さて、あの半獣は僕らに対し
どんな風に反応するだろう
彼女はフィルの尻尾や耳に反応してたし
藍の尻尾にもかなり興奮してたしね。
俗に言う、ケモナーという部類だろう。
彼女自身も獣耳も生えてる訳だが
まぁ、同族を気に入ってると言えるのかもね。
「もふもっふねぇ、安直な名ね
やはりペットを売るというのであれば
リトルファンシーズと言う名にすれば」
「……」
「お姉様」
「な、何よ! その変な表情!
格好いいでしょ!? リトルファンシーズ!」
「お店の名前と言うよりは
チーム名という感じがするっすね」
「名前は面倒だし、犬屋で良いだろ」
「君は君で馬鹿みたいな名前だよね、それ
何だよ犬屋って、ペットって種類があるんだよ?
犬・猫はメジャーだが、蛇、トカゲ、蛙とかも
人によってはペットだしね。
他にも色々居るけどね、鳥とかもそうだし」
まぁ、この幻想郷じゃペットって種類が滅茶苦茶多い
燐、空もあの悟り妖怪はペットと呼んでるし
レミリアお嬢様も最初はフィルの事を
ペットと呼んでたりしてたしね。
今は家族と評することが多くなってるが
たまにペットと呼んだりしてる。
「ま、ここはもふもふな犬猫しか売ってないし
実は結構分かりやすい名前だと思うけどね」
ここの店主である英子の趣味はもふもふだからね。
兎とかはおいてなかったからちょっと残念だ。
フィルは兎をもふもふしたいとか言ってたし。
「そう言えば、フィルは兎をもふもふしたいとか
そんな事を言ってた気がするわね、ここに兎は?」
「非常に残念な事に、ここに兎は居ないんだ」
「そう、売ってたなら買おうと思ったのに残念ね」
「そう言えば、紅魔館にペットって居ねぇよな」
「居るわよ、チュパカブラのチュパが」
「居たっけ、サッパリ姿を見てねぇ」
チュパカブラねぇ、家畜を喰らう魔物。
実像はコヨーテとかの生き物だろうが
まぁ、ここは幻想郷だ、幻想である魔物がいても
何ら不思議は無いとしか言えない。
「鳥かごで飼ってるからね
フィルを呼ぶときには出してないわ」
「鳥かごって……何処かズレてるよね」
「何よ、普通でしょ? 丁度入るし」
「うん、小っちゃくて可愛いよ?」
「そ、そうかい」
僕の知ってる情報だとチュパカブラって
結構独特な形をしてたと思うが
まぁ、感性は人それぞれだからね。
レミリア達から見れば可愛いんだろう。
「まぁ、紅魔館のペット事情は後にして
今はあの半獣に会いに行きましょう」
「そうだね、それが目的だし」
ちょっとだけ話が盛り上がったが
そのままもふもっふに入った訳だが。
「う~、フィルちゃ~ん、うへへ~」
「……」
前に来たとき同様、グッスリ寝てやがる。
てか、何でフィルの名を寝言で呟いたんだ?
そんな夢でも見てるのかな。
「……営業時間内だったと思うのだけど」
「タイミングが悪いのかしら、前も寝てたし」
「閑古鳥が鳴いてるとは言うけどね
鳴いてる理由、こいつが寝てるからじゃ?」
彼女の背中には布団の様な物が掛けてある。
居眠りしてるこいつが背中に布団を掛けるとは思えない。
恐らくこれ、お客さんが来たは良いけど
寝てたから布団だけ掛けて帰った形だろうね。
まぁ、その人物も果たしてお客さんだったのかどうか
それさえ分からないと言うのがそうだが。
だって、幻想郷縁起で書いてあったが
ここってほぼ雑談屋さんらしいし。
「ま、この子自身、あまり売りたくないのかねぇ」
周囲においてあるペットたちだが滅茶苦茶元気だ。
値段も非常に高いし、かなりの愛情を持って接してる。
「あ!」
「ん?」
外から声が聞えて、ふと外を見てみると
小さな女の子が犬に引っ張られて
このもふもっふにやって来た。
「あ! お客さんだ!」
「あなたは?」
「私? 私は初穂って言うの!
お父さんお母さんはお花屋さんをしてるの!」
「そうなんだ、それでどうしてここに?」
「えへへ、実はケンちゃん、この近くを通ると
いつももふもっふに行きたがるんだよね。
今日もお散歩してたらすぐにここに」
「あん!」
「んー?」
彼女がリードを握る犬が鳴くと同時に
英子がゆっくりお目を覚ました。
同時に犬が英子の方へ行きたがる。
「あはは! ケンちゃんはしゃいでる!」
「んー? は! 僕、寝てた!
実にいつも通りに寝てた!」
「いつも寝るなよ」
「いやはや、実にその通りって誰!?
もふもふ! もふもふが!」
「英子お姉ちゃん、こんにちはー」
「あ、こんにちは初穂ちゃん
どう? ケンちゃんのお世話出来てる?」
「うん!」
「あん!」
「あはは、幸せそうだねぇ~
毎日初穂ちゃんに可愛がって貰ってるんだね」
「あん!」
ふーん、やっぱり商品のペットにも
かなりの愛情を持って接してたらしい。
買われた後も売った犬が来るくらいだしね。
本当に思うが、彼女はペット屋に向いて無いのでは?
「随分と可愛がってるじゃねぇか
何で売ってんだよ、犬猫をよ」
「うーん、そうだなぁー
可愛い子を色々な人に紹介したいからだね。
僕が売ろうとしてる子達って捨てられてるんだよね。
外の世界で殺されそうになって逃げてきた子達らしい」
「らしい? どう言う事だ?」
「僕って動物の言葉を少しだけは理解できてね
半獣特権なのか、能力の特性なのか分からないけど
で、その子達から聞いた話。
逃げてる途中に幻想郷に迷い込んだんだって。
僕はその子達を拾って育ててるんだ。
でも、僕だけじゃこの子達も馴染まないし
ずっと籠の中で育てるのも可哀想でしょ?
だけど、流石に僕だけじゃ籠の中以外で
この子達を育てるのって難しいからさ~」
「じゃあ、何で売ってるの? 譲れば良いじゃ無いか」
「ぼ、僕もほら、お金無いと生きていけないし…
たまに支援は貰うんだけどね」
「誰から?」
「さぁ? たまにへそくりが増えてる」
……や、八雲紫か? 不意に何かを増やすって事は。
「特に半獣異変の後にがっぽり増えてたよ!
そりゃもう、僕の年収の3倍くらい!」
八雲紫だ、確実にあいつだな。
支援してたのか、あの賢者。
意外と彼女の行動は幻想郷にプラスなのか?
有益じゃなきゃ、支援なんてしないだろうしね。
「じゃあ、お値段が高いのは?」
「いやぁ、大事に育ててるから、安く出来ないと言うか」
「でも、何人かくれたよね?」
「うん、初穂ちゃんなら大丈夫だと思ってね」
「えへへ! ありがとう!」
買ってる人より、譲ってる人の方が多そうだね。
「あ、鐘の音…あー! 時間が! お母さんに怒られる!」
「そうなんだ、じゃあまたねー」
「うん! また来るね!」
「あん!」
「ケンちゃんもまた来てね」
「あん! あん!」
「行くよ、ケンちゃん!」
「あん!」
あの犬も初穂と言う子も大事に感じてるようだね。
そのままちょっと名残惜しそうにしながらも
抵抗すること無く彼女に連れられて出ていった。
「いやぁ、元気そうな姿を見れて安心安心。
さて、それじゃあもう一組のお客様……
そう! あなた達もふもふ軍団を!」
「何だよ、もふもふ軍団って」
「あなた達は全体的にもふもふだしね」
「特にうちは滅茶苦茶もふもふッスよ!
何故なら! 耳も生えて尻尾も生えて翼も生えてる!
その翼は赤いとは言え、ふんわりふわふわ!
毎日毎日お手入れし続けてるパーフェクト!」
「……君、属性盛りすぎじゃ無い?
多すぎるとそれはそれでオーバーするよ?
ケーキにイチゴや多種多様の果物をのせて
更にはチョコをのせて
スポンジの下段をチョコにして
上段を通常のスポンジにして
中心に生クリームを用意して
そこに用意してある果物がキュウイ見たいな」
「それはそれで美味しそうだとは思わないッスか!?」
「チョコケーキが食べたい人は選ばないし
ショートケーキを食べたい人は取らないし
フルーツケーキが食べたい人も取らないし」
「いや! カラフルスーパーハイブリットケーキを
何これ、めちゃヤベー!
って感じで選ぶ人は居るっす!」
な、何だこの何処か馬鹿っぽい会話は…
「まぁ居るね、実は僕もそう言うのを選ぶ派だし
でもなー、翼と耳と尻尾はジャンルが違う気が」
「変な所で寛容になれない厄介オタクっすか!」
「失礼な! こだわりは大事だよこだわりは!」
「こだわ、うぎ!」
「もう良いから、喧嘩するなよ、話が進まない」
「ぐ、ぐびがー! がく」
「おい狼、死んだぞクソ鳥」
「あ、そうなんだ、マジ良かった、最高だね」
「棒読みだな、お前」
そりゃこいつがこの程度で死ぬなら楽だしね。
「相変わらず、うちに対して容赦なさ過ぎる……」
「おぉ、生きてたのか、良く生きてたな
さっき首の骨が折れたような音がしたが」
「この程度でうちが死ぬ筈が無いっす
後、別に首の骨も折れて無いっすし」
あの程度で折れるほどヤワじゃ無いだろうしね。
そりゃガルーダはかなり頑丈だし。
「はぁ、マジで色々と置いてけぼり」
「そ、そうね、この3姉妹は
正直、フィルの姉とは思えないわ、色々と」
「え!? フィルちゃんのお姉さんなの!?
いやまぁ、確かにちょっとだけ……ちょっと?
あるかな? いや、ある、多分あるはずの
フィルちゃんっぽい雰囲気はあった気はするけど」
「ドンドン自信なくしてるわね」
「せ、性格が違いすぎて…」
「そりゃまぁ、そうだろうね」
フィルは正直言って優しさの権化だしね。
に対して、僕らはそう言うのほぼ無いし。
僕らの優しさは大体フィルに向ってるしね。
「まぁいいや、フィルちゃんのお姉さんならば
僕だって大歓迎って感じ!
いつか一緒に来てた女の子も居るしね。
それで? 今日はどうしたのかな? ペット?
ならばこの子がおすすめ! 茶色い犬!」
「ニホンオオカミっぽいけどね」
「え!? 犬じゃ無いの!?」
「あぁ、狼、滅茶苦茶珍しいのはそうだね。
外の世界じゃ絶滅してるし」
まぁ、ここは幻想郷だからね。
ニホンオオカミが生きてても不思議は無いだろう。
「あぁ、だから自分は犬じゃ無いって」
「しかし、外の世界では珍しいのよね?」
「珍しいどころか全滅してるね。
幻想郷なら沢山居ても不思議は無いが」
「そうなの? 外の世界から来たんでしょ?」
英子の言葉を聞いたあの犬が頷いた。
「そうだよね、仲間が居なくなって彷徨ってたら
この場所に来たって言ってたもんね」
「なら外の世界と言う事ね、
良いじゃ無い、買おうかしら」
「おー! それは良かった!
この子も一緒に居たいって言ってるしね!」
「え? 誰と?」
「君」
「は? 僕?」
「うん、惚れたって」
「……」
「良かったな、フェンリル」
「祝福するっす、先輩!」
「まぁ、この子もメスだけどね!」
「メスが女の子に惚れるな!
てか! そもそも種族違う!」
「同じ狼じゃねぇか」
「全然違うだろ!?」
「さぁ! この子も行きたいって事だし無料だ!
持ってけ泥棒!」
「何か滅茶苦茶だけど!?」
「えい」
「ばーう!」
英子がケージを力強く開けると同時に
あの狼がケージから飛び出して
一気に僕の方に飛び込んできた。
「がぶ!」
「飛び込むな、首締めるぞ」
「もう締めてるだろ」
何でこんなのに懐かれにゃならないんだよ!