう言うのも飽きてきたっつうか?」

 

なんだろう、性格とか口調とかそこら辺

かなりテュポーンお姉ちゃんに似てる気がする

 

「だからよ、強ー奴と戦いてぇのさ!

 お前さん、絶対強ーだろ!? 分かるぜ!

 あまり高圧的な態度は取ってねぇが

 隠しきれねぇ強者のオーラを感じる!

 正直、俺じゃどう足掻いても勝てねぇって

 見ただけで分かるが、ここまで強ー奴を前にして

 血が滾らねぇのは俺じゃねぇ!」

 

満面の笑みを浮かべながら、スコップを私に向けた。

……ピッケルじゃなくてスコップの方なんだね。

 

「百々世さん? なんでそっちなんです?」

「こっちの方が相手に向けてるって

 なんか分かりやすいだろ! 多分!」

「す、スコップですよそれ、武器じゃないですよ?

 まぁ、ピッケルも武器じゃありませんけど」

 

何だか、色々な所がテュポーンお姉ちゃんに似てる…

 

(ぷふ、くく、滅茶苦茶似てる……)

(フェンリル、馬鹿にしてるのか!?

 何処が似てるんだよ何処が!

 俺はあそこまで馬鹿じゃねぇ!)

(いや、滅茶苦茶似てるッスよ、これ)

(鶏、テメェも馬鹿にしてるな!?)

(鶏じゃないっす! 怪鳥ッス!

 何度も言ってるっすけど

 うちが美味しい美味しい鶏な訳無いっす!

 肉が無いっすよ肉が!)

(否定の仕方、やっぱおかしいと思うんだけど?)

(だって、食べられたくないじゃないっすかー)

 

会話がかなり聞えてくるなぁ、やっぱり。

でも、テュポーンお姉ちゃんは否定してるけど

うん、だけどやっぱり似てると思う。

 

「まぁ何でも良いさ、とにかく戦おうぜ!

 そう言うのを待ってたんだ! さぁさぁ!」

「わ、わ、分かりましたよぅ……戦います」

「よっしゃぁ!」

「でも、洞窟内では駄目です」

「何でだよ!」

「だって、崩れたら困るじゃないですか」

「大丈夫だろ、崩れたところで抜けだしゃいい」

「あ、あの、百々世さん? それは困るというか。

 龍様に迷惑掛りますけど?」

「大丈夫だろ」

「どちらにせよ、私はこの洞窟内では戦いません

 この洞窟内で戦うというなら、絶対に戦いません」

「何でだよ!」

「私の大事な人が洞窟内に居るんですよ。

 洞窟が崩れたら、その人達が怪我をします。

 なので、ここで戦う訳にはいきません」

「ちぇ、んだよ」

 

少しふて腐れながら、彼女はスコップを降ろした。

 

「外なら良いんだよな? 外なら」

「はい、洞窟外なら大丈夫です」

「……はぁ、分かった分かった

 戦えるならそれで良いぜ」

「あ、それともうひとつ」

「なんだよ、まだ何かあるのか?」

「ここの宝石、いくらか貰えますか?」

「宝石? あぁ、龍珠か? お前も食うのか?」

「食べられるんですかこの宝石!?」

「あぁ、食べられるぞ」

 

そう言って、彼女は宝石を食べた。

岩を砕くような音が聞えてくるね。

……た、食べられるんだ、この宝石。

食べられるの? どんな味がするんだろう。

 

「……」

「あの、涎でてますよ?」

「なんだ、やっぱ食うのか。

 じゃあ、戦ってくれるお礼にちょっとだけ。

 ほれ、結構多いだろ? 食べてもろよ」

「じゃあ、いただきます!」

 

お、おぉ! 食べられる、かなり歯応えがあるね。

だけど、なんだろう。味気ないなぁ。

でも、宝石の色で味が違うんだ……

とはいえ、これ以上は食べられないかな。

パチュリー様に渡さないと行けないし。

でも、結構美味しい気がする。

 

赤色の宝石は少しだけお肉に近い味がした。

そうだなぁ、牛肉に近いかもしれない。

で、青色は少しだけ魚みたいな味がした。

味としては、ブリと近い気がしたね。

紫色の宝石は少しだけ甘かった。

 

「意外と美味しいですね」

「お、分かってくれるか! だよな、美味いよな!

 色によって味も違うし、食い応えもあるってもんだ」

「き、貴重な龍珠なんで、

 で、出来れば食べないで欲しいな-な、なんて…」

「ほれ、典、お前も食ってみろ、美味いぞ?」

「いえ、遠慮しておきます。

 と言うか、私じゃかみ砕けませんし…」

「んだ? これ位行けるだろ、ほれ、食ってみろって」

「止めてください! 

 龍珠を私の口に入れようとしないで!」

「んだよ、食えよ、美味いって。

 食わず嫌いは良くねぇぞ? ほれ、食えって」

「無理ー!」

 

結構美味しいと思うけど、やっぱり食べられないのかなぁ?

あ、口元に宝石付いちゃった、ハンカチで拭かなきゃ。

 

「もご!」

「ほれ、食え食え」

「むぐ、むぐー! むぐぐー!」

「食えよ-、美味いもんが好きなんだろ?

 聞いたぜ、龍からよ、美味いもんばかり喰ってるって。

 ほれ、嬉しいだろ? 美味いからな龍珠は。

 多分、龍も龍珠食ってるだろうしな」

「むぐぐぐぅ!」

 

典さんが必死に首を振って否定しようとしてるけど

百々世さんは満面の笑みのまま宝石を食べさようとしてる。

 

「ま、まぁまぁ、そこまでにしてあげてくださいよ」

「ん? 何でだ?」

「多分ですけど、かみ砕けないんですよ」

「あ? こんな脆いもん、かみ砕けねぇわけねぇだろ。

 龍の鱗とかの方が歯応えあるぜ?」

「確かに簡単にかみ砕けるくらいには脆いですけど

 それはほら、私達の顎と歯が強いだけですよ。

 人間さんとかは柔らかい物ばかり食べてますし

 多分、典さんも硬い物は食べられないんですって」

「んだ、そりゃ損してるなぁ、

 こんなうめぇの食えねぇって」

「けほ、けほ」

 

典さんの口に入れてた宝石を取り出した後

百々世さんはその宝石を食べた。

 

「まぁ、確かに俺もずっと食ってるから飽きは来てるが

 やっぱ美味いと思うんだが」

「うぅ、口の中がジャリジャリしてる……

 なんで私がこんな目に……」

「大丈夫ですか? 百々世さんも悪意はないんですよ?

 ただ、自分の好きな食べ物をお勧めしてただけなので」

「わ、分かってますけどね……」

「しかし、お前さんとは話があうな。

 ほれ、他にもいくらかあるから上げるぜ」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあ、約束通り戦って貰うぜ!」

「はい、分かってます。約束は守りますよ。

 それじゃあ、洞窟から出ましょうか」

「おう!」

 

やっぱり強い口調の人は好戦的な気がするね。

でも、悪い人じゃないのは何となく分かるよ。

 

 

 

 

(……あの宝石、意外と美味いんだね)

(フェンリル先輩、食べたかったとか?)

(あぁ、美味しい物は食べたいだろ?)

(……フィルちゃんが食いしん坊なのって

 やっぱりフェンリル先輩が理由なんすね)

(槍投げるおっさん食ったんだろ?)

(食べたけど、あいつはなぁ、不味かったしなぁ

 まぁ、人の食べ物も美味しいから良いんだけどさ。

 はぁ、ユグドラシルと地球食べたかったなぁ……)

(……はぁ、食いしん坊っすねぇ)

(地球って小せぇし、1口で行けるだろ)

(行こうとしたんだよ? でもほら

 あいつの息子が邪魔してさぁ。

 そう言えば、スコルとハティが

 大分前に月と太陽を食べてたけど

 結局、美味しかったのかどうか聞いてないんだよね)

(んだよ、そいつら)

(僕の妹だよ、3姉妹だし僕ら、因みに僕は長女だよ。

 となると当然、フィルはあいつらの妹でもあるのか。

 やっぱり末っ子になりそうだけどね)

(フィルちゃんのお姉ちゃんが

 ドンドン増えるっすね、あはは)

(はぁ、食べたかったなぁ、地球とユグドラシル……)

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