さて、ここが石油の海か。
結構重々しい雰囲気があるね。
「1つ掘っては金の為。
2つ掘っては国の為。
3つ掘っては憎しみのため」
あの角……羊かも知れないね。
なんで羊がこんな物々しい場所に居るのやら。
「む、誰だ!?」
「こんにちは、羊さん。美味しそうだね」
「なんだお前は、私を食べようと?
クックック、随分と酔狂な奴だな。
私の事を知らないのか?」
「知らないなぁ、興味ないし」
「知らぬ奴を食おうとするとはな。
では、私の事を少しは知れ。
私は剛欲同盟長の饕餮尤魔(とうてつゆうま)だ」
「強欲同盟って、人間の同盟長かい?
君はとてもじゃないが人間には見えないけどね」
「人間なんかと一緒にするな」
饕餮ねぇ、確か中国の神話の化け物か。
確か四凶の一角だったかな。
饕餮文が入ったワンピースを着てるし
ほぼ確定といったところか。
「それで、お前はどうしてここに来たんだ?
なぜ、私を食おうとする?」
「いや、冗談だよ冗談。
君みたいな不味そうな奴を食うわけないでしょ?
背も低いし、肉もあまりないだろうしね」
「おいおい、ためらいなく私に喧嘩を売るな。
私は質問したんだぞ? 答えるのが礼儀だろう」
「礼儀ねぇ、そんなの気にしてる様には見えないけど。
まぁ、僕はこの石油を封印しに来たのさ」
「なんだと?
石油に纏わる喜悦も利便も呪詛も憎悪も欲望も全て・・
一滴残らず私のもんだ!
人間なんかにくれてやるものか!」
「全てねぇ、欲深い奴だ、欲深くなりすぎたら
あまりいいことないよ?」
「ふん、欲は全ての本質だ。
欲望に底なんて存在するわけがない。
お前もそうだろう? 食えば食うほどに食いたくなる
よく寝れば寝る程に眠くなる。
欲望に果てはないんだ、強くなればなるほど
もっと強い存在になりたくなる。
欲深な思いこそ、生物の正常な思いだ」
実際、欲望というのは果てがないといえるね。
人間を見れば見る程に、分かってしまう事だ。
そして、僕自身も欲深い存在だといえる。
「だね、確かに欲を張るのは正常だ。
欲深い存在こそ進化するものだ」
「お前もそうだろう? 好きなものを食いたい。
我慢したところで何の意味もないんだ。
お前が我慢したところで、別の奴が得をする。
お前が誰かを許そうと、お前が許した奴は
またどこかで恨みを買い、殺されるのがおちだ。
我慢なんて意味はない」
「憎しみしか生まれないよ? よく張っても」
「ククク、だからこそ、私はその全ての憎しみを食える!
憎しみも喜びも悲しみもすべて私のものだ。
この石油にまとわりつく、あらゆる思いは
すべて私のものになる!」
ふーん、何でも食べることが出来るという事かな。
どことなーく僕に近しい能力と言えるのかもね。
「ふふ、どうやら君は大した存在じゃないね」
「なんだと?」
「我慢できない存在はただの雑魚だよ、雑魚。
僕らの様な強者は、自分が欲に飲まれればどうなるか。
それくらい、簡単に理解してるからね。
だから、僕らは決して強欲にはならないし
僕らは強欲になってはならないんだよ。
いいよね、君らの様な弱い存在は。
自分の欲望に忠実になってもいいんだから」
「ほぅ、随分な自信だな、貴様は欲などないというか?」
「あるよ、でも我慢してるんだ」
「必要ないだろう、我慢など、お前が我慢しても無意味だ。
お前が我慢した分を別の誰かが奪うだけだ」
「ふふ、奪えるものなら奪うといい。
僕らが我慢して残るのは
誰かが簡単に奪えるような物じゃない」
僕らはとてもとても我慢強いからね。
正確には僕ではなくフィルだけど。
「僕らが欲望をすべてこらえることなく
欲望のままに自らの腹を満たそうとすれば
僕程度でも、地球ぐらいは簡単に食えちまうのさ。
あんたも地獄も、この石油も全て僕らの腹のなかさ」
「……そうか、ようやく気付いたぞ。
お前、フィルだな、幻想郷を滅ぼしかけた」
「残念、フィルじゃないよ、僕はフェンリルだ」
「クックック、こりゃとんでもない大物だ。
だが、好都合ともいえるかもしれんな」
「と言うと?」
「お前を食らえば、私は世界全てを食らえる!
この星だけじゃない、あらゆる宇宙の全ての
憎悪も憎しみもありとあらゆるものを食らえる!
お前を食っちまえば、私に敵はいなくなる!」
「……ふふ、あっはっは! 馬鹿だね。
本当に欲望ってのは邪魔な存在だ。
地球を食う事すらできない君みたいな雑魚が
地球どころか全てを食らえるこの僕を食う?
面白い、食えるものなら食ってみなよ!
欲望に振り回される事しか出来ないような
軟弱な存在如きが、身の程を教えてあげよう!
フィルからのお願いもある、君は殺さない。
だから、安心して全力で来なよ、羊ちゃん?」
「後悔させてやるぜ、フェンリルさんよ!」
さぁ、やっぱりそんな気はしてたが戦うことになるか。
フランを守りながら戦えるかな。
「戦うの? 私も戦いたいわー
破壊したいんだけど良い?」
「ったく、騒がしくして」
「おや、いつぞやの巫女」
「フェンリル、フランは私が保護しておくから
あんたはあの羊を倒して」
「今回は君も絡んでるのか?」
「呼ばれただけなのよね、フランを保護して来いって。
饕餮が石油を噴出させてるわけではないらしいけど。
全く……そうだ、あいつも支援はするらしいから」
「必要ないよ、あんな雑魚」
「あいつは攻撃を吸収するわよ」
「大したことはないさ、僕は攻撃を食えるしね」
「そうね、心配はないでしょう」
そこまで言うと霊夢は立ち去った。
「話は終わったか? なら、大人しく私に食われろ!」
「ふふ、食われるのは君の役目だ。
羊は食われるものさ。ラム肉にしてあげよう」