東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

63 / 245
正体を求めて博麗神社

う、うぅ…あ、あれ? ここは何処だろう。

 

「……またあんたかい、一体何度死にかければ気が済むんだい?」

「あ、何処かであった様な…何処でしたっけ」

「ここだよ、ここで前も出会った、本当異常なくらいに死にかけるね

 普通、こんな短期間の内に2度も死にかけるかね」

「え?」

「ま、前も言ったが、あんたがここに来るのはまだ大分早いみたいだ

 余命もまだまだ、何でこんなに余命があるのに2回も死にかけるかね」

「えっと」

「ほら、もう帰る時間みたいだ、お願いだからしばらくは来ないでくれ

 仕事が増えるのはごめんだからね」

「えーっと、2度も会ったのは何かの縁かもですし、名前を教えて下さい」

「縁ね、正直、あたいと縁なんて持たない方が良いとは思うが、まぁ、良いか

 あたいは小野塚 小町しがない死神だよ」

「死神!?」

「安心しな、あたいは命は狩り取らない、そもそもあんたの命を狩るのはまっぴらだ

 正直、狩る自信は無いからね、ほら、帰えんな」

「あ、はい…また会うことになりますかね? 小町さん」

「出来れば会いたくないだろうが、きっと会うことにはなるだろう

 あんたが死を受入れれば、だけどね」

「…そうですか」

 

死を受入れる…自分の最後なんて、少し想像も出来ない。

いや、小町さんの話だと、私は2回くらい死にかけてるみたいだけど

それでも私には自分の死という感覚は一切ない。

あり得ない、ほど遠い先の未来の事に感じる。

どうなんだろうか、それは身近なことなのか、それとも近い先の事なのか。

未来は分からないけど…少なくとも今の私には死を受入れることは出来ない。

 

「じゃあね、しばらくは来ないことを祈っているよ」

「ありがとうございます」

 

その言葉の後、私の視界が再び暗くなり、目を覚ますと自室のベッドの上だった。

……あぁ、そうだ思い出した、私、レミリアお嬢様とフランお嬢様に血を吸われて

死にかけたんだった…じゃあ、あの人は本当に死神だったのかな。

大きな鎌を持っていたし、それっぽい感じはしたんだけど

私の予想だとドクロのお面を被った恐い人奴ってイメージしか無かったんだよなぁ。

でも、考えてみれば私の先入観なんて何の意味も無いのか。

吸血鬼である筈のレミリアお嬢様とフランお嬢様もイメージとは違うし。

私のイメージだと吸血鬼って言えば、コウモリとかが集まって

恐い男の人が出てくるってイメージしか無かったしね。

 

「フィル、起きたようね」

「あ、レミリアお嬢様! すみません」

「何を謝る事があるの? 私達に血を吸われて気絶しただけでしょうに」

「そうですけど…やっぱりお嬢様達のお手を煩わせてしまいましたし」

「気にしないで良いわ、それよりもフィル、あなた休暇が欲しいらしいわね」

「あ、はい、確かにそうですけど」

「良いわ、許可は出して上げる、正し何で休暇が欲しいのか理由を言いなさい」

「そうですよね、えっとですね、実はこれでして」

 

私は自分の手元にある紫色のボールを見せた。

 

「それが?」

「このボール、何度捨てても戻ってくるんです

 流石に気持ち悪いので、このボールの正体を探ろうと考えまして

 紫さんに聞いてみようとしても紫さんは姿を見せてくれません。

 なので、もしかしたら博麗神社に紫さんがいるかもと思いまして

 休暇を貰って、博麗神社に行ってみようかなと」

「へぇ、また面白そうな事を、良いわよ、許可してあげる

 ただそんな面白そうな事を1人でなんて酷いわね

 私達も行くわ、丁度フランと外を散歩してみたいと考えていたの。

 ちょっと不安はあるけど、まぁ、私とあなたと咲夜がいれば大丈夫でしょう」

「一緒に来て下さるんですか?」

「えぇ、どうせ暇をしていたところだしね」

「ありがとうございます!」

 

うん、お嬢様達が一緒にいて下されば、迷うことも無いよね!

私、結構方向音痴な気もするからね。

空も飛べないし、お嬢様達が一緒にいてくれるのは嬉しい。

 

「では、行こうかしら、博麗神社へ」

「はい!」

 

私達は4人で博麗神社へ向った。

フランお嬢様と外に出るのは何だか不思議な気持ちだ。

 

「2回目だけど、やっぱり気分良いな! 

 でも、普段は外に出たら駄目って言ってたのに、どうして?

 何だかお姉様、フィルが来てから凄く優しいけど」

「フィルもいることだし、あなたが暴走することも無いと考えたからよ

 それに折角だし散歩も良いかと思ってね」

「うん!」

 

咲夜さんはレミリアお嬢様の日傘を担当して

私はフランお嬢様の日傘を担当する。

 

「何だか新鮮ですね、妹様が外に出られるなんて」

「新鮮が当たり前になれば良いと私は考えて居るわ」

「お姉様!」

「やっぱりレミリアお嬢様は素直じゃありませんね」

「どういうことよ、血を吸われたいの?」

「すみません! あ、あの、血を吸うのはご勘弁願います!」

「昨日のこと、随分と応えてるようね」

「えっと、ああ言うのキツいです、はい」

「まぁ、いつかまた吸わせて貰うけどね!」

「お許し下さい!」

「あ、この場から逃げたら駄目よ? 妹様が日に当ってしまうわ」

「は、はい、だ、大丈夫です、流石に逃げ出しませんから」

 

うぅ、何だかフランお嬢様のこっちを見る目が恐い。

獲物を見ているような目だ…大丈夫かなぁ。

でも、その後は何事も無く博麗神社に到着した。

 

「博麗神社! 良くお姉様が来る場所だね! 前も来たっけ

 そして、いつぞやの巫女がいる場所! 今日もいるかな?」

「これまた奇妙なお客人ね、レミリアはまだしも、その妹まで来るとは

 悪い子は家で寝てなさい、今は昼よ、真っ昼間

 あんたらの時間じゃ無いでしょうが」

「その言葉、かなり今更ね」

「はぁ、そうね、あんたら吸血鬼のくせに昼に活動してるから、訳が分からないわ

 前も2人揃ってきたし、本当、最近は妙に動くわね」

「人間だって夜にだけ活動する人いますし、問題は無いと思いますけど…」

「そんな人間、妖怪に取って食われるわよ」

「そうなんですか?」

「そうよ、ま、ここじゃ昼だろうと動く吸血鬼や妖怪もいるし

 一概には言えないけどね

 さて、とりあえず本題よ、前座は適度が1番でしょうし…

 何の用? 遊びに来たって感じじゃ無いでしょう?」

「あ、はい、実は」

 

私は自分が持っているボールをまずは霊夢さんに見せてみた。

もしかしたら、霊夢さんなら分かるかもしれないし。

 

「えっと、このボールが最近私の元に来るんです。

 気持ちが悪いから、何度か捨てようと考えてましたが」

「へぇ、あなたも持ってたのね、それ」

 

そう言って、霊夢さんも私と同じ様なボールを取り出した。

 

「え!? 霊夢さんも持ってたんですか!?」

「そうよ、正直気持ち悪いから同じ様に捨てたけど

 結局戻ってくるのよ、お祓いとかした方が良いのかしら」

「やっぱりそういう感じですかね? だったら、私のボールも」

「お祓いをするくらいだったわ、私にくれよ、そのボール」

 

私と霊夢さんが話をしていると、空から声が聞こえてきた。

 

「魔理沙さん?」

「へへ、いやぁ、フィルと霊夢もボールを持っていたとは意外だぜ

 そんで、そのボールが2つあるってのもまた嬉しいな」

「どういう事よ」

「何だ? お前らは知らないのか? このボールの噂」

「噂ぁ?」

「そうだぜ、このボールを7つ集めると願いが叶うんだぜ!」

「え? アニメの見すぎじゃ無いですか? 

 そもそもこのボールに星なんて無いですよ?」

「あ? 何の話だぜ?」

「あ、違うんですか?」

 

…あれ!? 何で私、アニメの内容覚えてるの!?

何でくだらない記憶は残ってるの!? 訳が分からないよ!

うぅ、どうせならもっと他の記憶が残ってれば良いじゃんか!

そう言えば、服とか髪型とか髪飾りの名前も何故か覚えてたし…

何でそういう意味の無いことばかり覚えてるの!? うぅ!

 

「フィルが何か1人で悶えだしたが…まぁ良いか、でだ

 そのボールは決闘で勝った方に所有権が移るんだぜ!

 と言う事で、霊夢! フィル! そのボールを賭けて勝負だぜ!」

「私はどうでも良いけど、まぁ、ただ負けてやるのは癪だしね

 魔理沙、一応は手加減をしてあげるから、本気で掛かってきなさいな」

「へ、言われなくてもやってやるぜ! フィルはその後だな!」

 

……え? 何か始まった? 話聞いてなかったから何がどうなってるか分からない!?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。