東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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愛玩動物の仕事

「……しかし、今日はまた、かなりのお客が来たわね」

「あらあら、普段はお客様なんて来ないのかしらねー?」

「そうよ、あなたみたいな規格外が来ることは無いわ…

 何の用? ここはあなたみたいな奴が来る場所じゃ無いと思うのだけど?」

「……そう、ま、今はね、でも、いずれお世話になるつもりよ、

 その時はよろしくね、八雲 紫」

「そ、そう、来る者は拒まないけど…何の為にここに?」

「流石は幻想郷、良いわね、あ、来た理由はただの戦力集め、でもまぁ、今は良いわ

 あ、それと1つ、あなたは幻想郷を守ることに専念した方が良い」

「どう言う…」

「すぐに分かるわ-、それじゃあね」

 

紅魔館に入ると誰かが話をしているような声が聞こえた。

でも、その人の姿を見ることは出来なかった。

 

「あ、紫さん、紅魔館に来てたんですね、私より先に館内に入ってるって」

「まぁ、ちょっとね」

「あの、誰とお話ししてたんですか?」

「さぁ、本来会うはずもない相手よ…何でここに…意味が分からないわ」

 

良くは分からないけど、紫さんが分からないって事は相当なんだろう。

 

「まぁ、もう過ぎた事よ、今はさっさとご主人様にご挨拶でもしなさい」

「あ、はい」

 

そうだよね、急いでレミリアお嬢様にお話しをしにいこう。

久し振りだなぁ、そんなに経ってない気もするけど

何だか今までの経験が濃厚で時間が長く経ってるように感じる。

 

「レミリアお嬢様! フィル、ただいま戻りました!」

「あぁ、おかえりなさい、大分時間がかかったようね」

「はい! 凄く楽しかったです!」

「表情からそれは読み解けるけどね、後もう一つ

 フランには顔を見せたのかしら?」

「あ、いえ、まだです」

「じゃあ、すぐに会いに行ってあげて、フラン、あなたの事を待ってたから」

「…えっと、じゃあ、お嬢様も一緒にフランお嬢様と」

「何で私が行かないといけないの?」

「えっと、フランお嬢様が少し寂しそうにしていたのを思い出しまして」

「だったら、あなたがあの子のさみしさを紛らわせてきたらどう?

 それが愛玩動物の役目よ」

「……はい」

 

う、うぅ、お嬢様、何でフランお嬢様とあまり会いたそうにしないんだろう…

何でお嬢様、少し寂しそうなのかな?

フランお嬢様と一緒にご飯を食べてた時、凄く楽しそうだったのに。

どうしてだろう、プリンを食べたからまだ気にしてるのかな?

と、とにかくフランお嬢様の所へ行こう。

 

「よし」

 

私はフランお嬢様の部屋の前に立ち、扉を叩いた。

 

「咲夜? それとも…お姉様!?」

「あ、えっと、すみません…フィルです」

「フィル!? 帰ってきたんだ! やった!」

 

扉を開けると、フランお嬢様が私に抱きついてきた。

す、凄く嬉しそう、何だか私も嬉しい。

 

「ねぇ、フィル、何して遊ぶ?」

「あ、じゃあ」

「そうだ! 弾幕ごっこをしようよ!」

「え?」

「スペルカード、もう出来たんでしょ? 私にも見せてよ!」

「あ、はい」

「やった! じゃぁ、本気で行くよ!」

「ほ、本気なんですか!?」

「勿論、だって、私が本気を出せるのはあなたか霊夢位だからね」

「霊夢さん、そんなに強いんですね」

「うん、あなたと同じくらいに弾幕が当らないし、それじゃ、行くよ!

 手加減はしないで大丈夫、本気で遊ぼう」

「紅魔館、壊れませんかね、せめて屋外で」

「今は日差しが強いのよ?」

「そうでした」

 

吸血鬼って日差しに弱いの忘れてたよ。

 

「それじゃあ、最初から一気に行くわよ!」禁忌「クランベリートラップ」

 

フランお嬢様が飛び上がり、翼を一気に開くと同時に

私の周囲に魔法陣が展開された。

その魔法陣が縦横無尽に動き回り、私に向けて弾を飛ばしてくる。

 

「とと」

 

私はその弾幕を多少誘導しながら、回避をしていく。

魔法陣が動きながら弾を飛ばしてきているわけだから

その場に立っているだけだとその内逃げ道を塞がれる。

この位の密度なら、隙間を通って避ける事は出来るだろうけど

出来るだけ安全に立ち回りたい。

 

「うんうん、これ位は避けて貰わないと、さぁさぁ、次だよ!

」禁忌「フォーオブアカインド」

「増えた!」

 

フランお嬢様が4人!? もう何でもありだなぁ。

 

「それじゃあ、ここで!」禁忌「レーヴァテイン」

「え?」

 

……増えたフランお嬢様が更に全員…剣を持って。

 

「うらっしゃぁ!」

「ちょわぁ!」

 

え!? 弾幕ごっこじゃ無い!? 4人に増えて斬りかかってくるの!?

 

「だ、弾幕は!? 弾幕要素は何処へ!?」

「1度やってみたかったんだよ、こう言うの」

「4人に増えて斬りかかることをですか!?」

「そうそう、でもほら、普通の相手にやってもすぐ終わるじゃん?

 だから、フィルでやってるの!」

「いや! そんな無茶苦茶な!」

「とか言いながら、私達4人の攻撃、全部避けてるじゃん」

「コラ! 大人しく当れ!」

「あはは! 避けるの超上手いじゃん! 最高!」

「当ったらきっと痛いだろうけど、まぁ、頑張ってね?」

「何で4人とも口調とか性格違うんですか!?」

「知らない」

「フランお嬢様ご本人も知らないのですか」

「そして!」

 

4人のフランお嬢様が同時に後ろに飛び退いた。

 

「これでどうだ!」禁弾「スターボウブレイク」

 

4人のフランお嬢様が同時に私に向けて手を伸ばしたと思うと

同時に大量の弾幕を発射させてきた。

1発目は翼を大きく広げたような弾幕が出て来たけど…密度がおかしい。

あの弾がどうなるんだろうか、周りに飛んでいったり。

 

「…え?」

 

最初に展開された弾幕! 何処かに行かず全部こっちに落ちてきたんだけど!?

 

「ちょ! ちょっとフランお嬢様! この密度は!」

「本来の密度の4倍だからね、避けられるかな? かな?」

「うぅ!」

 

よ、避けようと思えば避けられるかもしれないけど、道筋が見えない!

こ、こうなったら…こうなったらやるしか無い!

 

「こっちも使わせて貰います!」束縛「小さな鎖」

 

私がスペルカードを宣言すると、お空さんの時と同じ様に鎖が現われた。

違うのは飛び出して来た鎖の本数だった。

沢山発生した鎖は4人のフランお嬢様を全員同時に拘束する。

 

「何これ!?」

「鎖!? ど、何処から出て来たの!? これがフィルのスペカ!?」

「こんな鎖! ひ、引きちぎって! ひ、引きちぎれない!? 私の力で!?」

「ぐぬぬぅ! 大変な事になるよ、これは!」

「…私のスペルカード、全員同時に拘束出来るんだ」

「へ、へぇ、面白いスペカじゃん、弾幕を張る方だったらどんな感じなんだろう」

「えっと、とにかくショットです」

「全然痛くないじゃん、鎖はかなり頑丈なのに攻撃はこの程度?」

「手加減しやがって! 馬鹿にしてんのかこの野郎!」

「手加減は無用だよ、楽しい勝負に加減は不要!」

「痛いのは勘弁して欲しいんだけど」

 

……誰が本体か悩みそうだけど、多分これが本物のフランお嬢様!

 

「あたた、正解正解、私が本物、よく分かったね」

 

周りに出て来ていた3人のフランお嬢様が消えると

私の鎖も消え、フランお嬢様が地上に降りた。

 

「いやぁ、面白いスペルカードだったね」

「あ、、ありがとうございます」

「本当に楽しいよ、私と遊んでくれるの、フィルだけだからさ」

「そうなんですか? 他の方は?」

「お姉様は遊んではくれないから、咲夜も来ないし、パチュリーも来ない。

 咲夜は偶に来るけど、忙しいから遊べないらしい。

 たまに美鈴が来るけど本当にたまにしか来ないから」

「そうなんですか…フランお嬢様、ご安心ください!

 退屈な時は私がお相手します!」

「でも、フィルも結構いなくなるじゃん」

「う、うぅ、確かに…じゃあ! 私が何とかレミリアお嬢様を説得します!」

「そんな事出来るの? ただのペットじゃん」

「た、確かにペットに大した力はありませんが

 家族を繋げる事は出来ると思います。

 …いえ、違いますね、繋げる切っ掛けを作ることでした」

「え?」

「私、頑張ってレミリアお嬢様をフランお嬢様のお部屋に来るように説得します

 ですが、そこまでです、後はフランお嬢様とレミリアお嬢様の力です!

 説得するのに時間がかかるかもしれませんが、めげずに挑戦しますので

 ご期待ください! きっとお2人を仲の良い姉妹にして見せます!」

 

地霊殿で出会った、さとりさんとこいしさんみたいに、仲の良い姉妹。

空の上で出会った、リリカさん、メルランさん、ルナサさん達の様に

仲良く一緒に頑張ってる姉妹。

そのどっちでも良い、あるいはその両方。

そんな姉妹に戻って欲しい。

…ペットである私がご主人様達の関係をどうこうしようとか

自分の理想の姿を押し付けるなんておかしいのは分かってるけど。

それでも、仲の良いお2人の姿を見たい、お2人ともそう思ってるはず。

フランお嬢様の事を見ていなかったら、フランお嬢様が寂しい思いをしてるなんて事を

レミリアお嬢様が知るとは思えないし、すぐに私を向わせようとは思わないはず。

レミリアお嬢様の事を考えていなかったら、レミリアお嬢様を目標にはしない。

きっと切っ掛けが無くて、お互いに素直になれないだけなんだ。

だから、私がその切っ掛けになる、きっとそれも愛玩動物の大事な仕事だから!

レミリアお嬢様にしつこいって言われて、最悪クビになってもいい。

絶対にお嬢様とフランお嬢様が仲良くなれる切っ掛けを作るんだ!


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