東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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地獄の火車

周りの物は全て大きく、自分が小さいと感じるくらいだ。

ステンドガラスからさす光りも眩しく美しい。

うん、こう言う景色はなんというか、風情があって良い。

やっぱり綺麗な景色って言うのは本当に好きだ。

 

「良い景色でしょう? 私もこの景色は好きなんですよ」

「凄く良い景色ですしね!」

「えぇ、この色合いが私は好きなんですよ」

 

ステンドガラスって言うのは本当に綺麗だと思った。

 

「あれ?」

 

私達が話していると、私達の目の前に真っ黒い猫が姿を見せた。

尻尾は2本…ただの猫とかじゃ無いのかな?

 

「お燐、丁度良いところに来たわね」

「え? あ、お名前はお燐ちゃんって言うんですね、可愛いですね

 でも、尻尾が2本ありますけど、やっぱりこの子も妖怪なんですか?」

「えぇ、妖怪ですよ、ただ、この子と言うのは少々」

「え? どういうことですか?」

「こういうことだよ」

 

さっきの黒い猫が居た方向から声が聞こえた。

私はその声に反応し、その方向を向いてみる。

そこに居たのはあの黒い猫では無かった。

 

「やっほ」

「え!? どちら様ですか!?」

 

そこに立っていたのは赤い髪を両サイドで三つ編みにし、根元と先を黒いリボンで結んでいる。

髪型はおさげだ、頭には黒いネコ耳が生えているのに

人間と同じ様に耳が生えている、つまり耳が4つ付いている、私と同じだ。

服装は黒の下地に何やら緑の模様の入ったゴシックロリータファッションみたいな物を着ている。

手首、首元には赤いリボンが、左足には黒地に白の模様が入ったリボンが巻かれている

全体的に暗い色合いの服装だけど、性格は全然明るいように思える。

 

「連れないねぇ、さっきまであたいの事を可愛いって言ってたのにさ」

「え!? いや、でも、それを言ったのは黒い猫ちゃんで」

「その猫があたいだよ」

「この子は火焔猫 燐(かえんびょう りん)、私達はお燐と呼んでいます

 どうも、この長い名前が嫌いらしくて」

「どうも、お燐って呼んでね、おねぇさん」

「え? お姉さんって、私よりもあなたの方が背が高いですし

 あ、そうだ、自己紹介、えっと、私の名前はフィルです」

「よろしくね、それにしても…おねぇさん、あたいと同じ感じだね

 耳が4つあるじゃ無いか」

「あ、それは多分、私が半獣だからだと思います、半分は人間で半分は狼らしいので」

「ふーむ、なる程ね、だから耳が4つあるのかい、じゃあ、殆ど人間だね」

「そうね、見た目と彼女の自己紹介を聞けば、ただ、勇義さんと腕相撲で

 勝負になる程に怪力だから気を付けなさい」

「げ! あの勇義さんと!? その細い腕の何処からそんな怪力が…」

「あ、いえ、勇義さんが本気を出してなかっただけです」

「勇義さんはあなたの腕相撲で5割ほど力を出していたそうですよ

 因みに普通の人間相手なら1割も出さずに倒せるみたいですね

 他の妖怪相手なら1割程だそうですから、相当な怪力でしょう」

「勇義さん、そんな事を考えてたですね」

「恐らくですがフィルさんと腕相撲をして、ちょっとフィルさんの力を考えていたのでしょうね」

 

あ、あの時、勇義さんの心を読んで知った情報なんだ。

 

「はい、その通りです」

「そんな事を考えてたんですね、あの時」

「…いやぁ、さとり様相手に普通に会話が出来る何て大した物だね」

「え?」

「そうですね、正直、ここまで邪心が無いと逆に怖いくらいです

 お燐くらいあっても良いのに…で、お燐、隠れてご飯食べたそうですね」

「げ! 読まれました!?」

「当然です、私に隠し事は出来ませんよ、ただ、今日は機嫌が良いので

 フィルさんに免じて見逃して上げましょう」

「本当ですか!? やったぁ! おねぇさん、ありがとうね!」

「え? 私、何かしました?」

「ただ、今度やったら怒りますよ、計画もダダ漏れです」

「ぐぅ…はい、反省します」

「よろしい、それでは先へ進みましょう」

「あ、は、はい」

 

うーん? うん? たまに会話に追いつけないけど。

まぁ良いか、さとりさんはちゃんと会話を通訳してくれるし。

 

「ふんふふーん」

「…お燐、何故付いてくるのです? いつもみたいに死体集めは?」

「いえ、今回はお客人も来ていることですし、後、耳に妙な親近感が湧きまして」

「そうですね、あなたと同じく耳が4つある種族は珍しいですしね」

「そうなんですか?」

「はい、幻想郷でも恐らくあなたとお燐くらいだと思います」

「そうそう、だから、あたいとおねぇさんは唯一の仲間って事だね

 そりゃあ、親近感も湧くよ」

「そ、そうですか?」

 

私は自分の耳を少しだけ触った、最初は人間の耳。

次は頭の狼としての耳…何でかな、少し嬉しいや。

何だか頭の耳を褒められたり、共感されたりすると、少し嬉しい。

 

「…えい」

「ひゃはわぁああ!」

「お、凄い反応だね、もしかして耳弱かったりするの?」

「あ、頭の耳は…駄目です!」

「良いじゃ無いか」

「駄目です!」

「あぐふぅ!」

「あ、ご、ごめんなさい!」

 

つ、つい手が動いちゃった! 肘がお燐さんのお腹に入った!

 

「う、うぐぅ、そ、そこまで嫌がらなくても」

「す、すみません! わざとじゃ! わざとじゃ無いんです!」

「そ、その様ですね、完全に無意識に肘が動いたようです

 あれはお燐が悪いですね、止めてくれと言われて止めなかったのが悪いです」

「うぅ…まさか耳がそこまで弱いとは…わ、悪い事しちゃったね、おねぇさん…」

「ごめんなさい! すみません! い、今すぐ何か!」

「い、いや、良いよ、これはあたいが悪いから…うぅ」

 

お隣さんはお腹を押さえながらゆっくりと立ち上がった。

う、うぅ、どうしよう、いきなり酷い事しちゃったよ。

折角唯一の仲間って言ってくれたのに…う、うぅう…

 

「落ち着いてください、フィルさん、お燐も怒っては居ませんから」

「ほ、本当ですか!?」

「えぇ、完全に自分が悪いと自覚してます」

「いえ、あれは私が…」

「い、いや、おねぇさんの制止を無視して触ってたあたいが悪いよ、ごめんね」

「うぅ…どうしても耳とか尻尾を触られると体が勝手に」

「どうやら、体が触られることを拒んでいるようですね、何故でしょう」

「分かりません」

「さとり様の能力で何故かは分からないんですか?」

「彼女は記憶を失っています、それに、心の奥底を読もうとすると

 どうしても多大な情報量が流れ込み、私では処理できないようなんですよ

 ですから、何故そこまで嫌がっているかは分かりませんが

 恐らく本能的な物でしょう、耳や尻尾は動物が生きて行くには大事な場所ですからね」

「そうなんですかね?」

「はい、あ、そろそろ次の子の場所ですよ」

「あ、はい」

 

う、うぅ…何て酷い事を…うぅ、悪い事をしちゃったって気持ちのせいかな

何だか凄く汗をかいてきた…冷や汗かな?

 

「いえ、暑くなってきたからでしょう」

「え? え? あ、あ、本当だ! 何だか暑いですね」

「そ、その割には結構ケロッとしてるよね…おねぇさん」

「はい…うぅ、正直私はちょっとこれ以上はキツいですね、お燐、代わりに案内を」

「あ、はい、あたいならまだいけますし、えっと、おねぇさんは大丈夫?」

「はい、結構暑いですけど、大丈夫です」

「それはよかった、じゃ、行こうか」

 

うーん、結構暑くなってきたなぁ、夏みたいな感じだよ。

あまり長居はしたくないかな、汗をかいて服がべちゃべちゃになっちゃいそうだし。


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