人間の里での記憶は良く覚えてる。
フィルが何をしてたのかも、よく知ってる。
「ふぅ、やっぱり美味しいね」
「あぁ、中々上品な味だ」
「やっぱり蕎麦ってのは麺っすね!」
「おいしかったー!」
「流石にあの子ほどではないにせよ
まぁ、及第点と言ったところね」
蕎麦を食べて、それぞれが感想を呟く。
レミリアお嬢様の評価は少し辛辣だが
彼女にしては、かなりマイルドな評価だ。
「お口に合ったようで、良かったです!」
「そうねぇ、ふふ、ねぇあなた達」
「は、はい、何でしょう?」
「これからもあの子と事、よろしくね?」
「勿論です!」
「それと、気が向いたらで良いわ」
そう言って、レミリアお嬢様が懐から
招待状を取りだし、智百合ちゃんに渡した。
「え? これなーに?」
「今度、紅魔館でパーティーをするのよ。
妖怪や人間とか色々と来る予定だけど
もし良かったら、あなた達も来なさい。
人間だろうと誰だろうと歓迎するわ」
「紅魔館のパーティー! 楽しそう!
確か、妖怪さん達が宴会って言ってる!」
「そうね、それに近いと言えるかしら。
ふふ、フィルが作った料理もでるわ。
あの子の料理に興味があるなら
来てみても良いかも知れないわよ?
勿論、子供1人だと危ないだろうから
親と一緒に来ないと駄目よ?」
「うん! フィルちゃんの料理食べたい!」
「い、良いんですか!? わ、私達が…」
「えぇ、来る物は拒まないわ。
騒がしいのが好きなら大歓迎よ」
きっと人里の人間達が何人も来るだろう。
全てフィルの影響だ。
彼女が所属する紅魔館の宴だからね。
「では、また気が向いたら来るわ。
あなた達がパーティーに来てくれることを
私もフィルも、楽しみにしてるわ」
「はい、ありがとうございます!」
「それで? お代はいくらかしら」
「お代は必要ありません。
前、フィルちゃんが手伝ってくれたので
その時のお礼ですから」
「……なら、今度フィルが来たときに」
そう言って、レミリアお嬢様が大金を取り出す。
「これでいくらか食べさせてあげて」
「え、い、いえ、こ、こんな大金!」
「遠慮をする方がむしろ非礼という物よ。
私はスカーレット家の当主。この程度は端金。
これ以上、無理に返そうとすると怒るわ。
ま、あの子が本気で食べたらすぐに料金分は無くなる。
だから、多めに先払いよ、それじゃあね。
また、パーティーで会いましょう」
「あ、ありがとうございました!」
流石は貴族といえるね、躊躇いなく大金を払うとは。
ま、これ位出来ないと、威厳なんて物は無いか。
「……フェンリル、聞きたいことがあるわ」
「何かな?」
「フィルはこの人間の里で、何をしてたの?
私はあの子がここで何をしてるのかは知らない。
興味が出来たわ、だから、話して頂戴。
あの子に直接聞いても、
大して話さないでしょうしね。
あの子は自慢はしないだろうし
ここでやった事を当然だと思ってるでしょう。
でも、あなたならフィルの話をするのに
遠慮も無いでしょう? 自慢の妹の事だし
当然、私達にもしっかりと自慢したいでしょ?」
「……そうだね、くだらない事が多いだろうが
フィルがどうして人里でここまで好かれてるのか
その理由を軽くお話ししよう」
「ありがとう」
「……少しお待ちください」
「ん?」
僕達が話を始めようとしたときに声を掛けられた。
僕らに声を掛けてきたのは何処かで見た少女。
幻想郷縁起を書いてる人里の人間。
幻想郷の記録者、九代目阿礼乙女、稗田阿求。
「小せぇな、どっかで見た様な気がするが」
「うちは良く覚えてるッスよー
結構アクティブに動けるようになって
最初辺りに見たのが
この子の顔だったわけッスしねー」
「いつから起きてたのか知らないが
やっぱり翼が生えた時かい?」
「そうっすよ、その時からうちはアクティブ!
テンション上げ上げフィーバー状態っす!」
一応、こいつはフィルの事を影で見てただろうが
派手に動けるようになったのはその頃か。
「で、九代目の阿礼乙女が何の用かな?」
「いえ、阿求で構いません。
それと、話し掛けた理由ですが。
……あなた達が、フィルさんを守るという」
「そうだよ、僕らがフィルを守ってる姉だ。
僕は見ての通りフェンリル
このデカいのはテュポーンだ
で、この馬鹿がガルーダだ」
「流石に他人に紹介するときに
馬鹿って言うのは良く無いっすよー
確かにテュポーン先輩は馬鹿っすけど」
「んだと!?」
「……馬鹿と言ったのは君に対してだけど?
何? 僕の話すら聞えてないわけ?
その耳は飾りなのかい?」
「え!? 俺の事は馬鹿って言ってねぇの!?」
「言ってないよ!? 君の耳も飾りかよ!
君の事はデカいのって紹介したつもりだけど!?
君らは耳が4つもあるのに、4つとも飾りかよ!」
ほ、本当こいつらは……いや、ガルーダの馬鹿は
多分、聞えてたけどああ言ったんだろう。
テュポーンは絶対に天然だ、マジでそう思ってた。
正確にはガルーダの言葉で書き換えられたんだろうが。
「……た、大変そうですね、フェンリルさん」
「あぁ、マジで大変だ……」
「で、ですが、私もちょっと大変というか……」
「ん?」
「私、聞いた話だとフィルさんの人格って
フェンリルとテュポーンだけと聞きました。
えぇ、そう聞いたのです。そして幻想郷縁起を書き
その状態で出版したんです……
それが、何かまた増えてませんか!?」
「え? あ、もしかしてうちっすか?」
「そうですよ! あなたの話は聞いてませんでした!
折角幻想郷縁起を書いたというのに
この短期間で何で色々と増えてるんですか!?」
「いやぁ、うちは増えてるとは違うんっすよ?
元々居たけど、誰も気付いて無かっただけ。
正確にはフェンリル先輩に封じられてたので」
「なんで封じてたんですか?」
「だってウザいじゃん、こいつ」
「シンプルな悪口!?」
本当はこれ以上フィルの人格が増えて
危険視されるのが恐かったからだが
まぁ、封印が解除されてからは諦めたけど。
「さ、最初言ってたっすよね!?
う、うちが更に触れてフィルちゃんが
危険視されるのが嫌だからって!
そ、そんなシンプルに嫌わないでー!」
「馬鹿! 抱き付くな! 何だよ君は!」
「……」
「甘えん坊ね、鳥さん。
フィルのお姉様だと思ってたけど
フィルより1つ上ってだけなのかしら」
「う、うーむ、ガルーダは三女なのね…」
「はい! 三女っす! 多分!
だってうちはあなたの後輩ガルーダちゃん!
後輩と言う事は、やはり年下なんっすよ!」
「切替え早いね、君、実に馬鹿っぽい」
本当にこいつは分からない、色々と。
「ま、まぁ良いでしょう、彼女に圧倒されて
結構動揺してますが、とにかくです。
新しい妖怪が現われたと言うのであれば
幻想郷縁起を更新しなくてはなりません。
なので、取材をさせていただきたいのです」
「取材?」
「はい、フィルさんに関する取材です。
人里での活動をもう少し描きたい所ですし
丁度、私にも色々とお話ししていただければと」
実際、手当たり次第に取材して回るよりは
僕らに話を聞いて、情報を仕入れた後に
僕らの会話に出て来た人に話し掛けて
その話が事実だと確認する様に動く方が
動きやすいだろうしね。
「出来れば、あなた達の能力等も知りたいです。
フィルさんの能力は記入してますが
あなた方が個別で活動するのであれば
あなた達の能力も記入したいので」
「……でも、今は」
「良いじゃ無いの、興味あるわ、私も。
立ち話よりは室内の方が良いでしょ?
当然、フェンリル達から話を聞きたいなら
あなたの家に案内してくれるんでしょ?」
「はい、そのつもりです。
私の屋敷も近いので、そちらで。
使用人も居ますし、多少のおもてなしも可能です」
「なら行きましょう、ただ人里で招待状を配るから
あまり時間を掛けないで頂戴、そうね。
4時頃、干支時計があるなら、申の刻までね」
「分かりました、では申の刻までには終わらせましょう」
中々話を聞くつもりらしいね。
今は12時、干支時計で言えば午の刻だ。
だから、4時間は話を聞こうって訳だ。
フランお嬢様が飽きなきゃ良いけど。
ま、飽きたときは眠ってて貰うか
もしくはテュポーンに相手をして貰おう。
一応、僕らの事を知って貰うには必要な事だし。
僕達としても、悪くない話だしね。