全力で挑んでみたいと、そう告げられた。
私は誰かに挑まれる立場なんだ。
だから、答えないと駄目だ。
「行くぞ、フィル!」
彼女が強く足に力を込めた。
同時に大地がひび割れ、間合いを詰めてきた。
「っと!」
私は彼女の拳を受け止める。
同時に大きな風圧が周囲を襲った。
彼女の一撃がどれ程の物だったのかは
私の近くにあった木が吹き飛んだ所から考えて
並の妖怪であれば、一撃で倒されるほどの
強力な一撃だったのが分かった。
だけど、私はそれだけの一撃を受けても
痛いどころか、殆ど怯みさえしない。
これが私本来の強さなんだろう。
「はぁ!」
「ん」
彼女は即座に体勢を変え、強力な蹴りを放つ。
私はその攻撃を防ぐ。
最初と同じ様に大きな衝撃が広がった。
「やっぱスゲーぜ、最強の妖怪……
俺が全力を出してもビクともしやしねぇ」
「私、かなり強いみたいですからね」
「あぁ、知ってる!」
僅かに距離を取り、彼女は爪を伸ばし
私に向って全力で振ってくる。
私はその攻撃を避ける。
同時に、背後の木々が何十本も両断された。
「はは!」
私が攻撃を避けたのが楽しかったのか
彼女は嬉しそうに笑い、今度は爪を振り下ろした。
さっきと同じ様に私は彼女の攻撃を避ける。
彼女の攻撃は大地に直撃し、地面がひび割れた。
周囲の木々も僅かに歪んだ、根っ子が浮いたんだろう。
「はは! 当りゃしねぇな!」
「避けるのは得意ですからね」
「だが、わざわざ避けるこたねぇだろ?」
彼女が再び私に向って攻撃を仕掛けてくる
同じ様に爪を使っての攻撃だった。
「えぇまぁ」
私もその攻撃を掌で受け止め、相殺した。
最初と同じ様に周囲に衝撃波が走った。
「最高だぜ!」
相殺されたことに対して驚く様子も見せず
彼女は後方に跳び退き、大地を強く踏み付ける。
同時に足下から巨大なムカデが姿を見せた。
間違いなく、力を用いて召喚した
実体のある幻影。私がお姉ちゃん達を呼び出してるのと
何ら変わらない方法だと言うのが予想出来た。
「行け!」
「同じ技なら使えます!」
普段お姉ちゃん達を召喚してる方法を応用し
私も自分の背後にイメージの巨大な狼を呼び出す。
あまりに力を込め過ぎると危ういだろうから
適度に手を抜いた、結構大きな狼。
私が本気で呼び出そうとしたら、最悪の場合
北欧神話で出てくる、本物のフェンリルと
同じ位に危険な狼が出てくるかも知れないしね。
「フィル、あんな技を……」
。
私が呼び出した狼が百々世さんのムカデの首を引き裂くが
百々世さんが呼び出したムカデもクビだけになりながら
私が呼び出した狼に食らい付き、お互いに倒れた。
「スゲーな、全力でやったのに潰された。
ありゃ、明らかに加減してたってのに。
俺の具現の力じゃ、やっぱ敵わねぇか」
「色々出来るんですね、百々世さん。
本当にかなり驚いてます」
「そりゃな、一応伊達じゃねぇつもりだ!」
彼女はやはり肉弾戦が好きなのだろう。
再び私の方に向って飛びかかってくる。
反撃はせず、私は彼女の攻撃の防御に専念。
攻撃を防いだり、相殺したりする度に
周囲の木々が折れたり吹き飛んだり
地面が抉れたりしてる。
「なら、今度はこれだ!」
腕にイメージを映した形なのか
彼女の腕が変化して、一瞬だけムカデのようになった。
だけど、すぐにその変化は元に戻り
腕にさっきとは違う雰囲気を纏ってる。
「くらえぇ!」
こちらに近付いてくる彼女に手を向け
こぶしを握り、彼女のこぶしを殴る。
周囲にさっきまでとは比べものにならないほどの
大きな衝撃波と爆音が響き渡る。
同時に何かが割れるような音が聞えた。
「最高だ! 次はもっと!」
「なら、私も!」
再び、私と百々世さんのこぶしが当る。
さっきよりも広範囲に爆音が響き
周囲の木々が吹っ飛んだのが分かった。
更に大きな何かが割れるような音。
「今度は俺の全力全開だ……全開だ!
俺の残ってる力を使ってぶっ放す!
俺が放てる最高の一撃!」
「なら、私はその一撃を同じ様に粉砕します。
正面から拳をぶつけて!」
「行くぞ! フィル!」
「はい!」
私達が再び同時に飛び出す。
「止めなさーい!」
だけど、同時に私達を静止する結界が展開する。
体が無意識に反応した私は結界を殴り粉砕。
百々世さんは不意の事に反応出来ず
結界にぶつかって技が途切れた。
「結界!?」
「フィル!」
「あ、紫さん、冬眠してたんじゃ?」
「えぇ、してたわ……ついさっきまでね」
「じゃあ、どうして?」
「起きるに決ってるでしょうが!
周囲を見なさい!」
紫さんに怒られて、少し冷静に戻った後に
周囲を見渡してみる……
「……」
周囲の光景を見た私は冷や汗が溢れ出してきた。
ボロボロの木々に、ズタボロの大地。
それだけでもとんでもない事なんだけど
い、歪に歪んでる空間やひび割れた空間。
これ、け、結界が!
「そ、その……ごめんなさい!」
「なんでこんな事になったのよ!
詳しく説明しなさい!
そこの魔法使いと管狐!」
「……正直言うわ、
ここまでの被害になるとは思わなかった」
「なんでスペルカードルールでやらせなかったの!?」
「大百足とフィルの闘志に火が付いたのが原因でね」
「何が原因!?」
「こいつ」
紫さんの質問に対し、パチュリー様が
結構ボロボロで意識を失ってる典さんを指差した。
「この伸びてる管狐?
でも、あなたにも原因があるでしょう?」
「そうね、知的好奇心が勝ってしまったわ。
でも、途中で止めようとは思ったのよ?
だけど、あの2人の戦いが苛烈すぎてね。
声を掛けても聞えなかったみたいだし
防御魔法を解除するのも危なかったから」
「……とにかく、起こってしまったのは仕方ないわ。
問題はその後をどう対処するか……
正直、この規模の歪みは私だけだと苦労するわ。
フィル、原因はあなたにあるのよ」
「はい、本当に済みませんでした、ごめんなさい。
ちょっとテンション上がりすぎました……」
うぅ、な、なんで気付かなかったんだろう。
こ、こんなに酷い状態になってるのに。
うぅ、わ、私の馬鹿!
「テュポーンが出て来たわけじゃ無いのに。
まぁ、最近は妙に積極的だったしね」
「うぅ、わ、私、何て事を……」
「フィル、あなたに軽く結界術を教えるわ。
だから、あなたも手伝って頂戴」
「は、はい! 手伝います!」
「クソ、最後の一撃が出来なかった…
賢者、邪魔しねぇでくれよ」
「邪魔するわよ馬鹿! もう!
とにかくフィル、教えるから。
あんたらは帰りなさい!
特に大百足、あんたは住処に帰って。
どうせ役に立たないだろうしね」
「ちぇ」
「管狐はちょっと雁字搦めにして
後で事情を聞くとして、パチュリー
あんたはレミリアにフィルの事を伝えて来て
しばらくフィルを借りるってね」
「分かったわ、私のミスもあるしね」
紫さんに指示を貰ったパチュリー様が
空をゆっくりと飛んで紅魔館へ向う。
「白狼天狗!」
「あ、はい……」
「ついでに烏天狗」
「あ、バレてました?」
「あんたら、なんで止めなかったの?」
「いや、分かって下さいよ紫さん。
あの規模の戦いに乱入できるのは
あなたほどの実力者くらいですよ?
私や椛が止めに入った所で何も出来ないですよ」
「他に白狼天狗は?」
「無理ですって、誰も近付きませんよ。
フィルさんと百々世さんの戦いに近付く命知らずは
私達くらいな物ですよ。
椛も新人は来させないくらいには警戒してましたし
普通の白狼天狗じゃ近寄れる筈もありません」
「大天狗は?」
「龍様は咲夜さんと交戦して結構疲弊してましたし
鞍馬様は混乱する白狼天狗を落ち着かせるのに手一杯。
天魔様は守矢の3柱に話をしに行ってましたしね」
「話し? どんな?」
「謝罪ですよ、龍様の件で」
「今回の異変は龍が原因なのね」
「えぇ、まぁ」
「……管狐は?」
「元凶でしょうね、多分」
「はぁ……まぁ良いわ、あなた達にも手伝って貰うわ。
とりあえず、他の妖怪を近付けさせないで頂戴。
私達はこれから忙しいから、協力して欲しいわ」
「えぇ、喜んでお手伝いさせていただきますよ。
私達天狗が原因で騒動が起きたと言えますしね。
私達が協力できることなら協力します」
「お願いね、白狼天狗、あなたも周囲を払って。
妖怪は勿論、妖精も可能なら近寄らせないで」
「はい、分かりました」
うぅ、わ、私が暴れちゃったせいで迷惑が…
「ご、ごめんなさい、わ、私が暴れたせいでぇ!」
「起きたことだし悔んでも仕方ないわ。
だから、協力して被害を抑えるようにしましょう」
「は、はい、すみませんすみません!」
「しかし紫さん、あまりフィルさんを怒りませんね」
「フィルは十分反省してるわ、それで十分よ」
「まぁ、確かに反省できる妖怪はレアですしね」
「手伝います! 協力します! 何でもしますぅ!」
「大丈夫よ、涙目で訴えかけてくる必要は無いから。
とにかく色々と教えるわね、藍」
「はい」
「しばらくの間、結界の修繕を私の代わりに
あまり時間は掛らないと思うから」
「分かりました」
私は紫さんから軽く結界の張り方や
結界の管理方法とかそう言うのを聞いた。
「こんな感じですね、出来ました!」
「じゃあ、これで修繕の手伝いをお願いね」
「はい!」
急いで結界の修繕のお手伝いをする。
博麗大結界の境界に軽く干渉してー、
こんな感じかな?
まだ上手く紫さんの様には出来ないけど
何とか役に立ててるようでよかった。
もう、こんな事をしないようにしないと。
(……)
(いやぁ、まさかフィルが暴れるとはな。
かなり驚いたぜ、俺も暴れたかった!)
(テュポーン先輩がやってたら
きっと今より被害甚大だったっすよ。
そう思うっすよね、フェンリル先輩)
(……)
(ん? フェンリル先輩?)
(どうしたぁ? まただんまりか?)
(……)
(おい! フェンリル!)
(あ、ごめんごめん、力の制御がね)
(どう言う事だ?)
(フィルの力の制御だよ。
君達がやらないから、
いつも僕がやってるんだよ?
集中させて欲しいんだよね。
結界の操作だなんて、僕も初めてだし
慎重に制御したいんだ。
だから、フィルが結界に干渉を始めたら
僕には話し掛けないで欲しいんだ)
(フィルの力の制御? 必要なのかぁ?
結界やってるだけだし、いらねぇだろ)
(全くこれだから、そう、フィルは完璧に覚えるよ。
そりゃフィルだしね、覚えきるさ。
それが問題なんだよ、適度に邪魔しないと)
(邪魔してるんっすか? 逆に?)
(そうだよ、当然じゃ無いか。
あ、結界を触り始めたね。
じゃあ、これから邪魔をするから
僕に話し掛けないでね)
(邪魔するのか、変わってんなぁ)
(まぁ、仕方ないかも知れ無いっすね)