東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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紫さんからのお願い

フランお嬢様のスペルカードを見て、作ったスペルカード、小さな鎖。

自分でもこんなスペルカードが出来るとは思わなかった。

爪で攻撃する理由は、やっぱり狼だし使いたいという理由。

鎖の様に見立てたのはカゴメカゴメを真似して。

もっと色んな人のスペルカードを見れば、新しいスペルを考えられるかも!

でも、やっぱり完全にオリジナルのスペルカードを考えたいなぁ。

それから、新しいスペルカードを考えているだけで3日の時間は経過した。

それでも新しいスペルカードは出て来ない…やっぱり難しいや。

 

「うーん」

「フィル」

「あ、はい!」

 

私が色々と考えながら歩いていると、いきなり目の前に咲夜さんが現われた。

やっぱり本当に一瞬で目の前に現われるから驚くよ。

 

「あ、あの、何でしょう…」

「お客様よ」

「え?」

「はいはい、私よ」

「のわぁ!」

 

い、いきなり尻尾触られた! 誰かに尻尾触られた!

何で!? 後ろには誰も、誰もいなかったし気配も無かったのに!

 

「あわあわ!」

「何? あなたは尻尾は苦手なの?」

「ひゃう! 触らないで下さい!」

「へ?」

 

はぁ、はぁ…だ、誰か分からないけど、反射的に殴っちゃった。

 

「……床に亀裂が入ったのだけど、とんでもない馬鹿力ね…」

「あぁ、す、すみません!」

「しかしまぁ、それはさておき、さらっと幻想郷の賢者を仕留めるとはやるわね」

「えぇ!?」

 

亀裂の中心に倒れていたのは…ゆ、紫さんだった。

紫さんだったの!? 紫さん!? え!? 嘘! ど、どうしよう!

 

「ど、どうしよう! どうしよう! 生きてますよね!? 生きてますよね!?」

「……ま、まぁ、生きてるけど、正直ここまで怪力とは思わなかったわ」

 

紫さんの後頭部には大きなたんこぶが…やっちゃった。

 

「これ、普通の人間に使ったら死ぬわよ」

「ご、ごめんなさい! つい反射的に!」

「まぁ、あれは私が悪かったわ、暇なときに藍に絡む感覚でやったせいね」

「ごめんなさい!」

「で、八雲 紫、紅魔館のこの亀裂、ちゃんと直してくれるのよね?

 これはどう考えてもあなたが原因なんだけど?」

「まぁ、そこは大丈夫よ、そういう所はちゃんとするから」

 

うぅ、私が悪いのになぁ…何だか申し訳ないな…

でも、尻尾を不意に触られちゃったら、ど、どうしても…

は、反射的に…どうしても…う、うぅ…

 

「なら良いわ、で? フィルに何の用?」

「あぁ、それね大事なのは、まぁ、用と言っても大した事じゃ無いわ

 ちょっと他の住民とも交流を持って貰おうと思ってね」

「こ、交流?」

「えぇ、今、あなたは紅魔館、人里、博麗神社、マヨヒガ程度しか行動してない

 でも、幻想郷はもっと広いわ、あなたが出会った妖怪はほんの一部。

 私はあなたにもっと沢山の妖怪達に出会って欲しいのよ」

「な、何でですか?」

「あなたがこの幻想郷の住民になれるように、よ」

「…紫さん」

「まぁ」

 

紫さんが両目を瞑り、私の前で指を鳴らした。

 

「え?」

 

紫さんが指を鳴らすと同時に、私の足下にはあの目が沢山ある変な空間が!

 

「あなたに拒否権はないけどね」

「紫さん! そ、そんなぁあ!」

 

あぁああ! 何々!? 今度は何処に!? 何処に連れて行かれるのぉ!?

無茶苦茶だよ紫さん! せ、せめて、私の答えを聞いてからでも良いじゃん!

 

「あだぁ!」

 

あ、頭から…また頭から落ちてしまった…

 

「うぅ…容赦ないなぁ、紅魔館に3日しかいられなかった…」

 

もう少し間隔を開けてくれても良いのに、1週間くらいとか。

と言うか、ここ、何処だろう…見た感じ山みたいな感じだなぁ。

大きな綺麗な川も流れてるし…あぁ、本当に綺麗。

何だか足を入れてみたくなっちゃうよ、でも、状況が分からないのに

変な事をするのはあまり良くないし、でも、分かることはある

ここは山だ、山の何処かだと言う事は分かる。

だって、川も流れてるし、滝もある。

大体滝は山にしかないし、それに上下で上り坂と下り坂。

ここまで来るとここが山だというのは間違いないと思う。

じゃあ、山を下りれば全部解決なのかな。

でも、紫さんは私に沢山の妖怪に出会って欲しいと言ってた。

だったら、降りるんじゃ無くて、登る方が良いのかも知れない。

よし、登っていこう! 今、私服なんだけど大丈夫だよね。

まぁ、スカートじゃ無いし、大丈夫でしょ。

普通に茶色いTシャツとホットパンツ、スニーカーだから歩きやすい。

でも、怪我とかしたくないからゆっくりと登っていかないとね。

すぐ治るとはいえ、怪我すると痛いし。

 

「よ、よーし!」

 

紫さんのお願いを聞いていけば、きっと私の記憶のことを教えてくれる。

それだけじゃ無くて、ただ単純に色々な人と出会いたいのもある。

このよく分からない山を探索してみたいという気持ちもある!

 

「頑張ろう!」

 

私は意を決して山を上り始めた。

山を登るのは難しい気がするけどね。

くだるだけなら川沿いにくだっていけば問題無いけど。

登となると、ちょっと面倒くさい気がする。

空を飛ぶことが出来れば楽なのかも知れないけど

私は空を飛ぶことが出来ない…と言うか、皆どうやって飛んでるのかな?

お嬢様の翼では空は飛べそうに無いし、フランお嬢様の翼も…その…

空を飛ぶような翼じゃ無いし、でも、空飛んでるときはフランお嬢様

あの翼をパタパタさせてるよね…意味あるのかな?

でも、それを言っちゃうとやっぱり色々とあり得ないことがあるし。

やっぱりそう言う事は言わない方が良いというのが正しいというか。

 

「そこ! いつ山に侵入した!」

「え?」

 

私が山を登っていると、真っ白い髪の毛に真っ白い耳に赤い…帽子?

それに真っ白い服で真ん中は白いボンボンが付いてる。

スカートは長く根元は黒、外に向うにつれて紅葉色に変わっている。

そして、背後には白く動く尻尾のような物。

何より特徴的なのは紅葉が書いてある盾と大きな刀!

 

「あ、あの、私は」

「排除する!」

「うわぁ!」

 

私が答える前にその人は大きな刀で私に斬りかかってきた。

私はその刀を回避、回避した時に避け方が無茶苦茶だったからか

バランスを崩すけど、そのままバク転して体勢を立て直した。

でも、間髪入れず次は縦に振り下ろしてきた。

だけど、なぎ払いと比べれば縦は回避が容易、避ける場所が左右とある。

でも、ここで右に回避すると、この人が左手に持っている盾で

攻撃されるのが目に見えてる、だったら、左側に!

 

「っと」

「そっちに避けたか、じゃあ、これでどうだ!」

 

蹴り!? 完全に私の動きが読まれてた感じ!?

このままじゃ、当たっちゃう!

 

「うわぁ!」

「よ、避けた!?」

 

あ、危なかった、体が勝手に反応して回避してくれた。

何も意識してなかったのに…無意識って凄い!

 

「あ、あの、わ、私は」

「……」

 

私が話をしようとすると、その女の人は私に刀を向けた。

だけど、攻撃してくるつもりは無いみたいだ。

そう言えば、さっきの攻撃も殺気がなかった…

殺すつもりじゃ無い、そうかも知れない。

 

「あなたほどの実力がある者は初めて見た

 その耳、尻尾から妖怪である事は想像できる。

 恐らくは狼の妖怪、かといって、白くは無いから

 私達白狼天狗とは無関係、そもそもあなたほどの実力がある白狼天狗なら

 私だって知ってる筈、でも、知らないから白狼天狗では無い…一体、何者?

 何も無いところから突如現われ…そして、あの動き。

 ただの妖怪じゃ無いのは分かっている」

「えっと、わ、私はフィルと言います、最近紅魔館にお世話になり始めた

 半獣です、狼と人間のハーフらしいです、お嬢様…えっと、レミリアお嬢様が

 私には人間の血が流れていると判断してます。

 自分の正確な出生は分かりません、その…記憶が無くて」

「…そうか、だが、それは今は重要な事では無い、重要なのは何故

 この妖怪の山に姿を現し、山を登ろうとしていたか」

「えっと、八雲 紫さんに連れてこられました

 山を登ろうとしてた理由は紫さんの指示で

 沢山の妖怪と交流をする為です」

「八雲…紫!?」

「あ、知ってます? 紫さん」

「……本当に八雲紫が絡んでるの?」

「はい」

「幻想郷の賢者が気に掛けるほどの妖怪? そんな妖怪が…」

「あ、紫さん!」

 

あの白い女の人の背後に紫さんが不意に姿を現した。

 

「え!?」

「犬走 椛(いぬばしり もみじ)ね、その子が言ってる事は本当よ

 この子をここに連れてきたのは私、指示も本当よ」

「そんな…あなたほどの実力者が…何故この子に」

「少しだけ戦って少しは分かったでしょ? 彼女の力」

「でも、あれ位の実力なら、幻想郷には何人も」

「……まぁ、まだ話せる事ではないけど、その内話してあげるわ

 とりあえず、今はあの子を見逃してあげて、何なら

 天狗達の元に案内してくれても構わない。

 それが、あの子にとって最も重要なことでしょうしね」

「……訳が分からない」

「その内話すわ」

 

紅葉さんって言うんだ、あの人、あ、だから盾に紅葉の絵があったのかな?

自分の物って証明するために紅葉の模様だったとか。

ものすごく真面目そうな人だったけど、意外とお茶目なのかも。

 

「…まぁ、あなたが動いているというなら」

「大天狗にも報告しておくわ」

「……フィルだったか」

「あ、はい」

「八雲 紫の差し金と言うなら、見逃してやる。

 だが、変な事はするなよ?」

「はい、わ、分かりました」

「…気を付けてね」

「え?」

 

紅葉さんはそう言うと、飛び立った。

 

「紅葉さん、最後…やっぱり優しい人なんだ!」

「そうね、後フィル、あなたあの子の事紅葉って言ってるわね」

「はい!」

「もしかして、漢字を間違えてたりしてない?」

「え? 紅い葉と書いて紅葉さんですよね?」

「違うわ、これよ」

 

も、椛…え!? これで椛!? あぁあ! 間違えてた!

 

「ま、間違えてました…」

「まぁ、口だけで覚えたらそうなるわよね」

「うぅ…」

「まぁ、口だけで言えば大差ないし大丈夫でしょうけど」

「だと良いですけど…でも、紫さんは何で私が勘違いしてたと?」

「あなた、結構安直だし、でも、藍は漢字を教えなくても覚えてたわよね」

「あ、こっちの蘭かと迷ったんですけど、紫さんは紫色の紫

 橙さんは橙色の橙だったんで、色関連の名前かなと思って

 藍さんって考えてました」

「あなたは頭が良いのか馬鹿なのか分からないわよね」

「よ、容赦ありませんね…」

「まぁ、良いわ、それじゃ、白狼天狗からも許可を得たことだし

 早く山を登りなさい」

「あ、はい!」

「ただ…あの山の神様がどういう反応をするか、ちょっと不安だけどね」

「え?」

「いえ、何でも無いわ、行ってらっしゃい」

「はい!」

 

よーし! 山を登るぞ! どんな妖怪に会えるのかな?

楽しみ…じゃ、無いかも知れないけど、頑張ろう!


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