東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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地霊殿の主

地霊殿の外から見たときも、かなりの洋式だったけど

内装もかなりの洋式でかなりの広さがある。

床は赤や黒色のタイルで、ステンドグラスの神秘的な模様が地面に映る。

でも、若干違和感を感じた。

ここは地底、光りが届かないほどの最下層だというのに日の光が届いている。

どうして? 等と考えてみたが、あの街も結構明るかった。

もしかして、日の光が何処からかさしているのかもしれない。

 

「いやぁ、ここは結構温いね」

「温かい時期ですから温いのは当然ですよ」

「まぁ、そうなんだろうけどね」

 

私達2人はゆっくりと地霊殿の中を歩いて行く。

多分、この場所の主に話があるのだろうけど、その人は何処だろう。

 

「……」

「ん?」

 

私達が歩いていると、周りから沢山の動物が集まってきた。

可愛いなぁ、何だか凄く癒やされるよ。

猫も居るし、犬も居る、他にも鳥も居るし

凄く沢山の動物が周りには居た。

 

「ん? 鳥かな? へ!?」

 

少し妙な動きをする動物の方を見てみると。

それは動物ではなく、人魂…ひ、人魂!

 

「お、お、おぉ、お化け!」

「ん? あぁ、ありゃ怨霊だね」

「お、お化けです!」

「ちょっと、私の後ろに隠れなさんな」

「い、いや、あれ、お、お化け…あの、勇義さんは怖くないんですか!?」

「いや、全然、そもそも怨霊如きにビビってちゃここには住めないよ」

「え!? でも、お化けですよ!? お化け!」

「あんなのわんさか居るからね、そもそもさ、あんたは怨霊なんぞよりも

 怖い妖怪と過ごしてるくせに、あ、当然私も妖怪だよ? 鬼だしね」

「で、でも、勇義さんと萃香さんは可愛らしい女の子ですし」

「はは、ま、喜んでおこうかね、まぁ、この幻想郷

 見た目はそんなんでもヤバい連中は5万と居るさ」

 

そう言って、勇義さんは自分の方に近付いてきた怨霊を人睨みでちりぢりに逃がした。

 

「ま、どうせ地獄で焼かれるだろうがね」

「す、凄いです…お化けを少し睨んだだけで…」

「言っただろ? 怨霊如きって」

「は、はぁ」

 

お化けも平気なんて凄いなぁ、やっぱり力が強い人は動揺もしないのかな、うらやましいや。

いや、もしかしたら逆に精神的に強いから肉体も強くなってたりしてね。

もしそうなら、そりゃあ、強い人は精神も強いわけだよ。

 

「なにやら騒がしいと思ってきてみれば、随分と遅い到着ですね

 そして、まさか鬼まで一緒に来ているとは、予想外ですよ」

「ま、この子の面倒ついでにね、で、さとり、その口調から察するに」

「えぇ、声だけの登場でしたが、確かに来ましたよ、八雲紫が」

「全部言う前に答えられるとはね」

 

私達の目の前に現われた少女は薄紫色のボブヘアで黒いカチューシャを付け

端っこに黄色いハートが付いている。

服装は水色の少しゆったりとした服で、真ん中には黄色いハートのボタンがいくつか付いている。

袖の先端はピンク色になっている、下に着てるのかな?

スカートは膝くらいの大きさでピンク色。

胸元には赤い目が付いていて、その目からは何本か線が伸びている。

1つはカチューシャの端っこにある黄色いハートへ行っていて

他には両腕へ伸び、袖当たりでハートの模様へ繋がっている。

もう1本は下部へ行っており、腰当たりでハートの模様に変化している。

かなりハートが多い回らしい服装だった。

 

「私は心を読めるのですから、言葉など不要ですよ、しかしフィルさん

 あなたは人を見るなり、人の服装をいちいち細かく確認する癖でもあるのですか?」

「え!? あ、は、はい、そ、そうみたいです…ん?」

「あぁ、心を読んだだけですので」

「え!?」

「当然、あなたの考えている事や濃い記憶は既に読んでいます

 あなたは紅魔館でお世話になっている、自分の記憶は無くて、八雲紫の指示で幻想郷を移動させられている

 今回地底に来たのも八雲紫に連れられ、気にしてくれているのは嬉しいけど

 一日くらいベットで眠っていたいと」

「あ、えっと」

 

え? 何で全部見てきたかのように? あ、これが心を読む能力。

凄いなぁ、相手が考えてることも考えてないこともある程度読めるんだ。

だったら、お悩み相談も簡単に出来るね。

それにしても、この人は一体どういう名前なんだろう、勇義さんはさとりって言ってたけど。

 

「あ、そうでしたね、自己紹介と行きましょう、私は古明地 さとり(こめいじ)

 この地霊殿の主です、それと、そうですね、確かに私なら相手の悩みを知ることも出来ますし

 相手が考えてることも心の奥にある記憶も多少は読めますよ

 ただ、これを悩み相談に使おうとは思いませんね」

「え?」

 

じゃあ、もしかしたらこの人なら、私の失ってる記憶も。

 

「ふむ、あなたの失ってる記憶を私なら読めるかもしれないと。

 確かに出来るかもしれませんね、ですが、する必要は無いかと」

「でも、私は」

「…そこまで自分の失った記憶に執着する理由、なる程、両親ですか」

「は、はい」

「両親の顔を思い出したい、それだけの為にここまでしていると?

 そして、昔の自分の記憶にはさほど興味が無いと」

「はい」

「…さとり」

「そうですね、少しくらいなら見てみましょう、あなたの心に邪悪は一切ありませんしね」

「ありがとうございます!」

 

さとりさんはそう言うと、目を瞑り胸にある赤い瞳でこちらを見た。

 

「…くぅ!」

「え!?」

 

だけど、さとりさんはすぐに何かに弾かれたように後ろへ仰け反った。

そして、すぐに青ざめた表情で冷や汗を流した。

な、何が…私の心に何が見えたの!?

 

「あの…私の心に何が…」

「……わ、分かりません、ただ、一気にいくつもの感情が見えた」

「え!?」

「…お、恐らく記憶が失われているからでしょうね、奥底へいくつも感情があるんでしょう」

「あ、あの…私の記憶は」

「……分かりませんでした、少し情報量が多すぎて処理しきれなかったので」

「そ、そうなんですか…」

「さとり、本当は何か知ってるんじゃ無いのかい?」

「確かに処理できなかっただけで、ここまで冷や汗をかくのはおかしいかもしれませんが

 なにぶん、今まで記憶喪失者の記憶を読んだことがないので、ちょっと」

「ふーん」

「……しかし、心の中のあなたは……でも」

「えっと、やっぱり何か」

「いえ、ちょっと考え事をしただけです、心配しなくても大丈夫ですよ

 私はあなたの記憶を読んだことでダメージを受けていたりはしていません」

「よ、よかったです」

 

結局、私の記憶はさとりさんでも分からなかったんだ。

じゃあ、やっぱり紫さんに言われたとおりに幻想郷の沢山の妖怪達と知り合おう。

 

「嫌がっていても、内心は楽しみみたいですね、色々な人と出会えることが」

「ほえ!?」

「あ、そうだ、勇義さん、彼女は口で言うほどお酒を嫌ってないみたいなので

 その内、飲み会でも開いて上げてください」

「お、やっぱりそうなのか」

「え!?」

「はは! いやぁ、素直になりなよ、フィル!」

「え!? えぇ!?」

「ふふ、勇義さんの心は次はどんなお酒を飲まそうかで一杯ですよ、頑張ってくださいね」

「ちょっと! そ、そんな!」

「あ、それでは地霊殿の妖怪達を紹介します、付いてきてください」

「は、はい…」

「勇義さん、安心して私に任せてください、大丈夫ですよ」

「ん、分かったよ、じゃ、フィル、地霊殿の見学が終わったら

 昨日飲んだ店に来な、そこで待ってるからさ」

「あ、は、はい」

「…それではこちらです」

「じゃ、またね」

「は、はい」

 

勇義さんはそう言うと、地霊殿から出て行った。

少し不安だけど……後、お化けとか出て来たらどうしよう。

 

「安心してください、怨霊には出ないように言っておきますから」

「え!? そんな事が」

「はい、私は怨霊の管理もしていますからね」

 

凄い人だな。

 

「後、私は背は低いですが、あなたよりは長く生きているのであしからず」

「は! す、すみませんでした!」

「ふふ、この幻想郷、見た目に惑わされてはいけませんよ」

「は、はい…」

「えぇ、確かにあなたのお嬢様も見た目は幼いですからね」

「あ、あはは、本当に言葉いらずですね」

「便利でしょう?」

「はい!」

「…心の底から思っているのだから、本当凄いですね」

「え?」

「いえ、何でもありません、それでは、こちらです」

 

ん、んー? まぁ、良いか、どんな人が居るんだろうか、楽しみだなぁ。


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