東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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新しすぎる朝

楽しいパーティーが終わって、お風呂に入った後に私は眠ることにした。

そして、次の日の朝、私は結構眩しい太陽に囲まれた。

あぁ、もう朝か早く起きないと行けないんだけど

このとってもふわふわのベットが私を離してくれない・・・・もう少しグッスリしたいな。

そうだ、二度寝をしちゃっても良いよね、まだ眠たいし。

 

「うーむぅ」

 

私はもう一度お布団をかけ直して、再び眠る体勢に入った。

あぁ、心地よい暖かさが私を包んでくれてる、気持ちいい。

 

「美鈴! そこを退くんだぜ!」

「駄目ですよ、起きてるときくらいは仕事をしないといけませんし」

 

外の方から美鈴さんが誰かと話しているような声が聞えてきた。

ちょっと気になるけど、お布団から出たくないなぁ。

 

「そうかよ、仕方ないな、じゃあ押し通るまでだぜ! 恋符「マスタースパーク」」

「ちょ! そんなのをここで撃ったら!」

 

外の方から大きな音が聞えてきて、少し気になった私はチラリと窓の方を見てみた。

すると、目の前には虹色に光り輝く光が見える、凄く綺麗だなぁ

でも、このお部屋の外にこんな風に光る物なんてあったっけ?

それに、何だか近づいてきている気がする・・・・い、嫌な予感が。

 

「わぁぁ!」

 

嫌な予感がして場所を移動すると同時に、窓から極太のレーザーが入ってきた。

そして、その一撃はそのまま館の壁を破壊して、完全に貫通した状態になった。

も、もし、あの場所に私が居たらと思うと・・・・うぅ、恐ろしい。

ありがとう、私の中の第六感、お陰で助かったよ。

 

「ま、魔理沙さん! 何て事を! 紅魔館に穴が開いたじゃないですか!」

「いやぁ、悪い悪い、久々のマスパだったからな、手加減をミスっちまったぜ!」

「そんな事を言ってる場合じゃ・・・・って、あそこって確かフィルちゃんの部屋じゃ!?」

「フィル? 誰だそりゃあ、そんな奴いたか?」

「お嬢様のペットですよ! あぁ、どうしよう、無事でいて!」

「へへ、なにやら面白そうだな、私もいくぜ!」

 

うぅ・・・・凄い威力だった、あぁ、私の部屋がボロボロだ

それに、お嬢様の館に穴が開いちゃったよ、あと、私のベットも吹き飛んじゃった。

眠ってなくって本当に良かった、眠ってたら吹き飛んでたよ・・・・うぅ、怖いなぁ。

 

「フィルちゃん! 大丈夫!?」

「あ、美鈴さん、私は大丈夫ですけど、紅魔館に大きな穴が開いちゃって」

「怪我はしてない?」

「大丈夫です、ご心配を掛けてしまって」

「はぁ、なら良かった」

「お? こいつがフィルか」

 

美鈴さんが私の心配をしてくれてすぐくらいに箒を持った金髪の三つ編みで

黒色の帽子に白いリボンを付けた黄色の瞳で魔女服っぽい服を着ている人が私の顔をジッと見ている。

誰だろう、この人・・・・私、こんな人を見たことがない。

あ、でも、この人の服どことなくコックさんみたいな気がする。

スカートの白いところとか、エプロンみたいだし。

 

「えっと、美鈴さん、この人は紅魔館のコックさんですか?」

「はぁ!?」

「いや、違うわよ、この人の名前は魔理沙さん、面倒なお客さんよ」

「一言余計だぜ、私は本を借りに来ただけだぜ?」

「本ですか? 紅魔館は本の貸し出しをしてるんですね」

「そうだぜ! パチュリーの奴が本の貸し出しをしてくれてるんだ、それも貸出期間は死ぬまでだぜ!」

「へぇ、パチュリー様ってそんな事をしていたんですね、でも、死ぬまでって変わってますね

 それじゃあ、まるで死ぬまで持ってて、あなたが死ぬ時に会いに行くからって感じですね」

 

だって、死ぬまで貸し出すって事は、死ぬ直前に会いに行かないと返して貰えないからね。

だから、そんな時が来たら会いに行って、返して貰うって感じだよね

まるで恥ずかしいから死ぬ直前に会いに行く口実を作る為って感じ。

 

「・・・・そ、その発想はなかったぜ」

「その発想でいくと、魔理沙さんがパチュリー様に死に目を見て貰いって感じですね」

「違うぜ! 妖怪にとって、人間の一生なんてちんけな物だからそういう風に言ってるんだ

 だが、そうか、そう言う発想もあるのか・・・・今度、霊夢に何か渡したときに言ってみるぜ!

 あいつのことだ、なんか面白い事を言いそうだしな!」

「・・・・あれ? パチュリー様が死ぬまでって貸出期間を設けてるんじゃないんですか?」

「一応言っておくけど、パチュリー様は本の貸し出しはやってないのよ

 でも、魔理沙さんが盗んでるって感じ、さっきの口実を使って」

「そうなんですか!? じゃあ、魔理沙さんはパチュリー様のことが!」

「そんなんじゃないぜ? さっき説明しただろう? 話を聞いてなかったのか?」

「えっと、ごめんなさい、色々と想像してたので、聞いてませんでした」

 

うぅ、失敗しちゃったなぁ、ちゃんと相手の話を聞かないと駄目だよ私。

 

「しっかし、レミリアの奴も随分と変わった奴をペットにしたな

 あいつ、そう言う趣味があったのか? こいつはどう見ても妖怪だぜ?」

「そうですね、でも、フィルちゃんは半獣で、半分は犬の妖怪、まぁ、妖獣ですね

 で、もう半分は人間だそうです、記憶が無い様なので、この2つはお嬢様の見立てですが」

「ふーん・・・・犬・・・・なのか? でも、どうして犬なんだ?」

「耳と尻尾ですよ、犬っぽいでしょう?」

「私から見たら、どっちかと言えば狼っぽいぜ? 違いはイマイチ分からないんだが」

「お、狼なんですか? この耳が?」

 

私は自分の耳を少し触ってみた・・・・が、分かるわけも無かった。

私、狼の耳に触った事なんて無いよ、勿論犬の耳にも触ったことがない

だから、自分の耳が狼の耳なのか、犬の耳なのか分からない。

 

「まぁ、どっちでも良いことだな、犬も狼も大差ないだろう

 白狼天狗やら狼女やら山彦やらも種族は違っても似たような感じだしな」

「どれが犬でどれが狼なんですか?」

「白狼天狗と狼女が狼で、山彦は犬だな、まぁ、似たようなもんだったぜ

 だが、犬の方は耳が垂れてた、でも、こいつは耳が立ってるから狼だろう」

「そんな安直な、どう言ってもお嬢様にとってフィルちゃんは犬ですよ

 種族とかどうでも良いんですよ、お嬢様が犬と言えばフィルちゃんは犬です」

 

私はレミリアお嬢様のペットだし、ご主人様がそう言えばそうなるんだなぁ。

でも、私としてはそれでも構わないかな、自分の種族は大事な事じゃないし。

 

「そうですね、レミリアお嬢様が私を犬と扱ってくれるなら私は犬です」

「こりゃあ、随分とまぁ優秀な忠犬だぜ、この様子だったら、やっぱり犬だな」

「はい、私は犬ですよ」

 

魔理沙さんは私の返答を受け、少しだけ呆れた表情を見せた。

 

「でもまぁ、そう言う純粋な奴は嫌いじゃないぜ、だが、少し不安にはなるな」

「どうしてですか?」

「純真すぎたり、従順すぎる奴は騙されやすいからな」

「そ、そうなんですか?」

「あぁ、ま、大丈夫だろう、咲夜も居るしな、それじゃあ、私は用事を思いついたから帰るぜ!」

 

そして、手に持っていた箒にまたがり、私の方を向いて手を振ってくれた。

少し嬉しい、初対面の人に手を振って貰えるのは。

 

「あ、えっと、一応名前を教えてください!」

「お、分かったぜ、私の名前は霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)普通の魔法使いだぜ!」

「ありがとうございます、魔理沙さん・・・・それともう一つ良いですか?」

「なんだ?」

「魔法使いに普通とか異常とかあるんですか?」

「・・・・・・」

 

私が魔理沙さんの自己紹介を聞いて、瞬間的に疑問に思った質問を投げかけると

魔理沙さんは少しだけ固まって、ちょっとだけ汗を流し始めた。

 

「えっとだな、その、魔法を使える人間が普通で、妖怪は異常?

 いや、そもそも人間で魔法を使える奴って少ないな・・・・えっと」

「あの、魔理沙さん?」

「と、とにかく! 何でも良いから普通なんだよ! 自分が普通って思ってたらそれが普通なんだぜ!」

「あ、はい、分かりました」

 

どうやら、魔理沙さんにも何が普通で何が異常なのかは分からないみたいだった。

 

「それじゃあ、さっさと帰るぜ!」

 

そう言って、魔理沙さんが再び箒を握ったとき、空気が変わった。

 

「ふーん、何処に帰ろうって言うのかしら?」

 

さっきまで居なかったはずの咲夜さんが魔理沙さんの前に姿を現した。

 

「げ! 咲夜!」

 

咲夜さんから放たれる明らかな殺意が私にも分かった。

 

「紅魔館に風穴を開けて、無傷で帰れると思ってるのかしら?

 それに、パチュリー様からも駆除の命令もある、ここで殺して上げても良いのよ?」

 

そう言って、咲夜さんの目の色が赤くなり、咲夜さんの手元にナイフが出て来た

私はジッと咲夜さんを見ていたけど、ナイフを取り出す動作は一切なかった。

 

「あっちゃぁ、あれは咲夜さん本気で怒ってますね」

「ちょ、ちょっと待てよ咲夜、それは流石に不味いって」

「さて、フィル、良い活躍をしてくれたわね、あなたの足止めのお陰で私が間に合ったわ」

「な! フィル! お前その為に私に難しい質問を!?」

「え!? いや、私はただ単に色々と聞きたかったから質問をしただけです!」

「何はともあれ、あなたのお陰で私はこいつを捕まえることが出来たわ、感謝するわね」

「あ、は、はい」

 

どうしよう、ものすごく雰囲気が怖いから、ついつい返事しちゃった。

で、でも、このままだと魔理沙さんが殺されちゃいそうだし。

 

「あ、あの、咲夜さん、ま、魔理沙さんを殺すのは止めてください」

「お前」

「優しいわね、でも、この馬鹿のせいであなたの部屋はボロボロなのよ?」

「確かにそれは辛いですけど、頑張れば直せるじゃないですか、でも、命は戻せないし」

「・・・・そう、じゃあ、魔理沙、今回はフィルに免じて見逃して上げるわ」

「ほ、本当か!?」

「正し、紅魔館を修理しなさい、あなたの知り合いなり全員使って

 もしもそれをしなかったら、寝首をかきに行きますわ」

「笑顔で怖いことを言うなよ! 分かったって、私がやったことだしな、とりあえず声を掛けてくるぜ」

「戻ってこなかったら」

「分かってるよ! だからその怖い顔止めろ!」

 

そう言って、魔理沙さんは逃げるように紅魔館から飛び出していった。

大丈夫かなぁ・・・・それにしても、やっぱり魔法使いって凄いんだなぁ

箒で空が飛べるんだ、羽とかないのに凄いや。

 

「・・・・はぁ、とりあえずお嬢様に一報を入れておきましょうか」

「そ、そうですね」

「あの、お嬢様は起きてないんでしょうか?」

「起きてるわよ、全く私を寝ぼすけとでも思ってるの? 咲夜」

「お、お嬢様、今日は随分と早起きで」

「そりゃあ起きるわよ、あんな馬鹿でかい音と揺れがあったらね

 まぁ、とりあえず修理するなら文句はないわ、殺さないで結構よ」

「やはりお嬢様は寛大ですね」

 

自分の館にこんなに酷い事をされて怒らないって、流石はレミリアお嬢様だなぁ、本当に寛大だよ。


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