東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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旧地獄へ向けて

さて、旧地獄の近くまで来た。

ひとまずは気配を可能な限り消しておこう。

接近がバレたらあまり良くないだろう。

 

関係無いですよって面をされかねない。

僕は気配を消すのは比較的得意だしね。

フィルはあまり得意じゃないが……

 

正確にはフィルは自分は気配を消すほどでも無いと

そう自分の事を評価してるからだしね。

やろうと思えば僕なんかよりも上手いだろうが

そもそもやろうとしないのがフィルだし。

 

「この穴から落ちるのね」

「そうだね、その先に町があるんだ」

「地底に町? 過ごしやすそうな場所ね!」

「日の光も差さないしね、息苦しいが」

 

さて、ひとまずは落下するとしようか。

僕らが地底に降りきる前に日の光が入り

妹様が焦げないように光りを食べよう。

ちょっとしんどいから普段は日傘だが

こう言うときくらいは力を行使だね。

 

「じゃ、行こうか」

「そうね、って、あれ? 傘は?」

「差さないよ、落下の時に壊れるし」

「……なんで私は平気なのかしら。

 もしや、ついに日の光を克服!」

「してないよ、僕が君に日光が当らないように

 日光を食べてるだけだからね」

「そんな事が出来るなら、最初からしてよ」

「異常な力は余り行使しない方が良いんだ」

「因みに、日の光は美味しいの?」

「そうでも無いよ、お腹にたまらないしね」

 

フィルは自分の能力を

なんでも飲み込む程度の能力にしたが

僕に能力があればなんでも食う程度の能力だ。

その気になれば日の光も簡単に食べられる。

とは言え、味は殆どしないから普段は食べないが。

 

「それと、どうやって食べてるの?」

「日の光を喰らう空間を召喚してるだけだ。

 口で食べてるわけじゃ無いよ。

 口で食べるのは美味しい物だけだ。

 不味い物は空間を呼び出して食べるだけだし

 手を触れて喰うだけだよ」

「それは食べるというの? 消すじゃ無いの?」

「食べるだよ、消してるわけじゃ無いしね」

 

取り込んでるのが正しいからね。

だから、消すでは無く取り込むだけど

僕としては食べるという方が良い。

 

「……て言うか、あなた達はそれぞれに

 特殊な能力があるのね」

「あるね」

「フィルのイメージで出てるときも?」

「そうだよ、今ほどでは無いけどね」

「フィルも出来るのかしら」

「出来るよ、やろうとしないだけだ」

(え!? 出来るの!?)

(出来るよ……)

 

やっぱりフィルは自覚無いんだから。

 

「凄いわね、他2人は何が出来るの?」

「テュポーンは空間を破壊できるよ

 境界とか概念の破壊とかもね」

 

(マジで!?)

 

「……ガルーダは知らん」

 

(マジっすか!? なんでぇ!?

 ひ、酷くないっすか!?

 なんで知らないんっすか!?

 いや、知ってるッスよね!?

 知ってるに決ってるっす!

 そ、そもそもなんでテュポーン先輩の事は分かるのに

 うちのことは分からないんっすか!?)

(だって、興味無かったし…)

(酷いっす! 興味津々じゃなかったっすか!?)

(あぁ、危険な存在としての興味はあったからね。

 でもほら、もうでてきたし興味無い)

(なんでうちにそんな辛辣なんっすか!? 良いっすか!?

 うちは時間を越えることが出来る能力があるっす!

 分かりやすく言えば、

 時間を飛び越えたり時間の向こう側に

 飛び出して攻撃したり、

 境界の向こう側に行けるっす!

 能力を行使した場合ッスけど、

 普段は能力の無効化!

 本気を出せば全てを無効化する事が出来る

 超絶ハイパーハイスペックなんッスからね!)

(おぉ! じゃあやっぱり俺と戦え!)

(ただし! テュポーン先輩の能力を除く!)

(なんでだよ!)

(いや自覚して欲しいっす、だってテュポーン先輩

 時間壊せるじゃ無いっすか、空間も粉砕っすよ。

 仮にうちが向こう側に行っても壊してくるっすし

 平気な顔で追いかけてくると思うッスし)

(んだよ、あ、そう言えばフェンリルもう一度聞くぞ)

(何を?)

(お前、時間止めれたりする?)

(そりゃ出来るけど……)

(そうなの!? やり方教えて!)

 

当然、フィルは反応するだろうね……

だって、あのメイド長の役に立てそうな話しだし。

 

(まだ駄目、あまり力の制御出来てないしね。

 今の状態で下手に時間を止めたりしたら

 2度と時間が動かなくなってもおかしくないし)

(え!? そんな事あるの!?)

(そりゃあるよ、僕らは規格外の存在だからね。

 下手に干渉しすぎると世界が修正できないから)

(そ、そうなんだ、なら力の制御が先だね!)

(そうそう)

 

もう殆ど制御してるけどね、結界も張れるし。

可能ならこれ以上は強くならないで欲しいが

フィルは向上心の塊だし無理だろうなぁ。

 

「本当、あなた達は色々出来るのね。

 空間を破壊するってどう言う事なの?」

「概念を破壊できるって事だよ、分かりやすく言うとね。

 例えば時間という概念を破壊するし

 命という概念も魂という概念も壊す。

 で、空間や境界という概念を破壊する」

(はぁ、マジスゲーな)

(君の能力のことだからね?)

(凄いよね、テュポーンお姉ちゃん…)

(君の能力の一部だからね?)

(え? まさかー、そんなこと出来るわけ無いじゃん)

(まぁ、フィルちゃんはこんな感じッスし)

 

本当、あまりにも自覚が無いとしか言えない。

所詮これらはフィルが扱える能力の一部だ。

僕らがそれぞれフィルの代わりに行使出来るだけ。

フィルが本気になれば、全部扱えるって言うのにね。

それも、僕ら以上のレベルで……なんで自覚無いかなぁ。

 

「でも、鳥さんは分からないのね」

「あぁ、興味無かったから」

(説明! 説明したっすよ!? 今! 説明したっす!

 さぁ! フランちゃんに説明するっす!

 そして、うちがドヤ顔出来る状況を作って欲しいッス!)

(誰がするか、君何かの為にそんなことを)

(なんでそんなに嫌ってるんっすか!?

 うちが出て、で、でてぇ! 出れない!)

(今、フィルの体の主導権は僕が握ってるんだ。

 力の制御は僕の方が上だし、僕から主導権を奪えるのは

 フィルだけに決ってるだろう?)

(うぐぐぅ! な、何てパワー!

 イメージで具現化…出来ない!)

(さっきも説明しただろ? 僕が主導権を握ってる今

 君達が自力で力を行使することは不可能だ。

 例えテュポーンだったとしてもね)

(そうなのか? あ、マジだ、何も出来ねぇ)

(でも、君らの能力は利用するよ)

(ひ、卑怯者ー!)

 

僕がフィルの主導権を握ってる状態であれば

フィル以外の人格を押さえつけることは出来る。

流石に声まで押さえつけるのは無理だけどね。

 

理由はシンプルで、フィルが嫌がってるからだ。

あの子はこの会話も楽しんでるんだろうね。

だから、フィルが無意識に力を行使して

僕でも会話を抑える事が出来ない状態なんだろう。

 

(良いッスし、今度フィルちゃんにお願いして

 うちが主導権を握ったとき抑えるっす!)

(無理だよ、言っただろ? フィルに関する力は

 君達よりも僕の方が行使出来るんだから。

 君が前面に出てても、僕は君を抑えられる。

 

 前やっただろ?

 あの時はテュポーンと協力したが

 普段ならなんの問題も無いんだし)

(そう言えば、し、しかしあの時は何故…)

(そりゃ、君を抑えるのに力行使してたから

 結構しんどかったんだよね。

 流石に覚醒までは抑えられなかった。

 永眠させたかったが無理だったし)

(え!? あの時、うちを消そうとしてたんっすか!?)

(いや、起きないようにしたかっただけ)

(実質同じじゃないっすかぁ!)

(ま、まぁまぁ、そんな喧嘩しないで)

 

まぁ、からかっただけなんだけどね。

流石に永遠に消すのは忍びないし。

とは言え、あの時は集中してたのに残念だよ。

 

「興味無いとかあるのね、フィルは知ってるのかしら」

「フィルも知らないと思うよ。フィルは自覚無いし」

(いや、知ってるっすよ!? 説明したッスし!)

「じゃあ、聞いても意味ないのね」

「そうそう、意味ないと思うよ。

 むしろ困惑するかもだから」

「じゃあ、聞かない方が良いのかしら」

「うんうん」

(あー! そ、そんなー!)

(うっせぇな鶏、騒ぐなよ)

(酷い! 後、鶏じゃ無いっす! 怪鳥!)

(同じだろ?)

(次元がちがーう!)

 

本当、こいつは何処までも騒がしいんだから。

でも、フィルも楽しんでそうだし大丈夫か。

 

「じゃ、行こうかフラン」

「そうね、行きましょう」

 

さて、待ってろよクソ神……食い殺してやる。


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