東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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不器用なペット

お嬢様とフランお嬢様を仲良くさせる方法…

2,3日の間考えたけど、結局良い方法はでなかった。

そもそも、私は考えるのが苦手だ…だから、行動することにした。

とにかくその場で考えよう…どうしよう、普通に話したりしたら…

 

(お嬢様、フランお嬢様が一緒に遊びたいと仰っています)

(あなたが相手をしてあげて頂戴)

 

……駄目だなぁ、絶対に駄目だよね。

 

(お嬢様、私と一緒にフランお嬢様と遊びましょう! フランお嬢様も一緒に遊びたいそうです)

(……そう、じゃ、じゃあ、折角だし遊んであげようかしら)

(はい!)

 

うん! この感じだったら問題無い筈!

きっとレミリアお嬢様もフランお嬢様と仲良くしたいと思っているはずだし!

向こうが一緒に遊びたいというなら遊んでくれるはず!

私が一緒にいたら、少しくらいはクッションになりそうだし!

 

「あの、お嬢様」

「どうしたの?」

「えっと、私と一緒にフランお嬢様と遊びません? フランお嬢様も一緒に遊びたいと」

「……何で私があの子とあなたの相手をしないといけないの?」

「え、あ、はい…すみませんでした」

 

だ、駄目だった! うぅ、や、やっぱり捻ったことを言った方が良いのかな?

 

(フランお嬢様が楽しい事を見付けたらしくて、お嬢様にも一緒に楽しもうと)

(良いわ、私はここでのんびりと紅茶を飲んでいる方が楽しい物)

(そ、そうですか…)

 

う、うーん、イメージトレーニングでも成功するようには思えない。

やっぱりその場で考えただけの作戦じゃ成功しない。

 

「で、用事はそれだけなの?」

「い、いえ」

「じゃあ何よ、早く言いなさい、私は暇じゃ無いのよ」

「う、うぅ…」

 

どうする? どうしよう…あまり時間は無い。

レミリアお嬢様が少しだけイライラして…ん? いや、イライラしてないように感じる。

私の勘違いなのかもしれないけど…でも、多分怒ってはいない。

むしろ、私の言葉を待っているようにも感じる…

……うん、そうだよね、お嬢様はフランお嬢様の事を嫌ってはいない。

ただ素直になれないだけなんだ、なら、私だって素直に話をしよう。

フランお嬢様に怒られるかもしれないけど、素直に全部言った方が良いよね。

自分の考えとかを隠してたら、レミリアお嬢様も素直にはなれないよね。

相手を素直にさせるには、自分が素直になる方が1番。

こっちが不安を抱いたら、向こうも不安を抱く。

……よし、何も隠さないで、ハッキリと言う!

 

「……レミリアお嬢様、お願いします、フランお嬢様と一緒に遊んであげてください」

「だから何で私があの子と遊ばないといけないの?」

「それは、フランお嬢様がレミリアお嬢様と一緒に遊びたいと仰っているからです。

 フランお嬢様はレミリアお嬢様と仲良くしたいと考えて居ます。

 楽しくお話しもしたい、一緒に遊びたい…並んでお出かけもしたいでしょう

 手を繋いで、ゆっくりと」

「ペットのくせに、随分と偉そうに」

「失礼な事は分かってます、罰は何だって受ける覚悟はあります。

 ですので、フランお嬢様と1度で良いので、会ってお話ししてみて下さい」

「……何でそこまでフランに肩入れをするの?」

「フランお嬢様に、ではありませんよ」

「…ふ、全くほんの数週間程度で随分とまぁ、変わった物ね

 まぁ、良いわ、あなたの面白さに免じて、フランに会ってあげましょう」

 

レミリアお嬢様が少しだけ笑みを見せ、ゆっくりと椅子から立ち上がった!

 

「レミリアお嬢様!」

「あなたが言った訳だし、あなたも来なさい」

「は、はい!」

 

レミリアお嬢様を先に行かせて、私は後に付いていくようにしよう!

…良かった、これでフランお嬢様とレミリアお嬢様が仲良く。

 

「…罰は何でも受ける、確かそう言ったわよね?」

「あ、はい」

「罰は沢山考えておいてあげるから、覚悟しておきなさい」

 

私の横を通るときに、レミリアお嬢様が小さくそう呟いた。

その後に小さな笑い声…ど、どんな罰何だろう…ちょっと不安が…

 

「は、はい…」

 

ちょっと不安は残るけど、自分が言ったことだし受入れるしか無い。

 

「……さて、久し振りに来たわね、フランの部屋」

「そうなんですか?」

「えぇ、フランには出来れば会いたくなかったわ」

「何でですか?」

「……495年間、私はあの子をこの部屋に閉じ込めた。

 …それがフランの為になると考えて…すぐに暴走してしまうフランを隔離して

 危険な奴らに目を付けられないようにって、考えてね…

 でも、その結果、私はあの子を孤独にしてしまったわ。

 今更あの子の事を考えて、なんていえた口じゃ無いわ

 私はね、あの子の姉として失格なのよ…だから、顔を見せたくなかった」

「…こんな事を言うのは、非常に失礼ですけど…それはただ逃げてるだけでは?

 自分が傷付きたくなかったから、フランお嬢様に」

「黙りなさい!」

「……」

「……実際その通りよ、私は逃げてるだけ、それ位は分かってるわ。

 何度もパチェに言われたしからね、理解は出来てる

 でも、やっぱり嫌じゃい、大事な妹に顔を見せて

 嫌われてるってハッキリ分かるのは」

「…問題の先送りは溝を深くするだけです」

「……そうね、問題を先送りしても悪化するだけ、結果は悪くなる一方

 …フランは私の事を嫌ってるに決まってるけど、少しくらいは」

「お、お姉様…」

 

フランお嬢様のお部屋がゆっくりと開き、涙を堪えているフランお嬢様が立っていた。

 

「フラン!? 何! まさか、今の全部!」

「うん…全部聞こえてた…お姉様」

 

バレないように少しだけ扉を開けておいた。

だって、こうでもしないとお嬢様は素直にならないと思ったから。

お嬢様を騙すような感じで少し心が痛むけど。

それでもきっと、これが1番なんだ。

 

「フラン、い、今のは」

「お姉様!」

「ちょ、ちょっとフラン!」

 

フランお嬢様の瞳に溜まっていた涙が流れると同時に

フランお嬢様がレミリアお嬢様に抱きついた。

少し動揺しながらも、レミリアお嬢様はフランお嬢様を受け止める。

 

「ごめんなさい、私、お姉様のこと勘違いしてた!

 私の事が嫌いなんだって、勘違いしてた!

 でも…違ったんだね…お姉様は、私の事が心配で」

「…そ、そんな訳な」

「私、今まで言わなかったけど、お姉様のこと、大好きなの

 憧れてたし、尊敬もしてた、でも、憎んでもいたの…

 私を1人にしたのはお姉様だって…少し思ってきてた。

 私は…本当に馬鹿な妹…お姉様が大事にしてくれてるって気付けないなんて!」

「……そうね、あなたは馬鹿よ…だって、馬鹿な私の大事な妹なのよ?

 ふ、ふふ、それにしても…酷い顔ね、フラン…高貴な吸血鬼がして良い顔じゃ…無いわ」

「…お姉様だって、同じ顔だよ」

 

……私はこの場にいるべきじゃ無いかな…それにしても、幸せそうな泣き顔。

うぅ、私まで涙が出て来ちゃった…

 

「…あれ?」

 

ゆっくりとその場から立ち去ろうとしたけど、私はその場に居た。

あれ? 確かさっき1歩下がったつもりだったんだけど。

 

「…ご主人様の幸せを見守る事も、ペットの大事な仕事よ」

「え?」

「…今日、初めて不器用なあなたの事、羨ましいと思ったわ…ありがとうね」

「咲夜さ…あれ?」

 

いない…咲夜さん…

 

「ねぇ、お姉様…一緒に来て」

「えぇ、良いわよ…何処へ行くの?」

「うん、付いてきて!」

 

フランお嬢様は楽しそうにレミリアお嬢様と一緒に移動した。

その移動先は台所。

 

「仲直りの記しに、一緒にプリン食べよう!」

「…え?」

「プリン~、プリン~、お姉様と一緒にプリン~」

「…え、えっと、ケーキにしましょ? 一緒に食べるなら大きい方が…」

「プリン? ねぇ、お姉様、私のプリン、知らない?」

「……し、知らないわ」

「ま、まさかお姉様! 私のプリン食べた!?」

「そそ、そんな訳な!」

「お姉様! 絶対に許さないんだから!」

 

え!? フランお嬢様がレーヴァテイン出した!?

 

「待ちなさいフラン! それは不味いわ! レーヴァテインは!」

「食べ物の怨みは恐いって事を教えてあげるわ!」

「ちょっと待ちなさ、うわ!」

「ほえ? 危なぁ」

 

死ぬかと思った死ぬかと思った死ぬかと思った!

えぇ!? 弾幕ごっこで使ってたときの威力の何倍もあるんだけど!?

 

「プリンー!!」

「あ、姉として! あなたから逃げ続けるのは駄目よね! やる気ならやってやるわ!」

 

レミリアお嬢様がグングニルを出して、フランお嬢様のレーヴァテインを受け止めた。

 

「お姉様が全部悪いんじゃん!」

「さっさと食べないあなたが悪いのよ!」

「私は好きな食べ物は最後に取っておくタイプなのよ!」

「そもそもよ! プリン如きで怒りすぎよ!」

「大好きな物を取られたら、誰だって怒るに決まってるでしょ!?」

「さっさと食べないのが悪いのよ! 好きなものは最初に食べるって相場が決まってるでしょ?

 長いこと残ってると、食べないのかなって思うのが普通よ!」

「私は最後に食べるタイプなの!」

「私は最初なのよ!」

「知らないわよ! お姉様のバーカ!」

「馬鹿はあなたでしょ!?」

 

……こんな喧嘩、最初に紅魔館に来たときにもあった気がする。

そんなに前の事じゃ無いけど、凄く懐かしく感じる。

……それにしても、レミリアお嬢様とフランお嬢様、喧嘩してるはずなのに

凄く楽しそうに喧嘩をしている…お互いに笑ってる。

楽しそうにしてて、私も何だか嬉しい。

……でも、どう考えてもレミリアお嬢様が悪いと思うなぁ、これは。

 

「プリン返して!」

「無茶言わないで!」

 

…あはは、楽しそうだし、まぁ、良

 

「あ! フィル危ない!」

「にゃぁあああ!」

 

死ぬかと思ったぁああ!!


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