うーん、紫さんに言われたとおりに
力を制御しようとしたのに
何故だか上手く力が集中出来なかった。
今まで、こんな事無かったのに……
あまり役に立てなかったかも…
「フィル、中々良い結果ね。
軽く説明しただけでこれ程とは。
あなたの才能は流石としか言えないわ」
「え? そ、そうですか?
私、そんなに役に立ててないような…」
「まさか、軽く口頭で教えただけで
ここまで出来るのよ?
しっかりと役に立ってるわ」
「なら、よかったです!」
でも、私がもうちょっと上手に
結界を操れていれば
5時間も掛ることは無かったのに…
申し訳無い気持ちになっちゃう。
だって、私のせいでこんな事になったのに
私はそこまで役には立ててないし。
「……ん?」
「フィル?」
気のせい? 何か気配を感じた気がした。
あの不思議な気配だ……
「……何でも無いです。
ちょっと変な気配がしただけです」
「変な気配?」
「はい、でももう消えました」
「……そう」
明らかに感じた違和感……大きな存在感。
もしかしたら、あの時の人?
私に気配を気取られて移動したのかな?
……何が狙いなんだろう、あの人。
(……本当、きな臭くなって来たっすねぇ)
(そうだね……君のせいだ、ガルーダ)
(まさか、時間の問題でしか無いっすよ~
うちの存在がバレるのも、気取られるのもね。
ま、より一層うちらには手を出せないッスよ)
あの妙な気配を2人も感じたようだった。
だけど、その気配に気が付いたであろう存在は
私達だけだったと思う。
紫さんだって気付いてないし
きっと、椛さん達も気付けてないと思う。
当然、藍さんだって気付いてないだろう。
それだけ、完璧に近いレベルで気配を消してた。
私だって、ふとした瞬間に反応しただけだ。
紫さんの視線とは違う感覚。
最初に妖怪の山に入ったときに感じた気配と同じ。
「とにかく、厄介な事が多いわね。
まぁ、今は結界の修復をしましょう」
「そうですね、じゃあ、ここの場所を修復します」
(そうだね、頑張ろう)
結界の残り少ない歪みに手を伸ばした。
幻想郷と現実世界の狭間に存在する空間。
幻想と現実の境界。
「うーん……」
また上手く力が制御出来なくなった。
違和感がある、この感覚……
妨害されてるような、そんな感覚が…
「中々制御も上手くなってきたわね。
もう殆ど力の制御が出来てるんじゃない?」
「あはは、紫さんや皆さんのお陰ですよ」
「あなたの才能が大きいでしょうけどね。
実際、これ程の才能は奇跡としか言えないわ。
力の制御が出来るようになるまでも早かったし
結界の干渉だって
この短期間で出来るようになった。
まだ博麗大結界を越えられる程じゃ無いけどね」
そうだね、確かに今の状態じゃ
博麗大結界を越えられるほどじゃないよ。
でも、私よりも力の制御が出来るフェンリルお姉ちゃんや
ガルーダお姉ちゃんだったら突破出来るのかも?
(ねぇ、フェンリルお姉ちゃん、ガルーダお姉ちゃん
2人だったら、博麗大結界を越えられたりする?)
(んー? そうっすねー、無理じゃ無いッスかね?
フェンリル先輩も無理だと思うっすよ。
そこまで細かい制御は出来ないッスし)
(そうなんだ……)
(でもよ、ふぇ)
(さてフィルちゃん、今は集中した方が良いっすよ?
あまり意識を逸らしてると変な事になりかねないっす)
(そ、そうだよね、デリケートだし……よし、頑張る!)
そうだよね、あまり意識を逸らしてると駄目だ。
ただでさえ、あまり上手く出来てないんだから。
集中しないと、より歪みを酷くしたら大変だし。
「……よし!」
しばらく意識を集中させて結界を回復させる。
あまり派手に干渉したら駄目なのは間違いない。
紫さんの教えにも、それはあったからね。
博麗大結界の中には神の力も存在してる。
あまり私が派手に干渉してしまうと
最悪の場合、その部分に影響を与える。
……そうだ、結界を突破するのが駄目な理由。
私達があまり派手に干渉なんかして
無理矢理結界に影響を与えたりすると
最悪の場合、博麗大結界に存在してる
神の力を破壊してしまう危険性があるんだ。
だからあの時、紫さんは全力で止めに来た。
……そう言う事だったんだ、今更気付いた。
「中々上手ね」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、次はあっちをお願いね」
「あ、はい!」
ある意味では、今の状態が1番理想だ。
何故かあまり力を制御出来てない今の状態。
あまり博麗大結界に干渉できてない
今のこの状況が理想的な状況。
もし、私が思い通りに結界に干渉してたら
最悪の場合、力加減が下手すぎて
過剰に博麗大結界に干渉してしまってた。
そんな状態になったら、逆に歪みが酷くなってたかも。
……あまり完璧に何かをこなすのもよくないね。
適度に干渉のレベルを抑えないと。
「うぅ、わ、私はどうなって……」
少し遠くから典さんの声が聞えてきた。
どうやら、目を覚ましたみたいだね。
「あら、随分と遅いお目覚めね、管狐」
「え!? 幻想郷の賢者様
八雲紫様じゃありませんか。
これはこれは……あれ? 腕が動かない…」
「当然よ、自分の状態を見てみなさいな」
「……あ、あのー、こ、これは?」
自分の状態を見た典さんは冷や汗を流しながら
何故こんな状況になってるのかを紫さんに質問する。
「それは私から話してやろう、管狐」
「あ、九尾の藍さんではありませんか……」
藍さんが典さんの方に歩いて行った。
「今回、君が拘束されている理由だが
君がここに居るフィルと大百足を焚き付け
この辺りの結界に損失を与えたからだ」
「え、い、いやいや、わ、私、関係無いですよ~
やだなぁ、ただ口を挟んだだけですよ?
私は決して何一つとして手を出してません。
ただ、あの2人が勝手に争っただけですよ。
私には一切の否はありません」
そんな言葉が私の耳に聞えてきた。
実際、私達が勝手に暴れたのは確かだ。
勿論、その自覚は私にだってある。
だけど、私の悪い思い出の影響なのか
そう言う、白々しい態度に良い思い出はない。
「ほぅ、君が大百足を焚きつけたと私は聞いたぞ?」
「誰からですか?」
「君と共に居たパチュリー・ノーレッジだ。
今は姿は無いがね」
「それは庇うでしょう? 当然と言えますよ。
フィルさんは彼女の仲間です。
フィルさんを庇ったとして不思議はありません」
「ほぅ、つまり彼女が出任せを言ったと?」
「えぇ、私は何も悪くありませんよ?」
「……」
「それよりも、かなり良いチャンスでは?」
「と言うと?」
「今は絶好の機会という物です。
彼女を紅魔館から引き剥がし
紫さんの式にする絶好のね。
理由が出来ましたよ? これでね」
な、何だか恐い話をしてるような気がする…
「パチュリーが上手くフィルさんを制御しなかった。
それ故に、紅魔館では彼女を制御出来ないから
あなたが彼女を手にするというチャンスです。
理由もあります、結界に大きな影響が出た。
放置して居れば、幻想郷が危険だと。
あなたがフィルさんを欲してるのは理解してます。
彼女ほどの実力者、何処だって手にしたいでしょう。
彼女を手にした勢力が幻想郷を牛耳ることが出来る。
そして、あなたが彼女を手にすることが出来れば
この幻想郷をあなたの理想のまま維持できる。
良い話とは思いませんか?」
「ふふ、その風体でよくそこまで饒舌に語れるわね。
本当に肝が据わってると言えるわ。
とは言え、あなたは頭が出来てないわね」
「ほう? どう言う意味ですか?」
「私は常に最善と思う手を取ってるわ。
あなたの言葉に反応するのは
自らの行動に確かな自信が無い者だけよ」
「……では」
「そして、何故この場に居るのが私達だけと
そう考えてたの?」
「え?」
「あなたが恐怖してる存在が
何故この場に居ないと勘違いしたのかしら?」
「……」
「フィル」
「あ、はい」
紫さんに呼ばれて、木の陰から姿を見せた。
「な……」
彼女は私の存在に気が付き驚愕の表情を浮かべ
ドンドン顔を青ざめていった。
「あなたのさっきの言葉はフィルに取っては逆鱗。
それ位、本能的に理解してるでしょ?」
「あ、あ、あの……そ、その……」
「さて、私にはいくつかの選択肢があるわ。
フィルに怒りをぶつけろと言う事も出来るし
怒りを収めるように伝えることも出来る」
「……」
「さ、ここまで言えば分かるわよね?
今回の騒動を起した奴の所へ案内しなさい
聞きたいことがいくつかあるわ」
「……」
「返事は?」
「は、はい、あ、案内します…」
彼女は少しだけうなだれて紫さんの言葉を受入れた。
確かに彼女の語ってた言葉は私の逆鱗だ。
あの中で彼女はお嬢様達を陥れようともしてた。
だけど、今回は私が悪いから
彼女に怒りをぶつけるような真似はするつもりは無い。
だけど、彼女にその事は分からなかった。
紫さんは私が彼女に怒りをぶつけないことは
分かってただろうけど、その上での言葉だろう。
だって、もし私が本気で怒ってて
彼女を攻撃しようとした場合
紫さんや藍さんでは私を止められないから。
そもそも、怒ってるなら紫さんに呼ばれるまで
姿を見せ無いだなんて事は無いだろうしね。
本当に、この僅かなやり取りでも理解できる。
紫さんと典さんでは頭脳のレベルが違う。
紫さんは彼女の言葉に対して
即座に戦意を削ぐ方法を考えだし
それを実行して典さんの戦意を完全に削いだ。
典さんは何とか口車に乗せて
紫さんを動かそうと思ったんだろうけどね。
だけど、相手が悪すぎたとしか言えない。
「と言う訳だから、フィル。
こいつに怒りをぶつけるのは止めてあげて」
「は、はい、分かりました」
「さ、それじゃ案内して貰いましょうか。
この異変を起した黒幕の元へ」
「うぅ、本来は賢者が動くほどでも無い筈なのに…」
「怨むなら、自分を怨みなさい」
そのまま、典さんに案内されて黒幕の元へ向った。