東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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妹様のお部屋

何故か妹様に気に入られてしまい

そのまま妹様の部屋に連れて行かれた。

お嬢様の許可は取っていて、

少し一緒にいたいって言った

妹様の言葉を承諾した感じ。

それにしても、妹様の部屋って

お嬢様の部屋よりも暗いし、

かなり寂しい空間だよ。

部屋も地下にあるし、

お嬢様の妹と言う扱いには見えない。

 

「ここが私の部屋だよ、くつろいでね」

「あ、はい」

 

部屋に入って最初に目に入ったのは、

爆発しているいくつものぬいぐるみだった。

ぬいぐるみの殆どは人の様な形をしている、

赤い大きなリボンを付けたぬいぐるみ

このぬいぐるみは下半身が爆発している

黒い帽子のぬいぐるみは頭だけしかない。

その爆発しているぬいぐるみの中には

お嬢のぬいぐるみのような物もある。

 

「・・・・」

「唖然としちゃうよね・・・・ごめんなさい

 このぬいぐるみは気が付いたら壊れてたの

 全部ワザとじゃ無いのよ、

 遊んでたら壊れちゃったりしてたの

 …壊したくないのに」

「ど、どうして破れちゃったんですか?」

「分からないの、

 ただ遊んでただけ・・・・なのに」

 

ただ遊んでいただけなのに

ぬいぐるみが破れちゃうなんて事あるの?

そんなに脆い物なのかな、ぬいぐるみって。

さっきまでお嬢様と喧嘩していたときは

少し楽しそうだったのに

部屋に戻ったら、

凄く静かになっちゃってる。

どうして?

 

「き、気にしないで大丈夫ですよ、

 ぬいぐるみは直せますから」

「そう、だよね、人間とかと違って、

 壊れても直せるから」

「どういう意味ですか?」

「人間と違って、何度でも壊せるって事よ」

「へ?」

「人間は壊れちゃったら治らない、

 でも、その代わりとても良い気分になるの

 そう簡単には壊れないもんね。

 あなたもそうでしょう?」

「え? あ、あの」

 

妹様は真っ赤な目を光らせながら、

私の方をジッと見ている。

何だか怖いよ、

少し半笑い状態なのが更に怖い。

それに、言ってることも怖い・・・・

あぁ、ど、どうしよう。

 

「だから、簡単には壊れないでね?」

 

妹様は私の方を見て笑い、

手を振り上げた、嫌だ!

 

「殺さないで!」

「あはは、冗談だよ、

 そんなに怖がらないでよ」

「・・・・へ?」

 

さっきまでの表情とは違い、

少し楽しそうに笑っている。

あれ? 私、おちょくられてたのかな?

 

「少しだけね、脅しってやってみたかったの。

 お姉様もやってし」

「お、お嬢様が脅しを? どんな風に?」

「こう、ぎゃおー! 食べちゃうぞー! って」

 

妹様は両手を前に出し、

爪をこっちに向けて可愛い笑顔でそう叫んだ。

 

「どう? 怖いでしょ? 

 その時来てた相手も驚いてたんだから

 特派員の運命は! いかにって!」

「そ、そうなんですか」

 

でも、私には怖いようには見えなかったなぁ、

可愛らしかったし。

 

「だから、お姉様みたいに

 誰かを驚かせたいと思ってやってみたの

 どうかな? 怖かった?」

「は、はい、す、凄まじく恐ろしかったです」

「でも、まだお姉様には敵わないわね、

 でも、いつかお姉様の脅しを越えるの!」

「えっと、そ、そんなに

 お嬢様の脅しって怖かったんですか?」

「うん、咲夜が鼻血を出すくらい

 恐ろしいわ、流石はお姉様よね!」

 

あれ? もしかしたら、

お嬢様と妹様って、実は仲が良いのかな?

妹様は結構お嬢様を尊敬してるように見えるし。

 

「もしかして、

 妹様はお嬢様の事を尊敬してるんですか?」

「そんな訳ないじゃん、

 495年間も私を地下に入れてた姉だよ?

 ただ、お姉様みたいに強くなって、

 お姉様を越えたいだけだよ!」

 

それってお嬢様を目的にしてるって訳だから、

ある意味憧れてるのと同じだよね。

やっぱり姉妹なんだな、喧嘩したりしても、

何処か仲が良いのかも。

 

「それで、フィルだったよね、

 どうしてお姉様のペットになったの?

 いつから?」

「えっと、今日ですね、

 ペットになった理由は咲夜さんって

 人にいつの間にか連れてこられて

 それで、お嬢様が私を気に入ったからです

 私なんかが気に入られるとは思いませんでした」

「お姉様は妖怪や人を見る目があるからね、

 きっとフィルに何か感じたんだよ」

「お嬢様って、そんな才能があったんですか」

「うん、咲夜もそうだし、

 パチュリーも美鈴も優秀だからね

 でも、妖精を見る目は無いね、

 妖精メイド達って殆ど役に立ってないもん」

 

妖精メイドなんていたんだ、

全くすれ違わなかったな

もしかしたらあまり居ないのかも。

 

「あと、フィル、

 どうしてマフラーをしてるの?」

「それが、私にも分からないんですよ」

「ふーん、じゃあ、何処から来たの?」

「その・・・・分かりません、

 私は記憶が無いんです」

「記憶喪失って奴? 変わってるね、

 そんな事ってあるんだ

どうやったら記憶が無くなるの?」

「そ、そんな事分かりません」

 

記憶喪失がどうやって起るか

なんて考えたことも無かった。

でも、本当にどうやったら起るのかな? 

よく分からないよ。

 

「まぁ、そうだよね、あ、でも、

 有名なのは1つ知ってるよ! 

パチュリーの図書館で読んだ!」

「ど、どんな風に起るんですか?」

「頭を強く打ったときだよ、

 これで記憶が無くなったら

もう一度強く頭を打てば治るかもって」

「い、いや、多分それは無いと思いますよ

 頭は痛くなかっ」

「じゃあ、やってみるよ!」

 

私の話を遮って、妹様は立ち上がり

手を握りしめて腕を高く伸ばした。

 

「え!? あ、あの、妹様!? 

 その振り上げた腕で何を!」

「えい!」

 

妹様はその高く伸ばした腕を振り下ろしてきて

私の頭を思いっきり殴る。

 

「がふ!」

 

私はその一撃を受けると同時に、

目の前にお星様が見えた。

そのお星様が晴れた後、

目の前には赤い花と大きな鎌を持った

背が高い女の人が眠っている。

 

「あ・・・・あれ?」

「ん? お客さんかい? 

 見た感じ随分と若いね、

 妖怪みたいだけど」

「え、えっと、私は」

「・・・・まぁ、とりあえず

 あんたはまだここに来るのは早いらしい

さっさと戻りな」

「え?」

 

そんな夢みたいな世界を見ていると、

何処からか妹様の声が聞えてきた。

どうやら、私の名前を必死に叫んでいるようだ。

戻らないと、このままだと妹様が

お嬢様に怒られちゃうよ。

折角仲が良いのに、

私のせいで姉妹の絆が壊れるのは嫌だよ。

 

「・・・・う、うぅ」

「あ、よ、良かった!」

「あぁ、妹様、私、何があったんでしょうか」

「ごめん、ちょっと手加減を失敗しちゃった!

 だけど、本当に生きててくれて良かった!」

 

妹様は泣きながら私に抱きついてきた。

その時の力は結構強かったけど

最初に私を抱きしめたときと比べると

凄く力が弱い。

きっと、私の体を労ってくれてるんだ。

妹様も根は優しい子なんだなぁ。

 

「大丈夫ですよ妹様、

 私はそう簡単には死んじゃったりしませんから

 私は頑丈なんです、妖怪ですから」

「うぅ、ごめんなさい」

 

私は妹様を軽く抱きしめて、

背中をゆっくりとさすった。

ペットの分際でこんな事をして良いのか

分からないけど、きっと良いよね。


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