東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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悪霊

「やれやれ、そんなに怯えなくても良いじゃ無いか、お嬢さん」

「…うぅ」

 

あの幽霊がこっちに少しだけ近付いてきたけど。

私はどうも威圧されて、1歩だけ後ろに後ずさりした。

それだけの威圧感を感じる…

幽霊ってだけでもかなり恐いのに、この威圧感…

 

「やれやれ、随分と嫌われた物だねぇ」

「幽霊とかが苦手なのよ、この子は」

「幽霊が? ふーん、妙な物だね、人が幽霊を怖がるのは分かるが

 妖怪が怖がるなんてね」

「幽霊が恐い半人半霊もいるんだし、幽霊が恐い妖怪がいてもおかしくないでしょ」

「それは半分が人間だからとかじゃないのかい?」

「それなら、この子だって半分人間よ」

「あぁ、そう言えばそうだったね」

 

……霊夢さん、何でこの幽霊と普通に会話が出来るんだろう…

あ、そうか、巫女さんだからかな?

巫女さんって幽霊をお祓いできるもんね。

 

「…ねぇ、あんた」

「なんだい?」

「なんでフィルが半分人間だと私が言ったとき

 そう言えばそうだった、なんて、もうすでに知ってるような口振りなの?」

「……」

「あなたは今までこの場にはいなかった筈でしょう?

 ついでに1つ言わせて貰うと…フィルが半分人間だなんて

 この博麗神社では一言だって言ってない筈よ」

「…流石博麗の巫女、勘が鋭いね、何処か鈍いのに」

「教えなさい、今更姿を見せた理由も、何故、フィルの事を知っているのかも」

 

霊夢さんが何処からか持ってきたお祓い棒をあの幽霊さんに向けて質問した。

 

「答えないと言ったら?」

「あなたは答えるしか無い、これは質問じゃ無いわ、ただの拷問よ」

「…やれやれ、本当に野蛮な巫女だ、ま、私も答えるつもりだ、拷問の必要は無いよ」

「そう、じゃあ、答えなさい、悪霊」

「私には魅魔(みま)って名前があるんだがね」

「それ位分かってるわ、でも、わざわざ呼ぶ必要は無いでしょ?」

「悪霊って呼ぶよりも名前で呼んだ方が楽だと思うんだがね」

「そんな事はどうでも良いでしょ? 早く答えなさい、魅魔」

「はは、案外素直じゃないか!」

「良いから答えて」

「あぁ、分かってるよ」

 

仲が良いのかな? 霊夢さんと魅魔さん、でも、そんな風には見えないけど…

霊夢さんなんてずっと敵意むき出しだし…

 

「私がフィルの正体を知ってる理由だが、八雲紫が理由さ」

「紫が? 何でまたあんたみたいな悪霊なんかに」

「私はこれでもかなりの実力を誇る魔法使いだよ? 何かは酷いじゃないか」

「紫があなたみたいな悪霊を信用するとは思えないって言ってるのよ

 そもそも、あいつは何処に行ったの?」

「そこまでは教えて貰ってないね、ただ少し留守にするから博麗神社と

 そこの妖怪娘を守れと言われただけさ、当然、理由は聞いたけど

 答えてはくれなかった、全く、理由くらい喋れば良いのに」

「で、フィルが半分人間だと聞かされたと」

「まぁね、正体までは教えて貰えなかったけど。

 私が喋るのが不安なんだってね、信用してるのか信用してないのか」

「信用されてないのよ」

「ま、交流があったわけでも無いし、当然と言えば当然だね」

 

紫さんが私と博麗神社を守る為に、魅魔さんにお願いしたって事?

何で? 何から守る必要があるの?

博麗神社には霊夢さんがいるし、守る必要は無いはず。

私を守れと言っても、私なんて突然来ただけの妖怪…

そんなすごい人に守らせるような価値があるとは思えない。

確かに紫さんは私の記憶を知ってる、でも、それだけでここまでする?

弾幕の出し方も教えてくれた…色々な人と交流をする為に助けてくれたり。

分からない…紫さんは何で、私にここまでするの?

 

「その表情、何でここまで大事にされてるか分かってないって感じだね」

「…は、はい、分かりません」

「そう、ま、私も分からないけどね、あんたを見た私の第一印象は

 ひ弱で臆病者で妖怪の風上にも置けない脆弱な妖怪娘だ」

「うぅ…」

「私にはあんたに守る価値があるとは思えない

 自分から行動出来ず、何も出来ないままのたれ死ぬだけの甘ちゃん妖怪だからね」

「……」

「魅魔、流石に」

「事実さ、私が見て感じた事だ」

「人も妖怪も見かけにはよらないわ、性格は見た目通りだけどね」

「やっぱり見た目通りの甘ちゃんって事かい?」

「そうよ、ま、最近は少しマシになったけど、攻撃もしっかりするしね」

 

最初、攻撃全く出来なかったからな…でも、今は攻撃することにあまり躊躇いがない。

何で? 確か妖夢さんに斬られた後から…だったかな。

 

「最初は殆ど反撃もしなかったし、甘ちゃんで間違いないと思うわ」

「ふーん、本当に甘ちゃんだったんだね」

「えぇ、でも、今は違うわ、反撃もするからね」

「ふーん、見てみたい物だね、どれ程の物か」

「私の予想だけど、全力のフィルはあなたでも勝てないわ」

「私の事を過小評価しすぎだよ」

「どうかしらね、ま、全力のフィルは今、見ることは出来ないだろうけどね

 今のフィル相手だと、あんたなら余裕だと思うわ」

「全力ってのがどれ程の物か分からないけど、イマイチよく分からないね」

「わ、私が全力を出しても、絶対にこの人には勝てないと思います」

「あなたは自分の事を過小評価しすぎよ、ま、しょうが無いとは言えね」

 

わ、私の全力って…何なんだろう、分からないや。

……でも、もしも私にそんなにすごい力があるなら…ちょっと…恐いな。


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