東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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修行の成果

それなりに長い修行の成果か、ようやく私にも弾幕を撃てるようになった。

大変だったなぁ、何度も精神統一して、弾幕が出てくると心の中で思い続け。

精神を集中して、ようやく弾幕が出るようになった。

それから、1発でも弾幕が出れば後は楽なんだよね。

1度本当に出ると分かると、当たり前の様に弾幕を撃てるようになった。

かかった時間は1週間、紫さん曰く早いほうらしい。

だけど、空を飛ぶことは出来なかった、少し残念だよぉ。

 

「しかし…思い込みって大事なのね」

「へ? 思い込み?」

「まぁ、あなた、今は弾幕出てるわよね?」

「はい、凄く簡単に出ました!」

「最初に出た弾幕…あれ、私があなたに気が付かれないように出した弾なのよ」

「え!?」

 

…あ、あの弾、私が出した奴じゃないんだ。

でも、あの弾が出た後から凄く簡単に弾幕が出るようになったのに。

 

「で、でも、私、弾出るようになりましたよ?」

「えぇ、だから、実際にあなたには弾幕を撃てる才能があったのよ

 あれはただ切っ掛けとなっただけなのだから」

 

…お、思い込みの力だけで、私は弾幕を撃てるようになったんだ。

凄いや、自分で言うのも何だけど、馬鹿で良かった。

あれ? 何だか少しだけ悲しくなって来たような気がするよ。

 

「うぅ、何だろう、喜んで良いのか…」

「素直に喜んだ方が良いと思うぞ、努力が実ったのだから」

「藍さん…そうですよね!」

「さて、それじゃあ、卒業試験と行きましょうか」

「そ、卒業試験ですか?」

 

な、何だろう、卒業試験って一体…

 

「橙」

「はい、お呼びでしょうか?」

 

紫さんは少しだけ目を瞑った後、橙さんの名前を呼んだ。

 

「さて、それでは、卒業試験よ、この橙を倒しなさい」

「へ!?」

 

え? えぇ!? ど、どういうこと!?

 

「でも、フィルちゃん、私には勝てないんじゃ…弾幕も出たばかりですし

 スペルカードも無い状態だと…」

「それは実際戦ってみて判断してみなさい、橙、行きなさい」

「あ、は、はい…」

「あ、あの、卒業試験って…あ、あの! 私、弾幕が出るようになっただけで

 スペルカードとかまだ出来てないんですけど!?」

「解決側として橙と戦って貰うのよ」

「え、えぇ!?」

 

ど、どうしよう、なんでこんな事に!

 

「え、えっと、少しよく分からないけど、紫様の命令だし…

 フィルちゃん、覚悟して!」

「あ、あの…私、弾幕を撃てるようになったばかりなので、その…」

「私が今回の戦いで使うスペルカードの枚数は3枚!」

「あ、あれ? 話聞いてます?」

「行くよ!」

 

そう言って、橙さんは私の話など聞かずに戦いを始めた。

最初に橙さんはこちらに向かってブドウみたいな形をした

緑色の弾幕を放ってきて、周囲に鱗形の弾を放ってきた。

この攻撃は通常の弾幕、スペルカードじゃない。

あくまで予想だけど、あの周囲に放った鱗形の弾で動きを制限

そして、あのブドウ型の弾幕で倒してくる感じの攻撃なんだろう。

それにしても弾幕の数は多いし、鱗の弾幕が曲がって動いてくるから難しい。

 

「うわぁ!」

 

私は鱗の弾幕に当らない様に注意して、ブドウ型の弾幕から

大きくズレ、攻撃を回避した。

あのブドウ型の弾は私を狙ってくる弾幕だから、左右に大きく動けば避けられる。

 

「えっと、てい!」

 

私は攻撃を避けながら、橙さんに向って弾幕を放った。

解決側は相手の攻撃を避けながら、相手に攻撃するのが基本らしい。

向こうはその弾幕を受けて、ダメージを受け、ある程度ダメージが蓄積された後に

スペルカードを宣言して攻撃を仕掛けてくるみたいだ。

解決側が扱う弾幕はショットと言うらしく、1発当たっただけでアウトにはならない。

で、攻撃側の弾幕が解決側に当たった場合は被弾と言うらしい。

弾幕に当たった場合、死にはしないけどかなり痛いらしくて

体力の限界が来ると負けとなるそうだ。

ただ、擦るだけなら問題は無いらしい、これをグレイズと言うそうだ。

紫さんに教えて貰った知識、必要な知識なんだろう。

 

「あたた、えーい! 行くよ!」 陰陽「晴明大紋」

 

橙さんが1枚目のスペルカードを宣言した。

攻撃の手が一瞬止まり、橙さんは少しの制止の後

五芒星を描くように素早く動いた。

そして、五芒星の各頂点となる箇所で弾幕を放ってくる。

周りにバラバラに飛ばしているみたいだ。

だけど、こちらにある程度接近してくると動きが変わり

くねりと曲がってくる、それもあって、時間が経つにつれ

避ける範囲が狭くなってくる、だけど問題無い。

 

「と、っとと、と」

 

私は弾幕の間を縫って、攻撃を回避しながら橙さんに弾幕を放つ。

それにしても、かなり擦るなぁ、痛くはないんだけどさ。

 

「くぅ、やるね」

 

スペルカードを取得できた、この取得というのは

こちらも打ち消し用のスペルカードを使用しないで

なおかつ1度も被弾せずにスペルカードを突破できた場合の事らしい。

でも、時間切れで突破した場合は取得にならない。

中には耐久のスペルカードとかもあるらしくて、その場合は

時間切れまで1度もスペルを使わず、被弾しなかったら取得らしい。

別に取得したからって何かあるわけでも無いと思うけど。

 

「それ!」

 

その後、橙さんは私の動きを制限してくるように弾幕を周りに放ち。

こちらを狙ってくる鱗の弾幕を放ってきた。

この弾幕は完全に私を狙っていて、少し動けば回避が出来る。

だから、周りで動きを制限してきている弾幕に当らない様にすれば

この攻撃を回避するのは結構簡単だ。

 

「と、とと」

「お、思った以上に強い! スペルカード!」童符「護法天童乱舞」

 

スペルカードが宣言された、今度攻撃は周囲を激しく移動してきている。

その間に鱗弾幕を使って、私に攻撃をする感じみたいだった。

時には正面から弾幕を放ち、時には側面から弾幕を放つというスペル。

左に来たから右に避けてみると、今度は右に来ていたりと

かなり翻弄されるスペルカードだ!

 

「うわぁ! 危ない! はわわ!」

 

私にはこの密度の高い弾幕を回避出来ないと思っていたけど

意外な事に、私はその弾幕をギリギリで回避出来ている。

あと少しズレていたら当たりそうな場面も多かった。

だけど、当たらず、何カ所も擦りながらも回避が出来ている。

 

「てりゃ!」

 

背後から飛んできた弾幕をバク宙で回避した。

こんな動き、私に出来たんだ!

 

「うぅ、飛べないのに早い! うぅ、ら、ラスト!」方符「奇門遁甲」

 

最後のスペルカード、橙さんは私の前で激しく回転し

何発も何発も弾幕を放ってきた。

弾幕の密度はかなり濃く、避ける隙間もあまり無い。

だけど、後方にいれば弾幕の隙間は開き、そこを通って避けられる。

 

「えい、っと、と、おぉ! 危ない!」

 

危うく当たるところだったけど、辛うじてその弾幕を避けることは出来る。

ランダムだからか知らないけど、何カ所かに大きめの隙間が出来るからだ。

そこを通っていけば、回避することが出来る。

私は動きがそこそこ速いから、距離があっても移動が出来る。

この流れで回避を続けていけば勝つことが出来る!

 

「うぐぅ、あ、当たれぇ!」

「あ!」

 

あ、このままだと当たっちゃうよ! ど、どうしよう! どう動く!?

左に避けても左の弾に当たる、右に避けても密度が濃いから当たる!

こ、このままだと被弾しちゃう!

 

「うぅ!」

 

あと少しで当たると言う時だった、私の体は自然と動き

こちらを捉えて飛んできた弾幕のギリギリの隙間をすり抜けることに成功した。

 

「え! あぁ!」

 

そのまま私のショットで橙さんはダウン、何とかスペルカードを取得できた。

 

「ま、負けた…本気だったのにぃ…」

 

橙さんの服はかなりボロボロになっている。

そ、そんなに私のショット強かったのかな?

でも、あまり威力があるようには思えないんだけど。

 

「うぅ、なんで全く当たらないのぉ? おかしいよぉ…」

「流石フィルね、回避能力は霊夢にも匹敵しそうね」

「あ、ありがとうございます」

 

でも、霊夢さんが戦ってるところを見たことないから

この褒め言葉が凄いのかよく分からないけど。

何だか凄い褒められてる気がする。

 

「それじゃあ、これで卒業ね」

「ほ、本当ですか!?」

「えぇ、でも、定期的に様子は見に来るから

 その内、藍とも戦って貰うつもりだからそのつもりで

 その時までにスペルカードの1枚は作って頂戴ね」

「ら、藍さんとも戦うんですか!? 無理です! 絶対に無理!」

「大丈夫よ、それじゃあ、紅魔館へ送ってあげるわ、それ」

「へ? あぁ!」

 

また足下にあの目玉が沢山ある空間が出て来た!

 

「フィルちゃん、今度また戦おうね! 負けっぱなしは嫌だから!」

「ひゃーーい! あだ!」

 

せ、背中から…背中から落ちた…ちょっと痛いよぉ。

 

「うぅ…」

「私の部屋に何もない空間から帰ってくるとはね」

「あ、お、お嬢様! ご、ごめんなさい! でも、何も出来なくて!」

「大丈夫よ、理由は分かってるから…さて、1週間ぶりね、お帰りなさい」

「あ、えっと、た、ただいま戻りました」

 

まだスペルカードは1枚も出来てないけど、弾幕を撃てるようになって

1歩前進…かな?


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