東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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記憶を取り戻す為に

自分の記憶を知っている紫さんと出会ったお陰で

少しだけ、自分がどうすれば記憶を取り戻せるか分かった気がする。

私がこの幻想郷から戻ろうと考えないほどに私がこの世界に馴染めば良いんだ。

私にあるのは、私にない私の記憶を知りたいという願い。

ただそれだけだ、それだけで良い…だからきっと、この幻想郷には慣れるはず。

だから、私は頑張って幻想郷に慣れないといけない。

それで私の記憶が戻るというのなら、私は頑張って慣れないと。

 

「でも、どうすれば…」

「そうね、幻想郷の住民と会話でもすれば良いと思うわ」

「え?」

「そうすれば、幻想郷から簡単に出て行こうとは思わないでしょ?」

「悪くないわね」

 

じゃあ、私は幻想郷の人達とお話しすれば良いのかな?

そうすれば、紫さんも私の記憶を教えてくれるかも知れない。

だったら、頑張らないと。

 

「まぁ、そうするならスペルカードルールに順応しないといけないわね」

「あ、スペルカードルール…それはどう言った物なんですか?」

「簡単に言えばごっこ遊びよ、美しさと難易度を競い合う遊び」

「へぇ!」

 

でも、お嬢様とフランお嬢様の戦いでは館がボロボロになったんだけど。

…まぁ、考えすぎだよね、きっと勘違いだよ、そんな訳ないよね。

 

「凄そうですね!」

「そう? 案外そうでもないわ」

「え?」

「霊夢の前では大概のスペルカードはあっさりと避けられるわ」

「さ、流石博麗の巫女さん…」

「隙間があるんだから、そこを通れば良いだけよ」

 

そんな簡単そうに言ってるけど、すぐに隙間を見付けて避けるのは難しいよね。

私は弾が当たらないだけだからちょっと違うけど。

 

「と言うか、フィルでも回避は出来るんじゃ無いの?」

「いやいや、そんな訳ありませんよ、運良く弾が外れるだけですよ」

「そんな訳ないでしょうに、本当にあなたは自分の実力を侮ってるわ」

「っとと、霊夢遊びに来てやったぜ……

 ま、まさかフランまでここにいるとは、どういう風の吹き回しだ?」

「フィルを追いかける為に来たんだ」

「…フィル、まさかフランに気に入られるとは、大変だな」

「そうですか?」

 

フランお嬢様、魔理沙さんに警戒されてるんだなぁ、何でだろう?

 

「まぁ、何にせよ魔理沙、良いところに来たわね」

「お? お前が私の訪問を歓迎するとはまた珍しいな」

「丁度フィルにスペルカードルールを教えようと思ってたのよ

 レミリアとフランは日の下では動けないし、私は動くの面倒だから

 魔理沙、あなたがフィルにスペルカードを見せてあげて」

「おいおい、レミリアとフランの理由は分かるが、お前の理由は自分勝手だな」

「文句あるの?」

「はぁ、まぁ、良いぜ、弾幕ごっこならいつもやってるから

 大した苦労ではないぜ、よし! フィル、やろうぜ!」

「あ、はい!」

 

スペルカードルール、いや、弾幕ごっこ? どっちでも良いのかな?

でも、多分どっちでも意味は通るんだろうから、どっちとも覚えておこう。

 

「さて、スペルカードルールの軽い説明と行くぜ

 スペルカードはあらかじめ技の名前と命名しておいた名前のカードを用意する

 で、それぞれの技名を任意の枚数所持しておかないと駄目だ。

 対決する時は、決闘開始前に決闘での使用回数を提示しておく必要があるんだ

 で、技を使う時にはカード宣言をする必要があるんだぜ

 で、体力が尽きるかすべてのスペルカードが攻略された場合は負けになるんだぜ。

 たとえ余力が残っていても最初に宣言した全枚数を攻略された場合は

 負けを認めなくてはならないんだ」

「え、えっと…」

「まぁ、簡単に言えば技名を書いたカードを好きなだけ用意する

 決闘前には戦いで使うカードを宣言しないといけない

 全部を攻略されたらやられた扱い、後はとりあえず技で相手をぶっ倒せってね

 まぁ、最近は普通に直接攻撃も出来て、特に枚数制限とか無く

 体力が無くなった方が負け、なんて言うルールも出て来てるがな」

 

きっと天子さんがそういう形で私に攻撃を仕掛けてきたんだなぁ。

 

「因みに解決側は攻撃を避けながら攻撃が主だ

 で、緊急回避用の攻撃を用意、とまぁ、こんな感じだな

 フィルはスペルカードがないから、今回は解決側

 私は攻撃側という形でお前に向ってスペルカードを使う

 私との場合、別に当たっても死ぬことは無いから安心してくれ」

「何だか怖い単語が…」

「さて、やるか、今回はお試しだから、私が使うスペルカードは2枚だ

 よし、やるか、構えろ」

「は、はい」

 

早速始まるんだ、ど、どんな感じなんだろう。

 

「で? 飛ばないのか?」

「あ、私、空を飛べないので」

「お、おいおい、それって大丈夫なのか?」

「分かりません」

「フィルは地上で私とフランの攻撃を避けるくらいだから問題は無いわ」

「な…さらっと凄まじいな、まぁ、良いぜ、よし、避けてみろ!」

 

そう言うと、魔理沙さんは自分の周りに幽霊みたいな物体を出し

自分の周りをクルクルと回転させて、沢山の星形の弾を飛ばしてきた。

 

「す、凄い! ど、どうやって出して、あ、あぁ!」

 

あ、危ない、あと少しで当たるところだった、う、うん

つまり、この攻撃を当らない様に避ければ良いんだね。

 

「っと、と、とと、と」

「ほぉ、中々やるじゃ無いか、良い筋してるぜ

 んじゃ、行くぜ! 本番だぜ!」 恋符「マスタースパーク」」

「な、なぁ!」

 

魔理沙さんが構えた八角形の道具の中心が光ったと思ったら

そこから極太のレーザーが飛んできた!

 

「うひゃぁあ!」

 

私はその攻撃を何とか回避、少しだけ擦ってしまった。

 

「良く避けたな、だが、まだまだ連続で行くぜ!」

「うわぁあ!」

 

ひぃ! 何回も何回も極太のレーザーが! 危ない! 当たっちゃうよぉ!

それに、何だか少し大きめの星も飛んで来るし! 当たっちゃう!

う、うぐぐ! で、でも、逃げ切るもん! 避けてみせるもん!

 

「はは、良いじゃないか、見た目は弱そうなのに大分出来るな!」

「見た目は余計じゃぁ」

「よし、じゃ、次だぜ」

 

今度も魔理沙さんの周りにさっきと同じ様に幽霊のような物が現われて

魔理沙さんの周りをクルクルと回転を始めた。

そして、そこからさっきよりも沢山の弾が放たれる。

危ないよぉ! 弾の大きさは小さいけど、その代わり密度が凄い!

当らない様に動くのが大変だよ!

 

「じゃ、最後のスペルカードだな! 行くぜ! 今度は結構本気だぞ!」

 光撃「シュート・ザ・ムーン」」

「あわわぁ!」

 

魔理沙さんが私の足下に幽霊のような物を飛ばしてきたと思うと

そこからレーザーが上空に向って放たれた。

その間、魔理沙さんは私に向けて多数の小さな弾を飛ばしてきた。

横の弾と弾の間は結構開いていて、そこで足下から出てくるレーザーを避けられるけど

ゆっくりとだけど博麗神社の方に追い込まれていく。

このままだと避けることが出来る範囲が減っちゃう!

ど、どうしよう、縦の弾の隙間は大分狭いから抜けるのは難しい…

いや、もうここを抜けるしかない、そうしないと追い込まれる。

 

「そこだ!」

「おぉ!」

 

私は一瞬出来た縦の隙間をすり抜け、逆方向に移動を始める。

弾は私の方を狙って、再び少しずつ狭まってくる。

そうか、私に向ってくるこの列を中心に他の列が動いているんだ。

だから、真ん中の列を簡単な方向に避けようとする度に追い込まれる。

でも、それだけじゃなく、足下からのレーザーにも注意しないといけないんだ。

ただ列を避けることだけを考えていたら、足下のレーザーにやられる。

うぅ、2つの事を同時に考えて避けないといけない攻撃なんて難しいよ。

でも、避ける方法は分かった、追い込まれる前に中心の列をまたげば良いんだ。

またぐのは難しいけど、それが出来れば回避は出来る!

 

「ふぅ、やれやれ、私の負けだぜ」

「え?」

「この攻撃はそこそこ本気だったんだが、避けられたのは驚いたぜ

 本当に何も知らないのか怪しくなってくるほどに回避能力は凄いな

 後はスペルカードを作れば、お前、かなり強い部類に入れそうだな

 まぁ、避ける実力と攻撃の実力はイコールにはならないだろうがな」

「が、頑張ります!」

 

これがスペルカードルール、宣言した通りに攻撃をする戦い。

……もし当たっても死ぬことは無いんだ、それに何だか楽しい!

わ、私も絶対にこのルールで戦えるようになる!

そうすれば…私の記憶を取り戻すことが出来るんだから!

 

「よ、よーし! やるぞぉ!」

「やる気は十分だな! 期待してるぜ!」

「はい! 凄い技を考えます!」

「力が付いてきたら、私と本気でやりましょうね、フィル」

「お姉様ズルい! 最初にフィルと遊ぶのは私!」

「遊ぶわけじゃないわ、実力を考慮するために」

「私がフィルと戦うの!」

「私よ! 紅魔館の主として私がフィルと戦うのよ!」

「違うもん! 私がフィルと戦うの!」

「退く気が無いのなら!」

「スペルカード勝負!」

「家でやりなさい!」

「「痛い!」」

 

…お、お嬢様とフランお嬢様に拳骨って…あの巫女さん凄いなぁ。

と、とにかくお嬢様達も私に期待してくれてるみたいだし! 絶対に強くなる!


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