東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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博麗神社へ

お嬢様の指示に従い、私はお嬢様に日の光が当たらないように

日傘を差して博麗神社まで移動することになった。

服装は紅魔館のメイド服だ、その方が分かりやすいだろうし

私が着ていた服は1着しか無いから、今は洗濯中で着れない。

咲夜さんが時間の合間に私の服を見繕ってくれると言っていたけど

咲夜さんは常に忙しいから時間が無いんだろうな。

本人は時間はすぐに作れるわ、とか言ってたけど

確かに時間が作れても、体力には限界があるから難しい。

だから、しばらくの間はこのメイド服での行動になる。

メイド服は沢山あるみたいだし、問題は無いとのこと。

それにしても、お嬢様と私の身長はそこそこ近いから傘を差すのが楽だよ。

 

「よ、よし、転ばないようにしないと!」

「えぇ、転んだりしたら私が灰になるから気を付けてね」

「ひゃい!」

「冗談よ、すぐに灰になるほどヤワじゃ無いわ」

「でも、灰になるんですね」

「長期間当たっていたらね、まぁ、気化してしまうけど

 ちょっとした日差し程度なら問題無いわ、今日は曇りだしね」

 

吸血鬼の弱点は日光だって聞いたことがあるけど、案外平気なんだ。

フランお嬢様も結構平気で歩いてるし、弱点あまり関係ない?

 

「まぁ、そこまで気負いしなくて大丈夫よ、ま、転けたら困るけど」

「は、はい、転けないように頑張ります!」

 

私達3人はゆっくりと博麗神社に向けて足を進めた。

それにしても、湖が日の光を反射させてお嬢様とフランお嬢様に

完全に当たってるんだけど、平気そうに歩いてる。

大丈夫なの? 気化しない? 気化しないよね? 灰にならないよね?

だって、平気そうだもん、眉1つ動かしてないもん、大丈夫だよ。

大丈夫なの? あぅ、日の光り、完全に当たってるけど大丈夫なの!?

も、もしかして、照り返し程度なら何の問題も無いのかな?

う、うん、きっとそうだよ、だって日傘を差した程度で平気なんだもん。

吸血鬼って凄く万能な種族なんだなぁ、弱点が多いってイメージあるけど

案外そうでも無いのかな? 豆が駄目って聞いたことあるけど納豆食べるし。

日の光が駄目って聞いたことあるけど、今は平気そうに歩いてるし。

弱点多いけど身体能力が高くて再生能力も凄いってのが吸血鬼だと思ったけど

弱点、そこまで多くなかったりするんだ。

 

「フィル、何で不思議そうに私達の方を見てるの?」

「いえ、あの…吸血鬼は弱点多いと聞いたことありますし

 十字架とかニンニクとか日光とか豆とか流水とか」

「そうなの? お姉様?」

「案外そうでも無いわよ、十字架とかむしろ武器よ?

 ニンニクは臭いきつくて嫌いだけど、納豆は大好きね

 日の光も長い間当たってなければ案外へいきだし、流水は怠いわ

 雨の日とか正直面倒極まりないわ」

「あ、そう言えば私も雨の日はしんどいなぁ」

「流水には弱いんですね」

「まぁ、万能すぎる吸血鬼に弱点が無かったら敵無しだからね

 人間とかが可哀想だし、ハンデよ、ハンデ」

「は、はぁ、そうですね」

 

案外ハンデというか、人間が勝ち目が無い相手に対して

微妙に希望を持つために適当なことを言っただけなんじゃ無いかな?

特に十字架とか、お嬢様武器にしてるって言ってるし。

絶対そうだよ、と言うか、弱点の殆どが人間の戯れ言だったりして。

でも、流水には弱いんだ、不思議だなぁ、ただ流れてるだけの水なのに。

 

「さて、さっさと行くわよ、弱点なんてどうでも良いの」

「そ、そうですね」

 

その後、私達3人は軽く雑談をしながら博麗神社に向って歩いた。

お話しをしていると、案外時間が経つのが早く

あまり時間が経った感覚が無いのに博麗神社に到着した。

博麗神社に行き着くまでにはかなり不安定な足場を進まないと駄目みたいで

足場が凄く悪い…これ、参拝客来るのかな?

行こうと思っても、行くまでがしんどいから来ないんじゃ無いかな?

空とかを飛べたら結構楽な気もするけど、私、飛べないしなぁ。

 

「さて、このボロボロの神社が博麗神社よ、霊夢、今日も閑古鳥が鳴いてるわね」

「来て早々私に喧嘩を売るとは良い度胸ね…ん? あなたは」

 

鳥居を潜ると、境内を掃除している巫女さんが私達の方に気が付いた。

赤いリボンが凄く特徴的な人だなぁ、前髪に2つ付いてるシュシュは紅白だし。

巫女服は赤と白の何だかおめでたい色合いの服装。

ただ…何で脇が出てるの? 確かに少し温かくはなってるけど。

いや、それは良いけど、何で脇が出てるのかな?

あ! そうか! 動きやすいんだ! 脇が出てると動きやすいし

きっと蒸れないから過しやすいんだ! なる程!

でも、冬とかにこの服装だったら、絶対に寒いだろうなぁ。

流石に冬場はあの脇しまうんだろうけど。

 

「ど、どうも、は、初めまして! 

こ、紅魔館でお世話になってるフィルと言います!」

「……ふーん、見た感じは普通ね」

「え? 私の事知ってたり」

「いえ、知らないわ」

 

それにしても、見た感じはそこまで怖い人には見えないなぁ。

 

「…ふーむ」

「あ、あの…」

「まぁ、とりあえず座りなさい」

「あ、は、はい」

「ヤッホー! 霊夢久し振り!」

「しかしね、何でフランまで出歩いてるの?」

「この子、フィルを気に入っててね、付いてきたのよ」

「この子をね……で、咲夜は?」

「今日は来てないわ、今日はフィルがいるから」

「あなた、大分この子を気に入ってるみたいね」

「まぁ、面白いからね」

「……そう、面白いの」

 

さ、さっきっから霊夢さんの私を見る目が怖いんだけど…

 

「ふーん、あっと、そう言えば名を名乗ってないわね、

 私は博麗 霊夢(はくれい れいむ)

 博麗神社の巫女、そして、妖怪退治もやってるわ…変な事はしないようにね?」

「は、はい、し、しません、退治されたくありませんから!」

「退治ね…そう」

 

な、何で少しだけ変な間があいたんだろう?

何だか怖いんだけど。

 

「まぁ、良いわ、ほら、早く入りなさい」

「今日は随分とすんなりね」

「まぁね」

「あ、その前にお賽銭入れないと」

「良い心がけね」

 

私は咲夜さんに貰ったお金を賽銭箱に入れて少しだけ拝んだ。5円だけだけど、良いのかな? き、きっと5円で大丈夫だよ。

ご縁がありますようにって言う…いや、待てよ?

1000円とかなら、千の縁がありますようにって意味になったりして?

だったら、1000円の方が…だけど、良く5円玉が1番って聞くし

何でだろう? ま、まぁ、あまりお金を使うわけにはいかないから5円でいいや。

 

「よ、よし」

 

私は5円玉を入れた後、霊夢さんに案内されて博麗神社の中に入れて貰った。

博麗神社の中は過しやすい部屋の大きさで、何だか落ち着く。

それと、何だか見守られてる気がして、そこでもより一層落ち着いてくる。

 

「さて、今日来た理由は何かしら?」

「フィルの顔見せよ、新しい仲間が増えたんだしね」

「ふーん、まぁ、悪い子には見えないわね…意外な事に」

「意外な事にってどういう意味ですか? やっぱり、私の事」

「だから知らないわ、ただ…まぁ、言わないでおこうかしら」

「え? え!?」

「何か感じてるなら言って欲しいのだけど、フィルは記憶が無いから」

「……まぁ、記憶に関する事なら、紫に聞けばいいわ、紫(ゆかり)、出て来なさい」

 

誰に向って話しかけてるんだろう、と言うか、今紫って!

紫って確か、慧音さんが言ってた、私の記憶を知ってるかも知れない人!

でも、何処にもいない。

 

「はいはい、呼んだかしら」

「ひょわぁあ!」

 

周りをきょろきょろしていると、目の前に女の人が姿を現し

私は驚きのあまり、座った状態で転けてしまった。

 

「ふふ、そんなに怖がらなくてもいいのに」

「目の前にいきなり出て来たら誰でも驚きますよ!」

「なれれば怖くないわよ?」

「うぅ…」

 

私の目の前に現われた人は金色の長い髪の毛で金色の瞳

白いナイトキャップの様な物を被り、帽子の前に付いている赤いリボンが

2つの輪を作っている。

服装は下地は真っ白のフリフリとしたドレスで、真ん中には

紫色で変わった線…八卦路の周囲に描かれている線の様な物が描かれており

1番下には赤と黒の陰陽玉の絵が描かれている。

そして、彼女からは不思議な威圧感を感じる…この人は絶対に強い。

一目見ただけで、そう理解できるほどの存在感だ。

 

「で、あなたがフィルちゃんね、初めまして、で、いいかしら?」

「え?」


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