東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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山の神々

「もう少しで守矢神社です」

 

うへぇ、結構高い場所にあるんだな、守矢神社。

こんなに高い場所だと、参拝客ってあまり来ないんじゃ…

現に道中で参拝客と思われる人と出会ってないし。

でも、うーん、神社なんだし参拝客は来てるはず。

…あぁ、もしかして、あの山の上を通ってる箱かな。

でも、さっきっからあがっていく箱には誰も居ない。

その代わり、降りていく箱には妙に人の姿が見える。

帰ってる? 何であんなに多数の人が同時に?

 

「……何故でしょうか、なぜ索道(ロープウェイ)に乗って帰る人ばかり」

「……分かりません、と言うかあれ、ロープウェイって言うんですか?」

「えぇ、まぁ」

 

ふーん、変な物を作るなぁ、でも、楽かも知れない。

こんな山上の神社、ああいう道が無いと誰も来られない。

でも、椛さんは私を攻撃してきた、山に侵入したからと。

だったら、あのロープウェイが襲撃されてもおかしくないはず。

もしかして、守矢神社って所と椛さん達天狗は手を組んでるのかな?

山に誰かが入る事を嫌がってただけで、守矢神社って所に人が来ることには興味が無い。

でも、守矢神社は人が来て欲しい、だからあんな道具を作った。

で、沢山の人が乗ったりするわけだし、その間に恐怖心を植え付けたりすることが出来れば

人が山に入る事も無い、そうすれば守矢神社って神社から人が出ることも無いだろうから

誰も山には入らない…予想でしかないけど、手を組む理由があるならこんな感じかな。

 

「わざわざあんな物まで作って、天狗達は山に人を入れたくないんですね」

「…何故そう思うのです?」

「多人数に対し、何かしらの恐怖を与えれば人は誰も入ってきません

 あのロープウェイには人が沢山乗ってますし、やりやすいでしょうから」

「…本当、よく分からないですね、あなたは」

「え?」

「まぁ、良いでしょう、ここが守矢神社です」

 

私が守矢神社に入ると、目の前には3人の女の人が居た。

1人は頭に目が付いてる変わった帽子をしている、短い金色の髪の毛

服は紫色っぽい上着とスカート、でも、袖は白色だ。

そして、長く白い靴下に黒い靴…で、両手には鉄の輪っかを持っている。

もう1人は紫色のふっさりした髪の毛。

服は赤色でスカートは長く全体的に濃い赤で下へ行くと薄い赤になっている。

紅葉っぽい髪飾りもしている。

後、鏡が胸元にあり、大きな縄を背負っていて、背中から大きな柱が出ている。

もう1人は緑色の長い髪の毛で上は白で各終端は青色になっている。

霊夢さんの服装と同じく腋がでている。

スカートは青色で端は白色。

髪飾りが多い人だ、蛙の髪飾りに片方だけ妙に長い髪の毛には蛇の髪飾りが絡まってる。

手には小さな棒の先端に白い紙が付いている変わった道具を持っている。

そして、3人とも共通なのは全員険しい表情をしているという事だ。

 

「おや、随分と表情が怖いですね」

「…天狗? そして、耳と尻尾の生えた娘?」

「…いや、そんな筈」

「えっと、お2人は何を感じたんです?」

「い、いや、妙に威圧される感覚を…」

「ですが、そんな人は何処にも…」

 

ど、どうしたんだろう、さっきまで険しい表情だったのに

私達の姿を見て、呆気にとられている表情に変わった。

 

「威圧される? 神々の皆様が威圧されるような人が幻想郷に居るんですか?」

「…同じ神なら可能性はあるけど…ただの妖怪相手にそれはあり得ないし」

「一体、何がどうなってるの? 私でも分からない」

「所で、その子は?」

「あ、私は」

 

私が自己紹介をしようと1歩足を踏み出すと、2人の神様が後ろに少し退いた。

 

「え?」

「……嘘」

「ちょっと…ど、どうなってるの…」

「えっと、あの、何で後ろに逃げたんですか?」

「い、いえ、何でも無いわ」

「じゃあ、あの、私はフィルと言います、最近幻想郷に来て

 今は紅魔館でお世話になっています、ここに来た理由は

 紫さんにもっと色んな妖怪達に出会ってこいと言われたかからです」

「そ、そう…っと、じゃあ、こっちも自己紹介と行こうか、私は洩矢 諏訪子(もりや すわこ)

 一応、この守矢神社の神様だけど、主には隣の紫神が仕事をしてるし

 守矢神社の正式な神はこっちだ」

「誰が紫神だ、私は八坂 神奈子(やさか かなこ)、この守矢神社の神よ」

「じゃあ、私も、私は東風谷 早苗(こちや さなえ)、現人神です」

「自己紹介ありがとうございます!」

「え、えぇ」

 

でも、何だか嫌がってる雰囲気…うぅ、私はやっぱりお呼びじゃないのかな。

だけど、何だか嫌がってると言うよりも、怖がってる?

いや、いやいやいや、そんな訳ないよね、相手は神様だよ?

神様が私みたいな妖怪を怖がるわけ無いし。

 

「……神々が何処か恐怖している? このフィルさんに対して?

 特に強い妖力も感じない、半獣に対して?

 そう言えば、ここに来る道中でも、私達は神々に出会っていなかった。

 秋の神々はこの時期には居ないとしても、厄神には会ってもおかしくない。

 でも、山を歩き回っても遭遇していない…特に考えてなかったけど、違和感は多いわ」

「えっと…あの…私、何かしましたっけ?」

 

私はただ山を登ってきただけ、だから、暴れてはいない。

そもそも、暴れるなんて私には出来ないし、暴れてもすぐに鎮圧されるし。

 

「…いや、何でも無い、でも、今日はちょっと帰ってくれないかな

 いや、本当君のことが嫌とかって言うわけじゃ無くて、ちょっと体調が悪くて」

「そ、そうなんですか? すみません、じゃあ、帰ります」

「あ、あぁ、また来て…その時は多分歓迎するから」

「ありがとうございます」

 

うーん、調子が悪いタイミングで来ちゃったんだ、だったら帰らないと。

 

「それじゃあ、帰りますね」

「あぁ…」

「……それでは、一気に紅魔館まで運んであげましょう」

「え?」

「行きますよ、幻想郷最速の飛行、酔わないでくださいね」

「え? あ、あぁああ!」

 

ぎゃぁああ! 飛んだ! 飛んだぁ!

私を抱えたまま飛べるんだ! 凄い速い! 超速い!

何がどうなってるのか分からなくなるくらいに速い!

あの烏の翼みたいな物で空を飛ぶんだ、凄いなぁ。

凄い速いけど、何だか気持ちいいな、空を飛ぶのって。

飛んでないけど、でも、何だか景色が吹っ飛んでる感じで楽しい!

でも、自分でこんな速度で飛べるわけ無いんだけどね。

 

「この速度にすぐ慣れるとは、大した物ですね」

「慣れてはいませんけどね」

 

そのまま文さんは私を紅魔館の屋上へ置いてくれた。

 

「またチラチラと取材に来ます、その時はもっとお話しを聞かせてください」

「あ、分かりました…でも、私はそんなにお話しできる内容はありませんよ?」

「大丈夫ですよ、何でも良いんでお話ししてくれれば、それではまた」

「あ、はい、うわ!」

 

私が挨拶をすると、文さんはとんでもない風圧を残して私の前から姿を消した。

本当に一瞬の間で私の目の前から消える、凄く速いな。

私もその内、空を飛べるようになりたいけど、きっと無理だよね。

とにかくお嬢様に帰ったことを報告しないと。

 

「まぁ、まだお出かけして貰うけどね」

「え? 紫さ、あ、あぁあ!」

 

え、えぇ! 帰ってきてから一切のお休み無しで次は何処へ飛ばされるの!?

ひぃ! 紫さん、本当に勘弁してくださいよぉお!!


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