東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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お嬢様の指示

うぅ、私、どうなっちゃうのかな? がぶっとやられちゃうのかな?

それとも紅魔館から出て行けって言われたり…あぅ…

 

「ねぇ、フィル」

「す、すみませんでしたぁ!」

「…何でいきなり謝ってるのよ」

「い、いえ、怒られるようなこと沢山しましたし!」

「…本当に臆病ね、あなたは、本当子犬ね」

「すみません!」

「謝らなくていいわよ」

 

私の謝罪を聞いた後、お嬢様はクスクスと笑った。

あぅ…何だかお嬢様にはいつも笑われてる気がするよ。

 

「まぁ、そう怖がらなくても良いわ、別に怒ろうって訳じゃ無い」

「そ、そうなんですか?」

「そうよ、今回あなたを呼んだ理由は2つあってね」

 

お嬢様は私に見える様に指先を2本立てた。

 

「まず1つ目、今日は博麗神社に向おうと思っていてね

 普段は咲夜に付いてこさせて、日傘をさして貰ってるのだけど

 今日はあなたに付いてきてもらおうと思ってる。

 咲夜も屋敷の掃除で忙しいでしょうし、急かすのは酷だと思ってね」

 

博麗神社…確か慧音さんが言ってた、私の記憶の事を知ってるかも知れない

八雲紫さんがたまに姿を見せるとか…チャンスかも知れない。

 

「は、はい! しっかりと役目を果たします!」

「良い心掛けね、で、後もう一つなんだけど…フィル、私と1度戦ってみない?」

「へ!?」

「あなたの実力は相当な物だというのは前回の天人と戦ってたときに分かったわ

 あなたは攻撃こそしなかったけれど、その回避能力は凄い物なのは分かる。

 あの天人から紅魔館まで逃げ果せる程の回避能力。

 回避というのは基本実力と比例する、その能力がずば抜けていると言う事は

 あなたの本来の実力は相当な物、私とフランの喧嘩に巻き込まれて無傷だったしね」

「い、いえいえ! 私なんかお嬢様の足下所か遙かその下! マントルの更に底です!」

「変な例えをするわね」

 

ぜ、絶対に無理だって! お嬢様と戦うとか絶対に無理だって!

死ぬ! 死んでしまう! 何も出来ずにやられちゃうしかないじゃん!

無理無理無理! 絶対に無理-!

 

「と言うか、そこまで怯えなくて良いじゃ無いの」

「私には無理なのです!」

「…ま、気が変わったらで良いわ、そこまで怯えてたら本来の能力も発揮できないし」

「気が変わる事なんて無いと思います」

「流石に自信が付いてきたら変わると思うわよ、さて、それじゃあ博麗神社に」

「お姉様! 私がフィルと遊ぶ時間よ!」

 

お嬢様が博麗神社に行く準備を始めようとすると、お部屋のドアが吹き飛び

そこからフランお嬢様が出て来た。

で、吹き飛んだ扉の1つが私の方に飛んできた。

 

「ひょわぁああ!」

 

私は座っていて動けず、避けるより先にその扉を殴り、床に叩き付ける形になった。

地面にかなりの勢いで叩き付けられた扉は砕け散り、周囲に四散した。

 

「わぁああ!」

 

しかも床にはちょっとだけヒビがぁ! 硬いのに! この場所、凄く硬い筈なのに!

 

「お、おぉ…」

「不意に飛んできた扉を攻撃して防いぐだけで相当な能力でしょうに

 更に殴った扉を地面に叩き付けてヒビを入れ、更に扉を四散とはね。

 相当な怪力でしょう、やはり私の見立ては間違ってないようね」

「す、すみません! 床が! 扉が! 私のせいでぇ!」

「まぁ、修理すれば良いから別に良いのだけど」

「フィル凄いわね! 絶対強いでしょ!」

「いえ! 私なんかマルトンの更に底の内核より底です!」

「そこが最下層よ」

 

あぁあ! どうしよう、どうしよう! どうしよう!

壊しちゃったぁ! 怒られる! どうしよう!

 

「かなりおろおろしてるね、お姉様、どうする?」

「フィル、別に怒らないわ、咲夜に怒られるのが嫌だというなら

 そこも私が言っておくから、別に怒らないと思うけど」

「はい、一部始終は見ていましたから、怒ることなどありませんよ」

「ひょわぁ! 咲夜さん! いつの間にお嬢様の隣へ!」

「相変わらず反応が面白いわね、そろそろ慣れた方が良いと思うのだけど」

「無理ですよぉ、いきなり目の前とか背後に立ってると驚きますって!」

「咲夜、普段そんな場所に現われてたの?」

「驚くフィルを見るのが面白くてつい」

「私の側面に良く現われるのは?」

「同じ理由です」

「心臓に悪いから止めなさいと言ってるでしょ?」

「吸血鬼の心臓は強靭ですし大丈夫だと思いまして」

「…はぁ、もうどうしようも無いわね」

 

私の目の前とかに良く出てくるのって、私が驚く姿を見たいからなんだ。

何で? 驚いてる姿なんて見ても、特に何も無いんじゃ?

うぅ、趣味? 趣味なのかな?

 

「ま、良いわ、正直今更だし、さて、咲夜、あなたにも一応言っておかないとね」

「何をでしょう?」

「この後、私とフィルは博麗神社に向うわ、その間、日傘はフィルにさして貰うから

 あなたは付いてこなくても大丈夫よ」

「はい」

「お姉様! フィルは今から私と遊ぶんだから!」

「…いかがします? お嬢様?」

「そうね、フラン、あなた、一緒に私と博麗神社に向う?」

「え? お姉様と?」

「えぇ、フィルも付いてくるし、丁度良いと思うのだけど」

「…う、うん、そ、そうだね、一緒にいくよ」

「そう、じゃあ、決まりね、ただフランの日傘は誰に」

「自分で持つから大丈夫」

「そうなの、分かったわ、それじゃあ、いきましょうか」

「あ、待ってください、準備が」

 

私がそこまでいうと、一瞬で自分達の身の回りが準備された。

 

「咲夜、ありがとう、それじゃ、行ってくるわ」

「行ってらっしゃいませ」

 

その後、私達は館の外に出る事になった。

博麗神社…どんな場所なんだろう、楽しみではあるけど怖いなぁ。

怖い巫女さんがいるみたいだし…退治されなきゃ良いけど…


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