さて、ひとまずはここ……目立つから来たが
あの真ん中のが核融合炉か?
石油に沈んでるように見えるな、良く火が点かないね。
「うわぁ、何これ……流水まみれよ」
「そうだね、だから危ないと言ったんだけど」
「まぁ、そこまで影響ないわね」
やっぱりフィルの血を飲み続けてた結果かもね。
弱点がドンドン減ってる気がする。
さて、それよりも気配を感じる。
「非常事態だ! 全炉緊急停止!
汚染範囲を調査せよ!」
「ようやく見つけたよ、クソ神」
「なんのこえ、な! お前は!」
さて、守矢の神が僕の存在に気が付いたね。
「い、いつぞやのフェンリル、な、何故ここに!」
「君を探してたんだ、良くまぁこんな事を」
「な、何の事だ?」
「石油だよ石油」
「石油が噴き出したことか
だが、これは我々は関係が」
「何か勘違いしてるね……僕が言ってるのは
石油を利用してることだよ」
「ッ!?」
守矢の神が冷や汗を流して一歩下がる。
「もう遅いさ、逃げ道は無い」
「まさか、これは結界……だと?」
「神の力を遮断する空間ってだけだ。
まぁ、この空間を神を殺す空間にしたとか
そう言うわけじゃ無い。逃げ道を塞いだまでだ。
端っこには触れないでね、神は死ぬから」
「まさか…」
さて、退路を完全に遮断したし
このまま消そうと思えば消せるんだけど。
流石にそこまではしないんだけどね。
本当、フィルを鍛えてくれて助かったよ。
お陰で僕も色々な力を扱える様になったしね。
「まぁ、別に君を取って食おうってわけじゃない。
それならとっくに食べてるし
わざわざ、君の退路を断って会話では無く
この空間を神を殺す空間にしてるし」
「な、何が狙いだ…せ、石油か!?」
「そうだよ、石油だ……良くまぁやってくれたね。
核融合炉も正直、僕には逆鱗ではあるが
石油ってのも僕からすれば逆鱗でもある」
「何故嫌ってる?」
「知れたこと、この幻想郷に劇的な進化は不要だ。
外の世界の技術を幻想郷の遅れた世界へ広め
自らの信仰を得ようだとかくだらない真似を…
何故、この世界が遅れているかを考えろよ。
進化は滅びを生むだけだ、劇的な進化はなおの事。
進化が不要なら進化は必要無いんだよ」
「だが、人々が安寧な暮らしを得るには」
「あぁ、そうだな!」
「ッ!?」
あ、危ない危ない、少しだけイラッとした。
ちょっとだけ空間が縮むところだった。
「実際、信仰によって生まれた君の様な神は
人々の進化や平和を守護する必要があるかもね。
だが、僕らは外の世界から来た妖怪だ。
あの憎たらしい世界から来た存在さ。
全てを破壊する、終末の使者でもある。
何故、僕らが生まれてしまったか考えても見ろよ
あんたらが外の世界から来た理由もだ。
進化の先にあるのは忘却だ。
忘却の末に辿り着いたのか神の滅んだ世界。
そして、その世界の先にあるのは終焉だ。
異形の全てを無い物と誤解してしまった。
その結果、フィルと言う
本来存在するべき存在が生まれただけで
外の世界はフィルを迫害した。
その結果、終焉たる僕らが生まれた。
もし、その異形がフィルでは無く別の誰かなら。
果たして、外の世界は今でも残ってるのかな?
フィルはどうしようも無く不運だが
外の世界はどうしようも無く幸運だった。
自分達の失態の末、生じてしまった終焉。
その終焉の中心となるフィルが
どうしようも無く優しい少女だったから
外の世界は今でも存在してるんだぜ?」
もしフィルが容赦なく世界を滅ぼすような
そんな攻撃的な少女であれば
外の世界はとっくに消滅してるだろうし
幻想郷だってとっくに滅んでるだろう。
月も何もかも全てをフィルが破壊しててもおかしくない。
だが、そうはならなかった。
それは、外の世界の連中がそうしたからじゃ無い。
幻想郷の連中が手を打ったからでも
月の連中や神々が手を打ったからでも無い。
全て、フィルが優しい女の子だったからだ。
「君がやろうとしてるのは、外の世界と同じ事だ」
「か、神が手を貸し進化させたのであれば
人間達は神々を忘れることは無いわ。
常に妖怪という脅威も居るなかで
何故妖怪という脅威を忘れると思うのよ」
「単純だ、人間は強欲だからだよ。
君らがもたらした力なんて忘れられるさ。
どうせ、人々は強欲となり
その力は自らの物だと誇示するさ。
いつしか妖怪に勝る力を得れば
人々は妖怪に恐怖しなくなるだろう。
恐怖が無くなれば妖怪は存在が消えていく。
妖怪が居なくなり、力を手に入れた人間が
今度は神に対して感謝したり
神の存在を信じるはずも無いだろう?
神は所詮、自分を守ってくれる都合の良い存在。
自力で身を守れるようになって
何故神に媚びを売る?
自分は絶対的な力を手に入れたんだ。
何故、自分以外の誰かに感謝すると思う?」
人間はそんな物さ、欲望こそ人間の本質だ。
強欲であるが故に、人は進化するんだ。
進化の先にあるのは破滅だ。
理由はシンプル、人間は弱者だからだ。
「人間は強欲なんだよ、何処までも強欲だ。
進化を続ける先に何があるかは興味が無い。
ただ欲しい物を得る為に力を磨くまでだよ。
偽りの力を、ただひたすらにな。
君がしようとしてることは折角出来た
この幻想郷のルールを破壊することだ。
それも、自らの欲望の為に……
君も所詮は強欲な存在たる人間から生まれた
強欲の化身でしか無いんだよ」
「何を馬鹿な事を、少しは人を信じろ。
信頼はお互いを信じてないと生まれない。
お前が信じないから、お前は裏切られるんだ」
「クク、あはは! ……お前マジでふざけんなよ」
「なん……」
本当に……不用意な発言をしやがって……
フィルにあまり怒られないようにと思って
会話が聞えないようにしてて、良かった…
「僕はね……人が大っ嫌いだ、神が大っ嫌いだ。
何かを信じるのは本当に大っ嫌いなんだよ。
信じた奴に何度裏切られてきたと思ってる。
僕のような神の敵は正義執行の為であれば
何度騙しても良いと、そう考えられてる。
そりゃそうだよ、騙さなきゃ勝てないんだから。
正攻法で勝てないから騙して勝つしか無いんだ。
それが正しい事だと、奴らは考えてやがる。
自らに仇なす存在は、どんな手を使っても良い。
そう思ってやがるのが奴らなんだ。
しかし君は、本当に運が良いよね。
その言葉を言ったのが、僕に対してで。
そして、僕がフィルに言葉が聞えないようにしてて。
もし、君が不用意な発言をした時に
その発言をした相手がテュポーンだったら
君は完全に滅ぼされてる。
もし、フィルの耳に入ってたとすれば
君は僕らに滅ぼされてるんだ……
君は今、間違いなく地雷を踏んだ」
フィルは何度も信じて何度も裏切られてた。
そして、僕らはその事を知ってる。
だから僕らはフィルを守る為に出て来たんだ。
今、フィルは色々な人を信じてる、人間を信じてる。
何度も何度も信じて裏切られてきたのに
本当に凄いと思うよ。
だからこそ、あの発言には心底腹が立った。
「フィルが何処まで辛い思いをしてきたか
大して聞いてないのかい?
それとも興味が無いか?
はたまた、恐かったから探ろうとしなかったか?
どちらにせよ、あんたはかなり不用意な発言をした。
……本来なら、君を食い殺すだろう」
「クッ!」
「ほぅ、僕に対して武器を構えるか。
良い度胸だ……ただの雑魚が調子に乗るなよ!」
「フェンリルー、余り怒らなくても良いじゃ無いの」
「何を馬鹿な」
「確かにフィルは大変な思いをしたわ。
でも、今が幸せならそれで良いってよく言ってるわ。
すぐに怒っちゃうのって、逆に否定してない?」
「……」
「あなたはフィルを守る為に存在してるんでしょ?
なら、フィルが笑顔な間は一緒に笑ってあげなよ。
フィルが泣いてるときは怒ってあげれば良いわ。
でも、今は笑ってる。だから、今は怒らないで
フィルと一緒に笑ってあげれば良いんじゃ無い?」
……確かにフランがいってることにも一理ある。
僕らはフィルを守る為に出て来たんだ。
そして、フィルに笑って欲しいから一緒に居る。
それなのに、フィルが楽しそうな間だに
心の底から怒るのは、あまり良くないかも知れない。
「……それもそうだね、ちょっと怒りすぎたか」
ひとまず神を殺す空間を解除する。
「雰囲気が……」
「守矢の神、今日は見逃してあげるよ」
「……」
「だが、あまり調子に乗るなよ?
自分がやろうとしてる事がどんなことか。
改めて自覚しろ……これ以上、進化させるな。
もしフィルが辿り着いたこの楽園を
外の世界の様な地獄に変えたら……
完全に滅ぼすぞ? 魂さえ噛み砕き
存在その物をこの世から消してやる。
僕の一部になる事も無く
世界のルールからはみ出させて
未来永劫、君から救いを奪ってやる」
「ぐぅ!」
さて、やり過ぎたような気もするね。
「フェンリル、怒ると恐いわね」
「そりゃね、僕は短気じゃ無いからね。
だからこそ、恐いのが僕だから」
「……わ、分かったわよ、調子には乗らない。
石油とか使わないようにするわ」
「核融合炉も使うな」
「で、でも作ったし…」
「じゃあ、壊すぞ?」
「わ、分かった! 使わないから!」
「はぁ、で、石油の源泉は何処だ?」
「え? その、教えないと駄目?」
「駄目だ、教えないなら核融合炉を全部食べるぞ。
大丈夫だって、環境汚染とか無いから。
僕の体の一部になるだけだから」
「か、核よ? ウランとか体に悪いけど」
「確かにあまり美味しくは無いけどね」
「……もう、食べた経験あるの?」
「あるよ、この核融合炉より大きいの。
核弾頭も食べたし、水爆も食べてきたし。
原子力発電所も何カ所か平らげた。
本来なら壊そうと思ったけど
環境汚染があるから全部纏めて食べたんだ。
だから、僕が暴れた直後の外の世界は
核兵器が全部無くなってたわけだね。
一部の原子力発電所は残したけどね」
「……い、言うわ」
「それで良い」
さて、何が理由でこうなったか探ろうかな。
賢者の連中もそれを望んでることだろうしね。
ひとまずはあいつらの理想となる動きをしよう。
向こうは僕が気付いてるのは分かってそうだけど。
ま、お互いに損がある訳でも無いしね。
「し、心臓に悪いわ……」
「うむ、接近できなかったからな」
「フェンリルにとってもフランは大事なのね」
「その様だな、あの少女が居なければ危うかった」
「しかし、本当に理想的な動きをするわね」
「あぁ、だが私の掌の上というわけでは無いな」
「そうね、既にあなたの作戦は分かった上で
あえて乗ってるって感じだし」
「本当に、底が知れないな、フェンリルは」
「4姉妹の中で1番実力が無いとは言え、
1番頭が良いのは間違いなくあの子ね」
「あぁ、その通りだろう」
「しかし、テュポーンとガルーダは
何故馬鹿なのかしら」
「フェンリルが居るから
知的になる必要が無いんだろうな」
「本当、フェンリルには感謝ね」
「だな、フェンリルが聡明で無ければ
色々と利用されてもおかしくない」